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十六歳の誕生日
十六歳の誕生日①
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「誕生日おめでとう」
翌日。私は慧君の一人暮らししているマンションの一室で、慧君に誕生日を祝われていた。
慧君に誕生日を祝われるのは二度目。しかしこれで最後だ。長いようで、とても短い一年だった。
「去年の、つけてくれたんだね」
私の首元を見て慧君が優しく笑う。
去年もらった時は大人っぽくて到底私に似合わないと思ったが、今日はこれで最後だから、と初めて付けた。やはりまだ私には似合っていない。
きっと慧君に似合うような素敵な大人の女性には似合うのだろう。
一人で悲しくなりながら、私は口を開く。慧君の目を見て言う自信がなかったから、膝の上に乗せた手をじっと見る。
自分でも驚くくらい、私の声は震えていた。
「あ、あの。私、もう十六になったから」
「うん」
「もう、許嫁、やめよう」
言った。言ってしまった。
声と同じように、私の手も震えていた。
慧君は驚くだろうか。……それとも、喜ぶだろうか。
しかし、降ってきた声は、私の聞いたことのない、低い声だった。
「…………は?」
知らない声に思わず顔を上げると、慧君は笑っていた。笑っているけど、知らない顔だ。
「好きな人でもできた?」
「え、あ、それは……」
「どんな奴?」
にっこりと笑う慧君に、私が始めたことなのに、私は勝手に傷ついた。
自分ではない私の好きな人のこと聞けるなんて、やっぱり私には興味なかったんだなって。いいところ妹みたいに思ってくれてるかもしれないけど。
「い、言えない」
だって、私が好きなのは、慧君だけだ。
「ふうん」
「……だからあの、許嫁はもう、」
「あのさ」
ローテーブルを挟んで向かい側にいた慧君は立ち上がって私の横に来た。
見下ろされているからか、慧君の顔に影がかかり、どんな顔をしているかわからない。
「菖蒲は好きでもない男の家に一人で来るの?」
「え?……わっ!」
急に慧君の手が伸びてきて、私を抱き上げた。びっくりして慧君の肩に手を置くと、そのまま数歩歩いてベッドの上に降ろされた。そのまま私は仰向けに倒されてしまい、慧君が覆い被さってくる。
「け、慧君?」
「菖蒲が高校卒業するまでは我慢しようと思ってたけど、もうやめた」
「え?え?」
「もう十六になったし、いいよね?」
「ん、ぶ!」
突然のことに、私は目を白黒させる。何が起こったのか、一瞬よくわからなかったが。
今、私は、慧君にキスされている。
翌日。私は慧君の一人暮らししているマンションの一室で、慧君に誕生日を祝われていた。
慧君に誕生日を祝われるのは二度目。しかしこれで最後だ。長いようで、とても短い一年だった。
「去年の、つけてくれたんだね」
私の首元を見て慧君が優しく笑う。
去年もらった時は大人っぽくて到底私に似合わないと思ったが、今日はこれで最後だから、と初めて付けた。やはりまだ私には似合っていない。
きっと慧君に似合うような素敵な大人の女性には似合うのだろう。
一人で悲しくなりながら、私は口を開く。慧君の目を見て言う自信がなかったから、膝の上に乗せた手をじっと見る。
自分でも驚くくらい、私の声は震えていた。
「あ、あの。私、もう十六になったから」
「うん」
「もう、許嫁、やめよう」
言った。言ってしまった。
声と同じように、私の手も震えていた。
慧君は驚くだろうか。……それとも、喜ぶだろうか。
しかし、降ってきた声は、私の聞いたことのない、低い声だった。
「…………は?」
知らない声に思わず顔を上げると、慧君は笑っていた。笑っているけど、知らない顔だ。
「好きな人でもできた?」
「え、あ、それは……」
「どんな奴?」
にっこりと笑う慧君に、私が始めたことなのに、私は勝手に傷ついた。
自分ではない私の好きな人のこと聞けるなんて、やっぱり私には興味なかったんだなって。いいところ妹みたいに思ってくれてるかもしれないけど。
「い、言えない」
だって、私が好きなのは、慧君だけだ。
「ふうん」
「……だからあの、許嫁はもう、」
「あのさ」
ローテーブルを挟んで向かい側にいた慧君は立ち上がって私の横に来た。
見下ろされているからか、慧君の顔に影がかかり、どんな顔をしているかわからない。
「菖蒲は好きでもない男の家に一人で来るの?」
「え?……わっ!」
急に慧君の手が伸びてきて、私を抱き上げた。びっくりして慧君の肩に手を置くと、そのまま数歩歩いてベッドの上に降ろされた。そのまま私は仰向けに倒されてしまい、慧君が覆い被さってくる。
「け、慧君?」
「菖蒲が高校卒業するまでは我慢しようと思ってたけど、もうやめた」
「え?え?」
「もう十六になったし、いいよね?」
「ん、ぶ!」
突然のことに、私は目を白黒させる。何が起こったのか、一瞬よくわからなかったが。
今、私は、慧君にキスされている。
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