冬馬君の夏

だかずお

文字の大きさ
上 下
11 / 68

『センチメンタルな日』

しおりを挟む



学校から帰り、冬馬君は麦茶を飲んでいる。

あーやっぱりこの気候良いなぁ。

風で風鈴がなっている

夏の夕暮れ時

「ハァー幸せだなぁ」

いよいよ夏休みも始まることを考えて最高の気分に浸っていた。
今年の夏はどんな思い出できるかなぁ。
まだなにも分からない、ああワクワクするなぁ。

「そういえば 清香どうしてるかな」
少し胸が切ないような、なんと言ったらいいのか ふぅーっていう不思議な気持ち

ああ、今吹く風 いつかどこかで嗅いだ様な匂いがするなぁ(きみ子の屁ではない)
なんだか、とても懐かしい風
たまにそんな風に出会う時がある。

庭を見ながら一人座っていた。

あーきたきた今年もこの蝉がなく季節
また来たな~ 半袖のシャツを更に肩までめくり、また麦茶を飲んだ。
「ぷはー 生きてるって最高」

なんだか、もう大喜や多網に会いたくなった、今年も泊りにくるかなぁ?
婆ちゃん、爺ちゃん元気かな?

家族
久しぶりの再開の時はなんだか照れ臭い、そして別れる時、なんだか寂しい気持ちになる
前に父ちゃんが言ってた。
大人になっても、いつまでも自分の親は親なんだなあ、
やっぱり遠くに暮らしてると会った後、別れの時は寂しいもんなんだなぁ、そんなことを何故か考えている冬馬君だった。
ふと、世界中のみんなが幸せに暮らせたらいいなぁ そんなことを考えた。

薄っすらオレンジ色の優しい空

蝉の声と風鈴と夏の雰囲気がより一層
冬馬君の心を盛り上げた。

今日はワクワクしながらも、なんだかセンチメンタルな気分でもあった。
たまにこういう日がある。



少し散歩でもしよう。

親友の慎司を誘い散歩へ出た


川の土手を歩き、あのお兄さんのいるコンビニを覗いた。
そう去年の夏出会ったお兄さん。
レジから手を降ってくれた。

「頑張ってるね」

「うん」

僕らも手を降りあとにした。

公園を歩いていると、

「あっ」

「久しぶりだねぇ、元気かい?」

犬おじさんだ!!

去年の夏以来すっかり仲良しになった。

「元気です」

僕らは犬を触って可愛がった。

「考えたら、去年の夏から一年たったんだね」と冬馬君

「うん、なんだかはやいような」

「みんなで、行ったキャンプ あれから一年がたつのかぁ」
冬馬君は空を見た。

今日はやっぱり、なんだかセンチメンタルな気分な時

こんな時、ある

冬馬君は家に帰り

夕食を食べている

隆は今日は仕事で遅くなるから、先に正子と二人で夕食を食べ始めた。

やっぱり、大喜や多網が泊まってる時より静かな冬馬家。


夕食をすまし

二階にあがり、ふとんの上に横たわった、ああこの瞬間幸せ 一人ニンマリ笑った。

今は20時 ああ最高
天井を眺めながら色んな事を考えた。

たまに人はこんな事を考える
自分も自分の家族もいつか死んじゃうんだ。

冬馬君は心のどこかで本当に自分が死んじゃって終わりでいなくなるとは思っていなかったところがあった。
自分が死ぬことが怖いと言うよりも大切な家族達の誰かが亡くなり一瞬でも別れる時がくる、そんなことを考えると無償に悲しくなった。
一人勝手に想像しては、泣いてしまった。

ゴシゴシ 涙を拭いた

22時半を過ぎた頃だった。

隆が帰って来る。

こんなことを考えた夜だからだろう、下に降りて行って隆の顔をわざわざ見に行った

「おかえり」

「ただいま」

いつもなら、しないが何だか今日はそんな気分だった。

すぐさま二階に戻り 布団に戻り

冬馬君はこの日、なにかにお願いした

「僕の大切な人達が長生きして一緒にいられますように」

そんなことを考えた 夏の夜だった。


誰だって一度はこんなこと考えるかもしれない、 意外にそんな記憶が残っていたりする。
冬馬君もまた、その一人だった。


正子と隆が二階に上がって来た時

冬馬君はすぐさま、二人のところに向かった

「今日こっちで寝る」


そんなセンチメンタルな夏の夜


夏休みはもうすぐそこ


しおりを挟む

処理中です...