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第二章

◇3 いや、遊びに来るなって

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 ジローのプレゼント事件から、来訪者がどんと増えた。

 人間じゃない。そう、白ヒョウだ。


「また来たんですか」

「あぁ、今度は3親子だ」

「マジ?」


 そう、うちに遊びに来るのだ、白ヒョウが。一体ここを何だと思ってるんだ。絶対さ、これ言ったのジローだろ。絶対そうだろ。何してくれてんだあの野郎。

 ジローがミンスを持ってきた日の次の日に知らない白ヒョウが来て、何故か遊びに来たかのように騎士達に妙に懐いて離れなかった。仕方なくジローがいるおりに入れたわけだが……中々離してくれない。騎士達を。

 え、私達ここに寝泊まりですか!? なんて泣きが入りそうになっていたが。

 まさかのうちの騎士達のモテ期到来である。相手は白ヒョウ達だが。

 けどさ、何故か決まって皆ミンスを持ってくるんだよな。だから今屋敷には食いきれないくらいのミンスが山になっているという事だ。貰った本人達でもこの量は食いきれない。

 こんなに持ってきちゃって山にあるミンスはなくなっちゃうのでは? と思ったけれど……山の奥にはいたるところにミンスがあるらしい。調査隊が山に何度も入って見てきたのだとか。なら大丈夫か。


「こんなに貰っちゃって、どうします?」

「冷凍にされてるから日持ちはするからな。とりあえず冷凍保存だ」


 うん、まぁそうなるか。ありがたく皆で少しずつ食べさせていただきます。


「だが、食いすぎはダメだぞ」

「……はい」


 すみません、今手元にカットされたミンスがあります。今の俺の腹ん中にも入ってます。だって美味いんだもんしょうがないだろ。それにそんなに爆食いしてるわけではないからこれくらいは許されるだろ。


「栄養などは調べてる最中なんだ。ほどほどにな」

「はぁ~い」


 と返事をするとヴィルはフォークで刺して俺の口に入れてくる。言ってることとやってること、違うぞ。なんて思いつつもヴィルの口にもつっこんだ。これで共犯だ。

 でもさ、話を戻すけど……こんな現象が起こってるから白ヒョウ研究のために白ヒョウを捕まえに行く手間が省けているわけだ。おりは白ヒョウ達でぎゅうぎゅうだけど。帰ってくやつはいるがうちに泊まっちゃってるやつもいる。ここは宿じゃないんだけどな。おかしいぞ。

 この屋敷は都市と少し離れているから領民達とは接触しない。けどこの屋敷の使用人達は近くにいるから危険があるわけで。だから今使用人達は屋敷から出ないように言ってある。外に用事がある時は騎士達にお願いする事になっているわけだ。

 この状況が何とか落ち着くといいんだけど、すぐっていうのは難しい。どうしたものか。


 と、思っていたが意外と早く解決した。来たのだ。だいぶデカい白ヒョウが。


「……うわぁ……ボス感ある……」

「いや、ボスだろ」

「あ、やっぱり?」


 だって他の白ヒョウ近づかないもん。どっちもにらんでるわけじゃないし。

 ジローの部屋に入って来ていたボス白ヒョウはじーっとこっちを見てくる。俺? いや、なんか違うぞ?

 もしかして、ヴィル? と思ったら俺を抱っこしていたヴィルがおりから離れた。そして団長を呼びつつ俺を下ろし、リュークを頼むぞと一言残し戻っていった。

 一体何を? と思っていたらあろうことかおりの中に入ってボスに近づいたではありませんか。それを見たボスはヴィルを見つつ腰を下ろしていて。


「もう冬が近いんだ。こんな所に遊びに来る余裕があるなら冬越しの準備でもしてろ」


 そんなヴィルの声を理解……したのか? ニャオン、と他の白ヒョウより1トーン低めの声で鳴き、腰を上げた。


「全員に言え」


 また一声鳴き、おりの出入り口の方に向かっていった。一度ジローの方を見たが、ジローは全く動くことはなく、そのままボスは出て行った。


「ヴィルって、白ヒョウと会話出来たんですね」


 戻ってきたヴィルにそう言ったが……


「さぁ、どうだろうな」

「え」

「今後白ヒョウが来るのをやめれば今の言葉が伝わった、という事になるがな」


 様子見だ、と言いつつもまた俺を抱っこした。

 ヴィルが凄いのか、それとも白ヒョウの理解力が凄いのか。分からん。

 てか、ジロー。お前ここに居候いそうろうする気か?


※次回、嘔吐シーンあり。
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