厄介払いで結婚させられた異世界転生王子、辺境伯に溺愛される

楠ノ木雫

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第二章

◇31 一緒に頑張ろう

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 幸せな結婚式を終えると、俺には大仕事が待ち受けていた。


「はーい奥様、深呼吸してー」

「すぅーっ、はぁー……」


 やばい。

 やばいやばいやばいやばいやばいやばい。

 出産日は恐らくここら辺かと思います、と教えられていたから覚悟を決めて、予定通りにだんだん痛くなってきて今にいたってるんだが……

 なんだこれ。とりあえず、今世のお母様、そして前世の母ちゃん、俺を産んでくれてありがとう。


「……」

「奥様、ちゃんと呼吸してください。大丈夫ですから」

「……はぁ……うっ」

「リューク!」

「んっ、う~~~~~~~~~~」


 あ~~~~~痛い痛い痛い痛い痛いってっ!!


「大丈夫か!」


 大丈夫じゃないから!! 限界なんだって!! 限界なんてだいぶ前に越えてるから!!

 これどうしたらいい!? これいつまで続くんだ!?


「リューク!」

「……ヴィル」

「どうした、水か!」

「……うるさい」

「……」


 結構ドスの効いた声で睨んでしまったが、それを謝罪するような余裕なんてものはこれっぽっちもない。

 だがしかし、握っていたヴィルの手は片時も離さなかった。


「あ゙~~痛い痛い痛い痛い痛いっ!!」

「奥様ーあともう少しっ!」




 耐えに耐えまくり、マジで耐えまくって……


「奥様ー! 生まれましたよー!」

「……はぁぁ……」


 よ~~~~~やく生まれたのだった。マジで頑張った。隣のヴィルなんてもう泣きそうになってるし。

 けど……


「……ヴィルにそっくりだな」

「リュークだろ」

「何泣きそうになってるんです?」

「……代わってやりたかった」

「あっはは、言われたでしょ、男じゃ無理だって!」

「……」


 そんなむくれないでくださいよ。ちゃんと生まれたんですから、結果オーライでしょ。

 すんごく小さいな。こいつが俺の腹ん中にいたのか。


「生まれてきてくれて、ありがと。――リュカ」

「あぁ」


 マジで死にそうになった。が、すっごく元気な赤ん坊が生まれてきてくれてよかったよかった。

 しかも、ピモ達に驚かれた。いや、早すぎですって、と。流石リュークだなとヴィルには褒められたけどさ。けど、これが何時間も続いたらきっとヴィルは騒ぎ出す始末になる。あのいつぞやの風邪事件みたいに。

 ま、何事もなかったんだからよしとしよう。


「ちっちゃいなぁ~」

「……」

「何固まってるんです? 抱っこしてあげてくださいよ」

「あ、いや……」

「ほら、旦那様」

「……小さすぎるだろ」


 ヴィルもこのサイズで最初出てきたんだけどな?

 新しい家族が一人増えたんだ。これから、賑やかになるな。


「リューク」

「ん?」


 俺の近くにいたヴィルが、強く抱きしめてきた。


「ありがとう」

「何改まって言ってるんです? これから大変になるんですから、ちゃんとパパしてくださいね」

「当たり前だろ」

「ならいいです」


 これから、きっともっと大変な事とか、困った事があると思う。

 けれど、ヴィルと一緒なら何でも乗り越えられる気がする。

 だから、一緒に頑張りましょうね。


 END.


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みんなの感想(134件)

羽矢唯
2024.11.16 羽矢唯
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メロウ
2024.11.14 メロウ
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penpen
2024.11.13 penpen
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