35 / 163
恋愛サティスファクション
彼色わーどろーぶ3
しおりを挟む
返事を待たずにドアが開けられた。
「玲司が可愛いSサイズモデルを隠しているのはここかい? 邪魔をするよ」
「ああ。ジャマだ。すぐに帰れ。腐れヤロウ」
「それが上司に対する正しい言葉使いかな? 私は大変に傷付いたので謝罪を求める。さあ、詫びの品としてそこの坊やを貸しておくれ」
会議室に入ってきたのは背が高くて線の細い、しなやかな美人のお兄さん(年齢不詳)。
まろみのあるたれ目。肩にかかる黒髪を緩く赤い組紐で結んで。お人形さんみたいだ。
服装はカットソーにカーディガン、チノパン。王道オフィスカジュアル。
「ごきげんよう、子猫ちゃん。君が玲司のお気に入りだね。うん。玲司が惚れちゃう気持ち分かるなあ」
めっちゃ至近距離で観察されてるんですけど。
僕はそんなに可愛くはないので。
中性的な美人に見つめられてドキドキしてきた。
でも、この人は玲司君の上司さんなんだよね。
ご挨拶しとかなきゃ。
「はじめまして。佐倉唯です。お仕事中にお邪魔してすいません」
「おや、ご丁寧にありがとう。私はDFの統括プロデューサーをしている鈴村理人だ。こう見えても偉い人なのだよ。玲司は全然敬ってはくれないけれど」
「玲司君がいつもお世話になっています」
「まるで奥方のような挨拶だね。ふふっ」
奥さんみたいだなんて。
口が滑りました。すいません。
恥ずかしい。
「あんまりからかってやるな。佐倉はてめぇと違うんだよ」
「そうかい? 彼、私と同じ匂いがするよ? ネコだろう?」
「世の中のネコ全部がてめぇと同じとか、クソだな」
「ほらまた玲司は汚い言葉を使う。メッだよ」
人差し指を立ててメッってする鈴村さん。
立ち振舞いとか仕草とかもそうだけど。
本人も言ってるようにこの人もゲイ、しかもネコ側ってことなんだろう。
ファッション業界だとそういうのを隠さない人も多いって聞くけど本当なんだな。
「それにしても君はモテそうだ。羨ましいねえ」
「僕なんて全然モテないです。鈴村さんのがすっごい美人だしモテそうです」
「私は駄目だよ。皆遊びのつもりでしか声をかけてくれないのだ。悲しいねえ。でも不思議。君、性格悪いの?」
こんなに綺麗な人が遊びで声かけられるしかないなんてありえない。
きっと謙遜ってやつだろう。
僕がモテないのは魅力が足りないだけ。
「佐倉はてめぇの数百倍マシだ。性格が良過ぎてここまでノコノコついてくるお人好しだぜ。モテないのはこれのせい」
玲司君が見せたのは僕が今日来てきた洋服の写真。
「これは酷いね。彼の魅力が半減だ。もったいない」
そんなに駄目ですか?
DFの偉い人から駄目出しされるのはさすがにショックだ。
「うむ。ちょっと待っていてくれたまえ。今、良いものを見繕ってこよう」
鈴村さんは顎に手を当てて、少し考えたあと。颯爽と会議室から出ていった。
それを見送る玲司君はとても嬉しそうだ。
「良かったな。佐倉。土産が増えるぞ」
「これ以上洋服は要りません」
今の時点で貰い過ぎだもん。
これ以上は無理。受け取れないよ。
「つれないこと言うなよ。オレが作った服もどんどん着ろ」
カーディガンの余ってる袖口をいじらないっ。
腰を撫でてたくし上げたセーターのウエスト回りから手を入れないっ。
隙あらばセクハラをする癖さえなければ玲司君すっごく良い人なのに。
「玲司が可愛いSサイズモデルを隠しているのはここかい? 邪魔をするよ」
「ああ。ジャマだ。すぐに帰れ。腐れヤロウ」
「それが上司に対する正しい言葉使いかな? 私は大変に傷付いたので謝罪を求める。さあ、詫びの品としてそこの坊やを貸しておくれ」
会議室に入ってきたのは背が高くて線の細い、しなやかな美人のお兄さん(年齢不詳)。
まろみのあるたれ目。肩にかかる黒髪を緩く赤い組紐で結んで。お人形さんみたいだ。
服装はカットソーにカーディガン、チノパン。王道オフィスカジュアル。
「ごきげんよう、子猫ちゃん。君が玲司のお気に入りだね。うん。玲司が惚れちゃう気持ち分かるなあ」
めっちゃ至近距離で観察されてるんですけど。
僕はそんなに可愛くはないので。
中性的な美人に見つめられてドキドキしてきた。
でも、この人は玲司君の上司さんなんだよね。
ご挨拶しとかなきゃ。
「はじめまして。佐倉唯です。お仕事中にお邪魔してすいません」
「おや、ご丁寧にありがとう。私はDFの統括プロデューサーをしている鈴村理人だ。こう見えても偉い人なのだよ。玲司は全然敬ってはくれないけれど」
「玲司君がいつもお世話になっています」
「まるで奥方のような挨拶だね。ふふっ」
奥さんみたいだなんて。
口が滑りました。すいません。
恥ずかしい。
「あんまりからかってやるな。佐倉はてめぇと違うんだよ」
「そうかい? 彼、私と同じ匂いがするよ? ネコだろう?」
「世の中のネコ全部がてめぇと同じとか、クソだな」
「ほらまた玲司は汚い言葉を使う。メッだよ」
人差し指を立ててメッってする鈴村さん。
立ち振舞いとか仕草とかもそうだけど。
本人も言ってるようにこの人もゲイ、しかもネコ側ってことなんだろう。
ファッション業界だとそういうのを隠さない人も多いって聞くけど本当なんだな。
「それにしても君はモテそうだ。羨ましいねえ」
「僕なんて全然モテないです。鈴村さんのがすっごい美人だしモテそうです」
「私は駄目だよ。皆遊びのつもりでしか声をかけてくれないのだ。悲しいねえ。でも不思議。君、性格悪いの?」
こんなに綺麗な人が遊びで声かけられるしかないなんてありえない。
きっと謙遜ってやつだろう。
僕がモテないのは魅力が足りないだけ。
「佐倉はてめぇの数百倍マシだ。性格が良過ぎてここまでノコノコついてくるお人好しだぜ。モテないのはこれのせい」
玲司君が見せたのは僕が今日来てきた洋服の写真。
「これは酷いね。彼の魅力が半減だ。もったいない」
そんなに駄目ですか?
DFの偉い人から駄目出しされるのはさすがにショックだ。
「うむ。ちょっと待っていてくれたまえ。今、良いものを見繕ってこよう」
鈴村さんは顎に手を当てて、少し考えたあと。颯爽と会議室から出ていった。
それを見送る玲司君はとても嬉しそうだ。
「良かったな。佐倉。土産が増えるぞ」
「これ以上洋服は要りません」
今の時点で貰い過ぎだもん。
これ以上は無理。受け取れないよ。
「つれないこと言うなよ。オレが作った服もどんどん着ろ」
カーディガンの余ってる袖口をいじらないっ。
腰を撫でてたくし上げたセーターのウエスト回りから手を入れないっ。
隙あらばセクハラをする癖さえなければ玲司君すっごく良い人なのに。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
29
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる