9 / 57
9.名前
しおりを挟む
喋りたいのに喋ることができず、口をぱくぱくさせる彼女。
困り顔で私を見てきた。
そんな彼女にゆっくりと問いかける。
「字は書けますか?」
彼女はコクコクと頷く。
震えていた手が紙を求めるように彷徨う。
「待っていてください。用意しますから」
私は紙とペンを用意するため背を向けながら話をする。
「独り言を言います。・・・あなたは何かしらの理由で人間になったと理解してもよろしいでしょうか?」
息を呑む気配がした。構わず続ける。
「私はあなたが望まない正体を限り言うつもりはありません。ですが、きっと私はあなたの力になれると思いますので、私を信用してください」
振り返り彼女を見た。
透き通るような青い目が真っ直ぐ私に向けられていた。
私は紙とペンを彼女の前に置いた。
「私はフィーです。あなたの名前を伺ってもいいですか?」
彼女はペンを手に取り文字を書く。
『わたしの名前はセイネです』
美しい文字の羅列に見惚れとしまいそうになる。だが、気を取り直しセイネ様に言った。
「セイネ様。その文字は今では廃れ誰も使うことのない古代語になります。ですので現在使われている文字でかけるようにしましょう」
私の言葉にセイネ様は驚いた顔を見せた。
『そうなの?』
「はい。それにその文字はこの世界に置いて不思議な力を持ってしまいますので、なるべく使わない方がいいと思います」
セイネ様はペンを握りしめ真面目な顔で頷いて見せたので、私は笑ってしまった。
「そもそも、彼らには読めませんけどね。私の前だけなら大丈夫です。それも交えて今の文字を少しずつ覚えますか?」
『お願い』
顔を明るくして見てくるセイネ様が可愛らしかった。
字を教えながら、不安なことやしてほしいことを聞いてみる。
彼女は初めて地面を歩くため足が痛いことを訴えてきた。そして服が慣ず、特にスカートが違和感があること。食事もなんの食べ物かわからなくて困っているとも言ってきた。
「わかりました。と、その前にセイネ様のお世話をするためにも部屋から自分の荷物をとってきますので、少し待っていてください」
少し不安そうになるセイネ様に私は笑った。
「すぐに帰ってきます」
そう言うと、部屋を出た。
出たのはいいが、マネリア様はどこにいるのだろうか?少し離れるので声をかけたいのに分からない。
アルフ様の後をついてきただけなので、どちらからきたかも覚えていなかった。
「お困りかな?」
明るい声が聞こえ、振り向くとそこにはアルフ様が壁に寄りかかって立っていた。
「・・・お暇なんですね」
「冷たいくない?待っていたんだよ。もっと喜べばいいのに」
この方自信過剰ではないのだろうか?
「知らない方に警戒しない方がおかしいとは思いますが?」
「身分が上なのに?」
「はっきり言って身分があっても信用できないと思っています」
「ふふっ。君は面白いね。さぁ、案内してあげるよ。ついておいで」
遊ばれているのか?
ここで澄まして去ることができればどんなにいいか。今は間違いなく迷子になるので、素直にアルフ様の後をついて歩くことにした。
途中マネリア様に出会い、セイネ様の名前を伝え後のことをお願いした。
そして、またアルフ様の跡を追って足を進める。
「彼女の名前はセイネか」
「はい」
「やはり彼女は人魚かい?」
「・・・それはなんともいえません」
「彼女が使っていた字は古の文字だよね?」
どきりとして立ち止まりアルフ様を見た。
「いつ見たのですか?あれが古代語だとわかったのです?」
私の声は震えていたと思う。
アルフ様は私を振り返った。
「筆談ができるみたいだったから紙を渡した。だが、その文字は誰も理解できなかった」
真剣な眼差しは嘘は言っていないようだった。でも、それは私にとってはあまり好ましくなかった。
「だからこそ、人魚に詳しい君なら理解できるのではと思った。
そんな顔をしないでくれ。別に大事にしようとは思っていない。君は・・・
彼女に字を教えてやってくれ。彼女の願いを聞いてあげてほしい」
彼は寂しそうに笑った。
私にはこの方がどんな人なのかわからなかった。
でも、ほんの少しだけ信じてもよいのかもとも思ったのだった。
困り顔で私を見てきた。
そんな彼女にゆっくりと問いかける。
「字は書けますか?」
彼女はコクコクと頷く。
震えていた手が紙を求めるように彷徨う。
「待っていてください。用意しますから」
私は紙とペンを用意するため背を向けながら話をする。
「独り言を言います。・・・あなたは何かしらの理由で人間になったと理解してもよろしいでしょうか?」
息を呑む気配がした。構わず続ける。
