冬馬君の夏

だかずお

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『男達の熱きゲーム』

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「じゃあ、行きます」青年ボールを投げる スカッとね ガーター


ぷくくくくっ 笑いをこらえる、大の大人二人。


「次、僕頑張るよ」二投目はもう一人の青年
ガラッ 四本。

多網父はとけたみさんの背中をついて小声で「これなら勝てるね」
そして立ち上がった。

ボールを持ち。
深呼吸
そして
ダッシュ


「サーーーーーーーーー」
でた~ 復活である


ガラン ストライク


「うおおおおっ スースー スースースースースースースー」


なんぢゃー彼らの喜び方は?
まるで、さかりのついた雄猿のようではないか。

お顔は真っ赤っか おケツは真っ白毛

女の子はすかさず聞いた
「どれくらいのペースでボーリングやってるんですか?」

とけたみが返事をする
「いゃぁ、本当にたまにですよ。
最近は仕事も忙しいから、年に二、三ですかね フハハッ」
本人的にはこんな感じの返事がかっこいいと思ったに違いない。
みそはフハハッと言う笑い方である。
調子良いとけたみはまた笑う

「フハハッ」

まぁ、実は言うまでもないが週三は行っている。

「カーブ投げれるんですか?」

すると多網父だった。
「あっ、カーブは僕のがうまいよ」

ピキン
とけたみの目が光る

「何を言って!なんなら勝負する?」

「ああ、いいとも」

小声で青年達
「あれっ、僕達の試合は?」

猿はもう試合の趣旨を忘れちゃった。

「じゃあ、カーブ勝負」
多網父が言い投げる

ダダッ

「サー サー サー カーブ」

とけたみは驚いた、本気で驚いた。
死ぬ程驚いた。
こっこれは聞いたことない喘ぎ声 あっ間違えた掛け声。
いつの間にこんな技を・・・・

ガランッ ストライク


多網父はイキナリうずくまる。
そして、ゆっくりとちょっとずつ立ち上がる。

「あ サー あっサー サー サー サー」
この上ない上機嫌 、更にとけたみ指差し

「サー サー サー」
あっ出た腹立つやつ。

とけたみは歯を食いしばった。

そして、すぐさま立ち上がり、マイボールを持ちかけだす。

「うー サーよりすごいスーパーカーブ、スースースースースースー」

ガランッ ストライク バッターアウト!!

ニヤリ笑い多網父に指差し、天に片手をかざし言った

「スーーーーーーーーーーーーー」

ギリッ クワッ
この何気ない上のカタカナはこの時の多網父の気持ちをこの上なく素晴らしく上手く表現した言葉である。


ギリッ クワッ ギリリリリッ


多網父はマイボールを持ちかけだした

「うー スーよりもっとすごいスーパーウルトラ サー サー サー サー」

ガランッ ストライク
両者絶好調である。

多網父こと サーは片手ではなく両手
ここをもう一度強調しておこう、片手ではなく両手を天にかざし言った。

「ありがサー」


グガガガガガガガガアアアアアッ

とけたみの気持ちを上手く表したビンゴな表現 うむ 我輩にストライク!!

この時まわりの青年、少女はあまりにビックリして言葉の発し方を忘れていた。

すかさずだった
マイボールを持ちとけたみダッシュ

「もっと もっと サーよりすごい 全然すごい ウルトラ スーパー」

あまりに長すぎたので、スーを言う前に投げる時が来てしまった。

だがこれまた ガランッ ストライク

何と両手更には右足を上にあげ、
ここで特に特筆すべきところがあるのでもう一度

両手、更には右足 更には右足を天にかざし

「もうスーパー感謝 スースースー」
とニンマリ笑う

ビリバリビリバリ ビビでぶーーッ
もう言う必要はあるまい

「ラチがあかんな」

「ああ、そうだな」

誰だよ・・・・

「同時に行こうではないか」とサー

「ああ、悪くないな」とスー

二人は球にあいたホールに指を差し込んだ。
ちょっといやらしくも感じとれるこの表現。

そして、彼らは 同時に横に並ぶ

ってあんたらいつから隣のレーン借りたんだ。
隣は借りてないぞ!!

だが突き進む、そして

「ゆくぞ」

「ああ」

同時にかけだす。

「スーパーウルトラ サーサーサーサーサーサーサー フラッシュ」

「ウルトラマグナム ドッペルゲンガー
(言葉の意味は分かっとらん)スースースースースースー ボンバー」

しかし二人は意識しすぎて体がぶつかった。
即座に思った

「しっ、しまった」

これはストライクにはならない負ける
両者は思った。

その直後だった

球は四つになった

自らの体は球となりボールと共に転がる二人の球っころころ

がシャアん ー ストライク

自分の身体でピンをすっとばし蹴散らした。

このまま、ボールと共に二人の人間球は下に落っこち管を通ってボールになって出てきた。

ああ、何と言う事だろう
二人は遂にボールになってしまった。

ボールは何やらボソボソ囁いている
耳を傾けるときこえてくるその声は


「サーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサー」

「スースースースースースースースースースースースースースースースースースースースー」

「私のが沢山言ったぞ」

「いいや俺だ」

「次で決着だ」

「ああ」

二人はこの時、気がついたと云ふ

「あっ、投げる奴がいない」

「くそう、どうやってこれからボーリングをすりゃあいいって言うんだ」

そこかよっ!!


ポワワワン
二人は気絶していた。
ブザーが鳴り響き
ボールが落ちる前のところに引っかかっていたのだ。

その二匹の姿はまさに一級芸術品
猿も近寄らないだろう


青年少女達はこの時、静かに席を立つ
小声で
「おっ、お疲れ様でした」

無理もない、もう関わるまいと思ったのであろう。



こうしてボーリングは幕を閉じた。




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