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可視化ライブラリ
おねがいピックミー4
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「ガチめにイヤがられてんじゃん」
玲司君、いま笑うとこ?
大爆笑は違くない?
「あー。痛っ。結構効いたかも」
「氷いるか?」
「そだねー。いちおう?」
玲司君はを氷取り行くってキッチン行っちゃった。
圭介さんの意識はあるみたい。
なら最悪の状況ではない?
「さっきのアレ。ただの和装バッグじゃないよねー」
「鞄は普通のものです。でも楓さんが護身用にって金のインゴットを3枚入れてくれて。暴漢に襲われた時にはこれで殴りなさいって。1.5キロならそれなりに効くからって。でも圭介さんに使うことになるなんて思ってなくて」
圭介さんを殴りつけたバッグを強く胸に抱きしめる。
胸が痛いほどドキドキしてるのは僕が不安に感じてるから。
「それすごい役に立つやつ。効果はいま俺で実感してるー」
楓さんから渡された重し入りの鞄は使うことないお守りだと言われていた。
体育館で襲うような後先知らずな奴はいないだろうって。
それが帰ってから役に立つなんて。ぜんぜん嬉しくない。
人を殴るなんて。生まれてこの方したことなかったのに。
こんな初めては経験したくなかった。
「なんだい? 殴られた方より殴った方のが死にそうな顔して」
キッチンで氷を用意する玲司君にでも聞いたのか。鈴村さんが様子を見に来てくれた。
おそい。もっと早くに来てほしかったよ。
「慣れてないね」
暴力に慣れていないと言いたいんだろう。
10代の頃からヤクザの構成員をしてた鈴村さんと僕は違う。
「当たり前です。僕は普通の家庭で育ってるんだから」
「兄弟喧嘩はしなかったのかい?」
「僕はお兄ちゃんだから小さい子には優しくしなさいって言われてたし。それに性別が違ったり年が離れてると、そもそも喧嘩にもならないっていうか」
「そういう教育方針のご家庭だったのだね」
そう。一般的な教育方針だ。
「圭君と玲司は取っ組み合いの喧嘩を何度もしているよ。その勝敗が賭けの材料にされるほどね」
殴られ慣れている雰囲気の理由がそれか。
それと何でも賭け事に絡めるのやめようよ。
かわいい思い出みたいな雰囲気出してるけど。
「相手をひるませるには、ちょうどいい力加減だったね。慣れていない者は加減を間違えやすい。とくに殴られたことのない子は。今日の感覚を忘れてはいけないよ」
痛みを知らないとやりすぎてしまうことがあるらしい。
それは聞いたことある。
握りしめた鞄の持ち手。
腕を振り下ろしたときに切った空気。
圭介さんの後頭部にぶつかったときの反動。消えない手の感覚。
これを忘れちゃいけないのか。嫌だな。
「それにしても」
鈴村さんはさっきから舐めまわすように僕らの周りをうろうろしてますが、なんでしょう?
「今の君達、いい被写体だから撮っていい? もう撮っているけれど」
先程から手に持っているiPhone。
もしかして、それで?
「ほら、これとか雰囲気があって良い感じだよ」
見せられた画面の中の僕達。
破れて着崩れた着物。乱れた髪型。握りしめた鞄。
うつろな瞳で呆然とした表情の僕と。背中を丸めて倒れている圭介さん。
荒れたベッドシーツの皺から争った痕跡がうかがえて。
たしかに写真としてはいい。
奥行と物語を感じられる。
だけど勝手に写真を撮るのはマナー違反。
いい写真だなって思っちゃったけど、それとこれとは別。
僕は認めないから。消してください。
「エロくてイーじゃん。それ欲しい」
玲司君は勝手にデータの共有を始めないで。
それより氷を貸して。圭介さんも身を起こして見たがらない。
絶対安静。頭の中も外も冷やしてください。
だというのに。
なに3人で盛り上がってるのかな?
写真の露出がどーとか、色調がどーとか。
いま必要?
「ふざけるなっ。いますぐその写真を消して!」
僕は人生で初めて人を殴って。
しかもそれが大好きな相手で。
それでもなんとか冷静であろうと努力してるんだよ。
それを写真に撮って。茶化して。
助けてくれないなら、ずっとほっといて。
自分達が楽しむ時だけ来るな。
玲司君、いま笑うとこ?
