上 下
95 / 106

95 サカマル帝国の帝王様と妹君は静養期間! でもいう事は聞いて貰いますよ?

しおりを挟む
 一先ずはドマの刀問題は解決した。
 また、「三十分程で帰ってきます」と伝えて各倉庫にアイテムを補充に行ったのだけれど、帰ってくるとロウさんが滅茶苦茶凹んでた。
 何があったのかしら?


「彫刻師に対しても……?」
「そうだけど?」
「は~~……女性問題だけではなく、我が法案を通した彫刻師への対応も全て逆戻りしていたとは……」
「どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたも。我が毒に犯されている間に、全ての法案が元に戻っていた事に驚きを禁じ得ない。あの国の重鎮は本当に無能と利権絡みしかいないのだと理解した。一度滅ぶべきだ」
「兄様! お気を確かに!!」
「しかし華姫よ!」
「いや、ワシは一度滅ぶのに賛成じゃな」


 そう口を開いたのはお爺ちゃんだ。
 お爺ちゃんはフヨフヨ空を飛びながら私に抱っこされるとフスンと息を吐いた。


「まぁ、滅ぶのは害虫共と、あの城だけじゃがな」
「どう言う事です?」
「あの城は曰く付きなのじゃよ。400年前の最後の女帝に罪を擦り付けて殺した重鎮達への怒りに満ちておる。そうじゃの? タキ、ハク」
「そうだな、腐敗臭が酷くて我でもきつかったわ」
「アッチコッチニネー ツメアトトネー 怨念ノ テガタガ イッパイダネー」
「誠ですか!?」
「その怨念が重鎮達の脳を駄目にしておるのじゃよ。恨みがずっと続いておる。その重鎮達も数が多い……。400年前の女帝を陥れた子孫じゃろうな。それが無い者は少ないがいるのじゃろう?」
「イルネー カズハ トテモ スクナイケド」
「女帝の怨念は一度国を滅ぼしたいのじゃよ。故に、その重鎮達が全員死ぬ事と、城を破壊する事。それが鬼門を抑える為の一つのカギとなろう」


 そう語ったお爺ちゃんにロウさんとカヒさんは驚き戸惑い、でも意を決したのか頷き合った。


「では、直ぐにでもお願いしたいが」
「いや、今はその時ではないわ。何かしらあちらの国がユリやワシ等に害した場合にのみになる。そなたの見た未来ではどうなっておった。半年後じゃろうて」
「はい、ただぼんやりとしか見ていないのです。半年後、巨大なイキモノが城を壊すのだけは見たのですが……」
「タキじゃろうな」
「タキも呪いにやられるのかしら……」
「ソレハ ナイカナー?」
「そうなの?」
「ボクハ ユリト ケイヤクシテルカラ ノロイハ ウケナイヨ」
「ユリの称号に感謝じゃな」


 なるほど、私には確かに【聖女】の称号がある。
 これがこの子達にも反映されて呪いから守っているのか……。
 チートだと頭を抱えたけど、今の所誰にも教えてないし、お爺ちゃん達も言わないし、一応セーフかな?


「まぁ、奴らの動向を見るには丁度いい。それに大手を振って文句を言える事もあろう? 金鉱山の事などな」
「「「「確かに!」」」」
「一度城と言う名の国は崩壊する。じゃが、そなた達兄妹は保護されて生き延びる。国の民は一度滅んだ後から再度立て直しが必要じゃが、そこは何とか支援はして貰えるじゃろう。一つ言えるのは、半年後には『鉄の国サカマル帝国』は一度滅びる事になる。ただそれだけじゃ。無論、呪いを喰らった重鎮達と一緒にな」
「では、それから新しい重鎮や城の者を決めて、立て直しと言う事ですね」
「そう言う事じゃ。中々にハードじゃぞ?」
「やり遂げます。もう一度国の法を我がしていた元に戻し、男尊女卑を辞め、彫刻師を大事にし、彫刻ギルドを立ち上げる。問題はそこまでの道のりがとても険しい事ですが、やり遂げて見せましょう。命ある限り」
「うむ。なら少なくともワシ等も助けようとは思う。ユリはそちらには寄こす事は出来んがな? ワシ等を派遣するくらいは何とでもなろう」
「ユリ殿……どうかよろしく頼む!!」
「ん――。お爺ちゃん達が決めたなら良いけど。生まれ変わった帝国なら一度は行ってみたいわね。空を飛んだら一瞬でしょ?」
「一瞬だな」
「ヌシを連れて行く位簡単だ」
「取り敢えずは暫く静養です。これは絶対です。後はお忍びなので、皆さんも『ロウさん』と『カヒさん』と呼んでくださいね? 面倒事は御免ですからね?」
「「「「はい!!」」」」


