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◇46 ゴリラかよ!!
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俺は今、この屋敷のキッチンに向かっている。あ、つまみ食いに行くんじゃないぞ? ちゃ~んと理由があるんだから。
「こんにちは~」
「奥様! お待ちしておりました!」
うんうん、皆お仕事頑張ってるね。邪魔しちゃいけないから早く退散するとしよう。今日のお昼ご飯何が出るか楽しみだけどお昼になってからのお楽しみだしな。でも匂い的に、肉? まぁ分からんけど。
こちらをどうぞ、と渡されたのは大き目のかご。それを受け取り、俺はキッチンを離れた。
「……美味しそう」
「つまみ食いですか?」
「ピモも食う?」
「私に共犯者になれとおっしゃりたいのですか?」
「冗談だって~」
この中には、クッキーとパウンドケーキ、あとケークサレだ。うん、美味しそう。食いたいけど我慢だ。
そう、これは実は差し入れなのだ。誰への? それはな……
「おぉ……やってるやってる」
「ちょうど旦那様の番でしたね」
そう、今こっそり端で見てるんだけどさ、ここ鍛錬場なんだよ。このメーテォス領の騎士達と最強剣士? ヴィルが鍛錬しているところをこっそり見に来たというわけだ。
前々から見たいなと思ってたんだよね。だってさ、白ヒョウを相手に戦ってるんだぜ? あの人たち。見たいに決まってるだろ。
でも、ヴィルに言ったらなんか言われそうだなと思って言わずにこっそり来たというわけだ。もし見つかった時のための理由として差し入れも持ってきたしな。
けどさ、なにあの人。軽々と剣振っては相手を圧倒してるんだが。力技、もあるんだろうけど、動き早いわ。
「……なぁ、あのかっこいいやつ誰だ」
「奥様の旦那様です」
「……やべぇな、なにあれ惚れるだろ」
「それはそのままご本人にどうぞ」
「いや、絶対後悔するから言わないけど。……でも相手、吹っ飛んでないか?」
「旦那様は容赦ないんですよ」
鍛錬場、屋外なんだけど雪かきしないでそのまま練習してる。足場悪いだろって思ったけど、そういえば剣使うところ足場は雪だった。雪山とか。だからか。なるほど。
てかさ、皆使ってる剣、デカくないか? 俺の知ってる剣より太いし長いし。首都にいた頃に見た騎士たちが使ってた剣とは比べ物にならないんだが。
あ、あれじゃなきゃ白ヒョウ倒せないんか。うん、分かる気がする。でも重そう。あれ振るのにも結構力いるよな。どんだけ重いんだろ。
「……寒そうだな」
「動いているので逆に暑い方でしょう」
「うん、まぁ、だろうな」
皆、めっちゃ薄着なんだよな。上、ノースリーブで黒いの一枚。あれも生地薄そう。絶対寒いだろ。見てるだけで寒いわ。
「そういえば、奥様もナイフを使ったことがございますよね」
「あ、うん、そう。一応あんなところにいたから、王位継承権ぶん取り合戦に巻き込まれる可能性もあったし……といってもまぁ一番は暇だったからかな」
「ですが、奥様はもうこのメーテォスにいらっしゃいますからご安心ください。何があってもきっと旦那様が守ってくださるでしょうから」
「逆にさ、あんな最強人間のところを狙う奴いるのか? フルボッコがオチだって分かるだろ。あのえげつないめっちゃ大きい剣突き付けられて」
「恐ろしい話ですが、それもそうですね」
ほらな。暗殺とかそういうのもさ、フルボッコだろ。たとえ剣とかナイフとかがなくても、素手でもいけそうだしな。あー怖い怖い。
と、ピモと喋っていたら……
「こんな所で何をしてるんだ」
あ、やっべ。見つかっちった。てか近づいて来ていたことに気づかなかった。たまに、気配消して近づいてくるんだよな。ビックリするからやめてくれ。
何をしてるんだ、と言われたので持ってきたかごを見せた。
「賄賂か。何を企んでるんだ?」
「失礼な。一緒に食べたかったから持ってきたんですよ。ついでに他の皆さんの分も持ってきたんですから」
「……そうか」
なんか疑ってるな? 酷いな。
けどさ、ヴィルって鍛錬してる時って髪結うんだな。短髪ではあってもちょっと長いもんな。うん、新鮮だ。初めて見たし。
「何だ」
「あれ、持ってみてもいいですか」
あれ、とは剣の事だ。だってこんなデカいの見た事なかったんだもん。
「……怪我するぞ」
あ、持たせたくないんだ。間があったしすんげぇ持たせたくなさそうな顔してるもん。俺の望むことは全て叶えるだとかなんだとかって言ってたけど、これも適応されるんだ。
「ヴィルと持つならいいでしょ?」
落としたら大変だし。だからヴィルと持ちますとも。
「腕折れるぞ」
「ヴィルには俺の腕が枝に見えてるんですか?」
「細い」
「それ、誰基準なんですか。まさか自分じゃないですよね」
「これくらいないと話にならん」
……マジかよ。どんだけ重いんだよそれ。ヴィルの腕結構太いよな。筋肉ヤバいし。めっちゃ鍛えてるし。多分腕相撲したら俺一発K.Oだわ。
なんて思いつつ、騎士の一人が持ってきてくれた剣を見た。うわぁ、遠くから見てもデカいと思ったんだけど、間近で見たらもっと大きかったわ。これ振ってるの? え、マジ?
