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十五歳の最後の日
十五歳の最後の日
しおりを挟む慧君との再会から早一年。
あれからなぜか私は、二週間に一度は慧君と会う生活をしていた。
慧君はいつも優しくてかっこよくて、もちろん私の恋心は募る一方だ。
そうすると「離れなければいけない」という辛い思いも大きくなっていくのだが、十六歳になるまでだから、と自分の欲に従って慧君に会いに行ってしまっていた。
「でも、明日で終わりにするから。明後日、話聞いてね」
「明日じゃないの?」
「明日は泣き通すから無理」
誕生日の前日、私は親友のゆっこと最近人気のカフェにいた。
私のこの境遇と気持ちを知っているのはゆっこだけだし、ゆっこもよく話を聞いてくれるのだ。
「あーちゃんはそれでいいの?」
「いいのって?」
「好きなんでしょ?ケークンさんのこと」
「…………だって。私と慧君じゃ釣り合わないし」
「釣り合う釣り合わないじゃなくて、大事なのはあーちゃんの気持ちだよ」
ゆっこの指が私の眉間をぐりぐりと押すので、私はうーうー言いながらその指から逃れる。
そして私はこんな親友を持てて幸せだなあ、と思った。明後日は恋ではなく友情に生きよう。ゆっこには万年新婚夫婦のような彼氏がいるけど。
「てかさ、あーちゃんの意見は無視して許嫁にされてんだから、それ逆手にとって結婚迫ったって文句言われる筋合いないでしょ」
「それができたら苦労しないよ……」
「それに、一年間も二週間に一度会うの続けるって、社会人ならよっぽどじゃない限りしないと思うけど」
「それは私を許嫁にしたって罪悪感から……」
「私からしたらケークンさん、あーちゃんに唾つけてるようにしか見えないよ」
「ないないないない。なんで慧君が私に?やる必要ないじゃん」
とうとう私が声をあげて笑うと、ゆっこは笑い事じゃないんだけど、と呟いた。
「……あのさ、悪いこと言わないから、一応コンドーム持ってきなね」
「はっ⁉︎な、なに言ってんの⁉︎」
「そうなる前に逃げるのが理想だけどさ。遠慮なく急所蹴っちゃいなよ。これ貸しとくね。防犯ブザー」
「慧君のことなんだと思ってんの⁉︎」
「ヤバい奴」
ゆっこは私から聞いた慧君のことしか知らないのになんでそんな結論になるんだ、と頭を抱えてしまった。
むしろ本物の慧君と合わせた方がいいのかもしれない。絶対その誤解は解ける。何よりこんな誤解させてたら慧君に申し訳ない。
私はゆっこの人の見る目は確かなのだと、この時はすっかり忘れてしまっていたのだ。
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