探偵三兄弟の帝都事件簿

ヲダツバサ

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第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件

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 そんな僕を放って、次兄は話を続けた。

「兄上。俺はとりあえず横浜に行く。長崎って事は無いだろうし」

「そうしなさい。佐藤警部補は既に向かっている。合流すべきだね」

 どうやら次兄は既に目星が付き、またすぐ発つらしい。しかも横浜に。一体横浜に何があると言うのだ。あるのは鉄道と……

「兄上も俺と一緒に行った方が良いんじゃないのか?」

「いやいや、遠慮しておくよ。探偵は推理が仕事。私の役目はもう終わったよ。佐藤警部補によろしく」

「答え合わせには参加しようぜ。弦助にも面白いものが見せられる」

 次兄は急いでいるようだ。けれど長兄が動かないと見て、僕に目線を変えた。

「お前、後から来いよ」

「横浜にですか? 何故?」

「何故って、まだ分からないのか。結構勘が良いと思ったのに」

「僕は何も当てられませんでした。小波津も、事件の核とは無関係でしたし」

「あのな、謎ってのは手がかり無しじゃ解けないもんだ。謎に何が絡まっているのか、全ての糸を取り出さないと、知りたいものの本質ってのが見えないもんだ」

「糸、ですか。たしかに、この事件に関して小波津の糸は解けました」

「そうだろう。その調子で、大串の糸も取れ」

 次兄が笑った。暖かく励まされた気分に包まれる。

 この人は昔からそうだ。僕をからかって遊ぶくせに、僕が沈んでいる時は背中を叩いて元気付けてくれる。

 だから嫌いだ。届きそうで届かない存在だから。

 長兄は完璧すぎて手が届くかどうかなんて、思いもしない。雲の上の存在だ。

「じゃあな」

 次兄は走り去ってしまった。

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