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Episode1
味わう勇者
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ラスキャブを突き飛ばしたグラフルはオレとルージュが勢い余って、盛大に攻撃してしまったので、毛皮を売るには無視できないほどのダメージが入っていた。
なので、他の二匹を上手く解体処理する傍らに肉だけを調理して、有難く昼食になって貰う事にする。図らずもこのパーティでは初の野営になった。
二人とも解体の知識は乏しかったので、オレが毛皮や内臓の処理、ルージュとラスキャブが調理と勝手に役割分担が決まった。魔法で種火を付けてやり、塩や香辛料、ナイフなどをしまってある皮袋を二人に渡すと、早速作業に取り掛かる。グラフルに限らず獣の内臓は美味で栄養価も高いので捨てるのは少しもったいないが、今日に限っては致し方ない。本物の狼みたいに生で肉を食えればいいのに、というのは子供の頃から思っていることだった。
筋力や体力は衰えを感じるが、器用さや刃物を扱う感覚に違和感はない。流石にそこまでは封印されていないという事だろう。
丁度一区切りがついたころ、空腹を誘うような香りが鼻をくすぐった。
この場所では肉のぶつ切りを焼いただけのような料理しか作れないだろうと思っていた。勿論、それも作っていたのだが、それでも鍋で煮込まれたスープを出された時には少々面食らってしまった。
ルージュが手際よく木の皿に盛りつけて、それをラスキャブが運んできてくれる。肉の他に野草や木の実まで入っていて大分本格的な料理だった。
「…鍋なんてどこにあったんだ?」
「ここで作ったのだ。金物さえあれば形を変えることくらい訳ない」
言われてみれば、ルージュの着ていた服の金属の当て板やブレスレットが無くなっている。鍋や肉を刺す串はそれで作ったという事か・・・。
そしてラスキャブが吹っ飛ばされてへし折れた木を使って、皿と食器だけでなく椅子まで拵えてある。これは切ったり削ったりしただけの代物であろうから、ルージュが用意したのであろうことは簡単に予想できるが。
「なら、水は? この辺りに川はなかったと思ったが」
そう尋ねられたルージュは祈るような仕草で手を組み、そして言った。
「例え灼熱の砂漠であっても、まわりに水分がないということはありえん。細かすぎて見えないだけでな。だからそれを集めてしまえばいい。ましてやここは森の中。土も木々も水で潤っているから容易いことだ」
言うや否や、ポタポタと手の中から水が滴り落ちてきた。
何気なくやっているが、これはとてつもない特技だ。ルージュがいる限り、いつどこにいても飲み水に困らないというのと同義となる。食べるものはいくらでも確保する方法があるが、水はそう簡単な話ではない。本当に底の見えない奴だ。
一口啜ってみる。野趣に富んだ味付けで、店で食べる物よりもこじゃれていないのがオレ好みだった。
「美味いな」
「スープの中の野草や木の実はラスキャブの手柄だぞ。私は食には疎いから助かった」
「い、いえ。森の中にいた時はずっとそういうのを齧ってたので、自然に覚えてしまいました」
ラスキャブはへへへ、と照れるように笑った。
塩を振っただけのグラフルの串焼き肉も、動いた後に食べると格別だ。こんなことなら内臓も埋めてしまわないで料理してもらえばよかったと、少し後悔した。
きっと教えれば作ることはそつなくこなしてくれそうなので、街に戻ったら野山でもできる内臓料理のレシピを探して二人に渡しておこうと考えていた。
なので、他の二匹を上手く解体処理する傍らに肉だけを調理して、有難く昼食になって貰う事にする。図らずもこのパーティでは初の野営になった。
二人とも解体の知識は乏しかったので、オレが毛皮や内臓の処理、ルージュとラスキャブが調理と勝手に役割分担が決まった。魔法で種火を付けてやり、塩や香辛料、ナイフなどをしまってある皮袋を二人に渡すと、早速作業に取り掛かる。グラフルに限らず獣の内臓は美味で栄養価も高いので捨てるのは少しもったいないが、今日に限っては致し方ない。本物の狼みたいに生で肉を食えればいいのに、というのは子供の頃から思っていることだった。
筋力や体力は衰えを感じるが、器用さや刃物を扱う感覚に違和感はない。流石にそこまでは封印されていないという事だろう。
丁度一区切りがついたころ、空腹を誘うような香りが鼻をくすぐった。
この場所では肉のぶつ切りを焼いただけのような料理しか作れないだろうと思っていた。勿論、それも作っていたのだが、それでも鍋で煮込まれたスープを出された時には少々面食らってしまった。
ルージュが手際よく木の皿に盛りつけて、それをラスキャブが運んできてくれる。肉の他に野草や木の実まで入っていて大分本格的な料理だった。
「…鍋なんてどこにあったんだ?」
「ここで作ったのだ。金物さえあれば形を変えることくらい訳ない」
言われてみれば、ルージュの着ていた服の金属の当て板やブレスレットが無くなっている。鍋や肉を刺す串はそれで作ったという事か・・・。
そしてラスキャブが吹っ飛ばされてへし折れた木を使って、皿と食器だけでなく椅子まで拵えてある。これは切ったり削ったりしただけの代物であろうから、ルージュが用意したのであろうことは簡単に予想できるが。
「なら、水は? この辺りに川はなかったと思ったが」
そう尋ねられたルージュは祈るような仕草で手を組み、そして言った。
「例え灼熱の砂漠であっても、まわりに水分がないということはありえん。細かすぎて見えないだけでな。だからそれを集めてしまえばいい。ましてやここは森の中。土も木々も水で潤っているから容易いことだ」
言うや否や、ポタポタと手の中から水が滴り落ちてきた。
何気なくやっているが、これはとてつもない特技だ。ルージュがいる限り、いつどこにいても飲み水に困らないというのと同義となる。食べるものはいくらでも確保する方法があるが、水はそう簡単な話ではない。本当に底の見えない奴だ。
一口啜ってみる。野趣に富んだ味付けで、店で食べる物よりもこじゃれていないのがオレ好みだった。
「美味いな」
「スープの中の野草や木の実はラスキャブの手柄だぞ。私は食には疎いから助かった」
「い、いえ。森の中にいた時はずっとそういうのを齧ってたので、自然に覚えてしまいました」
ラスキャブはへへへ、と照れるように笑った。
塩を振っただけのグラフルの串焼き肉も、動いた後に食べると格別だ。こんなことなら内臓も埋めてしまわないで料理してもらえばよかったと、少し後悔した。
きっと教えれば作ることはそつなくこなしてくれそうなので、街に戻ったら野山でもできる内臓料理のレシピを探して二人に渡しておこうと考えていた。
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