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去年のリッチな夜でした
その36
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程無くして、家宅捜索が始まった。
それに合わせて付近には非常線が張られ、通行が厳に遮られたのだった。
二台のパトカーが道を塞いで停められ、問題のビルの周囲から人を遠ざける。
昼食にはまだ早い時間帯、商店街の外れに位置する一画に於いては、往来の人だかりは然程多くもなかったが、偶然通り掛かった人々は、突然始まった物々しい捕物の様子に不安と興味を抱いたようであった。
特にこの場合、野次馬の目を引いたのは、警官達がそれぞれに腰からぶら下げた物々しい防毒マスクであった。
顔面をすっぽり覆うタイプの、重厚にして物騒な防毒マスクを目に留めた人々は皆、警戒を強めて足早にその場を去って行った。
非常線の輪郭近く、道を塞いで停められたパトカーの手前で、薬師寺と鬼塚も、周囲のそうした様子を眺めていた。
私服姿の彼らの腰にも、いつでも使えるよう、剥き出しの防毒マスクが備え付けられている。今回の『敵』が、中国でも指折りの毒物劇物製造業者である事を踏まえて、厳重な警戒と準備が為されていた。
警官隊の先陣、スーツ姿の屈強そうな男達が、ビルの玄関で相手方と揉めている。その後ろで機を待ち続ける警官の人数は、五十に上るだろうか。
大捕物と呼んで良い様相である。
一連の遣り取りを外側から眺める内、鬼塚はふと口の端を吊り上げた。
「……おっさんがぼやいてた事思い出すな」
「ん?」
首を巡らせた薬師寺の隣で、鬼塚は少し先で悶着を繰り返している警官隊に視線を据えた。
「あちこち盥回しにされた挙句、肝心の手柄は他所に取られちまうって、俺らも人の事笑えなくなったかな……」
「このまますんなり片付けばの話だろ」
薬師寺は面持ちを緩めず、所轄の手で主導される強制捜査の様子を凝視する。
「第一、綺麗に片付く問題なのかどうかがまず判らんし……」
遠方を見据えるその双眸に、病室の景色が不意に映り込んだ。
立ち続けているのに疲れたのか、近藤は窓辺に置いてあった椅子に逆様に跨ると、背凭れに両手を乗せて行儀悪く寄り掛かる。
「んじゃ、あれか? 俺らが最初にこの病院で顔合わせた時、確か動画配信者の聴き取りに来たっつってたけども、そいつも同じような理由で例の『薬』に手ェ出してたっての?」
「みたいっスね」
ベッドの上で胡坐を掻いていた鬼塚は、片手を持ち上げて項を解き解した。
「『天羽ヨルダ』、本名『田島恵』。年齢三十四歳。県内の医療機器メーカーに事務員として勤務。今もまだ上の階で寝てんでしょうけど、こいつもまた無理な配信活動が祟って実生活に影響が出始めてた矢先、ネットで『薬』の評判を見掛けて買い付けたそうです。俺ァそっちの界隈についちゃ明るくないんスけど、そこそこの有名人らしいっスよ。フォロワーも十万だか二十万だか付いてて、連日のゲーム実況で結構稼いでたんだとか」
そう答えてから、鬼塚はベッドの上で足を組み直した。
「でも、だからこそなのか、平日でも毎日のように深夜まで実況続けて、休みンなりゃあ、丸々十二時間ぶっ通しの生配信とか無茶な真似もやらかすようンなってったそうで、段々リアルの生活が厳しくなってったんだそうです」
「判るような判んねえような話だなぁ……」
椅子の背凭れの上で組んだ両手に顎を乗せ、近藤は眼差しを持ち上げた。
