103 / 110
■102 友
しおりを挟む殿下と陛下に丸め込まれ、やっとそのパーティーが幕を閉じた。私は、今日は王宮に泊ってくれと部屋を与えられて。
「……なに、これ」
「王太子殿下からの贈り物です」
プレゼントボックスが置かれていて、中を見たらドレス一式だった。明日、ガーデンパーティーがあったから、これを着ろという事か。もう既に用意されていたなんて……
因みに、隣にいるサマンサはニコニコだ。何で教えてくれなかったのかは言わないでおこうと思ってたけど、この様子じゃ殿下が根回ししたのではないだろうか。絶対に教えるな、と。黄緑色のバラも殿下が用意してサマンサに渡したんだろう。もぉ~教えてよぉ~!
そんな時、部屋にノックがかかった。やってきたのは、まさにその人物だ。
「……如何いたしましたでしょうか、殿下」
「そんなに嫌そうな顔をするな」
仕方ないじゃないですか。いきなりですよ、いきなり。事前に言ってもらいたかったです。いや、そうしたら抗議したかも。
それでどういたしましたかと聞くと、今から来てほしい所があるのだとか。一体どこへ? と思いつつ殿下に着いて行った。
「ステファニー殿が婚約者になってくれたおかげで、陛下もだいぶご満悦だったぞ」
「あ、はい……」
知ってます、グッジョブサインされました。凄くニコニコしてました。成人式などが終わったら三人でゆっくりとお茶を楽しみながら話をしようと言っていたそうで、光栄ですと返した。三人、という事は陛下が度々してくるあの意地悪はしないという事……だと信じよう。
さ、ここだと大きな扉に辿り着いた。とても頑丈そうな南京錠がかかっている。この王城の中にこんな場所があったなんて知らなかった。と言っても、ここは広いから全然どこに何があるのか把握できてないけど。
そして、殿下は持っていた鍵を鍵穴に刺し回した。……と言っても、3回回したけれど。それだけ特殊な南京錠なのだろう。
「ここは、国王陛下直系の者しか入る事を許されていない」
……ん? 国王陛下直系?
「私、入れないじゃないですか」
「早くなっただけの話だ」
「……いいんですか、それで」
結婚するだろう? と聞かれてしまって、まぁそうなってしまいましたからと返した。結婚……結婚……よく分からないけれど……王族と結婚だなんてよく分からない。
よし、開いたぞ。と、扉を殿下が押すと音を立てて開く。すると、下に続く階段が見えてきた。なんだか、変な作りだ。
さぁ行こうか、と手を取られ一段一段下っていく。そして、また扉が見えてきた。そして殿下がまたポケットから鍵を取り出して開け、扉が開いた。どれだけ厳重な場所なんだ、と思いつつ中を覗いてみると……あ、階段じゃなかった。
少し広い部屋、今私に用意してくださったあの部屋の様な広さだ。
「ここは、重要なものを保管するための部屋だ」
見えたのは、王冠や王勺などなど。確かに凄い物ばかりだ。そして、殿下は真っ直ぐに一番奥の棚に向かい何かを引き取り出した。
それは、少し重そうな大きな四角い板。布のようなもので包まれているようで。ゆっくりめくっていくと……絵が出てきた。少し年季の入った金の額縁に入った肖像画だ。
「……えっ……」
それには、ソファーに座った3人が映し出されていた。全員今の陛下より若いくらいの年齢のように見える。真ん中に座っている男性と、その隣にいる女性はとてもよく陛下と殿下に似ている。
そして、その反対側に座る男性は……とてもぶっきらぼうで腕と足を組みそっぽを向いている。他の二人に笑われているようで。とても楽しそうな絵だった。
「お、師匠、さま……!?」
「やはりそうだったか」
え、何でこんな所に……??
「この真ん中の御方がここサーペンテイン国初代国王陛下、隣にいらっしゃるのは国王陛下の妹君」
こ、この国を作った人、という事になるのかな。
「そして、この方は名前が記されていない。だが、国王陛下の残された物から《友》と記されていたのだ」
友……初代国王陛下と、妹君の、友人……
お師匠様、お友達なんていらっしゃったんですね。あ、これ怒られる。
その時、私はあの言葉を思い出した。
聖夜祭で、私がガイアに祈りを捧げた時のお師匠様からの言葉。
『 お前もこの地に辿り着くとはな 』
『 これが運命というやつか、何とも面白いものだな 』
すごく、納得がいった。そして、もう一つ。
私が、お師匠様から教えられた文字や言葉が、ここサーペンテインの共通語だった事だ。
今まで偶に人と関わったことがあったが、言葉が通じず困ったことが何度もあった。まぁ動きなどで大体は通じるけれど。お師匠様からこの言語を教えてもらったから、私もこの人たちと普通に会話が出来たんだ。
あ、はは。なぁんだ、お師匠様もここに来てたなんてね。確かに運命だ。
ここサーペンテインは900年前に作られた。私が生まれる150年前になる。私がここに来るまでこの国の事を知らなかった。お師匠様は、この国が出来上がってからずっとここにはいなかった事になる。
そして、お師匠様と別れてから私は、ここに辿り着いた。どうして、と考えると分からない。けれど、きっと意味のある事なのだろうと思う。
そして今、ここにいる私に出来る事は……
__この国が、いつまでも平和でいられるように尽力する事。
初代国王が《友》と言ったんだ、きっと仲が良かったに違いない。あんなぶっきらぼうなお師匠様が、こんな様子で映っているのだから。きっと、この国を作る為に手を貸したに違いない。錬金術というガイアからの贈り物を使って助けたに違いない。
「殿下、私この国に来れてとても嬉しいです。この国が、大好きです」
「そうか」
お師匠様の足跡がこうして残っている事が、とても嬉しいです。
3
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
目の前で不細工だと王子に笑われ婚約破棄されました。余りに腹が立ったのでその場で王子を殴ったら、それ以来王子に復縁を迫られて困っています
榊与一
恋愛
ある日侯爵令嬢カルボ・ナーラは、顔も見た事も無い第一王子ペペロン・チーノの婚約者に指名される。所謂政略結婚だ。
そして運命のあの日。
初顔合わせの日に目の前で王子にブス呼ばわりされ、婚約破棄を言い渡された。
余りのショックにパニックになった私は思わず王子の顔面にグーパン。
何故か王子はその一撃にいたく感動し、破棄の事は忘れて私に是非結婚して欲しいと迫って来る様になる。
打ち所が悪くておかしくなったのか?
それとも何かの陰謀?
はたまた天性のドMなのか?
これはグーパンから始まる恋物語である。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
いつかの空を見る日まで
たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。
------------
復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。
悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。
中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。
どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。
(うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります)
他サイトでも掲載しています。
伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です
カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」
数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。
ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。
「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」
「あ、そういうのいいんで」
「えっ!?」
異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ――
――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる