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15.それは語るも哀れな景色でした……。 01
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そう言えば……怪しい魔道具の解明が気になったのと、緑騎士リーンの勢いに負けてついてきてしまったけれど……。
「私は何処に行くのですか? 約束、覚えています?」
「向かう場所は王宮……どうか、団長を助けて下さい」
そう私に願う黒騎士ロイは切羽詰まっていた。
「ぇ、嫌なんですけど」
「そう言わずにヨロシクお願いします。 団長が……」
「元に戻っているのですね。 ですが、国の大事と陛下が気にかけていらっしゃるなら、私などを連れて行かずとも何らかの対応を取られるのではないですか?」
「ですが、団長はティナ様をお望みになっておられます。 いえ……そうではなく……それもあるのですが、国王陛下と王妃から……お救い下さい」
「はっい?」
訳が分からないティナは、少々間抜けな顔になっていた。
「それは、私が伝える事ではありません」
悲痛な様子が伺え……どこか、仕方がないなぁ……って思ってしまったのだ。
そして、私は王宮にやってきた。
通された部屋は3人でいるにはとても広く豪華だった。
「陛下は現在所用でお忙しく時間が取れないとのこと、シバラクコチラでお待ちください」
「お茶をお持ちしました」
そうして提供されるお茶は、とても美味しく、オヤツも美味しい……。
「とても美味しいわ」
「それは、良かったです」
とても、とても、ぎこちないロイの愛想笑い。
「えぇ、とても美味しいですわ」
「沢山食べて下さいね」
「ありがとうございます。 ですが、不満もございますの」
「なんでございましょうか?」
張り付けた笑顔のまま、ロイがティナに聞けば、ティナは吐きだすように言う。
「景色の悪さが問題だわ。 なんですの……あのオゾマシイ景色は」
「それは……」
苦笑交じりに口ごもるロイに、不満そうに愚痴るティナ。
「なんで、貴方達は平気なのよ!!」
握り拳に力を入れ、力強く訴えるティナに対して、行儀悪く両手に菓子を持ち食べているリーンが言う。
「騎士団で出世するには、スルースキルが重要なんだよ。 それより、オマジナイの件だよ! 本当にコレ呪いなの? 経費で落ちるの? ロイ!!」
「あぁ、そうだったわ。 なけなしの金から立て替えているんですから!!」
テーブルに購入したアクセサリーを並べれば、黒いアクセサリーの1つを手に取るロイ。
「「立て替え金!!」」
ロイは微妙な顔をして2人を見た。
「はいはい、分かりました。 私が立て替えますから領収書を頂けますか? 解体して術式を調べないといけないのですね」
ロイが、ファンアイテムをマジマジと見た。 図形に転化された自分の名前を確認したロイは少しだけ嬉しそうに笑っていた。
「これ、私の名前が刻まれてます?」
「うん、これを使えばロイとの恋がかなう(かもしれない)オマジナイがかかっているそうです」
「ぇ?」
凄く嫌そうな顔をしながら、ロイは3重の薄い金属を重ねて作られたブレスレットを軽く指先で解体した。
金属融合をさせたものを簡単に剥離させるのは、流石上位騎士と言わざるを得ないだろう。 解体された内側部分に小さく刻まれた術式がみえた。
「術式の量が少ないと思っていたけれど、重ねる事で仕込みを増やしていたのね。 メモをとるための紙あるかしら?」
「もらってこようか?」
そういいながらリーンが部屋の外にいる侍女に声をかけていれば、ロイが困った様子でティナに言う。
「ところで……そろそろ、助けて差し上げてくれませんか?」
「あら、騎士団の方に倣ってスルースキルを磨いている最中ですのに」
そういって、演技がかった様子でコロコロとティナは笑った。
王宮でありながら『悪い景色』と、表現したティナ。
ティナが見たのは、窓の外にある広い温室だった。
3人のいる部屋の中からは、美しい花が咲き誇る温室の景色がよく見えていた。 美しい景色なのだろう……普段は。 だが、今ティナ達の目の前に繰り広げられている景色は、ティナがオゾマシイと冷ややかに表現する代物だった。
特殊金属の首輪をつけられ、自由を奪うため30センチほどの長さの鎖で繋がれた銀色の狼。 彼は地面に伏せ、口元を大きな前足で必死に隠し、尻尾は巻いてしまうと言うとても情けない様子で目を必死に閉じている。
なにしろ大きな身体をした狼には、薄地のナイトドレスを着た幼女たちに群がられていたから。 抱き着かれ、その毛並みに埋もれ、撫でまわし、よじ登り、口づけをしようと必死になる。 中には下腹部に潜り込もうとまでする猛者までいた。
そりゃぁ……私達がとんでもない表情でソレを見るのも仕方がない事ですよね。
「それで……術式ですが」
「書き写すだけなら、僕も手伝うよ」
「ティナは兎も角、リーン、貴方は部下でしょう?」
「ソレを言うならロイが助ければいいだろう?」
あはは、うふふ、おほほ
幼女たちの甲高い声が聞こえた。
「うふふ、妖精のように可愛らしい子達ね」
そんな心にも無い事を囁いたティナは、ガンバッ!! と、コチラに気づいていない様子のアルフレットに親指を立て応援してみせれば、リーンもまたティナを真似し応援のポーズをとる。
