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Episode1
期待する勇者
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食事が終わり、持って帰るのに余計なモノは全て焼いて処分することにした。
串や鍋になっていた金属はルージュが触ると、いつもの淡く青黒い光に包まれて元の当て板やブレスレットに戻った。純粋に金属だけをいじっているため、洗わなくとも汚れや脂は勝手に落ちるらしい。
毛皮も肉も十二分に獲れた。売ってしまえば三、四日分くらいの生活費にはなるだろう。
◆
「主よ」
「ああ。気が付いている」
「え?」
あと少しで森を抜けるか、といった辺りで妙な気配を感じ取りオレ達は立ち止まって気配の出所を探った。その気配の持ち主とは過去に二回だけ立ち会ったことがある。その記憶が蘇っていた。
「ルージュ、正確な場所は分かるか?」
「主は分からないのか?」
「気配は感じているが、奴らには匂いがないんだ。お前の方が確実だろう」
「そうか。心得た」
ルージュを先頭に、息を殺しながらラスキャブと並んでついて行った。
「移動しているな」
森の中でそいつらに会うのはオレも初めてだった。だからどういう行動をとっているのか、予想する事しかできない。ルージュの感知だけが、今のところの頼りの綱だ。
十分ほど歩いただろうか。木陰にそいつらがいた。
「いたぞ」
子供と大人の中間のような背丈で、仄かに発光してる肌は白い。輪郭だけが存在していて実際には、目も鼻も耳も何もついていない不思議な顔をしている。
「やっぱり『ピクシーズ』か」
「ピクシーズ?」
「ああ。名前の通り「妖精」のパーティだ。出会うこと自体が極めて稀だが、会う時は何故か絶対に見つけた奴らと同じ数のパーティを組んでいる」
「なるほど、確かに向こうも三人組だな」
ピクシーズはそれぞれが剣、盾、杖を持って何かを互いに囁き合っていた。
「それでどうする? 戦うのか?」
「ああ。ピクシーズを見つけておいて挑みもしなかったら、ただの阿呆と言われても仕方がないくらい勿体ない」
オレのその言葉に二人の顔が引き締まるのを見た。今回はルージュにも参加して貰わなければならない。
「せっかくだ。奇襲をかけるか?」
「いや、姿が見えて、三人パーティになっているということは向こうもこっちに気が付いている証拠だ。不意打ちは効かない。正々堂々と勝負しよう」
隠れることをやめ、オレ達は立ち上がってつかつかとピクシーズとの距離を詰めた。相手が武器を構えたところでこちらも臨戦態勢をとった。
ピクシーズとの戦いは、単純な勝ち負けで推し量れないものがある。重要なのは彼らに気に入ってもらえるかどうかだ。何がピクシーズの琴線に触れるのかは未だに分かっていないが、戦いに満足させると自然に戦うのを止めて、何かしらの恩恵を授けて姿を消す。
パーティ全員がそれを賜ったという話も聞くし、授かったはいいが何の使い道もない微妙な能力だったという話も聞く。それと同じくらい、戦うだけで何もしなかったという話だって聞いたこともある。だが、いずれにしてもマイナスになることはあり得ない。だからこそ、ピクシーズを見つけて挑まないのはただの阿呆という俗説まで出来上がっているのだ。
前の旅では二度ほど戦う機会があった。
今となっては思い出すのも腹立たしいが、その時はレコットとシュローナが妖精の加護を受けていた。
レコットの「食べるだけで料理のレシピが分かる」という能力はさておき、シュローナの「武器を持っている間は体力が減らなくなる」という能力はパーティの地力の底上げに役立ってくれた。
旅の序盤も序盤でピクシーズに出くわすとは幸先がいい。
叶うことなら戦闘にも旅にも活かせる加護を賜りたいところだ。
串や鍋になっていた金属はルージュが触ると、いつもの淡く青黒い光に包まれて元の当て板やブレスレットに戻った。純粋に金属だけをいじっているため、洗わなくとも汚れや脂は勝手に落ちるらしい。
毛皮も肉も十二分に獲れた。売ってしまえば三、四日分くらいの生活費にはなるだろう。
◆
「主よ」
「ああ。気が付いている」
「え?」
あと少しで森を抜けるか、といった辺りで妙な気配を感じ取りオレ達は立ち止まって気配の出所を探った。その気配の持ち主とは過去に二回だけ立ち会ったことがある。その記憶が蘇っていた。
「ルージュ、正確な場所は分かるか?」
「主は分からないのか?」
「気配は感じているが、奴らには匂いがないんだ。お前の方が確実だろう」
「そうか。心得た」
ルージュを先頭に、息を殺しながらラスキャブと並んでついて行った。
「移動しているな」
森の中でそいつらに会うのはオレも初めてだった。だからどういう行動をとっているのか、予想する事しかできない。ルージュの感知だけが、今のところの頼りの綱だ。
十分ほど歩いただろうか。木陰にそいつらがいた。
「いたぞ」
子供と大人の中間のような背丈で、仄かに発光してる肌は白い。輪郭だけが存在していて実際には、目も鼻も耳も何もついていない不思議な顔をしている。
「やっぱり『ピクシーズ』か」
「ピクシーズ?」
「ああ。名前の通り「妖精」のパーティだ。出会うこと自体が極めて稀だが、会う時は何故か絶対に見つけた奴らと同じ数のパーティを組んでいる」
「なるほど、確かに向こうも三人組だな」
ピクシーズはそれぞれが剣、盾、杖を持って何かを互いに囁き合っていた。
「それでどうする? 戦うのか?」
「ああ。ピクシーズを見つけておいて挑みもしなかったら、ただの阿呆と言われても仕方がないくらい勿体ない」
オレのその言葉に二人の顔が引き締まるのを見た。今回はルージュにも参加して貰わなければならない。
「せっかくだ。奇襲をかけるか?」
「いや、姿が見えて、三人パーティになっているということは向こうもこっちに気が付いている証拠だ。不意打ちは効かない。正々堂々と勝負しよう」
隠れることをやめ、オレ達は立ち上がってつかつかとピクシーズとの距離を詰めた。相手が武器を構えたところでこちらも臨戦態勢をとった。
ピクシーズとの戦いは、単純な勝ち負けで推し量れないものがある。重要なのは彼らに気に入ってもらえるかどうかだ。何がピクシーズの琴線に触れるのかは未だに分かっていないが、戦いに満足させると自然に戦うのを止めて、何かしらの恩恵を授けて姿を消す。
パーティ全員がそれを賜ったという話も聞くし、授かったはいいが何の使い道もない微妙な能力だったという話も聞く。それと同じくらい、戦うだけで何もしなかったという話だって聞いたこともある。だが、いずれにしてもマイナスになることはあり得ない。だからこそ、ピクシーズを見つけて挑まないのはただの阿呆という俗説まで出来上がっているのだ。
前の旅では二度ほど戦う機会があった。
今となっては思い出すのも腹立たしいが、その時はレコットとシュローナが妖精の加護を受けていた。
レコットの「食べるだけで料理のレシピが分かる」という能力はさておき、シュローナの「武器を持っている間は体力が減らなくなる」という能力はパーティの地力の底上げに役立ってくれた。
旅の序盤も序盤でピクシーズに出くわすとは幸先がいい。
叶うことなら戦闘にも旅にも活かせる加護を賜りたいところだ。
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