大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫

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■57 錬金術師

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 私は以前来訪した鍛冶屋に赴いていた。声をかけると、親方と呼ばれるあの人が出てきて。


「すみません、勝手に取引先を変えてしまって」

「いいって事よ。ぼったくられてたんだ、こっちが感謝しなきゃいけねぇ立場だ」


 親方は、長い杖と収納魔法陣を出したことで私が領主だと気が付いていたらしい。以前の井戸の件で弟子が見に来ていたらしくて。成程、と納得してしまった。


「最初っからいけすかねぇ上から目線で態度のでけぇ野郎でよ、気に食わなかったんだ。せいせいしたよ」


 ありがとな、領主様。と、私が領主だと気が付いても線を引くことなく接してくれた。何とも嬉しい事だ。

 あと、私が依頼したナイフの件はまだ完成していないらしい。どっかの誰かさんが扱いづらい素材を持ってきたからだって言っていて、つい笑ってしまった。


「では、よろしくお願いしますね」

「おうよ!」



 因みに今日も、屋敷を抜け出したわけだ。え? 鍛冶屋に行くため? うん、それもある。けど、それの他にも理由があった。それは、探したい人物がいたからだ。

 以前、中央都市代表のボアスさんにこの領地に錬金術師はいるかと聞いた時、はっきりと「いません」と言われた。けれど、錬成された素材を鍛冶屋で見かけて。これはどこで仕入れたんです? と聞くと渋ってきたのだ。

 何かある、と思った。商人が来ているのだろうか。けれど、調べてもそんな品は持ってきてないそうだ。秘密裏に仕入れている、あるいはこの領地の誰かが錬成して売っている。そこら辺だろう。


 でも、結局何も収穫無しで屋敷に帰ることになってしまった。

 こんな私が調査とかできるわけがないって分かってはいたけれど、ね。




 夕食後、いつもの狩りに出かける事にした。彼女、ルシルの為だ。


「狩り、行ってくるね」

「かしこまりました、お気をつけて行ってらっしゃいませ」

「うん」


 最近ギルドをやめてしまったから、ルシルちゃんが狩りに行きたい行きたいと煩くて。彼女は、今まで野生で生きていたから、屋敷で用意された肉をずっと渡されると不機嫌になる。

 だから、1ヵ月に数回は狩りに行かせるのだ。昼間は忙しいから、夜になっているけれど。


「さ、思いっきり行ってきな~!」

「♪」


 おぉ、嬉しそうに飛んでいっちゃった。

 さて、私にもやる事がある。

 ここは、川の近く。以前、井戸が使えなかった領民がここの水を使っていたのだ。そして、今は夜。しかも、満月で月の光が当たっている。


「あった」


 その川の付近には、小さな花が咲いていた。黄色の、4枚の花びらを付けた植物である。

 これは、昼間に採取するより満月の夜に採取する方が効果が高いのだ。それを、透明な入れ物に土ごと採取しそっと入れた。これは、あとで温室に埋めよう。藍水晶を使ってこの状態を保てるように準備したし。

 それを、採取している内に誰かが来た。領民だろうか。


「こんばんは」


 その挨拶に、吃驚した様子。私の事に気が付かなかったのだろう。一応光魔法で明るく照らしていたはずなんだけどな。

 若い男性、かな? 見た所、私と一緒で採取に来たらしい。そんな道具を持っていた。


「ビルランカ、ですか?」

「えっ?」


 ビルランカとは、今私が採取している花の事である。彼は、頷き花の近くに腰を下ろし採取し出した。


「……あの、余計なお世話だと思うのですが……」

「……」

「ビルランカは、根っこまで取った方がいいですよ。すぐに効果が下がってしまいますから」

「……根っこ……」


 そう、茎から切ってしまったらすぐに使わなければいけない。見た所、入れ物の大きさを見て結構多く採取するようだから。

 そして、私が採取している様子を見てきて。少し笑ってしまったけれど、教えてあげた。とても真面目な人らしい、いろいろと質問してくれて。屋敷にいる皆のようだ。

 今、私はローブで顔を隠している。もし、私がここの領主だって気が付いたら離れてしまうのだろうか。まぁ、明かす訳ではないけれど。

 じゃあ、またね。そう一言残して別れた。そして少ししてからルシルが帰ってきて。早く背中に乗って帰ろう、と思ったけれど……ルシルちゃん? 貴方結構暴れたでしょ。返り血が付いてるんですけど!










 川辺の彼は、偶然出会った彼女と別れ帰宅した。


「おかえり、ニック」

「ただいま、ノック」


 まだ起きてたんだ、とザックに言いつつ先程採取したビルランカを袋から出す。


「まぁ明日の店の準備があったから。……ん?」


 そんな時、彼が何かに気が付いたようだ。


「根っこごと取ってきたのか」


 いつもは茎の下の部分を切ってたろ、と。彼は、只ちょっとした疑問だった。けど、自身にとってはあまり気付かれたくない所であった。


本に書いてあったんだ・・・・・・・・・。こう採取するといいって」


 ふぅん、という彼の納得した様子に、ホッと肩を下ろしたのだった。

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