女子高生探偵:千影&柚葉

naomikoryo

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第1章:開かずのアパート

第16話:「影の計画」

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——「このままでは終わらないぞ」

 "先生"の冷たい声が背後から響く。

 だが、その言葉を振り切るように、千影たちは倉庫の裏口から外へと飛び出した。

「走って!」

 千影が鋭く指示を飛ばす。

「言われなくても!!」

 柚葉は美咲の手をしっかりと握り、全力で駆けた。杉田も遅れることなくついてくる。

 暗闇に包まれた倉庫街。

 舗装の悪い道を駆け抜け、隣接する細い路地へと逃げ込む。

 背後ではまだ煙幕が漂っており、敵がこちらを追いかけてくる足音は聞こえない。

「……撒けた?」

 柚葉が息を切らしながら振り返る。

「ええ。少なくとも、一時的にはね」

 千影は慎重に辺りを確認する。

「でも、あの男……"先生"は絶対に諦めないわ」

「……だよねぇ」

 柚葉はぐったりとしながら頭を抱える。

「ていうか、あれ何!? まさか"開かずのアパート"の話が、こんな大事になるなんて思ってなかったんだけど!!」

「私もよ」

 千影は取引記録のファイルをしっかりと握りしめながら、冷静に分析を続ける。

「でも、確実に言えることは一つ。"開かずのアパート"は単なる怪談じゃなかった……。何か"大きな事件"の中心にあったのよ」

「そ、それってつまり……?」

「……"犯罪"よ」

 千影の瞳が鋭く光る。

「この取引記録を見れば分かる。これは、ただの家賃の支払いや賃貸契約の記録じゃないわ。明らかに、"何かの売買"が行われていた跡がある」

「売買って……まさか、違法取引とか!?」

「ええ。おそらく、"このアパートを拠点にして、裏取引をしていた組織"が存在したのよ」

 千影はページをめくりながら指を走らせる。

「例えばこの項目……"M.A. 300"、"T.S. 500"、"A.M. 200"。おそらく、これは取引された"何かの品目"のコードネームと数量。そして、この隣の欄には、取引相手のイニシャルと日付が書かれている」

「そ、それって、つまり……?」

「"松風荘"は、昔から"何かの密輸や売買の拠点"として使われていた可能性があるわ」

 柚葉の顔が青ざめる。

「そ、そんなやばい場所に、美咲ちゃんが住んでたってこと……?」

「ええ」

 千影の視線が美咲に向かう。

 美咲は、不安そうに二人の話を聞いていた。

「……じゃあ、お母さんは……」

 震える声で美咲が呟く。

「お母さんは、何に巻き込まれたの……?」

「……それを知るには、もっと情報が必要よ」

 千影はそっと、美咲の肩に手を置いた。

「でも、一つだけ確実に言えることがあるわ。あなたのお母さんは、"この取引の何かに関わっていた"」

「……っ!」

 美咲の瞳に、涙が滲む。

「それって……お母さんは、悪いことをしてたの……?」

「それはまだ分からないわ」

 千影は真剣な目で美咲を見つめた。

「でも、可能性としては二つ。"お母さん自身が関与していた"か、それとも"何かを知ってしまった"か」

「……」

 美咲はぎゅっと拳を握る。

「でも……お母さんは、そんなことする人じゃない……!」

「ええ。だからこそ、私たちで真実を明らかにしましょう」

「……うん」

 美咲は涙をこらえながら、小さく頷いた。


 その時——千影のスマートフォンが震えた。

 ——非通知。

「……また?」

 千影は無言で通話ボタンを押した。

「……」

 数秒の沈黙の後、機械的に変調した声が響いた。

「君たちは"知りすぎた"」

 柚葉が息を呑む。

「……"先生"?」

 千影が冷静に問いかける。

「それとも、"先生"の背後にいる者かしら?」

「……フフ。賢いな、天野千影。だが、それが君の命取りになる」

「そう」

 千影は平然とした声で答える。

「でも、あなたたちがこうして"脅しの電話"をしてくるってことは、まだ私たちの手に"価値のある情報"が残っている証拠ね」

「……余計なことはしない方がいい。君たちが"相原 美沙"を探しているのは分かっている」

「……」

「だが、彼女は"もう存在しない"」

「っ……!」

 美咲が震える。

「嘘……お母さんは……!」

「……それは"本当"かしら?」

 千影は静かに問いかける。

「もし本当に彼女が"もう存在しない"のなら、なぜわざわざこんな電話を?」

「……」

「本当に死んでいるのなら、私たちが調べようと関係ないはず。でも、あなたたちは"調べるな"と警告している」

 千影は、電話の向こうの相手の息遣いを注意深く聞きながら続けた。

「つまり、"彼女はまだ生きている"……そうじゃない?」

「……フフ。やはり君は面白い」

 プツッ……

 通話は、突然切れた。

「っ……!」

 美咲はその場でしゃがみ込み、震える拳を握る。

「……お母さん、生きてるの……?」

「可能性は高いわ」

 千影はスマートフォンを見つめながら言った。

「でも、それは同時に——"まだ危険の中にいる"ということ」

「じゃあ……お母さんを助けるには?」

「……"開かずのアパート"の秘密を、完全に暴くしかないわ」

 千影の目が鋭く光る。

「この事件の"核心"は、まだ解き明かされていない。でも、少しずつ"答え"が見えてきたわ」

「……!」

 美咲の目に、強い意志が宿る。

 ——"開かずのアパート"の謎の先には、一体何があるのか?

 その答えを知るために、千影たちは再び動き出す——。
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