戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

第194話 剣術大会㊶

「よし！」

分析の終えたミリーナは気合を入れると最後の太い鉄の棒を地面に刺す。

ヒルダは何も言わず、ミリーナの行動に注目する。

「ふぅぅぅぅ」

ミリーナが長く息を吐き精神を集中させる。

（余計なことは考えず、ただ斬ることに集中）

キィン

ぽと

ミリーナが護命剣を振ると一瞬だけ高い音が響き、切断した棒が小気味の良い音をさせた。

「やった！やったわ！！」

ミリーナは自分の限界を超えたことを理解し喜びを顕にする。

「おおおおお！凄いぞミリーナ！！」

ヒルダも一緒になって喜ぶ。

「ありがとう、ヒルダちゃん！」

ミリーナが笑顔でヒルダに御礼を言った。

「・・・驚いたな。もうその太さの鉄を斬れるようになるとは」

木の陰からルークが現れ、驚いたように言う。

「「ルーク！！」」

ミリーナとヒルダの声がハモる。

「見てたの？」

「ああ、ついさっきのはな」

ルークがミリーナが最後に斬った鉄の棒に近づき、切断面を観察する。

「剣が真っ直ぐ通っているな。いい剣筋だ」

「え？そう？ありがとう」

ミリーナはルークの褒め言葉に素直に喜ぶ。

「ふむ」

ルークが何やら呟くと、太い鉄の棒を一度地面から抜き、逆側にして地面に刺した。

「ん？急にどうしたんじゃルーク？」

ヒルダが、ルークの行動に疑問を浮かべる。

「ああ。せっかくだからここでミリーナに習得して貰おうと思ってな」

「ほう」

ヒルダはひとまずルークの行動を観察することにした。

ルークは気に立てかけてあったミリーナの剣を持ち、ミリーナの方に向かって歩く。

「ほら、今度は自分の剣で斬ってみるといい」

ミリーナはルークから剣を受けとり、

「・・・流石にまだ無理じゃないかしら？」

自信なさげに返事をする。

ルークはミリーナから『護命剣』を受け取り、

「あの剣筋なら大丈夫だ。騙されたと思って一度試してみてくれ」

（ルークがそう言うなら試してみよう）

「・・・わかったわ」

ミリーナはそう決心すると自分の剣を鞘から抜いた。

「ごめん。ヒルダちゃんこれ持ってて」

「わかったのじゃ」

ミリーナから鞘を受け取るヒルダ。

「ふぅぅぅぅぅぅぅぅ」

先程よりも長く深く呼吸をする。

そして剣を構えると、

「はぁ！！」

キン！！

鋭い音が響いた。

「・・・失敗かの？」

しばらく経っても何の変化もない鉄の棒を見て呟くヒルダ。

「見事だ」

「ありがとう。ルークのおかげよ」

「ん？斬れてないじゃろ？？」

二人の会話についていけずに疑問を口にするヒルダだった。