上 下
11 / 110

■10 海へ

しおりを挟む

 今日も朝からギルドに赴いていた。

 今日選んだギルド依頼は、海に生息する〝ミラゴ〟を採取すること。石のように固く、木の枝のように深海に生えているんだけれど、全く動かない。そんなモンスターだ。

 ギルドの受付嬢さんにはだいぶ止められたけれど、大丈夫ですと何度も言い受諾して頂いた。

 契約獣は使えないんですよ!! とか、海の中ではあまり身動きが取れないんですよ!! とかだいぶ言われてしまった。

 港に来てみるとだいぶ賑わっていて。磯の匂いがして、お店も色々と出ている。見たことないものばかりだ。

 それに大きな船も見える、一度乗ってみたいなぁ。


「見ない顔だな、お嬢ちゃん」

「サーペンテインに来たのはつい最近なんです、だからここには初めてで」

「そうかそうか、んじゃこれおまけしてやるよ」

「わぁ! ありがとうございます!」


 果物をおまけしてもらっちゃった! ベルッドアという掌サイズで丸い果物で、フレッシュでそのまま食べれると聞いた。あとで皮をむいて食べてみよう!


「貴方、船に乗るの? そろそろ出るよ?」

「あ、違うんです」

「ふぅん、買い物かい?」

「あ、はは」


 ルシルで海に出ますとは言えない。普通そんなことする人いなさそうだし。というより、契約獣すら珍しいようだから当たり前か。




「よいしょっと、じゃあ行こうか!」

「♪♪」


 人目の付かない所でルシルの背に乗り海に出た。

 久しぶりの海。

 風が気持ちいい、陽の光に当たっている海面はキラキラと光っていて綺麗だ。


「ここら辺かな?」


 ギルドで貰った地図に書かれた、今日の採取するモンスターの生息ポイントを場所と照らし合わせてみる。たぶんここで合ってる。


「さー行くぞー!!」


 上着を脱ぎ軽装に、ルシルにここで待機していてねと言い聞かせ……せーのっ!!


 どっぼんっ!! そんな大きな音を立てて、上から勢いよく海に飛び込んだ。



 陽の光でキラキラ光る海中。

 水が澄んでいて、魚型の生物達が元気よく泳ぐ。

 それだけ、異物のない綺麗な海なのだろう。


 え? 苦しくないのかって? 全然!!

 持続して錬成し顔の周りに空気をとどまらせているから大丈夫。


「さぁーてと、ここら辺かな??」


 あ、あった。聞いてた通りピンク色してる。

 周りを見渡し他にモンスターがいないことを確認。静かに近づいた。

 これはね、結構力を使うんですよ。下の太い所をちゃんと掴んで……引っこ抜くっ!!


「んん~~~~っ!!」


 中々抜けない、やっぱり水中だとあまり力が入らないけれど……


「抜けたっ!!」


 ふぅ、それじゃ他のも……と思っていた次の瞬間。


「……ぎゃっ!?」


 いきなり現れた、手のひらサイズの6本足の蜘蛛のような形のモンスター。〝カバト〟

 見た目は小さくて可愛い癖に猛毒を持っています。うかつに近づいたら痛い目を見るモンスターだ。


「ちょっ来ないで来ないでっ!! 『展開』っ!! 『Glaciesグラシエス』っ!!」


 寸での所で氷魔法で防御。あっぶない、最高級解毒ポーションを使う所だった。


〝カヴェアの種〟


Aquaアクア


 種と水魔法を錬成、出現したのは茨。棘のある蔓をモンスターに巻き付け動きを封じ込めた。よしっ! そして締め上げて、討伐完了!


「……って次はサンディラー!?」


 頭に鋭い角を生やした大きな魚モンスター。とっても速くて勢いよく私の方に突っ込んでくる。


「やばっ『Ventusヴェントゥス』っっ!!」


 モンスターに向かって風魔法を発動。反動で返ってくる衝撃に乗せて横に避けることが出来た。けどすぐに向きを変えてこちらに突進してくる。


〝レルドルの種〟


Creareクレアーレ


 長い蔓が錬成され、勢いよくモンスターに絡みつく。それを離さないようしっかり箸を掴んだ。そして杖をモンスターの皮膚に当てる。

 そしてサンディラーの鱗をひっぺがして、錬成!


Luxルクス


Glaciesグラシエス


「『Creareクレアーレ』っ!!」




 出現したのは、氷の杭。それは、動き回るモンスターに狙いを定めて、貫いた。



「危なっ!? 『Ventusヴェントゥス』『Aquaアクア』『Glaciesグラシエス』!!」


 動かなくなったサンディラーを氷漬けに。血も残さず集め氷で閉じ込めた。海面に血が広がっちゃったら大変だ。そして収納魔法陣に突っ込んだ。

 よーし、依頼達成したし帰ろう!! ルシルちゃ~ん!!


 海面に顔を出して、来てくれたルシルちゃんの足を掴んだ。引っ張りあげられてすぐに風魔法で自身を乾かす。くるっと背に乗り港へ戻る事になった。


「さむっ」


 やばいな、これはこのままじゃ風邪引いちゃう。そう思い収納魔法陣からポーションを取り出した。


 ちゃ~んと依頼達成をした私を見た受付嬢さんは、驚いていて。誰か手伝ってくれた人がいたのかと勘違いをしていたようだけど……いっか。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

目の前で不細工だと王子に笑われ婚約破棄されました。余りに腹が立ったのでその場で王子を殴ったら、それ以来王子に復縁を迫られて困っています

榊与一
恋愛
ある日侯爵令嬢カルボ・ナーラは、顔も見た事も無い第一王子ペペロン・チーノの婚約者に指名される。所謂政略結婚だ。 そして運命のあの日。 初顔合わせの日に目の前で王子にブス呼ばわりされ、婚約破棄を言い渡された。 余りのショックにパニックになった私は思わず王子の顔面にグーパン。 何故か王子はその一撃にいたく感動し、破棄の事は忘れて私に是非結婚して欲しいと迫って来る様になる。 打ち所が悪くておかしくなったのか? それとも何かの陰謀? はたまた天性のドMなのか? これはグーパンから始まる恋物語である。

売れない薬はただのゴミ ~伯爵令嬢がつぶれかけのお店を再生します~

薄味メロン
ファンタジー
周囲は、みんな敵。 欠陥品と呼ばれた令嬢が、つぶれかけのお店を立て直す。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

いつかの空を見る日まで

たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。 ------------ 復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。 悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。 中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。 どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。 (うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります) 他サイトでも掲載しています。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

処理中です...