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94 王様へのご報告と、帝王様達への配慮をある程度しつつの会話と。

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 温かいお粥を食べて眠られた三人。
 さて、これからどう動きましょうか。
 まぁ、陛下にお伝えするのは優先だけど……仕方ない、行ってきますか。


「さて、お伺い立ててからになりますけど陛下に会いに行きますか」
「お供します」
「ワシ等が良いと言ったと言えばそれまでじゃが、行くとするかのう。タキよ、見たままを説明できるか?」
「イイヨー」
「岩田はどうする?」
「ボクネ イマカラ オシゴトアルカラ♪」


 そうなのだ、岩田は現在私の代わりに冒険者ギルドに向かい鉱石を出して貰っている。
 最初はギルマスのドナンさんは驚いたけれど、ミスリルも出せる事を知り、是非にとなったのだ。
 無論ミスリル等のレア素材はごく僅かしか出さないように注意は厳重にしたけれど、ドナンさんも「高級なレア素材がボロボロ手に入ったら市場が崩壊しちまうよ」と苦笑いしていたので実際そうなのだろう。


「じゃあ岩田はお仕事頑張ってね」
「ハーイ♪」
「我はヌシ達と行くとするか。元々我が許可を出したのだからな」
「そうね、最初の許可はそうね。説明して差し上げて」
「よかろう」


 こうしてロザリンドさんに陛下に秘密のお伺いをと言うと、そのまま手紙を書いてくれて直ぐに執務室へと言う連絡を受けた。
 きっと港での事が知れているのだろう。
 その足で馬車に乗り込み城へと向かい、いつも通り……ではないけど、執務室に通されると陛下は頭を抱えて「鉄の国サカマル帝国の娘を入れたと聞いたが?」と聞いてきたのでニッコリ笑って「そうですね、私は指示してませんが」と口にする。
 すると――。


「助けてほしいと言う匂いを強く感じてな。我が通した」
「ハク様……」
「ただ、今回はやむを得ない事情がありますので報告させて頂きますが。心をシッカリ持って聞いて下さいね? 実は鉄の国サカマル帝国の帝王様は毒で殺される一歩手前でして」
「は、それは誠か?」
「ええ、長い事患っていたそうです。国を動かしていたのはずっと重鎮達だそうです」
「……なんと」
「このままでは幾ばくも無いと判断した姫君が助けを求めてやって来まして。事情を色々聞くとボロボロと重鎮たちの悪事が判明致しました。帝王様はこのままでは半年もせず殺される予定だったそうなので、タキちゃんとハクに行って貰い保護しております」
「ほ、保護おおおお!?」
「所謂お忍びですね。国で保護をしているのではなく、レジェンドモンスターたちが勝手に動いて保護をした……と言う事にして下さい」
「ジッサイ ウゴイタヨ! アノクニ ヒドイネ! ミズサシノ ナカミハ ウスイドク」
「なんと……」
「タキちゃんが擬態を持っているので、帝王様に擬態して今は本物と分裂したタキちゃんとで入れ替わっています。本物の帝王様は第二工場にて現在食事の後眠っておられます。姫様もです」


 そこまで伝えると陛下は溜息を吐き、「レジェンド様がしたのなら我々に止める術はないが」と口にし、更にタキちゃんは口にする。


「アト キンコウザン ケッカイ ハッテルケド タクサン アノクニカラキタ ミッテイガ ツカマッテルヨ」
「は――……結界を張って下さっていたのですね。しかもあの国の者達が張り付いていると」
「シンデルノモ イルカモシレナイケド イイヨネ?」
「一応兵士を出しますので、捕えさせて頂いてからまた結界を張って貰っても?」
「イイヨー ブンレツシテ ツイテクヨ」
「じゃあタキちゃん一匹分裂お願いね」
「ハーイ!」


 そう言ってプルンッと分裂すると、陛下の頭に乗り手を振っている分裂したタキちゃん。


「シバラク 鉄ノ国サカマル帝国ノ ジョウホウ オシエルノニ イテイイ?」
「イイヨ。ボクモ テイオウサマニ オシエタイシネ」
「ジョウホウキョウユウ ダイジダネ!」
「ソウダネ!」
「と言う事ですので。一応名目はお忍びにして下さい。後は静養の為と言う事で」
「分かった……まずは君たちに暫くは任せる。大事に持て成してくれ」
「持て成したらバレるでしょう? 取り敢えず家で預かりますが半年は静養と言う事で。その後どうするか決めますね」
「分かった」


 こうして有無を言わせぬと言う感じで伝え終ると私たちは馬車に乗って一路二号店に戻ると、皆さんと会話しながら取り敢えず帝王様のお召し物をエンジュさんが持っているような着流しに着替えて貰うべく購入して『速乾付与』と『吸収付与』を付けて行く。
 中の肌着にも同じように。
 後はカヒ様とヒイラギさんの服も適当に移動用と思って一着ずつ購入し同じ付与を行い、その間にエンジュさんがネックレスを三つ作り、【体感温度が下がる付与】を付けたネックレスと、紫外線防止の髪飾りを三つ作った。


