4 / 8
04
しおりを挟む
***
「飯食わねーの、律架」
「うう、食欲ないよ……奈津代わりに食べて、お弁当」
「なにこれ、今日やけに可愛くねえ?」
「弟の遠足の弁当の残り。頑張ったんだよ、早起きして」
「わ、玉子焼き甘いのな」
「青が好きなのー……」
昼休み、友人の奈津(なづ)に代わりに弁当を食べてもらって僕はひたすら机に突っ伏して休息を。
「何時まで起きてたの?」
「三時……スケッチブックの紙がなくなっちゃったからあきらめて寝たんだけど。お弁当は五時に起きて作った」
「マジかー、お前体力ないのによくやるよな」
「遠足のお弁当くらい作れるならさ。僕はそういうのとは無縁な子供だったからね……」
***
「律架、ゆっくりで良いよ。体重かけて良いから」
「ご、ごめん……目の前が暗くて……」
その日の午後の授業はマラソンだった。おとなしく見学するのもズルだとか言われそうで、無理して走ったら十分も経たないうちに倒れた。体操着は土埃だらけのまま、僕は保健室に連れて行かれて授業は終わる。帰りは奈津が送ってくれると言って僕の肩を抱きながら。
「あっ」
「あ……青じゃん」
学校から歩いて二十分。築五十年の木造アパートの入り口では、ちょうど帰ってきたばかりの青月がいる。青月は奈津を見た途端睨みつける。
「奈津、なにしにきたんだよ!」
「なんだお前、あいっかわらず可愛くねえのなー。兄ちゃん送って来ただけだよ」
「お兄ちゃんに触るな!」
「離したら倒れるんだよ! ほら、家の鍵開けろ」
「知らない人は入れちゃいけませんって、学校で習ったぞ」
「馬鹿、知ってんだろ。律架寝かせるんだよ、俺は入らねーから!」
しぶしぶ家の鍵を開けた青月、僕は玄関で降ろされた。荷物を隣に、奈津は青月と睨み合い、ため息をついて家を出る。
「奈津、ありがとね。また明日」
「……ああ、今夜は無理しないで早く寝ろよな」
「もう来るなよ、奈津!」
「うるさいガキ!」
騒がしいのは帰る間際、しばらくして奈津が帰宅すると青月は布団に横になった僕の枕元に座って少し悲しげな顔をして見ていた。
「お兄ちゃん、昨日は夜遅かったの? ……お弁当のせい?」
「はは、違うよ。ただ眠れなかったんだ、お弁当美味しかった?」
「うん、玉子焼きね、甘かった!」
「青くんは甘いものが好きだもんね、今晩は早く寝るんだよ」
「隣で寝ても良い?」
可愛い弟だった、僕らが初めて出会ってからもう六年が経とうとしていた。青月はもうあの日を覚えていないだろう。
「飯食わねーの、律架」
「うう、食欲ないよ……奈津代わりに食べて、お弁当」
「なにこれ、今日やけに可愛くねえ?」
「弟の遠足の弁当の残り。頑張ったんだよ、早起きして」
「わ、玉子焼き甘いのな」
「青が好きなのー……」
昼休み、友人の奈津(なづ)に代わりに弁当を食べてもらって僕はひたすら机に突っ伏して休息を。
「何時まで起きてたの?」
「三時……スケッチブックの紙がなくなっちゃったからあきらめて寝たんだけど。お弁当は五時に起きて作った」
「マジかー、お前体力ないのによくやるよな」
「遠足のお弁当くらい作れるならさ。僕はそういうのとは無縁な子供だったからね……」
***
「律架、ゆっくりで良いよ。体重かけて良いから」
「ご、ごめん……目の前が暗くて……」
その日の午後の授業はマラソンだった。おとなしく見学するのもズルだとか言われそうで、無理して走ったら十分も経たないうちに倒れた。体操着は土埃だらけのまま、僕は保健室に連れて行かれて授業は終わる。帰りは奈津が送ってくれると言って僕の肩を抱きながら。
「あっ」
「あ……青じゃん」
学校から歩いて二十分。築五十年の木造アパートの入り口では、ちょうど帰ってきたばかりの青月がいる。青月は奈津を見た途端睨みつける。
「奈津、なにしにきたんだよ!」
「なんだお前、あいっかわらず可愛くねえのなー。兄ちゃん送って来ただけだよ」
「お兄ちゃんに触るな!」
「離したら倒れるんだよ! ほら、家の鍵開けろ」
「知らない人は入れちゃいけませんって、学校で習ったぞ」
「馬鹿、知ってんだろ。律架寝かせるんだよ、俺は入らねーから!」
しぶしぶ家の鍵を開けた青月、僕は玄関で降ろされた。荷物を隣に、奈津は青月と睨み合い、ため息をついて家を出る。
「奈津、ありがとね。また明日」
「……ああ、今夜は無理しないで早く寝ろよな」
「もう来るなよ、奈津!」
「うるさいガキ!」
騒がしいのは帰る間際、しばらくして奈津が帰宅すると青月は布団に横になった僕の枕元に座って少し悲しげな顔をして見ていた。
「お兄ちゃん、昨日は夜遅かったの? ……お弁当のせい?」
「はは、違うよ。ただ眠れなかったんだ、お弁当美味しかった?」
「うん、玉子焼きね、甘かった!」
「青くんは甘いものが好きだもんね、今晩は早く寝るんだよ」
「隣で寝ても良い?」
可愛い弟だった、僕らが初めて出会ってからもう六年が経とうとしていた。青月はもうあの日を覚えていないだろう。
1
あなたにおすすめの小説
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる