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第3章―夢と大切なこと
帰還後
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~ミハル視点~
領地に戻ってきてから半年経った。
俺は家に戻ってきても相変わらずベッドの上で一日の殆どを過ごしていた。
どうやら俺は元々呼吸器が弱いだけでなく、マナ不適合症でもあると判明したため、許可なく部屋を出ることを禁じられた。
父はマナをある程度遮断できるアイテムを開発すると意気込んで、再び首都へ向かっていったので今は領地に居ない。今は父の弟子だという医者が俺の面倒を見てくれている。
――あ、そうそう。この半年の間に、母のお腹の中にいた子が生まれた。
名前はエレナ=ブラックウェルだ。愛称はレナ。母の黒い髪と父の青い目を受け継いだ、可愛らしい女の子である。
ここまで男の子が続いていたところに生まれた可愛い末の妹に、俺含め家族の皆はメロメロだ。まあ俺はあんまり会えてないんだけどね。
「ミハル様、エレナ様をお連れしましたよ」
「レナ!」
メイドが一日に数分だけレナを部屋まで連れてきてくれる。
まだ生まれて数か月もたっていないから身動ぎくらいしかしないけど、とっても可愛い。
俺は抱こうにも腕の力が心もとないので、メイドが抱いている側で頬をつついたり、手を触ったりしかできないけど。
「レナ、お兄ちゃんだよ~」
「あー、うー」
「あら、今ミハル様を見て笑いましたね」
「え~?レナはもうお兄ちゃんがわかるのかな~?なんてね」
いやー、本当可愛いな。レナは俺と違って体も弱くないし、握る手の力もとっても強いから、きっと丈夫で元気な子に育つだろうな。
「この前、ぬいぐるみをもって遊んでいたんですよ。その姿がとても可愛くて……」
「えー、そうなの!?見たかっ……ケホケホッ!」
可愛いレナのことをもっと見ていたいんだけど、少し興奮しただけで息が苦しくなってしまった。
「あら、ミハル様、大丈夫ですか!?」
「……ごめ、ゴホッ、だいじょ……ゲホゲホッ!」
「すみません、誰か!ミハル様が!」
レナのメイドがドアの向こうに叫ぶとすぐに俺のメイドが入って来て、俺の処置をしてくれた。でも発作が収まったときには既にレナの姿はなく、俺は落胆した。
生まれつきなのは仕方ないけど、もう少し丈夫にならないもんかな。せめて妹ともう少し長く遊べるくらいには……。
それからさらに一年、俺にとっては鬼門である冬が再びやってきた。
今年は特に寒さが厳しく、俺はいつも以上に引き籠り生活を余儀なくされていた。
そんなある日――
「グリーンウッドの子が?しかしあの家には今、子は居ないはずでは……」
「実は居たそうです。ですが……庶子だそうで」
「……何?」
家にて仕事をするとき、時間が許せば母は俺の部屋に来てくれる。その母と側近のそんな会話を、俺は微睡みながら聞いていた。
――グリーンウッドって、うちと同じ地位の四大公爵家の一つだな。確かにあそこは今、当主の子は居なくて、後継者は当主の弟になってるって聞いたことがあるな。でも庶子ってことは、つまりは隠し子ってことか……?
だけど隠し子なら次期後継者の当主の弟が黙ってないだろうな。
「それで、その子供の母が……ブラックウェル前当主の姪であると」
「ええ、そしてその方が急に亡くなり……それでうちに保護の打診が……」
……うわ、これ俺聞いてよかったのか?いや俺子供だし、誰にも言うつもりないからいいんだけど……。
俺が起きてたらどうするつもりだったんだ……。
ブラックウェルの前当主――俺にとっての祖父には妹が居たそうだが、その妹は周囲の反対を押し切って平民と結婚したらしく、その後の行方はブラックウェルでも把握してなかったみたいだけど……子供を産んで細々と暮らしていたようだ。
だけどまさかその子供がグリーンウッドの当主と関係を持っていたとは……。
「……まったく、とんでもないものを持ってきたな。しかし子に罪はないからな……」
「どうしますか」
「対外的にはうちの遠縁の子で親を亡くした子ということにしよう」
「承知しました」
「ちなみに歳はいくつなんだ?」
「ええと、確か……ちょうどミハル様と同じ歳ですね」
「そうか……」
え、俺と同い年なんだ。それにしても可哀想だ……。
お母さんが亡くなって、でも本当の家には居られないどころか、存在すら知られることが許されないなんて……。
俺が会えることはあまりないかもだけど、会えたら仲良くできたらいいな。