「……デカいですね」
「白ヒョウ討伐にはこれがなければ無理だ」
まぁ、確かにそうだろうな。長さは、俺の身長ほどではないけれど結構長い。それに太いし。やべぇな、これ持って討伐に行くのか。
鞘に入れた状態で、最初にヴィルが受け取った。剣先を地面に付けて持っていて。
「抜くなよ」
「はーい」
鞘を掴んで、持ち上げてみた。
……えっ。なにこれ、おっも!? めっちゃ重いんですけど!! めっちゃ重い鉄骨かよ!!
え、鞘の分の重さがあるからか? それにしても重すぎだろこれ。
「何ですこの重さ。何でこんなの普通に振り回せるんです!?」
「慣れだ」
「いやいやいやいや! それをただ慣れだって流しちゃいけないですって!! どんだけ筋肉あるんですか!!」
「いつも見てるだろ」
「ちょっと待ったぁ!!」
いやいやいや、何てこと今言っちゃうんだよ!! 周りにピモも他の騎士さん達もいるんだぞ!! ほら! 騎士さん達目逸らしましたけど!! 確かに一緒に風呂入ってるから見てるけど!! でもマジで恥ずかしいからやめてくれ!!
でも、思った。このメーテォス領の人達って、アメロと普通の男性の体格が極端に違うんだ。ほら、雪かきとかの力仕事とかが多すぎるから。だからだろ。
「……ピモ、腕相撲しよ」
「え? 腕相撲ですか」
「何故ピモなんだ」
「ゴリラとやったら小枝みたいな腕が折れちゃうんでね」
「は?」
よし、屋敷中のアメロ達と腕相撲してこよう。俺、あのゴリラみたいな人達を除いたら結構自信がある。ほら、小さい頃から暇すぎて筋トレとかもしれたし。ナイフもね。
とりあえず、まずはピモに勝つ。
「こんにちは~」
「奥様! お待ちしておりました!」
うんうん、皆お仕事頑張ってるね。邪魔しちゃいけないから早く退散するとしよう。今日のお昼ご飯何が出るか楽しみだけどお昼になってからのお楽しみだしな。でも匂い的に、肉? まぁ分からんけど。
こちらをどうぞ、と渡されたのは大き目のかご。それを受け取り、俺はキッチンを離れた。
「……美味しそう」
「つまみ食いですか?」
「ピモも食う?」
「私に共犯者になれとおっしゃりたいのですか?」
「冗談だって~」
この中には、クッキーとパウンドケーキ、あとケークサレだ。うん、美味しそう。食いたいけど我慢だ。
そう、これは実は差し入れなのだ。誰への? それはな……
「おぉ……やってるやってる」
「ちょうど旦那様の番でしたね」
そう、今こっそり端で見てるんだけどさ、ここ鍛錬場なんだよ。このメーテォス領の騎士達と最強剣士? ヴィルが鍛錬しているところをこっそり見に来たというわけだ。
前々から見たいなと思ってたんだよね。だってさ、白ヒョウを相手に戦ってるんだぜ? あの人たち。見たいに決まってるだろ。
でも、ヴィルに言ったらなんか言われそうだなと思って言わずにこっそり来たというわけだ。もし見つかった時のための理由として差し入れも持ってきたしな。
けどさ、なにあの人。軽々と剣振っては相手を圧倒してるんだが。力技、もあるんだろうけど、動き早いわ。
「……なぁ、あのかっこいいやつ誰だ」
「奥様の旦那様です」
「……やべぇな、なにあれ惚れるだろ」
「それはそのままご本人にどうぞ」
「いや、絶対後悔するから言わないけど。……でも相手、吹っ飛んでないか?」
「旦那様は容赦ないんですよ」
鍛錬場、屋外なんだけど雪かきしないでそのまま練習してる。足場悪いだろって思ったけど、そういえば剣使うところ足場は雪だった。雪山とか。だからか。なるほど。
てかさ、皆使ってる剣、デカくないか? 俺の知ってる剣より太いし長いし。首都にいた頃に見た騎士たちが使ってた剣とは比べ物にならないんだが。
あ、あれじゃなきゃ白ヒョウ倒せないんか。うん、分かる気がする。でも重そう。あれ振るのにも結構力いるよな。どんだけ重いんだろ。
「……寒そうだな」
「動いているので逆に暑い方でしょう」
「うん、まぁ、だろうな」
皆、めっちゃ薄着なんだよな。上、ノースリーブで黒いの一枚。あれも生地薄そう。絶対寒いだろ。見てるだけで寒いわ。
「そういえば、奥様もナイフを使ったことがございますよね」
