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◇17 こんなにデカいペットはいらない

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 昨日捕まえてきたらしい白ヒョウはこの屋敷とは違う棟の地下にいるらしい。といっても意外と近くにあった。白ヒョウがいるんだからもっと屋敷から離れてると思ってたのに。あ、何かあった時ヴィルが早く対処できるように? うん、そうかも。

 玄関を出ると窓から見た通りいい天気で日差しが暖かい。吹雪じゃなくてよかった。あ、さっきヴィルが書斎で言った騎士の人達集まってた。


「旦那様」

「地下の鍵は」

「こちらに」


 何やら長くて頑丈な鍵が見えた。あ、白ヒョウだから頑丈な鍵じゃなきゃダメなのか。逃げちゃったら大変だもんね。

 白ヒョウがいる棟は、屋敷と違ってコンクリート? みたいなやつで固められた建物だ。堅そう。もしかしてここ、いるのは白ヒョウだけじゃないのかも。


「ここ、白ヒョウだけじゃないんですか」

「いや、白ヒョウだけだ」


 へぇ、そうなんだ。白ヒョウと一緒にしちゃったら他のが食われちゃう?

 なんて思っていたら建物の中に招かれた。中も外と同じような壁で、なんとなく薄暗い。ちっちゃい窓しかないからだろうけど。

 それに、変な匂いがする。獣の匂い? のほかに、なんだろ。しかもなんか出そうな雰囲気、みたいなのも感じる。あ、俺別にビビりとかそういうんじゃないから。

 中には騎士が何人かいて、その他に研究員なのか白い白衣を着た人が何人かいる。


「お話は聞いております。白ヒョウは今眠っている状態です」

「分かった」


 あ、寝てるんだ。どうりで鳴き声とかがしなかったわけだ。

 どうぞ、と扉を開いた研究員らしき人。うん、なんかゴォォォォっていう効果音がしそうな感じ。外より寒いし。だからヴィルは俺に上着をもう一枚着込ませたのか。

 でも、ヴィルはいつも通りだけど大丈夫か? まぁ寒さには慣れてるだろうけれど。

 扉を通ると、階段があった。カツン、カツン、という音はならない。俺抱きかかえられて歩いてないから分からないんだけど、音が出ないようになってるのか? あ、もしかして音で白ヒョウを刺激しないように?


「う、わぁ……」


 階段の下まで降りれた。ここは外より暗いからちょっと落ち着かないんだけど……見つけた。遠くに、大きな牢屋があるのを。太めの格子が見える。

 あれの中に? と指をさしてヴィルに聞いてみたら、頷いてくれた。牢屋の中に何かいる、くらいしか感じない。もうちょっと近づかないと。

 少しずつ歩いて近づいて。だんだん、その白い毛が見えてきた。白い毛と、あと黒い模様。動物園で見たことのあるヒョウとは全然違う。白いヒョウなんて見た事ない。ホワイトタイガーなら見たことなあるけど、こんなにデカくない。


「デカく、ないですか」

「こいつはオスで大人だからな。とは言ってもその中で大きいのを見つけて捕まえてきたんだ」

「……凄いですね」


 俺が読んだ本に書かれていたのは2,5m。でもこれはもっとだろ。

 もうちょっと近づけないですか? と顔で言ってはみたものの、ダメだと顔で返された。ケチ。

 と、思っていたら……動いた。白ヒョウが。そして、鳴いた。思っていたより高い声だけど、猫より低い。へぇ、こんな感じなんだ。


「下がるぞ」

「えっ」


 やばいやばい、と焦りつつも、俺が持ってきたものを思いっきり振った。それに気がついた白ヒョウ。鼻をクンクン動かし、そして次の瞬間……

 ニャオ~ゥン。


「えっ」

「え」

「……」


 さっきとは違った、なんか高めの鳴き声が聞こえてきた。おっとっと、何だこれ。そのまま座っていたのに、腹を見せたぞ、こいつ。しかも図体がデカいからちょっと床揺れたし。

 そんな白ヒョウの行動に皆がびっくりしてる。ヴィルもそうだ。そして、俺を見てきた。何をした、と。


「本の通りでしたね」

「本?」

これ・・、白ヒョウ好きなんですって」

「……マタタビ・・・・か」

「マタタビですか!?」


 研究員が大興奮。俺の持ってたマタタビを渡してやると、興味津々で観察し、白ヒョウに近づいて振っていた。もちろん白ヒョウも大興奮。楽しそうで何よりだ。


「ネコ科の動物ってマタタビが好きなんですって」

「それ、王宮で読んだのか」

「はい。と言ってもだいぶ古い書物でしたけど」

「……」


 まぁ、離宮にそんなものはなかったが。世界中から集めたあの図書室にもないものを俺が読んだとあればちょっと引っかかるだろうけれど、まぁ何とかなるか。


「役に立ちました?」

「……」


 うん、なんかびっくりしてるんだが。俺なんか変なこと言ったか? と、思っていたまたキスをされた。


「ありがとう」

「……」


 お礼を言われるとは。今度は俺がびっくりだよ。


「白ヒョウがこんな行動をとるなんて全く知りませんでした! これは大発見です! これで対策が打てそうです!」

「あぁ、よろしく頼む」

「はいっ!」


 まぁ、役に立てたのであればいいや。被害が縮小されたら嬉しいな。

 でも、こんな大きな猫はいらないけど。本当にデカい猫だなこいつ。

 と、思っていたらヴィルが俺の事をくんくんと臭いを嗅いできた。俺臭いかな、と聞きたかったんだけど、後は頼むと一言残し俺達は地下から出て行ってしまったのだ。


「ヴィル?」

「マタタビの匂いがする」

「そりゃずっと持ってましたから」

「あの猫、ずっとリュークの事を見ていた」


 白ヒョウが俺の事を見ていた……心配でもした? マタタビで大人しくなってたはずなんだけど。


「ほら、ヴィルがいたから俺怪我しなかったでしょ」

「……」

「ありがとうございます」

「……」


 なんか、深ぁぁぁぁいため息つかれたんだけど。何か俺したか。

 なんて思っていたら、近くにいた使用人に風呂の準備をさせていて。え、風呂?


「そんなに臭いですか」

「マタタビ臭い」

「じゃあ一緒に入ります?」

「……」


 ……別によくないか? と思いつつ冗談を言ったんだけど……あれ、断ってこないんだが。なんか考え込んでるんですけど。


「下にある風呂でいいか」

「いやいやいや仕事中でしょ。冗談ですって。一人で入りますから」

「自分で言ったんだろう」

「だから冗談って言ってるでしょ!」


 ニヤニヤしてこっちを向いてくるヴィルのその顔を殴りたい。けど顔がいいから殴りたくない。すんごく腹立つぅ!

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