えっ、じいちゃん昔勇者だったのっ!?〜祖父の遺品整理をしてたら異世界に飛ばされ、行方不明だった父に魔王の心臓を要求されたので逃げる事にした〜

楠ノ木雫

文字の大きさ
上 下
6 / 39

◇6 新しい家族

しおりを挟む
 目が覚めたの時にはもうおてんとうさまが真上まで登っていた。だいぶ寝過ぎたけど、まぁ昨日あんなに夜更かしをすれば当然か。それと、このふかふかの毛並みが悪い。寄っかかってたこのカーバンクル〝バリス〟の。


「あ”~腹減った~」


 昨日の昼から何も食ってない。いきなりこっちに飛ばされちゃったもんな~。


『倉庫に入ってるだろ』

「いやいや、一体どんだけ年数経ってると思ってるんだよ」

『時間止まってるだろ?』

「それでも! 気分的に!」


 今ならまだ何とか耐えられる。でもいざとなったら食うけどな。

 となると、とりあえず人のいるとこを目指さないとな。一応金はあるから、飯も食えるし宿もある。そして何より情報収集が出来る。たとえ世界地図があっても国の情勢とか分からないし。

 ここから遠くの国に行くとしても、どこの国が安全なのか分からないし、ルートも考えないといけない。

 でも一番困るのは……


「アイツ等、絶対俺の事探し回ってくるだろうなぁ……」

『え? 何々、何かやらかしたの? 流石アンリークの孫ね』


 興味津々で聞いてくる精霊達。てか、一晩経ってもまだいたんだ。

 まぁとりあえずかくかくしかじかで今までの事を話してみた、ら……段々顔が怖くなっていくトロワ。バリスもアグスティンも怒ってないか?


『え、何そのクズ。今すぐぶっ潰そ』

『待て、気持ちは十分に分かるが例えクズでもルイの父親だぞ』

『え、家族なら俺らがいるじゃん』

『あ、そっか。じゃあアイツいなくてもOKね!』


 ……えっ。

 バリスとトロワの会話に、つい驚いてしまった。


「か、家族に、なってくれるの?」

『あったり前じゃん、種族は違うけど別に家族になれるだろ?』


 さも当然のように、バリスは言い切った。

 今まで、家族はじいちゃんだけだった。こっちに来て、血の繋がった父と再会したけど、家族とは思えなかった。他人のように感じてしまった。

 でも、こいつらに家族になってくれるって言ってもらえて、何だか心がポカポカしてきて。

 本当の父親と会った時には感じなかった、この気持ち。


「……うん、なりたい」

『やったぁ!』

『じゃあ俺らずっと家族な!』


 どうしよう、めっちゃ嬉しい。

 ただ単純に、そう思った。


『じゃあ私、お母さん?』

「え、こんなにちっちゃいのに?」

『ちょっと、失礼ね。これでも700歳よ』


 え、やば、めっちゃ生きてんじゃん。でもバリスも600歳、そして……
 

「2500……やばいな」

『我は途中で眠っていたのでな。大体そのあたりだろう』


 流石ドラゴン、恐るべし。

 でも、3匹はちゃんと名前で呼んで欲しいらしい。だからだいぶ年の離れた姉弟という事になってしまった。


「じゃあこれから遠くの国に、と言っても探されてるとあっては名前変えなきゃな……」

『え? その顔変えないの?』


 ……顔、変える?


『変身魔法、使えるだろ?』


 え、そんなのあったっけ。そう思い俺のステータスを開いて、上から下まで確認したら……あった! これか!



 ______________
 STATUS
 名前:奥村留衣 Lv.1
 職業:
 称号:勇者の孫
 ______________
 HP:∞
 MP:∞
 筋力:∞  攻撃力:∞
 速度:∞  防御力:∞
 感覚:∞
 ______________
 【無限倉庫】
 【鑑定】
 【魔法無効化】
 【絶対領域】
 【剣士の心得】
 【五大元素魔法】
 【治癒魔法】
 【複合魔法】
 【精霊召喚】継続中
 【武器召喚】
 【古代の書】
 【全反射の鏡】
 【全域バリア】
 【超能力】
 【変身魔法】
 【陰身魔法】
 ______________
 【天空の女神の祝福】
 【深森の魔女の祝福】
 【深海の人魚の祝福】
 ______________

 物理ダメージ減少率:100%
 魔法ダメージ減少率:100%
 ______________



 つい昨日スキルの使い方は〝精霊召喚〟の時に何となく分かったからいけると思う。

 何に変身するかは……まぁ頭で想像すればいけるか? やってみないと分からないけど。でも……


「でも俺、精霊召喚継続中になってるんだけど、他の使っていいの?」

『どーせMPたんまりあるんだからいけるだろ。あ、それより変身するなら人間やめたら?』

「……は?」


 人間、やめる……?