 こうして大体の方向性は纏まった。
 後は半年後どういう動きがあるかどうかだけれど、きっと陛下の事だからお忍びで来るだろうし、まぁ問題はないかな?
 ノシュマン王国のお偉いさんも来て話し合いが出来ればいいけど、難しいだろうしなぁ。


「まぁ、家に帰ってやることは増えたので、私とドマ、それとお三方は先に家に帰ってやるべき事をしましょう。連絡事項は後からエンジュさん教え下さい」
「分かった」


 こうしてお三方を連れて馬車に乗り、一号店に向かって貰いながら窓の外の景色を見て驚く三人。
 私も初めてこの土地にきた時は色々感動したもの。
 白いレンガ作りの家に、太陽がまぶしい事。
 カラッとした空気に初夏の日差し。
 夕日は綺麗で見ていて飽きないくらい。
 眼はやられますけどね?


「兄様……これが外の世界なのです」
「ああ、とても美しいな……」
「偶には外交として他国に行くのをお勧めしますよ? ずっと国に居続けると発展しませんからね」
「忠告、痛み入ります」
「まずはリフレッシュタイムです。今まで頑張ってきたんですから色々この国を知って、人の営みを知って、どうあるべきかを知るのも大事ですよ」
「しかし、我々ではどこにどう行けばいいか」
「やはり貴女様の傍か、レジェンド様がいると安心出来るんですが……」
「ん――。それでも構いませんけど、私も何分忙しいので」
「レジェンド様をお従えしているのに、お忙しい身なのですか?」


 不思議……なのかしら?
 それはそれで私の方が驚いたけれど。


「遊んで暮らしてはいませんよ? 仕事もしていますし開発もしていますし」
「「そうなんですか!?」」
「驚く事じゃないですよ? 遊んで暮らせるだけのお金は持ってますけど、それってあっと言う間に退屈すると思うんですよね。やり甲斐とか生き甲斐あってこその人生だと思っているので」


 私の言葉に呆然とする二人。
 可笑しい事言った覚えはないのだけれど。


「ワシはユリの考えは好きじゃぞ」
「ボクモ スキー」
「ステキー♪」
「我らとて何もせず暮らすと言うのは退屈な事よ。それも長い年月ともなればな。しかし、ヌシの傍は心地よく、頑張って働いている姿を見るのは大変心地が良いのは確かだ。汗水流して働いているからこそ、毎日が楽しいとも言えるのだろう。まぁ、時に休息は必要だと思うがな」
「そうじゃな、ユリは何かしら忙しいからのう」
「ジッとしているのが苦手なのよ。何かしら忙しい方が安心するっていうか」
「偶にはエンジュとデートでもしてきたらどうじゃ? お互い仕事人間故にデートの一つもした事なかろうが」
「う……でも、エンジュさんと開発しているのも楽しいだもの」
「やれやれ……」
「はぁ……」
「コンナフウニ シゴトバカリ ナノハ ヨクナイケド キュウソクハ ヒツヨウダヨ?」
「ソウネ♪」
「分かりました。休息も取りつつ色々な世界を見て回りたいと思います」
「わたくしもです」
「まずそなた達は休息タイムじゃ。疲れた心を癒してこそじゃぞ」
「「はい」」
「うう……お二人が幸せそうにしていて、私は涙がっ」
「ヒイラギ……」
「苦労を掛けてすまないな」


 こうして一号店に到着すると、カシュールさんが「今日は早いな」と言いながら出迎えてくれたけれど、新しい二人を紹介すると帝王とその妹とは一切言わなかったので普通に接してくれた。