「私はあなたが望まない正体を限り言うつもりはありません。ですが、きっと私はあなたの力になれると思いますので、私を信用してください」
振り返り彼女を見た。
透き通るような青い目が真っ直ぐ私に向けられていた。
私は紙とペンを彼女の前に置いた。
「私はフィーです。あなたの名前を伺ってもいいですか?」
彼女はペンを手に取り文字を書く。
『わたしの名前はセイネです』
美しい文字の羅列に見惚れとしまいそうになる。だが、気を取り直しセイネ様に言った。
「セイネ様。その文字は今では廃れ誰も使うことのない古代語になります。ですので現在使われている文字でかけるようにしましょう」
私の言葉にセイネ様は驚いた顔を見せた。
『そうなの?』
「はい。それにその文字はこの世界に置いて不思議な力を持ってしまいますので、なるべく使わない方がいいと思います」
セイネ様はペンを握りしめ真面目な顔で頷いて見せたので、私は笑ってしまった。
「そもそも、彼らには読めませんけどね。私の前だけなら大丈夫です。それも交えて今の文字を少しずつ覚えますか?」
『お願い』
顔を明るくして見てくるセイネ様が可愛らしかった。
字を教えながら、不安なことやしてほしいことを聞いてみる。
彼女は初めて地面を歩くため足が痛いことを訴えてきた。そして服が慣ず、特にスカートが違和感があること。食事もなんの食べ物かわからなくて困っているとも言ってきた。
「わかりました。と、その前にセイネ様のお世話をするためにも部屋から自分の荷物をとってきますので、少し待っていてください」
少し不安そうになるセイネ様に私は笑った。
「すぐに帰ってきます」
そう言うと、部屋を出た。
出たのはいいが、マネリア様はどこにいるのだろうか?少し離れるので声をかけたいのに分からない。
アルフ様の後をついてきただけなので、どちらからきたかも覚えていなかった。
「お困りかな?」
明るい声が聞こえ、振り向くとそこにはアルフ様が壁に寄りかかって立っていた。
「・・・お暇なんですね」
「冷たいくない?待っていたんだよ。もっと喜べばいいのに」
この方自信過剰ではないのだろうか?
「知らない方に警戒しない方がおかしいとは思いますが?」
「身分が上なのに?」
「はっきり言って身分があっても信用できないと思っています」
「ふふっ。君は面白いね。さぁ、案内してあげるよ。ついておいで」
遊ばれているのか?
ここで澄まして去ることができればどんなにいいか。今は間違いなく迷子になるので、素直にアルフ様の後をついて歩くことにした。
途中マネリア様に出会い、セイネ様の名前を伝え後のことをお願いした。
そして、またアルフ様の跡を追って足を進める。
「彼女の名前はセイネか」
「はい」
「やはり彼女は人魚かい?」
「・・・それはなんともいえません」
「彼女が使っていた字は古の文字だよね?」
どきりとして立ち止まりアルフ様を見た。
「いつ見たのですか?あれが古代語だとわかったのです?」
私の声は震えていたと思う。
アルフ様は私を振り返った。
「筆談ができるみたいだったから紙を渡した。だが、その文字は誰も理解できなかった」
真剣な眼差しは嘘は言っていないようだった。でも、それは私にとってはあまり好ましくなかった。
「だからこそ、人魚に詳しい君なら理解できるのではと思った。
そんな顔をしないでくれ。別に大事にしようとは思っていない。君は・・・
彼女に字を教えてやってくれ。彼女の願いを聞いてあげてほしい」
彼は寂しそうに笑った。
私にはこの方がどんな人なのかわからなかった。
でも、ほんの少しだけ信じてもよいのかもとも思ったのだった。
11
あなたにおすすめの小説
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
私たちの離婚幸福論
桔梗
恋愛
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
さよなら 大好きな人
小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。
政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。
彼にふさわしい女性になるために努力するほど。
しかし、アーリアのそんな気持ちは、
ある日、第2王子によって踏み躙られることになる……
※本編は悲恋です。
※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。
※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる