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魔女の子のこった3
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「そういうことで今日はテレビの中からのご挨拶になるけど。いっぱい可愛いサクラちゃんを写してもらえるようにおめかししましょ」
はいっ。きれいな着物を着てカメラに映してもらえるよう頑張ります。
そうしたら一緒にいる鈴村さんもたくさんテレビに映って柏崎さんに見てもらえるしね。
この20年間の鈴村さんの気持ちを考えたら胸がすごく痛いけど。
でも僕がそれで泣くのはなんか違う。
だって僕は話を聞いただけ。それも表面をさらりと触れただけ。
鈴村さんの痛みを知ったようで、まだ何も分かってない。
きっと一生かかっても分からない。
だって僕が同じ痛みを覚えなくていいように守ってくれているのが鈴村さんだから。
どうやって恩返しをしたらいいんだろう。
新しく知るたびに、知りたいことが増える。
答えが教科書に載ってる学校の勉強の方がずっと簡単だ。
新しい悩みを抱える僕に楓さんは努めて明るく接してくれる。
その優しさがかえって辛い。
それでも、僕は無理して笑った。
今回楓さんが用意してくれたのは大輪の向日葵が描かれた着物。
原色の色使いがクールですっごく夏っぽい。
「訪問着にするか迷ったけどテレビに映るのはバストアップだけやし、座っていて華やかに見える大柄の小紋にしてみたの。それにこの小紋は圭君がサクラちゃんをイメージして作家さんに染めてもらった小紋やから。サクラちゃんも気に入るかしら」
この着物、圭介さんが僕のためにオーダーしてくれたの?
そんな話は聞いてない。サプライズが嬉しい。
これを着て圭介さんと和服デートがしたいな。
外は暑いし室内の美術館とかで大人のしっとりしたデートを希望します。
「すごい僕の好きな感じです。華やかな向日葵の黄色と力強い葉や茎の緑色のコントラストが良いし。圭介さんが色も相談してくれたのかな。あと、このボーダーに透けてる布もクラシカルなレースみたいで素敵です」
「横縞に透けるように織られた反物を絽というんよ。今私が着てるのは紗。違いは分かる?」
「絽はカッチリした印象で、楓さんの着ている着物は透け感が強めでよりレーシーな感じ?」
いきなりお着物クイズはやめて。ドキドキしちゃう。
「そのイメージで正解よ。絽に比べると紗は少しカジュアルな織物ね。どちらも薄物と呼ばれて真夏にのみ着られるの」
クイズには正解できたみたい。良かった。
花見会のあとに少しだけ着物のこと勉強したけど、まだまだ分かんないことだらけなんだ。
「時間もないし。まずはお化粧からね。圭君からお道具借りてきたから自分でやれるわよね?」
あの大きな荷物。僕のコスメボックスだったんだ。
どおりで重たかったわけだ。
パウダールームに女優ミラーあったし、あそこでメイクしよ。
楓さんはテレビでも見て待っててください。
1時間くらいかかるから。
テレビに映るなら少し濃い目のメイクでも大丈夫かな。
玲司君にも褒められた丁寧なシェーディング。
ヘルシーなツヤ感でフレッシュな印象を意識して。
ベースメイクを塗り込んでたら楓さんが見に来た。
テレビつまらなかった?
でもこの時間は省略できないので今しばらくお待ちを。
僕が化粧してるのを見る方が楽しい? そうかな? 普通だよ?
「サクラちゃんのお化粧はまるで魔法ね。そうだ。せっかくだし鈴ちゃんみたいなお顔にならん?」
鈴村さん風メイク?
タレ目っぽくは作れるよ。
唇の形もリップの塗り方でなんとでもなる。だから薄くすることも簡単だ。
リップはあんまり強い赤だとキツくなるからかわいめのチェリーレッド。
アイカラーはベージュゴールドのグラデーション。
どうです? 鈴村さんになれました?
「すごいわ。まるで鈴ちゃんの子供みたい。ホクロも付けれる?」
ホクロ? ウォータープルーフのアイライナーで簡単に書けますよ?
