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本編
No,36 【シルヴィオ陛下SIDE XIV】
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ナツキを必ず幸せにする。
それがクリュヴェイエ様に対する恩返しであり、異世界にいらっしゃるナツキの真実の御両親に対するせめてもの償いであり、『ナツキ』と云う存在をこの世に産み出して下さった事への感謝の印だと思うから。
※ ※ ※
私が先ずした事は、デーボラに全ての事情を打ち明けて、協力をあおぐ事だった。
全ての事情と言ったところで、今までの全てを話した訳ではない。ただ、簡単に神子に対する呪いとその解呪について、秘かな努力を重ねてきた事。ナツキに酷い態度を取り続けてしまった理由。そうして、女神の御力によって、無事に呪いが封印された事をかいつまんで話したのだ。その際、クリュヴェイエ様の事については話さなかった。
『女神の奇跡』
それで良いと思った。
そうして、一番大事な事。
ナツキの本当の御両親については、デーボラだけには打ち明けておいた。
身分の低い出身でありながら皇妃になった母上の最大最高の味方であり、形式上の乳母よりも信頼しているデーボラには知っておいて欲しかったのだ。異世界では孤児であったが、生まれ故郷であるフォルトゥニーノの世界では立派な御両親がおいでになって愛されていた事実を。
案の定、泣かせてしまったが、涙を拭いた後には「私がナツキ様の御両親に成り代わりまして、お手伝いをさせて頂きます!」と約束してくれたのだった。
『六月の花嫁は、幸せになれる。』
ナツキの世界でのジンクス。
それを叶えてやりたいと思った。
孤児であると云う負い目の為に、恋愛願望や結婚願望のないナツキ。
顕在意識ではそう思い込んでいるが、本来は人一倍ロマンティストなナツキ。
潜在意識の奥底で眠っている願望を実現させてやりたかった。
異世界流の結婚式をしてやりたいと言う私の意を、デーボラは汲んでくれて。
使えるコネをフル活用して、私に協力してくれた。
純白の花嫁衣装とベールと、燕尾服。ブーケや指環、ティアラetc。
結婚式に必要な物は私の指導の下、デザインをおこし作り上げていってくれた。
皇室御用達の洋品店の主人は、異世界のドレスにいたく感動し感銘を受けて。
「神子様の御為でしたら、協力は惜しみませんっ!!」
と針子達は夜を徹して、奮闘してくれたのだった。
その後。
『“女神の祝福を受けて、恩寵を齎して下さった神子様”の純白の花嫁衣装』が、王都中の話題をさらい。ブリュール皇国、ひいてはセルヴァン大陸中に大流行してゆくのは、また別の話である。
※ ※ ※
「何はともあれ、めでたい!!」
「…お前には、本当に世話になった…感謝している…」
深夜、私の私室でフレドと葡萄酒の盃を傾ける。
彼には本当に感謝している。
私一人では、呪いの真相に辿り着く事はかなわなかっただろう。
大神官と部下の神官も協力はしてくれたが、彼がデルヴァンクールの神殿の書庫に眠っていた先達の記述を見つけてくれなかったら、私はナツキを召喚する勇気は出なかったに違いない。
何よりも。
共に悩み、共に苦しんでくれた。
その事が、嬉しくありがたかった。
正直、弱音を吐きたくなった時もあった。
投げ出す気にはなれなかったが、心弱くなっていた時はフレドからかけられる発破や無言の支援が心底ありがたかった。共に頑張っている仲間がいる事は、何よりの励ましになったのだった。
だから、フレドには、全てを告白した。
デーボラには適当に誤魔化した事を正直に話した。
信じられないような話の連続だったが、フレドは信じてくれた。
魔法攻撃による大怪我を負い、一度は止まった心臓が再び動いた現場にいたのだ。信じざるを得ないだろう。
クリュヴェイエ様との“会話”については、真剣な表情で聞き入ってくれた。
戦女神・ジェミニアーノの双子の妹に関しても理解してくれたが。
フレドが一番驚いていたのは、ナツキの素性だった。
「…異世界から召喚した神子が、更に違う世界の人間だったとは…
…しかも、この世界の最高神の血を引く一族の末裔だったとはな…」
「…………………」
「…こんな事は、前代未聞だぞ…」
「…………………」
「…ナツキ…どうしていた…?」
「……泣いていた……」
「…………………」
「……御両親に愛されていたと、教えてやれて良かった……」
「……そうか……」
―――そうなのだ。
ナツキに全てを打ち明けた時。
クリュヴェイエの話よりも。
キュヴィリエの話よりも。
フォルトゥニーノの話よりも。
そうして、レヴィの話よりも。
地球とは違う異世界の、本当の御両親についての話題に一番反応したのだ。
一筋の涙を流したと思ったら。
すぐにそれは、滂沱の涙となり。
たまらなくなって抱きしめれば。
『…あ、あたっ…すて、…られっ…わけ、じゃっ…なか…っ!』
その後は言葉にならずに。
私の腕の中で泣き続けたのだった。
出来得る事なら、会わせてやりたい。
それが無理ならば、一目でも姿を見せてやりたい。
ナツキの御両親にも、ナツキの無事と幸福な姿を見せて差し上げたい。
御両親の深い想いに、応えたい。
……今後の課題だな。
私は水晶球で、“視せてやる”事が出来ないか精査する事を決意したのだった。
