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可視化ライブラリ
きげんコンチェルト15
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恥ずかしいような照れくさいような。でも嬉しくもある感じで。壁やんとふたり、ニヤニヤしていたら。
あれ? またチャイム?
もう来客の予定は無いのに。今度は誰だろう。
壁やんが素早く席を立ちインターホンの対応をしてくれる。
相手はご飯屋さんのデリバリーみたい。
「僕は頼んでないけど誰かが頼んだのかも。代わりに受け取っておこう」
「いや、分からない物は駄目だよ」
壁やんはオートロックの解除を渋ってる。
心配性なんだから。
「それは多分私だ。さきほど電話の相手に昼はまだ済ませていないと話してしまってね」
お部屋で電話対応をしていた鈴村さんがひょいと顔をのぞかせて教えてくれた。
あっ。さっきまで履いてたズボンを脱いで、留めてたシャツのボタンをもう外してる。
こっちの部屋に来る時は服装を直してからにしてね。
壁やんが来てるんだから。
お客さんは鈴村さんのお知り合いの人が頼んでくれたお昼ご飯。
お店の名前を確認して。今度こそ大丈夫。オートロックを解除する。
エレベーターで上がってくる間にダイニングテーブルに広げたままだった新聞を片付けて。
そろそろじゃないかなって玄関に行こうとしたら。
壁やんがひとりで行っちゃった。
僕も手伝うって言ったのにリビングで鈴村さんと待っていてだって。
もしかして。壁やんは警備モード?
気にし過ぎじゃない? 気にし過ぎぐらいで丁度いいなんて。息が詰まる。
ほどほどで大丈夫なんだって分かってもらえないかな。
早く鈴村さんに身の守り方を教わらないと。
護身術? 極真空手? ブラジリアン柔術?
そういうのを学ぶジムとか通って強くなれば良くない?
落ち着いたら自己研鑽に励もう。そうしよう。
「さっくん、運ぶの手伝って」
「はーい」
受け取りは出来なくても、玄関から運ぶのは手伝わせてくれるんだね。
鍵をかけたらヨシって感じ?
廊下に出たらエスニックなスパイスの香り。
「タイ料理だって。辛いの平気?」
「辛い料理好きだよ。本格的な香りで美味しそう」
辛過ぎるのは食べられないけど、食べて汗が出てくるぐらいの程々の辛さは好き。
渡されたお皿の中身はまだ湯気が立つ、出来たてのガパオライス。
食欲をそそるいい匂い。
届いた料理は大きなダイニングテーブルいっぱいになるくらいたくさんで。
大皿に盛られた青パパイヤのサラダ。真っ赤なトムヤムクン。僕の大好きなグリーンカレーもある。
「ウマそうじゃん」
美味しそうな香りにつられて玲司君がやってきた。
「一緒に食べよ。鈴村さんのお知り合いからすっごくたくさん届いたから。このチキン、皮がパリパリに焼けてて美味しそうだ」
玲司君の取り皿も用意してたら部屋の中から無慈悲な着信音。
「玲司君、出なくていいの?」
「もういいだろ。アイツら無限に湧いてきやがる」
「それだけたくさんの人が昨日の僕達に興味があるなんて不思議。ご飯は取り分けて持っていくから電話に出なよ」
嫌だーって喚く玲司君を部屋に押し戻して。
ちょっと可哀想だから。野菜は少なめにしてあげるよ。お米とお肉たっぷり。
サフランライスにカレーをかけて。
冷めないうちに召し上がれ。
お盆に山盛りのご飯を乗せて。
電話中だから静かに部屋に入るよ。
「だーかーらー。オレからは何も言えねぇんだよ。……くどい! オレが誰に口止めされてると思う? そういうの察してくんない?」
玲司君キレすぎ。
それにもめげず電話の相手は僕のことを知りたくてたまらないって様子。
そのサクラなら今ここにいるよ。
ベッドサイドのテーブルにお盆を置いて。
相手には見えていないのだけど、スマホの向こう側に向けて手を振ってみる。
玲司君、こんなのの相手ずっとしてるの大変だね。
お肉食べて頑張って。
はい。あーん。
一口目は労いの気持ちを込めて食べさせてあげる。
あとは自分で食べて。
僕、圭介さんにもご飯届けたいからさ。
駄々っ子みたいに抱きついてくるのをペチペチ叩いて引き剥がす。
今日の僕はあんまり甘くないよ。
そのタイ料理ぐらい辛口だから。
諦めて電話相手のループする会話に付き合うんだ。
あれ? またチャイム?