ご指名の場所は左目の目尻側。ちょっと下。ちょうど涙の通り道。
楓さんの指示するところに小さな黒い点を描く。
髪型は着物と同じ黄色いリボンを一緒に編み込んだ。
これならショートヘアでも華やかな雰囲気になる。
「完璧やわ」
お褒めいただき光栄です。
はいっ。きれいな着物を着てカメラに映してもらえるよう頑張ります。
そうしたら一緒にいる鈴村さんもたくさんテレビに映って柏崎さんに見てもらえるしね。
この20年間の鈴村さんの気持ちを考えたら胸がすごく痛いけど。
でも僕がそれで泣くのはなんか違う。
だって僕は話を聞いただけ。それも表面をさらりと触れただけ。
鈴村さんの痛みを知ったようで、まだ何も分かってない。
きっと一生かかっても分からない。
だって僕が同じ痛みを覚えなくていいように守ってくれているのが鈴村さんだから。
どうやって恩返しをしたらいいんだろう。
新しく知るたびに、知りたいことが増える。
答えが教科書に載ってる学校の勉強の方がずっと簡単だ。
新しい悩みを抱える僕に楓さんは努めて明るく接してくれる。
その優しさがかえって辛い。
それでも、僕は無理して笑った。
今回楓さんが用意してくれたのは大輪の向日葵が描かれた着物。
原色の色使いがクールですっごく夏っぽい。
「訪問着にするか迷ったけどテレビに映るのはバストアップだけやし、座っていて華やかに見える大柄の小紋にしてみたの。それにこの小紋は圭君がサクラちゃんをイメージして作家さんに染めてもらった小紋やから。サクラちゃんも気に入るかしら」
この着物、圭介さんが僕のためにオーダーしてくれたの?
そんな話は聞いてない。サプライズが嬉しい。
これを着て圭介さんと和服デートがしたいな。
外は暑いし室内の美術館とかで大人のしっとりしたデートを希望します。
「すごい僕の好きな感じです。華やかな向日葵の黄色と力強い葉や茎の緑色のコントラストが良いし。圭介さんが色も相談してくれたのかな。あと、このボーダーに透けてる布もクラシカルなレースみたいで素敵です」
「横縞に透けるように織られた反物を絽というんよ。今私が着てるのは紗。違いは分かる?」
「絽はカッチリした印象で、楓さんの着ている着物は透け感が強めでよりレーシーな感じ?」
いきなりお着物クイズはやめて。ドキドキしちゃう。
「そのイメージで正解よ。絽に比べると紗は少しカジュアルな織物ね。どちらも薄物と呼ばれて真夏にのみ着られるの」
クイズには正解できたみたい。良かった。
花見会のあとに少しだけ着物のこと勉強したけど、まだまだ分かんないことだらけなんだ。
「時間もないし。まずはお化粧からね。圭君からお道具借りてきたから自分でやれるわよね?」
あの大きな荷物。僕のコスメボックスだったんだ。
どおりで重たかったわけだ。
パウダールームに女優ミラーあったし、あそこでメイクしよ。
楓さんはテレビでも見て待っててください。
1時間くらいかかるから。
テレビに映るなら少し濃い目のメイクでも大丈夫かな。
玲司君にも褒められた丁寧なシェーディング。
ヘルシーなツヤ感でフレッシュな印象を意識して。
ベースメイクを塗り込んでたら楓さんが見に来た。
テレビつまらなかった?
でもこの時間は省略できないので今しばらくお待ちを。
僕が化粧してるのを見る方が楽しい? そうかな? 普通だよ?
「サクラちゃんのお化粧はまるで魔法ね。そうだ。せっかくだし鈴ちゃんみたいなお顔にならん?」
鈴村さん風メイク?
タレ目っぽくは作れるよ。
唇の形もリップの塗り方でなんとでもなる。だから薄くすることも簡単だ。
リップはあんまり強い赤だとキツくなるからかわいめのチェリーレッド。
アイカラーはベージュゴールドのグラデーション。
どうです? 鈴村さんになれました?
「すごいわ。まるで鈴ちゃんの子供みたい。ホクロも付けれる?」
ホクロ? ウォータープルーフのアイライナーで簡単に書けますよ?
ご指名の場所は左目の目尻側。ちょっと下。ちょうど涙の通り道。
楓さんの指示するところに小さな黒い点を描く。
髪型は着物と同じ黄色いリボンを一緒に編み込んだ。
これならショートヘアでも華やかな雰囲気になる。
「完璧やわ」
お褒めいただき光栄です。
応援ありがとうございます!
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