聖女の証を義妹に奪われました。ただ証だけ持っていても意味はないのですけどね? など 恋愛作品集

にがりの少なかった豆腐

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貴方の言う真実の愛のお相手は誰なのでしょうか。まさか私の妹ではありませんよね?

お相手は誰?

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 私とシレスの実家は隣接した領地をもっています。隣接している領地間での婚約は別に珍しいことではないのですが、この婚約は他の領地へのけん制を目的としていたのです。

 その相手領地は、私の家とシレスの実家の領地に隣接していて、そこを管理しているのは侯爵家なのです。そして近年、その侯爵家がより力を持ち始め、周囲に在った子爵家の領地を吸収したことで、周辺の領地をもつ各家が危機感を持ち始めました。
 その子爵家はもともと力を失ってきていた家だったので、そうなったのは必然と言えばそうだったのですが周囲に領地をもつ領主からすればそんなことは言っていられません。
 そして同じように領地が吸収されないようにするために少しでも力を得ようと、両家が手を組みそのという理由で私とシレスの婚約がなったわけです。

「戻りました、お嬢様」
「ごくろうさま。どうだったかしら?」

 会場を確認しに行ったルルーが戻ってきたことで、俯いていた視線を上にあげます。そして、その視線の先に居たルルーの表情はどことなく困惑しているように映りました。

 ルルーの表情はどういう事かしら? シレスの事はどうでもいいのですが、相手がエレーナだったらと思うと……。今まで可愛がっていた妹に裏切られたとなれば、どうすればいいのかわからないわ。

 内心聞きたくないと思いながらもルルーの言葉を待ちます。

「シレス様と一緒におられた方は私が存じない方でした」
「……え? そ、そうだったのね。確認ありがとう」
「いえ」

 シレスの相手がエレーナではなかったことは良かったのだけど、エレーナを疑ってしまうのは駄目な姉だわ。後で謝らないと。
 でも誰なのかしら? ルルーが知らないという事は、少なくとも側仕えが付いて行ける場では会ったことがない、ということでしょうし。

 エレーナの事を真っ先に疑ってしまったことに罪悪感を覚えながらもシレスの相手の事を考えます。

 別にシレスに対してそこまで未練がある訳ではないのですよね。両家の関係を無視してまで真実の愛を見つけたと言える相手が誰なのか、何らかの意図があるのかを知らないといけないというのもありますし、ルルーは私の側仕えのため夜会の場には出ることが出来ないので、どの令嬢がどの家の出身なのか明確に知らないのもありますから。

 これは、私が直接見ないと駄目かしらね?

 ルルーに確認に行かせたのは、もしシレスの相手がエレーナだったらというそんな場面を見たくない、そう思ったから。でもルルーが知らない令嬢だと言う以上、エレーナではないのは確かね。ルルーが私の妹であるエレーナを見間違えることなんてありえないでしょうし。

「ルルー。私も一回確認してきます」
「いえ、あの。お嬢様が確認をする必要は無いと思います」
「え?」

 ルルーの言葉に一瞬、思考が止まる。この場でそれを止める、その理由に思い至り血の気が一気に引いて行くのを感じた。

「いえ、嘘を言った訳ではありません。私が確認したのに、お嬢様が確認する必要は無い。そういう意味です」

 私の顔色が悪くなったことに気付いたルルーがすぐに理由を話してくれました。

「そ、そうなの。それならよかった」

 ルルーの言葉を聞いて胸をなでおろし、大きく息をつく。

「そうだとしても、ルルーが知らなくても私が知っているかもしれないから、やっぱり私が確認に行った方が良いでしょう? それにこの後の対応を考えるには相手を知っておいた方が良いのもありますし」
「……そうですか」
「なので行ってきますね。すぐ戻るので待っていて」
「了解しました。行ってらっしゃいませ」
「ええ」

 そう言って控室から会場へ向かった。
 

 
 会場の入り口に着くと、中から自分の事が見えないように注意しながら中を覗いてみます。

 さすがに退場してしまっているから中に入るのはよくないですね。それに中にいる方や給仕にもなるべく見られないようにしませんと。

 夜会はまだ半ばというところですが、所々大きな集まりになっていますね。おそらく貴族間にある派閥に関係しているのでしょう。ただ、今の私にとっては関係のない派閥の事を気にするところではないのですが。

 シレスとその令嬢はどの辺りに居るのかしら。さすがにさっき私に婚約破棄を言い渡した場所に居続けることはないわよね。それにルルーが確認できたということはここから見える場所にいるということでしょうし。

 シレスの家が属する派閥の場所を確認するも、そこにはシレスの姿はありませんでした。
 普通、夜会などの場で属していない派閥の場所へ行く者はそういないのですが、相手がわからないので他の派閥の場所も確認しないといけませんね。

 しかし、いくら探しても人が集まっている場所にシレスの姿は確認できませんでした。

 おかしいですね。どこにも居ないわ。どういう事なのかしら?
 もしかしたら、あの後すぐに会場から出て行った可能性もありそうですね。でも先ほどルルーが確認できたのですからこの場に居ないとおかしいのですが、まさか入れ違いになったということではないですよね?

 そう思い今度は派閥の集まり以外の場所に居る者たちを確認していきます。

 いくつか夜会会場でポツポツと、数人で談笑している者たちが居る。あのような者たちは別の派閥に属しており、派閥の集まりの中では会話が難しい場合、個別で集まることが多いのです。

 うーん、あっ、居たわ!

 派閥の集まりから少し離れた場所に2人組の男女の姿を確認することが出来た。他の場所とは違い少し影になっている場所に2人でいるのは少し怪しい感じではあるけれど、男性の方は確実にシレスだった。そしてその隣にいる女性が誰なのかを確認する。

 あの相手は…………いや、だれ? ルルーが見たことがないだけだと思っていたのですが、私にも見覚えがない方なんて、シレスがどこで知り合いになったのかがわかりませんね。本当にどこの令嬢でしょうか。
 確認しても相手がわからないなんて想定外です。ですが、このままここにいるのも良くありませんね。

 結局、私もシレスの相手が誰なのかはわからず、その場を離れ、控室に戻りました。
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