「あ、うん、そう。一応あんなところにいたから、王位継承権ぶん取り合戦に巻き込まれる可能性もあったし……といってもまぁ一番は暇だったからかな」
「ですが、奥様はもうこのメーテォスにいらっしゃいますからご安心ください。何があってもきっと旦那様が守ってくださるでしょうから」
「逆にさ、あんな最強人間のところを狙う奴いるのか? フルボッコがオチだって分かるだろ。あのえげつないめっちゃ大きい剣突き付けられて」
「恐ろしい話ですが、それもそうですね」
ほらな。暗殺とかそういうのもさ、フルボッコだろ。たとえ剣とかナイフとかがなくても、素手でもいけそうだしな。あー怖い怖い。
と、ピモと喋っていたら……
「こんな所で何をしてるんだ」
あ、やっべ。見つかっちった。てか近づいて来ていたことに気づかなかった。たまに、気配消して近づいてくるんだよな。ビックリするからやめてくれ。
何をしてるんだ、と言われたので持ってきたかごを見せた。
「賄賂か。何を企んでるんだ?」
「失礼な。一緒に食べたかったから持ってきたんですよ。ついでに他の皆さんの分も持ってきたんですから」
「……そうか」
なんか疑ってるな? 酷いな。
けどさ、ヴィルって鍛錬してる時って髪結うんだな。短髪ではあってもちょっと長いもんな。うん、新鮮だ。初めて見たし。
「何だ」
「あれ、持ってみてもいいですか」
あれ、とは剣の事だ。だってこんなデカいの見た事なかったんだもん。
「……怪我するぞ」
あ、持たせたくないんだ。間があったしすんげぇ持たせたくなさそうな顔してるもん。俺の望むことは全て叶えるだとかなんだとかって言ってたけど、これも適応されるんだ。
「ヴィルと持つならいいでしょ?」
落としたら大変だし。だからヴィルと持ちますとも。
「腕折れるぞ」
「ヴィルには俺の腕が枝に見えてるんですか?」
「細い」
「それ、誰基準なんですか。まさか自分じゃないですよね」
「これくらいないと話にならん」
……マジかよ。どんだけ重いんだよそれ。ヴィルの腕結構太いよな。筋肉ヤバいし。めっちゃ鍛えてるし。多分腕相撲したら俺一発K.Oだわ。
なんて思いつつ、騎士の一人が持ってきてくれた剣を見た。うわぁ、遠くから見てもデカいと思ったんだけど、間近で見たらもっと大きかったわ。これ振ってるの? え、マジ?
「……デカいですね」
「白ヒョウ討伐にはこれがなければ無理だ」
まぁ、確かにそうだろうな。長さは、俺の身長ほどではないけれど結構長い。それに太いし。やべぇな、これ持って討伐に行くのか。
鞘に入れた状態で、最初にヴィルが受け取った。剣先を地面に付けて持っていて。
「抜くなよ」
「はーい」
鞘を掴んで、持ち上げてみた。
……えっ。なにこれ、おっも!? めっちゃ重いんですけど!! めっちゃ重い鉄骨かよ!!
え、鞘の分の重さがあるからか? それにしても重すぎだろこれ。
「何ですこの重さ。何でこんなの普通に振り回せるんです!?」
「慣れだ」
「いやいやいやいや! それをただ慣れだって流しちゃいけないですって!! どんだけ筋肉あるんですか!!」
「いつも見てるだろ」
「ちょっと待ったぁ!!」
いやいやいや、何てこと今言っちゃうんだよ!! 周りにピモも他の騎士さん達もいるんだぞ!! ほら! 騎士さん達目逸らしましたけど!! 確かに一緒に風呂入ってるから見てるけど!! でもマジで恥ずかしいからやめてくれ!!
でも、思った。このメーテォス領の人達って、アメロと普通の男性の体格が極端に違うんだ。ほら、雪かきとかの力仕事とかが多すぎるから。だからだろ。
「……ピモ、腕相撲しよ」
「え? 腕相撲ですか」
「何故ピモなんだ」
「ゴリラとやったら小枝みたいな腕が折れちゃうんでね」
「は?」
よし、屋敷中のアメロ達と腕相撲してこよう。俺、あのゴリラみたいな人達を除いたら結構自信がある。ほら、小さい頃から暇すぎて筋トレとかもしれたし。ナイフもね。
とりあえず、まずはピモに勝つ。
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