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第2章―初めての友達

父の決意

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~父視点~

領地に到着したミハルと僕はブラックウェル家総員に暖かく迎えられたが、再会を喜ぶ間もなくミハルは自室にて寝込んでしまった。

「ウィル、ミハルは……」
「本当はまだ、もう少し病院に居た方が良い状態ではあったんだけどね。首都はマナが領地より濃いし、何よりあまりあそこに居させたくなくて……」
「そうか……。すまなかった、ウィル。私が一緒に行っていれば、ミハルにも君にも、こんなにつらい思いはさせずに済んだのに」
「アリサは悪くないよ!」

最愛の妻アリサが哀しそうに顔を伏せたのを見て、僕はそっと抱きしめ彼女を慰めた。

彼女は未だに、ミハルを早く産んでしまったことを気に病んでいる。
でもそれは、アリサだけの責任ではない。僕も医者として、夫として、彼女へのサポートが至らなかったからこそ起きたことだったのだ。
前二人の子が元気に生まれてきてくれたからこその、油断だった。僕もアリサもそれを未だ後悔している。

「笑ってくれアリサ。悲しみはお腹の子にも良くない」
「ああ、わかっている……ありがとう、ウィル」

アリサは哀しそうに微笑むと、疲れて眠るミハルの額にキスをした。

「すまないミハル……つらい思いをさせた」


アリサを部屋に送ったあと、僕は自室へと向かった。
自室にはミハルの生まれてから今までの診察の記録――カルテが保管されている。

ミハルの身体の弱さ――それは生まれつきの呼吸器の弱さもあるのだが、それだけではないというのが最近わかってきた。
だからこそ首都ではこれ以上の回復が望めないと考えて、無理にでも領地へと戻ってきたのだ。

――マナ不適合症。

マナとは魔力の根源となる、自然界に存在する物質である。
人間が魔法を使うとき、また魔法具に充填されるエネルギーがそのマナだ。
だがごくまれに、そのマナが体質的に合わない者がいる。それをマナ不適合症という。
――ミハルはそのマナ不適合症である、と判明したのはごく最近であった。
マナ不適合症の人間は、マナに対して拒絶反応を起こす。しかしマナは自然界にごく普通に存在する物質であるため、完全に遮断することが難しく、結果、身体にいつも何かしら不具合が生じてしまうのだ。
ミハルはマナに対してほとんど耐性がなく、加えてミハルは元々呼吸器が弱いこともあり、マナ不適合症の者の中でもとくに重症な部類であった。

皇帝との謁見以来、呼吸器の状態が悪化したのは謁見の間に焚かれていたお香が原因ではあるのだが、あのお香はマナが多く含まれている魔法具でもあった。
だからより一層状態が悪化してしまったのだった。

ミハルの部屋にはなるべく魔法具を置かないようにしたが、マナは空気中にも普通に存在するため、ミハルはこれからもまだ苦しむこととなるだろう。

だが、決してあきらめない。
ミハルが元気で暮らせるようになるために、どんなことだってしてみせる。
病室でミハルの本音を聞いた時から、僕はそう決意した。


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