「元々は趣味で始めた事たろうに、変な強迫観念にでも駆られたんかね? 増やした数字が減ってくのを見るのが苦痛だったとか? まあ実際、折角集めた金蔓を手放すのも癪ではあんだろうけどさぁ」
その近藤の斜交いで、鬼塚が鼻息を吐く。
「本人が言うにゃ、『ファンとの繋がりを失くすのが怖かったから』って話でしたね。配信活動始めてからこっち、周りから本当に必要とされたり、度々熱心に応援されたり、励まされたりして来たのが物凄ーく嬉しかったんだそうで、いつからか『皆を失望させたくない!』ってなっちゃったそうですよ。俺らが聴き取りに行った時もあんま後悔してない感じで、『今までの人生で経験した事の無い事ばかりでしたから』つって、何か感慨に耽ってました。ベッドで呼吸器付けたままだったけど」
「つまり何? 現実で満たされなかった承認欲求が、捌け口を見付けた途端にどうしようも無く暴走しちゃったって事? 顔も名前も知らない誰かの為に、その期待に応えようと独りでジタバタした挙句、とうとう『薬物』にまで手ェ出しちゃったと?」
左右の眉に段差を付けて、近藤は疲れた口調で纒めると、過分に湿った息を吐き出した。
「今時の連中ってな健気だねぇ、何とも……」
「……『健気』で済ませられる分、まだ『まし』なんじゃないですか?」
その時、それまで黙っていた薬師寺が、不意に口を挟んだ。
ベッドの端に腰掛けた薬師寺は、体から未だ毒が抜け切らぬのか、今一つ冴えない面持ちで、それでも窓辺に座る近藤へと呼び掛ける。
「俺らが最後に確認した事例なんか、そんな美辞麗句を差し込む余地すらありませんでしたよ、マジで」
「ああ、あれか……」
鬼塚も何かを思い出したのか、隣のベッドで渋い表情を湛えた。
「何? まだ何かあんの?」
いい加減げんなりした様子を覗かせた近藤へ、薬師寺は頷いて見せる。
「俺らが病院に運び込まれる直前、最後に立ち会った現場が駅前のラーメン屋だったんです。そこの従業員が、営業中に客の目の前で突然ぶっ倒れたって案件だったんですが、事の成り行きを聞いてくと、こいつがまた曇る話で……」
薬師寺が、僅かに眉根を寄せた。
「ちゃんとした報告を受けたのはつい先日なんですけど、その駅前のラーメン屋、結構規模のデカいチェーン店なんだそうですが、折からの人手不足に見舞われて、ここ何ヶ月間か、昼過ぎから夜までの時間帯は、ずっとワンオペで店を任せっ切りにしてたらしいんです」
「あー……」
そこまで聞いた所で、近藤も概ね事態を察したようであった。
「……あれか、連日の無茶振りシフトに耐え兼ねて、『眠気覚まし』の『薬』に縋ったと……」
近藤の遣した推論に、薬師寺は首肯を以って答えた。
椅子に跨ったまま、近藤も天井を仰いだ。
「あんま偉そうな事言えねえよなぁ、そういうのは……天下の公務員様だって、この先どうなんのかまるで判んねえんだから……」
近藤はそう呟いた後、足元に目を落として顔を顰める。
「取り分けチェーン店なんかなぁ、結局は本社の胸算用が優先されんだし、兎にも角にも業績上げようとして、良い空き物件が見付かりゃあ、すぐさまそこへ店舗を捻じ込みやがる。人員の確保なんか二の次、三の次だ。長期的に見りゃ機会損失のが痛いってのが経営側の理屈なんだろうが、数値上は兎も角、現実に人的リソースを無限に確保出来る訳ゃ無えだろうに。地域人口が百万ありゃ、百万人が常に仕事を探してるとでも思ってんのかねぇ……」
薬師寺が、ベッドに片手を付いて上体を反らした。
「そんな有様だから、最近じゃ日雇い系の求人サイトに縋ってまで、何とか業務を持ち堪えさせてる店舗も多いって話ですよ」
「こんなんじゃ、その内、国全体が自転車操業に陥ったりして」