盃を煽ったフレドは、急にニヤリと悪い表情になった。
「…ところで…エーロ王は、どうしてるんだ…?」
と。
それがクリュヴェイエ様に対する恩返しであり、異世界にいらっしゃるナツキの真実の御両親に対するせめてもの償いであり、『ナツキ』と云う存在をこの世に産み出して下さった事への感謝の印だと思うから。
※ ※ ※
私が先ずした事は、デーボラに全ての事情を打ち明けて、協力をあおぐ事だった。
全ての事情と言ったところで、今までの全てを話した訳ではない。ただ、簡単に神子に対する呪いとその解呪について、秘かな努力を重ねてきた事。ナツキに酷い態度を取り続けてしまった理由。そうして、女神の御力によって、無事に呪いが封印された事をかいつまんで話したのだ。その際、クリュヴェイエ様の事については話さなかった。
『女神の奇跡』
それで良いと思った。
そうして、一番大事な事。
ナツキの本当の御両親については、デーボラだけには打ち明けておいた。
身分の低い出身でありながら皇妃になった母上の最大最高の味方であり、形式上の乳母よりも信頼しているデーボラには知っておいて欲しかったのだ。異世界では孤児であったが、生まれ故郷であるフォルトゥニーノの世界では立派な御両親がおいでになって愛されていた事実を。
案の定、泣かせてしまったが、涙を拭いた後には「私がナツキ様の御両親に成り代わりまして、お手伝いをさせて頂きます!」と約束してくれたのだった。
『六月の花嫁は、幸せになれる。』
ナツキの世界でのジンクス。
それを叶えてやりたいと思った。
孤児であると云う負い目の為に、恋愛願望や結婚願望のないナツキ。
顕在意識ではそう思い込んでいるが、本来は人一倍ロマンティストなナツキ。
潜在意識の奥底で眠っている願望を実現させてやりたかった。
異世界流の結婚式をしてやりたいと言う私の意を、デーボラは汲んでくれて。
使えるコネをフル活用して、私に協力してくれた。
純白の花嫁衣装とベールと、燕尾服。ブーケや指環、ティアラetc。
結婚式に必要な物は私の指導の下、デザインをおこし作り上げていってくれた。
皇室御用達の洋品店の主人は、異世界のドレスにいたく感動し感銘を受けて。
「神子様の御為でしたら、協力は惜しみませんっ!!」
と針子達は夜を徹して、奮闘してくれたのだった。
その後。
『“女神の祝福を受けて、恩寵を齎して下さった神子様”の純白の花嫁衣装』が、王都中の話題をさらい。ブリュール皇国、ひいてはセルヴァン大陸中に大流行してゆくのは、また別の話である。
※ ※ ※
「何はともあれ、めでたい!!」
「…お前には、本当に世話になった…感謝している…」
深夜、私の私室でフレドと葡萄酒の盃を傾ける。
彼には本当に感謝している。
私一人では、呪いの真相に辿り着く事はかなわなかっただろう。
大神官と部下の神官も協力はしてくれたが、彼がデルヴァンクールの神殿の書庫に眠っていた先達の記述を見つけてくれなかったら、私はナツキを召喚する勇気は出なかったに違いない。
何よりも。
共に悩み、共に苦しんでくれた。
その事が、嬉しくありがたかった。
正直、弱音を吐きたくなった時もあった。
投げ出す気にはなれなかったが、心弱くなっていた時はフレドからかけられる発破や無言の支援が心底ありがたかった。共に頑張っている仲間がいる事は、何よりの励ましになったのだった。
だから、フレドには、全てを告白した。
デーボラには適当に誤魔化した事を正直に話した。
信じられないような話の連続だったが、フレドは信じてくれた。
魔法攻撃による大怪我を負い、一度は止まった心臓が再び動いた現場にいたのだ。信じざるを得ないだろう。
クリュヴェイエ様との“会話”については、真剣な表情で聞き入ってくれた。
戦女神・ジェミニアーノの双子の妹に関しても理解してくれたが。
フレドが一番驚いていたのは、ナツキの素性だった。
「…異世界から召喚した神子が、更に違う世界の人間だったとは…
…しかも、この世界の最高神の血を引く一族の末裔だったとはな…」
「…………………」
「…こんな事は、前代未聞だぞ…」
「…………………」
「…ナツキ…どうしていた…?」
「……泣いていた……」
「…………………」
「……御両親に愛されていたと、教えてやれて良かった……」
「……そうか……」
―――そうなのだ。
ナツキに全てを打ち明けた時。
クリュヴェイエの話よりも。
キュヴィリエの話よりも。
フォルトゥニーノの話よりも。
そうして、レヴィの話よりも。
地球とは違う異世界の、本当の御両親についての話題に一番反応したのだ。
一筋の涙を流したと思ったら。
すぐにそれは、滂沱の涙となり。
たまらなくなって抱きしめれば。
『…あ、あたっ…すて、…られっ…わけ、じゃっ…なか…っ!』
その後は言葉にならずに。
私の腕の中で泣き続けたのだった。
出来得る事なら、会わせてやりたい。
それが無理ならば、一目でも姿を見せてやりたい。
ナツキの御両親にも、ナツキの無事と幸福な姿を見せて差し上げたい。
御両親の深い想いに、応えたい。
……今後の課題だな。
私は水晶球で、“視せてやる”事が出来ないか精査する事を決意したのだった。
盃を煽ったフレドは、急にニヤリと悪い表情になった。
「…ところで…エーロ王は、どうしてるんだ…?」
と。
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