そう思いながら、俺は再び微睡みの中へ落ちて行った。
領地に戻ってきてから半年経った。
俺は家に戻ってきても相変わらずベッドの上で一日の殆どを過ごしていた。
どうやら俺は元々呼吸器が弱いだけでなく、マナ不適合症でもあると判明したため、許可なく部屋を出ることを禁じられた。
父はマナをある程度遮断できるアイテムを開発すると意気込んで、再び首都へ向かっていったので今は領地に居ない。今は父の弟子だという医者が俺の面倒を見てくれている。
――あ、そうそう。この半年の間に、母のお腹の中にいた子が生まれた。
名前はエレナ=ブラックウェルだ。愛称はレナ。母の黒い髪と父の青い目を受け継いだ、可愛らしい女の子である。
ここまで男の子が続いていたところに生まれた可愛い末の妹に、俺含め家族の皆はメロメロだ。まあ俺はあんまり会えてないんだけどね。
「ミハル様、エレナ様をお連れしましたよ」
「レナ!」
メイドが一日に数分だけレナを部屋まで連れてきてくれる。
まだ生まれて数か月もたっていないから身動ぎくらいしかしないけど、とっても可愛い。
俺は抱こうにも腕の力が心もとないので、メイドが抱いている側で頬をつついたり、手を触ったりしかできないけど。
「レナ、お兄ちゃんだよ~」
「あー、うー」
「あら、今ミハル様を見て笑いましたね」
「え~?レナはもうお兄ちゃんがわかるのかな~?なんてね」
いやー、本当可愛いな。レナは俺と違って体も弱くないし、握る手の力もとっても強いから、きっと丈夫で元気な子に育つだろうな。
「この前、ぬいぐるみをもって遊んでいたんですよ。その姿がとても可愛くて……」
「えー、そうなの!?見たかっ……ケホケホッ!」
可愛いレナのことをもっと見ていたいんだけど、少し興奮しただけで息が苦しくなってしまった。
「あら、ミハル様、大丈夫ですか!?」
「……ごめ、ゴホッ、だいじょ……ゲホゲホッ!」
「すみません、誰か!ミハル様が!」
レナのメイドがドアの向こうに叫ぶとすぐに俺のメイドが入って来て、俺の処置をしてくれた。でも発作が収まったときには既にレナの姿はなく、俺は落胆した。
生まれつきなのは仕方ないけど、もう少し丈夫にならないもんかな。せめて妹ともう少し長く遊べるくらいには……。
それからさらに一年、俺にとっては鬼門である冬が再びやってきた。
今年は特に寒さが厳しく、俺はいつも以上に引き籠り生活を余儀なくされていた。
そんなある日――
「グリーンウッドの子が?しかしあの家には今、子は居ないはずでは……」
「実は居たそうです。ですが……庶子だそうで」
「……何?」
家にて仕事をするとき、時間が許せば母は俺の部屋に来てくれる。その母と側近のそんな会話を、俺は微睡みながら聞いていた。
――グリーンウッドって、うちと同じ地位の四大公爵家の一つだな。確かにあそこは今、当主の子は居なくて、後継者は当主の弟になってるって聞いたことがあるな。でも庶子ってことは、つまりは隠し子ってことか……?
だけど隠し子なら次期後継者の当主の弟が黙ってないだろうな。
「それで、その子供の母が……ブラックウェル前当主の姪であると」
「ええ、そしてその方が急に亡くなり……それでうちに保護の打診が……」
……うわ、これ俺聞いてよかったのか?いや俺子供だし、誰にも言うつもりないからいいんだけど……。
俺が起きてたらどうするつもりだったんだ……。
ブラックウェルの前当主――俺にとっての祖父には妹が居たそうだが、その妹は周囲の反対を押し切って平民と結婚したらしく、その後の行方はブラックウェルでも把握してなかったみたいだけど……子供を産んで細々と暮らしていたようだ。
だけどまさかその子供がグリーンウッドの当主と関係を持っていたとは……。
「……まったく、とんでもないものを持ってきたな。しかし子に罪はないからな……」
「どうしますか」
「対外的にはうちの遠縁の子で親を亡くした子ということにしよう」
「承知しました」
「ちなみに歳はいくつなんだ?」
「ええと、確か……ちょうどミハル様と同じ歳ですね」
「そうか……」
え、俺と同い年なんだ。それにしても可哀想だ……。
お母さんが亡くなって、でも本当の家には居られないどころか、存在すら知られることが許されないなんて……。
俺が会えることはあまりないかもだけど、会えたら仲良くできたらいいな。
そう思いながら、俺は再び微睡みの中へ落ちて行った。
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