 俺、人間やめなきゃいけないのか?


『おい、バリス。言い方が悪いぞ。他の種族に変身すると言え』


 あ、なるほど。そういう事か。

 ビビらせんなよ、全く。


「なるほど。じゃあ人間の他に何があるの?」

『エルフ、獣人、人魚、ドワーフよ。でもエルフと人魚はお勧めしないわ』

「え? なんで?」


 人魚はあれだけど、エルフなんてカッコよくない?


『どっちも保身的で他種族と仲があまりよくないの。まぁ変わり者はいるけどね。ドワーフは武具作りのベテランの酒飲みだからルイには獣人をお勧めするわ』


 ふぅん、こっちも色々あるんだな。まぁ当たり前か。じゃあトロワのおすすめの獣人でいこう。

 3匹から特徴を聞いて、それから顔は……俺の知ってる俳優をちょっと似せてみる? いや、ダメか? 似せるだけならいいよな。よし、じゃあ……


「【変身魔法】」


 その言葉で、全体が光り出した。あの精霊召喚の時と同じような感覚が身体の中に感じる。

 そして、やがて消えていって……何か頭に違和感がした。触ってみると……あった。想像していたものが。

 近くにあった川に顔を映してみると……


「うわぁ、ちょっとやりすぎた?」

『え? 私は好みよ?』

「ちょっとイケメン過ぎないか?」

『顔が整ってる分には損はしないでしょ!』


 ……何か、違和感はするけど、でも今更やり直すっていうのもなぁ。まぁイケメンだしいっか。トロワも言った通りイケメンは得するって言うし! ちょっとズルって思うけどこれは捕まらないためにやったんだし。これくらいいいよな!

 けど……やっぱダメだったか。勇者の証、右手の刺青。これは消せなかったか。でも包帯あるし、いっか。

 顔も変えた事だし、あとは……


「名前は……ルアン!」

『いい名前じゃない! ネーミングセンスってやつ?』

『じゃあこれからルアンって呼ぶな!』

「うん、よろしく!」


 さてさて、じゃあ行き先だけど……どこ行けばいいんだ?


「なぁ、なんか安全でおすすめな国ってないか?」

『ん~、あそことか? えぇ~っと、あの〝アラクネー〟が住み着いてたあの国』

『あぁ、あったな。何と言っただろうか……』


 あれやこれやと国の名前を出すけど、世界地図を見てみても書かれていない国ばかり。おいおい、その国ってもうない国だったりしないか? お前達の話って一体何年前の話をしてるんだ?

 こりゃ無理だな。聞かない方が良かったか。


「なぁ、アグスティン。お願いしてもいいか」

『なんだ』

「また、背に乗せてくんない?」

『聞かずともよいぞ、兄弟よ』


 よっしゃ! じゃあ国一つ飛び越えてもいいって事だよな! 目立っちゃうけど、陰身魔法スキル使えば見えないし!

 結局は、ど~れ~に~し~よ~う~か~な! で決める事になった。それしかなかったし。


「じゃあよろしく!」

『あい分かった』


 アグスティンの背目がけて勢いよくジャンプをし、飛び乗った。ちょっと飛び過ぎたようで、着地が上手く出来ず尻が痛かったけど。ちょっとステータス値がおかしなことになってるから加減というものを覚えていかなきゃだな。

 まぁ当然尻もちついただけではステータスのHPは全く減らなかったけどな。


「え、二人とも小さくなれんの!?」


 身体を小さくして同じくアグスティンの背に乗ってきたトロワとバリス。そういうのはお手のものらしい。じゃあアグスティンも出来るのかな。

 町とかに入った時、召喚魔法を解除しないといけないかなって思ってたけど、これなら一人ぼっちにならないな。ちょっと心細かったけどこれなら安心だ。

 よし、これから始まる異世界ライフ。ちょっと楽しくなってきたかも!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...