5%の冷やした砂糖水

煙 うみ

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4.3 艶消

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悠馬は頑として会計のお金を受け取らなかった。

代わりに友人のフルネームをLINEで送ってもいいですか、と落ち着かなそうに聞いてくる。

嫌とも言えず、うなずく。

彼はほっとした顔をして、iPhoneのロックを開いて文字を打ち込み始めた。

人前で泣くような剥き出しの弱さと、はっとする潔さと、相反する要素を併せ持っていて、なんだか印象が定まらない人だ。


「おっけいです!すごく美味しかったですー。ごちそうさまでした!」


さっきあんなに引きつった顔で笑っていた割に真子はあっけらかんとしたもので、私を引きずるように、さっさと出口へ歩き出す。

私は迎合もできずひとり食い下がる気にもなれず、なんだか窮してしまった。

情けなくしぼんだ声で、彼の整った横顔に小さく言葉を投げる。


「悠馬さん、…また来ます。」


奥にいる悠馬が、手に持ったカクテルグラスをクロスで磨きながら、私たちに向かって軽く頭を下げた。



出入口のドアをくぐりながら、私はまだ手の中にあるネックレスをもう一度確かめる。


「不思議なもの受け取っちゃった。」

「星羅、こういうごついの似合いそう」

「失くしたくないから首にかけちゃいたいけど・・・仕事中ダメよねこれは」


コートの内ポケットに、VAPEと一緒に滑り込ませる。

ずしんとした金属の重みを胸に感じた。



店を出た時、路地に吹き抜ける風が寒かったのだろう。

真子が私の腕に自分の腕を絡めてくる。

私は手に持っていたマフラーを真子の首に巻き、

ふたりで恋人みたいにくっついたまま、ネオンもまばらな大通りへと歩いて行った。
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