「なるほど、断交もこれで無くなるのかな?」
「分からないけど、まずはこの二人からみたいだわ。部屋をお貸ししたいんだけど、カシュールさんの所の部屋借りてもいいかしら?」
「ああ、二部屋余ってるけど、女性二人で大丈夫かい?」
「ええ、わたくしとヒイラギは同じ部屋で構いません」
「なら、少し広い方を使うといい。男性なら少しくらい狭い部屋でもいいよね?」
「うむ、構わぬ」


 こうしてカシュールさんとラフィの暮らすエリアに入り、空いている部屋に【お取り寄せ】でベッドをまず二つ、それをカシュールさんとドマが組み立てて行き、その間に外にマットレスと敷パットに枕等を出して行くと、三人に凄く驚かれた。


「ユ、ユリ殿!! これは一体」
「私のレアスキルです。秘密ですよ?」
「「「はい!!」」」
「ロウさんのベッドとかも同じので良いですよね?」
「構いません」


 こうしてベッド関連は大丈夫。
 アイテムボックスは各自持っているらしく、服類は大丈夫そう。
 但し、こちらで過ごす以上は此方にあった服装にしなくてはならない。


「まずはロウさんの着物からね。着流しを更に追加で買って良いです? 下着類も」
「お、男の下着を女性が等」
「うち、男が多い家庭なんで見慣れていますよ。一々下着くらいで恥ずかしがらないで下さい」
「む、むう……それもそうか」


 こうしてロウさんに全部で4種類の着流しセットを出し、男性用のパンツも出し終えると「後で付与するので」と言ってアイテムボックスに入れて貰い、次は女性陣。
 流石に女性の下着を兄妹と言えど見るのはどうかと思い、ロウさんには背中を向けて貰って選んで購入。着物も各自4種類ずつセットで購入した。
 後は簡単に全員分の付与が終わる頃皆さんが帰ってきて、部屋も完成したところで出迎えて晩御飯の支度となった。
 そして――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前世で医学生だった私が、転生したら殺される直前でした。絶対に生きてみんなで幸せになります

mica
ファンタジー
ローヌ王国で、シャーロットは、幼馴染のアーサーと婚約間近で幸せな日々を送っていた。婚約式を行うために王都に向かう途中で、土砂崩れにあって、頭を強くぶつけてしまう。その時に、なんと、自分が転生しており、前世では、日本で医学生をしていたことを思い出す。そして、土砂崩れは、実は、事故ではなく、一家を皆殺しにしようとした叔父が仕組んだことであった。 殺されそうになるシャーロットは弟と河に飛び込む… 前世では、私は島の出身で泳ぎだって得意だった。絶対に生きて弟を守る! 弟ともに平民に身をやつし過ごすシャーロットは、前世の知識を使って周囲 から信頼を得ていく。一方、アーサーは、亡くなったシャーロットが忘れられないまま騎士として過ごして行く。 そんな二人が、ある日出会い…. 小説家になろう様にも投稿しております。アルファポリス様先行です。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

パーティー会場で婚約破棄するなんて、物語の中だけだと思います

みこと
ファンタジー
「マルティーナ!貴様はルシア・エレーロ男爵令嬢に悪質な虐めをしていたな。そのような者は俺の妃として相応しくない。よって貴様との婚約の破棄そして、ルシアとの婚約をここに宣言する!!」 ここ、魔術学院の創立記念パーティーの最中、壇上から声高らかに宣言したのは、ベルナルド・アルガンデ。ここ、アルガンデ王国の王太子だ。 何故かふわふわピンク髪の女性がベルナルド王太子にぶら下がって、大きな胸を押し付けている。 私、マルティーナはフローレス侯爵家の次女。残念ながらこのベルナルド王太子の婚約者である。 パーティー会場で婚約破棄って、物語の中だけだと思っていたらこのザマです。 設定はゆるいです。色々とご容赦お願い致しますm(*_ _)m

卸商が異世界で密貿易をしています。

ITSUKI
ファンタジー
主人公、真崎隼人。 平凡ながらも上等なレールを進んできた彼。仕事思う所が出てきたところだったが転機が訪れ実家の卸商を継ぐことに。 その際、ふと異世界への扉を見つけ、異世界と現代両方での商売を考え始める。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

処理中です...