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第3章 罪火、戸惑いに揺れる心

あなたはそんな人ではない

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 部屋に戻ったシンは、小脇に抱えたサラを近くにあった椅子に座らせた。
 シンの怒気にあてられ、すっかりと怯えてしまったサラは、目に涙を浮かべ肩を震わせている。

「その手にしている上着は?」

 肩をすぼめ怯えるサラを目を半眼にして見下ろし、シンは低い声で問いかける。

「これは……」
「あんたのじゃないよな」

 その……と、サラは口ごもりながらうつむき、ハルの上着をぎゅっと抱きしめる。

「顔をあげろ。俺の目を見て話せ」

 サラのあごに人差し指を添え、くいっと上向かせる。

「突然現れた男の人たちに、短剣で脅されて……」

 それで? とシンは目でサラの言葉の続きをうながす。

「男の人たちに……」

 どこまで知っているの? という顔でサラが見つめてくる。

「隠さず全部話せ」
「服を切り裂かれたの……でもハルが助けに来てくれて、上着を貸してくれた。服はエレナさんが。だから……」
「なるほど、それでエレナのところに行ったか。誰に入れ知恵されたか知らないが」

 もっとも、想像はつくが。
 不意にシンの指先がサラの胸元にかけられた。
 サラの瞳が不安げに揺れる。

「その男たちがやろうとした続きを俺がやってやろうか? 怖い思いをすれば二度とあんなところに行きたいと思わなくなる」
「シン……?」

 あごにかけていたシン指先がすっと動き、親指がサラの唇にかかる。

「その口をふさいで、助けを呼べないようにする」

 サラは目を見開いた。

「どんなに抵抗しても、男の俺の力にはかなわない。それでも激しく暴れるなら、あんたの頬を叩き、その細い両手首を縛りつける。それから服を引き裂いて」

 胸元にかけられたシンの指先がかすかに動いた。

「……っ」
「そして、あんたの心が壊れるまで何度も……」

 サラは目に涙を浮かべ、両耳をふさいだ。

「いや! 聞きたくない」

 薄く笑い、シンの片足がサラの脚の間をゆっくりと割っていく。

「やだ……」

 きつく脚を閉じようとするが、無駄なことであった。

「そう、泣いても叫んでも、誰もあんたを助けには来ない」

 サラは唇を震わせシンを見上げた。

「あ、あなたはそんな人じゃない! 信じてるもの!」
「俺もあんたを信じていた」

 シンの指先が胸元から離れた。

「そういう悲惨な目にあった女たちを、裏街で何度も見てきている」
「あなたもそんなことをしていたの?」

 まさか、とシンは顔を歪めて吐き捨てる。

「するわけないだろ。俺は女には手をあげないと前にも言ったはずだ。それに嫌がる女を無理矢理ってのも嫌いだ」

 サラはほっと息をこぼし、ようやく緊張を解く。
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