大爆笑は違くない?
「あー。痛っ。結構効いたかも」
「氷いるか?」
「そだねー。いちおう?」
玲司君はを氷取り行くってキッチン行っちゃった。
圭介さんの意識はあるみたい。
なら最悪の状況ではない?
「さっきのアレ。ただの和装バッグじゃないよねー」
「鞄は普通のものです。でも楓さんが護身用にって金のインゴットを3枚入れてくれて。暴漢に襲われた時にはこれで殴りなさいって。1.5キロならそれなりに効くからって。でも圭介さんに使うことになるなんて思ってなくて」
圭介さんを殴りつけたバッグを強く胸に抱きしめる。
胸が痛いほどドキドキしてるのは僕が不安に感じてるから。
「それすごい役に立つやつ。効果はいま俺で実感してるー」
楓さんから渡された重し入りの鞄は使うことないお守りだと言われていた。
体育館で襲うような後先知らずな奴はいないだろうって。
それが帰ってから役に立つなんて。ぜんぜん嬉しくない。
人を殴るなんて。生まれてこの方したことなかったのに。
こんな初めては経験したくなかった。
「なんだい? 殴られた方より殴った方のが死にそうな顔して」
キッチンで氷を用意する玲司君にでも聞いたのか。鈴村さんが様子を見に来てくれた。
おそい。もっと早くに来てほしかったよ。
「慣れてないね」
暴力に慣れていないと言いたいんだろう。
10代の頃からヤクザの構成員をしてた鈴村さんと僕は違う。
「当たり前です。僕は普通の家庭で育ってるんだから」
「兄弟喧嘩はしなかったのかい?」
「僕はお兄ちゃんだから小さい子には優しくしなさいって言われてたし。それに性別が違ったり年が離れてると、そもそも喧嘩にもならないっていうか」
「そういう教育方針のご家庭だったのだね」
そう。一般的な教育方針だ。
「圭君と玲司は取っ組み合いの喧嘩を何度もしているよ。その勝敗が賭けの材料にされるほどね」
殴られ慣れている雰囲気の理由がそれか。
それと何でも賭け事に絡めるのやめようよ。
かわいい思い出みたいな雰囲気出してるけど。
「相手をひるませるには、ちょうどいい力加減だったね。慣れていない者は加減を間違えやすい。とくに殴られたことのない子は。今日の感覚を忘れてはいけないよ」
痛みを知らないとやりすぎてしまうことがあるらしい。
それは聞いたことある。
握りしめた鞄の持ち手。
腕を振り下ろしたときに切った空気。
圭介さんの後頭部にぶつかったときの反動。消えない手の感覚。
これを忘れちゃいけないのか。嫌だな。
「それにしても」
鈴村さんはさっきから舐めまわすように僕らの周りをうろうろしてますが、なんでしょう?
「今の君達、いい被写体だから撮っていい? もう撮っているけれど」
先程から手に持っているiPhone。
もしかして、それで?
「ほら、これとか雰囲気があって良い感じだよ」
見せられた画面の中の僕達。
破れて着崩れた着物。乱れた髪型。握りしめた鞄。
うつろな瞳で呆然とした表情の僕と。背中を丸めて倒れている圭介さん。
荒れたベッドシーツの皺から争った痕跡がうかがえて。
たしかに写真としてはいい。
奥行と物語を感じられる。
だけど勝手に写真を撮るのはマナー違反。
いい写真だなって思っちゃったけど、それとこれとは別。
僕は認めないから。消してください。
「エロくてイーじゃん。それ欲しい」
玲司君は勝手にデータの共有を始めないで。
それより氷を貸して。圭介さんも身を起こして見たがらない。
絶対安静。頭の中も外も冷やしてください。
だというのに。
なに3人で盛り上がってるのかな?
写真の露出がどーとか、色調がどーとか。
いま必要?
「ふざけるなっ。いますぐその写真を消して!」
僕は人生で初めて人を殴って。
しかもそれが大好きな相手で。
それでもなんとか冷静であろうと努力してるんだよ。
それを写真に撮って。茶化して。
助けてくれないなら、ずっとほっといて。
自分達が楽しむ時だけ来るな。
応援ありがとうございます!
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