鬼塚が斜に構えた様子で軽口を挟んでも、近藤は窘める事も苦笑を交える事もせず、しかつめらしい面持ちを保っていた。
「在り得ない話じゃないぜ、今や。『同じ事をいつまでも繰り返していれば、いつまでも変わらず発展出来る』って覚え込まされた連中が舵取りしてる限り、世の中の大筋の流れなんか変わる道理が無えんだ。『たとえ今が苦しかろうが、いや苦しいからこそ、直向きに我武者羅に、脇目も振らずに働き続ければ必ずや道は開ける!』、『大量生産には大量消費が絶対に付き従うものだし、大衆の物欲が翳る事など絶対に起こり得ない!』、『商品を作れば必ず売れる! 売れないのは当事者の意識と努力が足りない所為だ!』」
大袈裟に詠い上げてから、人生の先輩たる壮年の男は、若者二人の方へと首を巡らせた。
「……と声高に喚いて突っ走って来た挙句が、今のこの様なんだ。『少子高齢化』だとか『借金財政』だとか『女性の権利』だとか、ややこしい事考えんのは全部後回し。そりゃ『勤勉実直』である事が、未だに何よりの『美徳』とされてるお国柄だもの。弱音なんて、吐いてる暇も聞いてる暇も無い訳よ。お陰で、自殺率は世界のワースト一〇に毎年堂々ランクインしてる。後始末に一々駆り出される身としても、善良な一市民としても、全く溜まったもんじゃねえっての」
近藤は最後には舌まで出して、実にうんざりした口調で持論を纏めたのだった。
窓から吹き込んだ風が、レースのカーテンを静かに揺らした。
その時、ビルの入口付近で騒ぎが起こった。
先程から、多少の抵抗は受けつつも建物内部に続々と進入して行った警官隊の先陣が、ビルの奥から慌ただしく退避して来る。まるで砲撃を逃れる兵士のように、一目散に外へと飛び出す幾つもの人影を認めて、薬師寺と鬼塚も表情を張り詰めたものへと切り替えた。
昼前の商店街の外れに、緊迫した空気が漂い始めた。
それに合わせて付近には非常線が張られ、通行が厳に遮られたのだった。
二台のパトカーが道を塞いで停められ、問題のビルの周囲から人を遠ざける。
昼食にはまだ早い時間帯、商店街の外れに位置する一画に於いては、往来の人だかりは然程多くもなかったが、偶然通り掛かった人々は、突然始まった物々しい捕物の様子に不安と興味を抱いたようであった。
特にこの場合、野次馬の目を引いたのは、警官達がそれぞれに腰からぶら下げた物々しい防毒マスクであった。
顔面をすっぽり覆うタイプの、重厚にして物騒な防毒マスクを目に留めた人々は皆、警戒を強めて足早にその場を去って行った。
非常線の輪郭近く、道を塞いで停められたパトカーの手前で、薬師寺と鬼塚も、周囲のそうした様子を眺めていた。
私服姿の彼らの腰にも、いつでも使えるよう、剥き出しの防毒マスクが備え付けられている。今回の『敵』が、中国でも指折りの毒物劇物製造業者である事を踏まえて、厳重な警戒と準備が為されていた。
警官隊の先陣、スーツ姿の屈強そうな男達が、ビルの玄関で相手方と揉めている。その後ろで機を待ち続ける警官の人数は、五十に上るだろうか。
大捕物と呼んで良い様相である。
一連の遣り取りを外側から眺める内、鬼塚はふと口の端を吊り上げた。
「……おっさんがぼやいてた事思い出すな」
「ん?」
首を巡らせた薬師寺の隣で、鬼塚は少し先で悶着を繰り返している警官隊に視線を据えた。
「あちこち盥回しにされた挙句、肝心の手柄は他所に取られちまうって、俺らも人の事笑えなくなったかな……」
「このまますんなり片付けばの話だろ」
薬師寺は面持ちを緩めず、所轄の手で主導される強制捜査の様子を凝視する。
