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◇3 ここ結構面白いかも

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 辺境伯の目の前で、離婚届を破ってしまった。

 ちょっとやりすぎたか? とは思ったけどあれくらいやらなきゃダメだったかもとも思う。

 けど最後に面倒くせぇなみたいな顔がちらっと見えた。もしかして辺境伯ってそんな性格なのか? すぐに俺を追い出そうとするところがそんな風に見える。


「奥様のお世話周りをさせていただきます、ピモと申します。どうぞよろしくお願いいたします」

「あ、うん、よろしく」


 奥様、か。ちゃんと奥様になってるみたいだけど、でもなんか違和感がある。奥様だなんて一生呼ばれないワードだろ。

 彼は俺と同じアメロなのかな。見た目がそれっぽい。というか離宮でも俺のお世話はアメロだったからそれが常識なのかな。


「これから奥様に使っていただくお部屋はこちらです」


 そう言って案内され見せてくれた部屋は……こりゃまた素敵な部屋だった。

 え、マジ? ここ使っていいの?


「こんなに広い部屋使っていいの?」

「えっ?」

「ベッドふかふかじゃん!」


 布団の触り心地最高。離宮でもまぁまぁいいベッドを使わせてもらってはいたけれど、こんなに寝心地のいいのは初めてだ。え、枕も最高なんだけど!

 これは夜寝る時が楽しみだな。

 というか、辺境伯とは別の寝室だったな。普通夫婦って同じ寝室を使うんだっけ。まぁ俺としては別なのはありがたいんだけどさ。

 あ、外雪降ってんじゃん。うわー、ここに来るの少し遅れてたら雪の中ここに来ることになってたって事じゃん。あっぶねー。


「山めっちゃデカっ!」

「……メーティ山脈です」

「山脈!」


 白、というか銀色のでかい山が連なってる。すげー、こんな大自然の中で生活出来るのか!


「……これから昼食となりますので、ご案内します。屋敷のご案内はその後にいたします」

「うん、お願い」

「……」


 ……ん? なんかこの人、驚いてないか? 俺、なんか間違ったこと言ったっけ。

 ま、いいや。


「ここってさ、とっても屋敷の中暖かいな。暖房とかどうしてるの?」

「床下から蒸気を建物全体に壁の中で巡回させています」

「へぇ、そんなこと出来るんだ!」


 じゃあ床下に沸騰させたお湯があるって事か。こんなに綺麗なんだから色々手が加えられてるんだろうな。

 なるほど、蒸気か。王宮だと暖炉だったから結構新鮮だな。前世じゃエアコンだったし。

 ちょっと試しに壁を触ってみた。おぉ、あったかい。すげぇ。中見てみたいな。


 そしてたどり着いた部屋。とても広くて、大きなテーブルがある。食堂か。

 こちらへどうぞ、と椅子に座らせてくれる。けど、カトラリーとかの準備は俺のだけだ。

 しかも……その後俺の前に並べられた食事は、量がちょうどいい食事だった。

 貴族って残すくらいの量を出すじゃん? そんなのが出てきたらどうしようって思ってたけど、これなら安心だな。


「これ何?」

「……シシ肉です。ここらではシシがよく出ますから、捕まえて食料にしているのです」

「へぇ、初めて食べた。臭みがなくていい」

「……」

「ここずっと冬だろ? 野菜とかってどうしてるの?」

「……冬に強い野菜を栽培しております。あとは、この領地にはいくつか温室がございます。もちろんこの屋敷にも大きな温室がございます」

「へぇ~、後で行ってみたい」

「……かしこまりました」


 なんか、反応おかしくないか? 周りの使用人達。王子っぽくないって言いたいのか? すみませんねちゃんとした王子じゃなくて。


「……お食事はお気に召したでしょうか」

「うん、食べた事ないものがあったから新鮮で美味しかったよ」

「……そうですか」


 だからその反応やめろ。


 結局、昼飯に辺境伯は来なかった。仕事が忙しいらしい。

 俺も手伝ったほうがいいのか? とも思ったけど、この世界で奥方は仕事をしないのが決まり、というか常識だ。そんなんじゃ暇死んじゃいそうな気もしなくもない。

 でもまぁ、とりあえず俺はここに慣れることが先決だな。


「……風呂広いな」

「では奥様、洗わせていただきます」

「うん、お願い!」


 離宮の風呂の何倍だよこれ。これバスタブじゃなくて石造りの大浴場だからなんかテンション上がるわ。


「えっ……」

「ん?」

「あ、いえ、失礼いたしました……」


 あ、もしかして俺の手? 実はタコがあるんだよね。離宮生活の際、暇でいろいろやってたから。


「これ、ナイフ使った時のタコ」

「えっ!? あ、あの、アメロなのに、ですか?」


 そう、アメロは危ないものは絶対してはいけない。剣やナイフも同様にだ。


「俺は王子で兄弟もいっぱいいるからさ、王位継承権争いってやつに巻き込まれるんだ。だから護身用に身に付けたんだ。あ、でもそんなに強いわけじゃないから時間稼ぎとか? 他の人が来てくれるまでのな」

「……そう、ですか……」


 この王族の血は結構優秀らしい。まぁまぁにナイフを使えるようになった。これなら暗殺者に狙われても助けが来るまで何とかなりそう。

 ま、寝てる最中とかに奇襲かけられたらアウトだけどさ。でももう厄介払いされたから少しは安心?


「あっ、申し訳ございません、手が止まってしまって……」

「いいよ別に。あ、俺髪の量多いから洗うの大変かも」

「え?」

「一応言っとくな」


 離宮の奴らにぶーぶー文句言われながら洗ったり梳かしたりしてくれてたしな。長くて腰まであるし。


「ここの人達の髪って青が多い?」

「あ、はい」

「じゃあやっぱ目立つか。銀髪だと……」

「……奥様の髪は、とても綺麗な銀髪です」

「え?」

「きっと皆、そう思っていると思います」

「……そうかな」

「はい」


 てかピモ、自分から何か言うの、これが初めてか。距離が縮まったか? 世話周りしてくれるから、もっと仲良くなりたいし頑張ってみよう。


「ここ、図書室とかってある?」

「はい、ございます。明日ご覧になりますか」

「ん~、温室も見たいからその後にしようかな」

「かしこまりました」


 いろんな野菜があるみたいだけど、どんな感じなんだろ。知ってる野菜もあったし、他にもあるかも。

 アメロは本来危険な場所には入ってはいけない。屋敷とかのキッチンもそうだ。刃物などがたくさんあるから当たり前のことだけど、実は俺、離宮ではキッチンに入ってた。

 だい~~~ぶ頼み込んで入れてもらえたんだけど、料理とかお菓子とか作らせてもらってた。

 だからここでも出来ないかな~なんて思ってたりもする。まずは信頼関係を築いて、あとは食材の確認もしないといけない。

 ……あの辺境伯が許してくれるか分からないけどな。

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