そして、2人は術式の書き起こしを再開するのだった。
「私は何処に行くのですか? 約束、覚えています?」
「向かう場所は王宮……どうか、団長を助けて下さい」
そう私に願う黒騎士ロイは切羽詰まっていた。
「ぇ、嫌なんですけど」
「そう言わずにヨロシクお願いします。 団長が……」
「元に戻っているのですね。 ですが、国の大事と陛下が気にかけていらっしゃるなら、私などを連れて行かずとも何らかの対応を取られるのではないですか?」
「ですが、団長はティナ様をお望みになっておられます。 いえ……そうではなく……それもあるのですが、国王陛下と王妃から……お救い下さい」
「はっい?」
訳が分からないティナは、少々間抜けな顔になっていた。
「それは、私が伝える事ではありません」
悲痛な様子が伺え……どこか、仕方がないなぁ……って思ってしまったのだ。
そして、私は王宮にやってきた。
通された部屋は3人でいるにはとても広く豪華だった。
「陛下は現在所用でお忙しく時間が取れないとのこと、シバラクコチラでお待ちください」
「お茶をお持ちしました」
そうして提供されるお茶は、とても美味しく、オヤツも美味しい……。
「とても美味しいわ」
「それは、良かったです」
とても、とても、ぎこちないロイの愛想笑い。
「えぇ、とても美味しいですわ」
「沢山食べて下さいね」
「ありがとうございます。 ですが、不満もございますの」
「なんでございましょうか?」
張り付けた笑顔のまま、ロイがティナに聞けば、ティナは吐きだすように言う。
「景色の悪さが問題だわ。 なんですの……あのオゾマシイ景色は」
「それは……」
苦笑交じりに口ごもるロイに、不満そうに愚痴るティナ。
「なんで、貴方達は平気なのよ!!」
握り拳に力を入れ、力強く訴えるティナに対して、行儀悪く両手に菓子を持ち食べているリーンが言う。
「騎士団で出世するには、スルースキルが重要なんだよ。 それより、オマジナイの件だよ! 本当にコレ呪いなの? 経費で落ちるの? ロイ!!」
「あぁ、そうだったわ。 なけなしの金から立て替えているんですから!!」
テーブルに購入したアクセサリーを並べれば、黒いアクセサリーの1つを手に取るロイ。
「「立て替え金!!」」
ロイは微妙な顔をして2人を見た。
「はいはい、分かりました。 私が立て替えますから領収書を頂けますか? 解体して術式を調べないといけないのですね」
ロイが、ファンアイテムをマジマジと見た。 図形に転化された自分の名前を確認したロイは少しだけ嬉しそうに笑っていた。
「これ、私の名前が刻まれてます?」
「うん、これを使えばロイとの恋がかなう(かもしれない)オマジナイがかかっているそうです」
「ぇ?」
凄く嫌そうな顔をしながら、ロイは3重の薄い金属を重ねて作られたブレスレットを軽く指先で解体した。
金属融合をさせたものを簡単に剥離させるのは、流石上位騎士と言わざるを得ないだろう。 解体された内側部分に小さく刻まれた術式がみえた。
「術式の量が少ないと思っていたけれど、重ねる事で仕込みを増やしていたのね。 メモをとるための紙あるかしら?」
「もらってこようか?」
そういいながらリーンが部屋の外にいる侍女に声をかけていれば、ロイが困った様子でティナに言う。
「ところで……そろそろ、助けて差し上げてくれませんか?」
「あら、騎士団の方に倣ってスルースキルを磨いている最中ですのに」
そういって、演技がかった様子でコロコロとティナは笑った。
王宮でありながら『悪い景色』と、表現したティナ。
ティナが見たのは、窓の外にある広い温室だった。
3人のいる部屋の中からは、美しい花が咲き誇る温室の景色がよく見えていた。 美しい景色なのだろう……普段は。 だが、今ティナ達の目の前に繰り広げられている景色は、ティナがオゾマシイと冷ややかに表現する代物だった。
特殊金属の首輪をつけられ、自由を奪うため30センチほどの長さの鎖で繋がれた銀色の狼。 彼は地面に伏せ、口元を大きな前足で必死に隠し、尻尾は巻いてしまうと言うとても情けない様子で目を必死に閉じている。
なにしろ大きな身体をした狼には、薄地のナイトドレスを着た幼女たちに群がられていたから。 抱き着かれ、その毛並みに埋もれ、撫でまわし、よじ登り、口づけをしようと必死になる。 中には下腹部に潜り込もうとまでする猛者までいた。
そりゃぁ……私達がとんでもない表情でソレを見るのも仕方がない事ですよね。
「それで……術式ですが」
「書き写すだけなら、僕も手伝うよ」
「ティナは兎も角、リーン、貴方は部下でしょう?」
「ソレを言うならロイが助ければいいだろう?」
あはは、うふふ、おほほ
幼女たちの甲高い声が聞こえた。
「うふふ、妖精のように可愛らしい子達ね」
そんな心にも無い事を囁いたティナは、ガンバッ!! と、コチラに気づいていない様子のアルフレットに親指を立て応援してみせれば、リーンもまたティナを真似し応援のポーズをとる。
そして、2人は術式の書き起こしを再開するのだった。
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