「第一、綺麗に片付く問題なのかどうかがまず判らんし……」
遠方を見据えるその双眸に、病室の景色が不意に映り込んだ。
立ち続けているのに疲れたのか、近藤は窓辺に置いてあった椅子に逆様に跨ると、背凭れに両手を乗せて行儀悪く寄り掛かる。
「んじゃ、あれか? 俺らが最初にこの病院で顔合わせた時、確か動画配信者の聴き取りに来たっつってたけども、そいつも同じような理由で例の『薬』に手ェ出してたっての?」
「みたいっスね」
ベッドの上で胡坐を掻いていた鬼塚は、片手を持ち上げて項を解き解した。
「『天羽ヨルダ』、本名『田島恵』。年齢三十四歳。県内の医療機器メーカーに事務員として勤務。今もまだ上の階で寝てんでしょうけど、こいつもまた無理な配信活動が祟って実生活に影響が出始めてた矢先、ネットで『薬』の評判を見掛けて買い付けたそうです。俺ァそっちの界隈についちゃ明るくないんスけど、そこそこの有名人らしいっスよ。フォロワーも十万だか二十万だか付いてて、連日のゲーム実況で結構稼いでたんだとか」
そう答えてから、鬼塚はベッドの上で足を組み直した。
「でも、だからこそなのか、平日でも毎日のように深夜まで実況続けて、休みンなりゃあ、丸々十二時間ぶっ通しの生配信とか無茶な真似もやらかすようンなってったそうで、段々リアルの生活が厳しくなってったんだそうです」
「判るような判んねえような話だなぁ……」
椅子の背凭れの上で組んだ両手に顎を乗せ、近藤は眼差しを持ち上げた。
「元々は趣味で始めた事たろうに、変な強迫観念にでも駆られたんかね? 増やした数字が減ってくのを見るのが苦痛だったとか? まあ実際、折角集めた金蔓を手放すのも癪ではあんだろうけどさぁ」
その近藤の斜交いで、鬼塚が鼻息を吐く。
「本人が言うにゃ、『ファンとの繋がりを失くすのが怖かったから』って話でしたね。配信活動始めてからこっち、周りから本当に必要とされたり、度々熱心に応援されたり、励まされたりして来たのが物凄ーく嬉しかったんだそうで、いつからか『皆を失望させたくない!』ってなっちゃったそうですよ。俺らが聴き取りに行った時もあんま後悔してない感じで、『今までの人生で経験した事の無い事ばかりでしたから』つって、何か感慨に耽ってました。ベッドで呼吸器付けたままだったけど」
「つまり何? 現実で満たされなかった承認欲求が、捌け口を見付けた途端にどうしようも無く暴走しちゃったって事? 顔も名前も知らない誰かの為に、その期待に応えようと独りでジタバタした挙句、とうとう『薬物』にまで手ェ出しちゃったと?」
左右の眉に段差を付けて、近藤は疲れた口調で纒めると、過分に湿った息を吐き出した。
「今時の連中ってな健気だねぇ、何とも……」
「……『健気』で済ませられる分、まだ『まし』なんじゃないですか?」
その時、それまで黙っていた薬師寺が、不意に口を挟んだ。
ベッドの端に腰掛けた薬師寺は、体から未だ毒が抜け切らぬのか、今一つ冴えない面持ちで、それでも窓辺に座る近藤へと呼び掛ける。
「俺らが最後に確認した事例なんか、そんな美辞麗句を差し込む余地すらありませんでしたよ、マジで」
「ああ、あれか……」
鬼塚も何かを思い出したのか、隣のベッドで渋い表情を湛えた。
「何? まだ何かあんの?」
いい加減げんなりした様子を覗かせた近藤へ、薬師寺は頷いて見せる。
「俺らが病院に運び込まれる直前、最後に立ち会った現場が駅前のラーメン屋だったんです。そこの従業員が、営業中に客の目の前で突然ぶっ倒れたって案件だったんですが、事の成り行きを聞いてくと、こいつがまた曇る話で……」
