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聖女と言う存在
樹に触れる
しおりを挟む聖女の血が元になっている樹を見ていたのだが、どうしてか、この樹に触れた方が良い気がして来た。
「なあ」
「何でしょうか?」
おそらく聖女の体と血が元となった樹に何らかの繋がりがあるから、それの影響なのだと思うけど、どうしても触らないといけない気がして来たため青年に問いかける。
「この樹って触っていいのか? 柵があるってことは触れるのを禁止しているってことだろう?」
「触れる? ……いえ、この柵があるのは、もしもまた動き出したら危ないと判断した住民が勝手に建てた物なので、中に入っても問題はないですよ。ただ、この柵を立てた住民に見られれば何をされるかわかりませんけれど」
「ああ、そういう」
青年はどうして俺が触れたいと言ったのか気になったようだが、その理由を聞いてくることはなかった。
しかし、確かに、自業自得とはいっても領主を引き千切った樹なんだよな。それは警戒されるし、危険だと思うよな。しかも、聖女のとは言え、血液から生えて来た樹なんて悍ましいと感じてもおかしくはない。
「……まあ、見つからなければ問題ないのか」
「そうですね」
「それじゃあ、ちょっと行って来る」
青年も今なら問題ないといった態度なので、俺は樹を囲っている柵を乗り越え……るのは身長的にも頭の固定感的にも無理そうだから、柵の隙間に身を押し込める。素人が急ごしらえで作ったからなのか、この柵は結構固定が甘かった。
割とあっさり向こう側に行けそ……胸が思いっきり引っかかるな。と言うかこの聖女、青年が言うにはガサツな性格だったらしいが、その割に胸がデカい。いや、今それを考えている場合じゃないな。
引っかかる胸をどうにか押し込めて、ようやく柵の向こう側に行くことが出来た。少しだけ青年の方を確認すると、青年はこちらを見ていなかった。少しだけ耳が赤くなっていたので、おそらく柵に胸が引っかかったあたりで視線を逸らしたのだろう。
少しからかいたい気持ちになったが、それよりも樹に触れることを優先する。
近距離でこの樹を見ると、何と言うか体の内側から触れろ、早く触れろという感じに体の内側から命令を出されているような気持になる。
柵の外側に居た時はちょっと触れた方が良いかも? くらいの感情だったのだが、ここまで脅迫されているような状態になると、少しどころではなく恐怖が勝る。
しかし、触れた方が良いのは確かだ。そう判断して、俺は恐る恐る目の前の樹に触れた。
最初に手から伝わってきたのは樹の冷たさだけだった。
触れた方が良いと思ったのは思い過ごしだったか? と思ったところで、何かが俺の意識と繋がったかのような強い衝撃を受けた。
そして、そこから一気に俺の中に何かが流れ込んで来ると、俺の意識はその場で途切れた。
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