「しかし、今の帝王様がずっと寝込んでいたのなら、女払いなんて始めたのも……」
「上層部だろうな」
「本当最低!!」
「帝王様は男尊女卑を辞めさせる為に法律改正をしようとしていたと言っていたもの。それを上層部は許せなくて毒を飲ませたのね」
「って事は、今あのお城馬鹿しかいないんじゃない?」
「そうね」
「タキちゃんにバチーンって壊して貰えないかしら!!」
「あははは! 最終的にはそうなるかも知れないけど、今はまだ様子見よ。帝王様から事情も聞かないといけないしね」
「それもそうね」
「しかし、生きていたら帝王様に会う事も、あるんだねぇ……びっくりだよ」
「凄く男らしい方でしたね……」
「何? 心配してるの? アタシはセンジュに一途だよ?」
「も――!!」


 と、顔を赤くしてミモザさんに弄られているセンジュ君と弄ってるミモザさんが尊い。
 是非、この二人には将来的にお付き合いして欲しい所だわ!!
 私とドマが居ない間にお父様には話を付けていてくれたようで、エンジュさんには感謝しつつ三人が起きるまで仕事をしていたのだけれど、二時間もすればヒイラギさんが起きて来て、「姫様と帝王様をお守りください」と土下座された為、立って貰って「出来る事はある程度します」と約束した。
 無論ある程度だ。
 全部までは面倒は見切れない。


「帝王様や姫様が、あの国をどうしたいかによって変わってくるよねぇ」
「そうよね、重鎮達を一斉に殺していやりたい所だけど」
「同じく、アタシもそう思うよ」
「二人共物騒だなぁ……」
「そう言うセンジュはどう思ってるのさ」
「あの城、曰く付きなんじゃないですか? 城ごと壊せないんですか?」
「「曰く付き?」」
「俺の予感ですけど、そんな気がします」


 そうセンジュ君が言うと、タキちゃんとハクは頷きながら「確かに曰く付きの城だな」と口にした。


「あの城は腐敗臭が凄いのだ」
「腐敗臭ですか?」
「うむ。まず鬼門と呼ばれる所と近いと言うのもあるのだが、その鬼門からの匂いが正に城に集まっている。あれでは良い政治は出来まい。あの鬼門を制御していた二つの民が居た筈だが、一つは消えたと聞いている。一つの力では到底結界等無意味。一つ方法が無くはないが……」
「と言うと?」
「ドマ、お主の刀は宝刀であろう」


 その言葉にドマは驚き、私達も驚いた。
 え、ドマそんな宝刀なんて持ち歩いてたの!?


「サクラギ一族の宝刀を何故ドマが持っておるのか不思議だったのだ。それを使えば、一族の代わりとしての結界は張れる。だが、サクラギ一族だとバレてしまう」
「そう……だな。俺には全く記憶がないのだが」
「サクラギ一族は前の帝王を許さなかったのであろう。言うなれば、滅べこの屑野郎。くらいは思っての事だろうが、その前帝王が毒を呷って死んでるのなら最早意味はない。その刀を鬼門にそっと供えて後は放置で良いだろう」
「そっと供えてそっと帰るって感じですか」
「新しい刀は鉱石さえあれば鉄の国サカマル帝国の刀鍛冶が打ってくれるけど」
「岩田が居ますから行けるかと」
「それもそうか」
「じゃあ、帝王様と姫様を半年面倒見る代わりに、刀作って貰ったら?」
「そうですね、俺もこの刀に愛着が無い訳ではありませんが、それで結界が出来るのならその方法を取るのもアリでしょう」


 そう会話していると、泣きながら出て来た姫様と泣いている妹をあやしながら出て来た帝王様は、私たちに頭を下げた為、部屋に入ってくるようにエンジュさんが呼びに行き、作業部屋に入ってこられた。


「この度は我と妹を助けて下さり、なんとお礼を言えばいいか」
「この国の陛下にはお忍びで来られていると言う事にしていますので、名を教えてもらえれば助かります。仮名でもいいですよ」
「妹はなんと」
「カヒと聞いてます」
「では我は本当の名が長いので、ロウとお呼び下さい」
「ロウさんですね」
「へ――。帝王様って腰が低い人なんだね」
「意外~」
「そなた達は鉄の国サカマル帝国の者達か?」
「そうだよ、アタシは女払いされてこの国に売られたのさ」
「なっ!! 誰がその様な事を!!」
「毒にやられて寝てばっかりで知らないだろうけど、あの国では今は金が払えなければ女で払うってのが当たり前だよ?」
「そんなバカな!! それは禁じた筈だ!!」
「だって事実だもーん?」
「は――……我が寝ている間に何という事を……」
「取り敢えず色々知らねばならない事も多いと思いますので、まずは着替えて貰えます?」


 そう言うとエンジュさんが陛下の着替えを、タキちゃんが女性二人の着替えを差し出し、「申し訳ない」と言いつつ、まずは女性陣二人が着替えるべく休憩室へ。
 その後交代で陛下が入り着替えを済ませると出て来て、エンジュさんと余り変わらない見た目になった。


「まず一週間は身体を本来の状態に戻すべく治しましょう。その間に色々話をしつつ、今後について決めたほうが良さそうですが、一つだけお願いがあります」
「我に出来る事ならば」
「では、半年後国に帰ってからでいいので、鉱石を用意しますから刀を作って貰えません?」
「分かった。必ず約束しよう。名刀を作る鍛冶師を一人知っている。その者がまだいれば、頼むとしよう」
「ありがとう御座います」


 こうして、一先ずはドマの刀問題は解決した。
 また、「三十分程で帰ってきます」と伝えて各倉庫にアイテムを補充に行ったのだけれど、帰ってくるとロウさんが滅茶苦茶凹んでた。
 何があったのかしら?

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