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Episode3

試みる勇者

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 それから数分の間、アーコ達の動向を覚られないように囮に徹した。



 たかがイナゴと言えども、数十万匹を相手にするとなると大型の魔獣を相手にするよりも遥かに厄介だった。払っても払っても接近を許し、アーマーの隙間から腕の肉などにお構いなしに噛みつかれてしまう。



 アーコはお得意の魔法で、草原の植物を徐々に成長させそれに身を隠すようにして森へ近づいている。草の伸びる速度が緩慢であるため、オレに目を向けさせれば容易には覚られないだろう。



 そして、その為の秘策もある。だがこれはルージュの協力が必要不可欠の技になるので、オレはルージュに確認を取った。



「ルージュ、オレの頭の中を見ろ。大雑把な技だが、できそうか?」



(…なるほど。問題ない、両方とも可能だ)



「よし!」



 ルージュのお墨付きをもらったオレはすぐさま行動に移した。ヒットアンドウェイを繰り返して、膨大に広がるイナゴの群れをできるだけ一か所にまとめられるように動く。そして、満を持して新たな技を一つ試みた。



 剣を大きく振り上げ、渾身の魔力を刀身に込めた。本来なら敵に打ち込みたいところだが、相手が矮小なイナゴではそうもいかない。仕方なく、オレは真下の地面に向かって剣を思いきり振り下ろした。



「『冠の匣カローナ・アルカルーチャ』ッッッ!」



 刃が地面と接触した瞬間、それを中心にして大爆発が巻き起こった。爆風はオレ諸共、イナゴの群れをごっそりと吹き飛ばしてくれた。



 オレの魔力で爆発魔法を用いて、ルージュを媒介にすることで威力を底上げしたのだ。本来なら爆風にオレ自身も巻き込まれてしまうはずだが、ルージュの魔力で全身を覆ってもらっているので、ダメージは一切ない。桁外れの魔力と独立した意思を持つルージュと協力しているからこそ放てる、人剣一体の技だった。



 そしてもうもうと立ち込める噴煙で身を隠せている間に、オレ達はもう一つの技も試し撃ちをしてみる。



 先ほどと同じく剣先から魔力を飛ばす。だが今度は攻撃用の魔法じゃない。放たれた魔力はすぐにオレと瓜二つの姿となり噴煙から飛び出していった。目論見通り、イナゴの群れは分身の方を追いかけてどんどんといなくなっていく。



 炎の熱を利用して陽炎のような幻を見せる術は元々使えたのだが、ルージュが協力してくれることでより鮮明で立体感のある幻影を生み出すことが可能になった。しかも分身にはルージュのレプリカを持たせている。その為、ある程度の戦闘もこなせるのでより高性能でリアリティのある囮として使う事もできる。



 これは『冠の夢カローナ・ソミューム』とでも名付けようか。



 爆発の衝撃でできた穴の中に身を隠し、しばらくの間イナゴの追跡を躱して囮の操縦に専念する。やがて頃合いを見計らってそこを抜け出すと、身を低く保ちながらアーコ達の後を追い始めた。

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