異世界転生したのに弱いってどういうことだよ

めがてん

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第8章―再会

立ちはだかるもの#7

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~ミハル視点~


『美陽……!』

――誰かが、俺を呼ぶ声がする。それは、とても懐かしい響きだった。
今世と同じ名前。でも、その呼び方の癖は、今世の家族にも友人にも無い。

この呼び方は、前世の俺の、一番大事だった人のもの。

目をゆっくり開けると、俺を必死に呼ぶ人の顔が見えた。

「美陽……美陽!!俺だ!!伊月だ!!わかるか!?」

その顔は、俺の知っている伊月の顔ではないけど……でも、俺を必死に呼ぶ声や表情、仕草で、目の前の彼が伊月だってすぐにわかった。

「い、つき……?」
「ああ!俺だ!美陽……!」

俺が彼を呼ぶと、伊月は顔をくしゃりと歪めながら寝ている俺に覆いかぶさるように抱きしめてきた。

「――やっと、会えた……美陽」

そして絞り出すように彼が呟いたその言葉に、俺は目頭が熱くなるのを感じた。

「ぶじ、だった、んだ、ね……伊月……よかっ、た」
「……ああ。色んな人に、助けてもらったから……」

伊月は実際爆発に巻き込まれたようだけど、ジルベール先輩が魔法で助けてくれたらしい。
それに、俺が母に伊月のことを話したことで、兄ユリアスも俺達の再会に協力してくれたそうだ。

伊月はそう話した後、さらに続けた。

「ずっと、会いに行けなくてごめん。――あのとき、お前を置いて逝ってごめん。俺、ずっと謝りたかった」

伊月は本当は、転生して動けるようになったら、本当はすぐにでも俺を迎えに行くつもりだったそうだ。でもそれができず、結局転生して14年も経ってしまったことを彼は謝ってきた。

さらに伊月は、言い辛そうに言葉を詰まらせた後、意を決したように俺を見つめてきた。

「美陽……、お前は、転生して良かったか?」
「え……?」
「俺は、お前をあの世界に置いて逝きたくなくて、だからお前も一緒に転生させることを願った。でも……お前にとって、それは本当に良かったか?」

俺はその質問に目を丸くした。

「美陽を一人にしたくないからとか、あんな世界に置いていけないとか色々理由を付けていたけど……お前と共に転生することを願ったのは、結局は俺が、お前と離れたくなかったからで……でも、こんな自分勝手な願いでお前のことも転生させて本当に良かったのかと思って……」

どうやら伊月は俺のことも転生させたことが果たして良かったのか、ずっと自問自答していたみたいだ。
不安げに見つめてくる伊月に、俺は笑って返した。

「おれね……、今世で、たくさん、いろんなひとに、たすけて、もらったの。――この世界にこなかったら、ずっと、しらないままだった。……ひとの、やさしさ」
「……!」
「だから……ありがとう。俺を、この世界に、呼んでくれて」

――この世界に転生したことで受けた、他人の優しさと温もり。
それを俺が知ることが出来たのは、伊月が俺をこの世界に呼んでくれたからだ。

「俺こそ……ありがとう、美陽。そう言ってくれて」

俺の言葉を聞いた伊月は、そう言いながら涙を流していた。……伊月が泣くところ、前世含めて久々に見た。
それだけ伊月はずっと、俺を一緒に転生させたことが正しかったのか迷っていたんだろう。

「だい、じょうぶ、だよ。おれ……ゲホッ、いま、……しあわせ、だから……はぁ、はぁ」
「美陽……?」

そんな彼を安心させたかったが、話しているうちにまた息が苦しくなってきてしまった。

「はあ、はあっ……ゴホ、ゲホゲホッ!」
「美陽!?」

突然様子の変わった俺を見て焦る伊月に、大丈夫だと言ってあげたかったのだが、再び始まってしまった発作は自分の意思では止められそうになかった。

「――ミハル!!」

その時、兄ユリアスが血相を変えて病室に入ってきた。
病室のすぐ外で待機していたようだ。

「――皇子、これはどういうことですか!」
「わ、わからないんだ!話していたら急に様子が変わって……!」

ユリアスは俺の様子を見て、伊月を鋭い眼光で睨み付けた。これは伊月の所為じゃないのに、そう言いたくても激しい発作の所為でままならなかった。

「――下がって!!」

すると鋭い声と共にまた誰かが病室に入ってきた。

「――父さん!!ミハルが!!」
「わかってる!!」

入ってきたのは俺の父にして主治医でもあるウィリアム=ブラックウェルだった。
首都に居るはずの父が現れたことに驚いたが、その理由もわからないまま、俺は激しい発作の後再び意識を失ったのだった。


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