もう来客の予定は無いのに。今度は誰だろう。
壁やんが素早く席を立ちインターホンの対応をしてくれる。
相手はご飯屋さんのデリバリーみたい。
「僕は頼んでないけど誰かが頼んだのかも。代わりに受け取っておこう」
「いや、分からない物は駄目だよ」
壁やんはオートロックの解除を渋ってる。
心配性なんだから。
「それは多分私だ。さきほど電話の相手に昼はまだ済ませていないと話してしまってね」
お部屋で電話対応をしていた鈴村さんがひょいと顔をのぞかせて教えてくれた。
あっ。さっきまで履いてたズボンを脱いで、留めてたシャツのボタンをもう外してる。
こっちの部屋に来る時は服装を直してからにしてね。
壁やんが来てるんだから。
お客さんは鈴村さんのお知り合いの人が頼んでくれたお昼ご飯。
お店の名前を確認して。今度こそ大丈夫。オートロックを解除する。
エレベーターで上がってくる間にダイニングテーブルに広げたままだった新聞を片付けて。
そろそろじゃないかなって玄関に行こうとしたら。
壁やんがひとりで行っちゃった。
僕も手伝うって言ったのにリビングで鈴村さんと待っていてだって。
もしかして。壁やんは警備モード?
気にし過ぎじゃない? 気にし過ぎぐらいで丁度いいなんて。息が詰まる。
ほどほどで大丈夫なんだって分かってもらえないかな。
早く鈴村さんに身の守り方を教わらないと。
護身術? 極真空手? ブラジリアン柔術?
そういうのを学ぶジムとか通って強くなれば良くない?
落ち着いたら自己研鑽に励もう。そうしよう。
「さっくん、運ぶの手伝って」
「はーい」
受け取りは出来なくても、玄関から運ぶのは手伝わせてくれるんだね。
鍵をかけたらヨシって感じ?
廊下に出たらエスニックなスパイスの香り。
「タイ料理だって。辛いの平気?」
「辛い料理好きだよ。本格的な香りで美味しそう」
辛過ぎるのは食べられないけど、食べて汗が出てくるぐらいの程々の辛さは好き。
渡されたお皿の中身はまだ湯気が立つ、出来たてのガパオライス。
食欲をそそるいい匂い。
届いた料理は大きなダイニングテーブルいっぱいになるくらいたくさんで。
大皿に盛られた青パパイヤのサラダ。真っ赤なトムヤムクン。僕の大好きなグリーンカレーもある。
「ウマそうじゃん」
美味しそうな香りにつられて玲司君がやってきた。
「一緒に食べよ。鈴村さんのお知り合いからすっごくたくさん届いたから。このチキン、皮がパリパリに焼けてて美味しそうだ」
玲司君の取り皿も用意してたら部屋の中から無慈悲な着信音。
「玲司君、出なくていいの?」
「もういいだろ。アイツら無限に湧いてきやがる」
「それだけたくさんの人が昨日の僕達に興味があるなんて不思議。ご飯は取り分けて持っていくから電話に出なよ」
嫌だーって喚く玲司君を部屋に押し戻して。
ちょっと可哀想だから。野菜は少なめにしてあげるよ。お米とお肉たっぷり。
サフランライスにカレーをかけて。
冷めないうちに召し上がれ。
お盆に山盛りのご飯を乗せて。
電話中だから静かに部屋に入るよ。
「だーかーらー。オレからは何も言えねぇんだよ。……くどい! オレが誰に口止めされてると思う? そういうの察してくんない?」
玲司君キレすぎ。
それにもめげず電話の相手は僕のことを知りたくてたまらないって様子。
そのサクラなら今ここにいるよ。
ベッドサイドのテーブルにお盆を置いて。
相手には見えていないのだけど、スマホの向こう側に向けて手を振ってみる。
玲司君、こんなのの相手ずっとしてるの大変だね。
お肉食べて頑張って。
はい。あーん。
一口目は労いの気持ちを込めて食べさせてあげる。
あとは自分で食べて。
僕、圭介さんにもご飯届けたいからさ。
駄々っ子みたいに抱きついてくるのをペチペチ叩いて引き剥がす。
今日の僕はあんまり甘くないよ。
そのタイ料理ぐらい辛口だから。
諦めて電話相手のループする会話に付き合うんだ。
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