世界一の治癒師目指して頑張ります!

睦月

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戦場の治癒師1

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「Cランク以上の奴はパーティー単位で前線についてくれ!少しでも数を減らすんだ!それ以下の奴は前衛と後衛に分かれて俺の指示に従え!門を通さなければ街は守れる!皆無理はするな!負傷したら治癒師カオリの元に行け!数が増えてカオリの手に負えなくなったら歩けるやつは自力で教会に行って治してもらえ!」
「「おお!」」

ドルチェがテキパキと指示を出していく。遠くから豚の鳴き声のようなものが聞こえてくるが、まだ魔物の姿は目視できない。
『夜明けの星』、『ビースト』、『ドラゴンスレイヤー』は他の上位ランク冒険者達と共に駆け出した。その他の冒険者達も緊張で汗をにじませながらも、ドルチェの指示に従って配置に付いた。

「カオリ、来てくれて正直助かる。この赤旗は治癒師がいるという目印だ。お前の近くに立てておいてくれ。」
「分かりました。」
「魔物が近くまで来たら迷わず門の中に入れ。自分の安全が第一だ、怪我を治す奴がいなくなるのは困るからな。」
「はい。」

ドルチェから赤旗を受け取り、香織は門の横に陣取った。

(アイ、前線の人たちはもうレッドオークに接触した?)
『もう間も無くです。マップに表示します。』

香織がマップを見ると、冒険者達は森の中に潜み不意打ちを狙っているようだった。数で不利なこの状況下で、彼らは群れの端にいる個体から削っていく作戦を取ったようだ。

(みんな大丈夫かなあ…グレートベアに匹敵するって言われても、いまいちよく分からないんだよな…)
『並の冒険者なら真正面からぶつかればすぐに蹴散らされるでしょうね。』
(レッドオークについて詳しく教えてくれる?)
『レッドオークはオークの上位種です。赤黒い皮膚に筋肉質な巨体が特徴です。戦闘能力と知能はオークの何倍もあります。オークと違い群を形成し、仲間意識が強いです。仲間の幼体が殺された場合、報復として今回のように群で敵を襲撃することがあります。』
(アレクシスさん達は勝てるかな?)
『一匹ずつ群から離しての討伐なら問題ないでしょう。今回はその作戦のようですし特に問題はないかと。』
(よかった。でも危なくなったらそれとなく助けてあげてね。バレないようにだよ!落雷とかはダメだよ!)
『分かりました。』

香織は再びマップに視線を移した。赤点で印されたレッドオークの群から少し離れた位置に灰色の点が3つ表示されている。

(ん…?この灰色の点って、もしかして…)
『死亡した冒険者ですね。先程ギルドに駆け込んだ男の仲間でしょう。』
(そっか…)

死んでしまっては香織にできることはない。それに彼らの死は、自業自得のようなものだ。レッドオークの幼体に手を出したのだから。群れからはぐれた個体と勘違いしたのかもしれないが、下級冒険者の彼らが手を出すべきではなかった。香織はしばらくその灰色の点を見つめていたが、豚の鳴き声が徐々に大きくなっていくのを感じ、視線を声の方向に向けた。

『前線の冒険者達が戦闘を開始しました。今のところどのパーティーも危なげなく討伐出来ています。』
(ここからでも見えてきたね。ついに戦闘が始まるのか…他人が戦っているところはほとんど見たことないからな…どんな感じなんだろう。)


ーーーーーーーーー


「怪我人だ!頼む!」
「はい!」

街の近くでも戦闘が開始されて間も無く。香織は他人の戦いを見る余裕もないほどに忙しく駆け回っていた。普段ワーウルフを倒しているような冒険者がいきなりレッドオークと戦えばこうなるのは必然だ。この状況で未だ死者が出ていないことはまさに奇跡だった。

「ボブ、そっちのやつら頼む!」
「任せろ!」

前衛組の体制が崩れていないのは、自ら先頭に立ちレッドオークを倒している元Aランク冒険者のドルチェと、ボブを筆頭とした薬草採取専門の冒険者達の功績が大きい。長いブランクで多少腕は落ちているものの、彼らは元々はベテラン冒険者だ。彼らが新人冒険者のサポートに回っていなければ、戦線はとっくに崩壊していたことだろう。

「治しておいてよかった…肝硬変も、古傷も、治してよかった!」

香織は目の回るような忙しさの中、心からそう思った。


ーーーーーーーーー


「…クソ!あいつ、二匹引き連れて来やがった!」
「どうするの!?僕達だけじゃあ三匹は厳しいよ!」
「んなこと言ったってやるしかねえだろ!もう見つかってんだから!」
「一人一匹ですか…厳しいですね…!」

ジミーが挑発の為に放った矢は狙い通り群の端にいたレッドオークに擦り、その赤黒い巨体はジミー達を標的に変え、走り出した。

「ピギィイイ!」

怒りを含んだレッドオークの鳴き声に反応した別の個体が二匹、群れから離れ、『ドラゴンスレイヤー』の元に向かい始めた。

「まずは一匹、先に殺すんだ!三匹集まったら終わりだ。」
「うん!」

ジミーは弓を引き絞り、レッドオークの右眼に矢を放った。それと同時にケリーが氷魔法で敵の足元を凍らせる。レッドオークの動きが止まった隙に、キースが走り出した。

「オラァ!」

横一線に薙いだ剣がレッドオークの巨体を二つに切断し、断面から噴き出た血がキースに降り注ぎ彼の視界を奪った。

「キース!次来てるから!下がって!」
「クソ!」

キースは赤く染まる視界の中、なんとかバックステップで距離をとった。次の瞬間、先程まで彼が立っていた地面はレッドオークの振り下ろした棍棒で小さなクレーターが出来ていた。キースは目元を乱暴に拭い、血で染みる目を無理やりこじ開けた。

「キース、左だ!」

霞む視線を左にやるも、剣で受け流す時間もない。このままでは直撃する。左腕とあばらが何本か折れる程度なら運が良い。キースが死を覚悟したその時、突然レッドオークの動きが緩慢になった。拳の起動が逸れた事で直撃を免れたキースは、その勝機を逃す事なく剣を振るった。

「『アイスランス』!」

長い詠唱の後、ケリーが放った攻撃は最後の一匹の脳天を貫き、命を失った巨体はズズンと音を立ててその場に崩れ落ちた。

「はあ、はあ…」
「キース!大丈夫!?目、この水で洗い流して!」
「すまん…」
「直撃しなくて良かったです。よくその目で避けましたね…」
「あの豚、急に動きがおかしくなった…ケリーが何かしたのか?」
「え?私はアイスランスの詠唱で精一杯でしたので他の魔法は…ですが確かにもう一匹も攻撃の隙はあったのに何もしてこなかった。少しおかしいですね。」
「…深く考えてもしょうがねえ。誰も怪我がないなら次行くぞ。」
「オッケー!少しでも多く倒して早くCランクに返り咲こう!」
「ああ、どこのどいつが広めたか知らねえが俺達のこと玉なし三兄弟なんて呼びやがって…今に見てろ。『ドラゴンスレイヤー』の名を国中に轟かせてやる!」



『…『思考鈍化』の魔法はなかなかに効果的です。彼らの事などどうでも良いですが死んだと聞けばマスターが気に病むでしょう。せいぜい頑張る事ですね、玉なし三兄弟さん。』

(アイ~、みんな無事?)
『はい、問題ありません。』
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