薬師寺が、僅かに眉根を寄せた。
「ちゃんとした報告を受けたのはつい先日なんですけど、その駅前のラーメン屋、結構規模のデカいチェーン店なんだそうですが、折からの人手不足に見舞われて、ここ何ヶ月間か、昼過ぎから夜までの時間帯は、ずっとワンオペで店を任せっ切りにしてたらしいんです」
「あー……」
そこまで聞いた所で、近藤も概ね事態を察したようであった。
「……あれか、連日の無茶振りシフトに耐え兼ねて、『眠気覚まし』の『薬』に縋ったと……」
近藤の遣した推論に、薬師寺は首肯を以って答えた。
椅子に跨ったまま、近藤も天井を仰いだ。
「あんま偉そうな事言えねえよなぁ、そういうのは……天下の公務員様だって、この先どうなんのかまるで判んねえんだから……」
近藤はそう呟いた後、足元に目を落として顔を顰める。
「取り分けチェーン店なんかなぁ、結局は本社の胸算用が優先されんだし、兎にも角にも業績上げようとして、良い空き物件が見付かりゃあ、すぐさまそこへ店舗を捻じ込みやがる。人員の確保なんか二の次、三の次だ。長期的に見りゃ機会損失のが痛いってのが経営側の理屈なんだろうが、数値上は兎も角、現実に人的リソースを無限に確保出来る訳ゃ無えだろうに。地域人口が百万ありゃ、百万人が常に仕事を探してるとでも思ってんのかねぇ……」
薬師寺が、ベッドに片手を付いて上体を反らした。
「そんな有様だから、最近じゃ日雇い系の求人サイトに縋ってまで、何とか業務を持ち堪えさせてる店舗も多いって話ですよ」
「こんなんじゃ、その内、国全体が自転車操業に陥ったりして」
鬼塚が斜に構えた様子で軽口を挟んでも、近藤は窘める事も苦笑を交える事もせず、しかつめらしい面持ちを保っていた。
「在り得ない話じゃないぜ、今や。『同じ事をいつまでも繰り返していれば、いつまでも変わらず発展出来る』って覚え込まされた連中が舵取りしてる限り、世の中の大筋の流れなんか変わる道理が無えんだ。『たとえ今が苦しかろうが、いや苦しいからこそ、直向きに我武者羅に、脇目も振らずに働き続ければ必ずや道は開ける!』、『大量生産には大量消費が絶対に付き従うものだし、大衆の物欲が翳る事など絶対に起こり得ない!』、『商品を作れば必ず売れる! 売れないのは当事者の意識と努力が足りない所為だ!』」
大袈裟に詠い上げてから、人生の先輩たる壮年の男は、若者二人の方へと首を巡らせた。
「……と声高に喚いて突っ走って来た挙句が、今のこの様なんだ。『少子高齢化』だとか『借金財政』だとか『女性の権利』だとか、ややこしい事考えんのは全部後回し。そりゃ『勤勉実直』である事が、未だに何よりの『美徳』とされてるお国柄だもの。弱音なんて、吐いてる暇も聞いてる暇も無い訳よ。お陰で、自殺率は世界のワースト一〇に毎年堂々ランクインしてる。後始末に一々駆り出される身としても、善良な一市民としても、全く溜まったもんじゃねえっての」
近藤は最後には舌まで出して、実にうんざりした口調で持論を纏めたのだった。
窓から吹き込んだ風が、レースのカーテンを静かに揺らした。
その時、ビルの入口付近で騒ぎが起こった。
先程から、多少の抵抗は受けつつも建物内部に続々と進入して行った警官隊の先陣が、ビルの奥から慌ただしく退避して来る。まるで砲撃を逃れる兵士のように、一目散に外へと飛び出す幾つもの人影を認めて、薬師寺と鬼塚も表情を張り詰めたものへと切り替えた。
昼前の商店街の外れに、緊迫した空気が漂い始めた。
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