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エピソード3
貸与術師とコミュ力不足
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◇
劇場を出た俺達はアルルの案内で商店街を目指した。何故かコッコロとキーキアの二人の共連れが増えているが。
何でもいい機会だから後学のためにウィアード退治に関わってみたいという魂胆らしい。危険が伴う事を承知してもらった上、カウォンも許諾したから俺からいう事は何もない。それよりも問題なのは、『カカラスマ座』でもトップクラスのタレント三人と席を同じくしている事だった。
まあアレだ。かなり緊張する。
カウォンに対してだってようやく慣れが出てきている程度の段階であるというのに、加えて売り出し中のアイドルとカウォンとタメを張るレベルのシンガーがいて緊張するなという方が無理だ。
俺は自然と緊迫感を避け、アルルの方へ意識が行くのが分かった。
「ねえ、アルル」
「ん? どうかした?」
「ギベル商店街って何件くらいお店があるの?」
当たり障りのない話題でお茶を濁す。とは言えども寄付の募るに当たって聞いておいても損はない話だ。
「多分…二、三百くらいかな」
「う。まあ、そのくらいはあるよね」
「被害のあった家だけを周るのじゃダメなの?」
「その点に関しては分からないんだよね。良いかもしれないし、ダメかもしれない。確証がないんだ…だから全部の商店を周った方がいいと思う」
「そっか…」
俺がそう言うとアルルは一瞬だけ何やら思いつめたような表情を見せた。しかしすぐにその陰鬱なイメージを払拭せんばかりの笑顔を見せながら俺にお礼を言ってきた。
「ありがとう」
「え? 何が?」
「商店街の皆を助けてくれて」
「まだこれからだよ。それにウチのギルドとしては当たり前のことだし」
「嬉しい事をしてもらったらお礼を言うのも当たり前の事でしょ?」
「アルルがそう言うなら…どういたしまして」
「うん」
面と向かって言われると俺は妙に照れくさいような気分になった。カウォンの所に行こうが、反対にアルルと話をしようが俺が気まずくなる運命は変えられなかったらしい。
などと会話をしながら歩いている内にギベル商店街の西口にまで辿り着いた。
「さてと、どうしようか」
「左右に別れて東口まで一軒一軒順番に寄付をお願いするしかないではないかや?」
「やっぱりそうなるよね」
「最初の店で連絡網を使うように言っておくよ。少しでもスムーズになるように」
「ホント? 助かるよ」
「それとみんな事情を説明しないといけないと思うから、この子を連れていって」
そう言いながらアルルは掌に魔力を込め始めた。手の上を中心に小さなつむじ風が巻き起こり、近くの植え込みにあった葉っぱや枝が吸い寄せられる。それはどんどんと何かの形を形成していき、最後には一匹の雌鹿になってしまう。
草木で出来上がった鹿を見たカウォンは驚いたように言う。
「せ、精霊を具象化したというのか?」
「そう。商店街の皆はアンドリスの事を知っているから、ウチの関係者だって事は分かってくれると思うよ」
「アンドリスと申します。皆様、よろしくお願いします」
「喋った!?」
「精霊だもの。喋るよ」
そういうものなのか? 初めて見たから分からない。けど妖怪が喋るパターンだってあるんだから、精霊が口を聞いたって構いはしないか。意思の疎通ができるのとできないのとじゃ雲泥の差が出るし。
アンドリスを加えたことで俺と『カカラスマ座』の三人の組と商店街の勝手の分かるアルルの二組に分かれることができた。
「ではキーキアさん、コッコロさん。よろしくお願いしますね」
「ちょっと待った」
いざ寄付集めに出発、と意気込んだのに俺はキーキアに止められる。
「な、なんでしょうか?」
「何でカウォンは呼び捨てタメ口なのに、私らには畏まってるの? まさかとは思うけどギルドマスターという役職を笠に着てたり」
「そんな!? カウォン様をいい様にこき使ってると?」
と、コッコロから棘のある一言が飛んでくる。俺はその不名誉な誤解を否定した。
「違いますよ。こういう風に接してほしいと、カウォンの方から言われて…」
「んー? ヲルカよ。こういう風とはどういう風じゃったかな?」
「え…だから、こう…フランクに?」
「おや? 儂は本当にそう言ったかや?」
あ、からかわれてる。
カウォンは意地悪な笑みを浮かべ、二人に説明するように促してくる。
「その、ですね。カウォンからお互いの心理的な距離を埋めるために、ウチのギルド員には恋人に接するかのような言葉遣いで話すように約束させられまして」
俺がそういうとコッコロは唖然とし、キーキアは笑いを堪えるような仕草を見せた。
「何ですか、それ! 許せません」
「そう? 私は面白いと思うけど。実際面白いよ」
「そうじゃろう? 年上の女子に無理に親しげに接するヲルカが愛くるしくての。見ていて飽きぬのじゃ」
「そんな事を思ってたのか!?」
クソぅ。やっぱりいい感じで手玉に取られているような気がする。こっちがどんな思いして年上女性にタメ口聞いてると思ってるんだ。一回り上どころか、冗談抜きで俺の十倍生きているのがカウォンだしな。お祖母ちゃんより年上を相手勝とうとするのが烏滸がましいか。
俺がそんな事を思っているとキーキアが提案してくる。
「劇場でもいったけど、私もキーキアって呼んでよ、ヲルカ君。それとも傅いた方が好みですか、マスター」
「いえ、そんな」
「私もコッコロでいいよ。てか、君いくつ?」
「俺は17歳だけど」
「なんだ同い年じゃん。尚更呼び捨てでいいよ」
「あ、はい」
俺の女性免疫のなさ舐めんなよ!?
初対面の、しかもアイドルにフランクになるってどんだけハードル高いと思ってんだ!?
あの『中立の家』の中だけでも、かなりの神経すり減らして頑張ってんだぞ!!??
と声を大にして言いたいセリフを腹の中に留めた。そんな文句を面と向かって言えるような性格なら、こんな不満を抱くことはない。
「では皆さん。参りましょう」
会話の丁度良い切れ目にアンドリスがそう言ってきた。亜人種と違って表情が読めないが、この中では一番気が合いそうな気がする。
いずれにしてもいち早く寄付を募って『牛打ち坊』を退治してしまわなければ。これ以上、被害者を増やす訳にはいかない。
劇場を出た俺達はアルルの案内で商店街を目指した。何故かコッコロとキーキアの二人の共連れが増えているが。
何でもいい機会だから後学のためにウィアード退治に関わってみたいという魂胆らしい。危険が伴う事を承知してもらった上、カウォンも許諾したから俺からいう事は何もない。それよりも問題なのは、『カカラスマ座』でもトップクラスのタレント三人と席を同じくしている事だった。
まあアレだ。かなり緊張する。
カウォンに対してだってようやく慣れが出てきている程度の段階であるというのに、加えて売り出し中のアイドルとカウォンとタメを張るレベルのシンガーがいて緊張するなという方が無理だ。
俺は自然と緊迫感を避け、アルルの方へ意識が行くのが分かった。
「ねえ、アルル」
「ん? どうかした?」
「ギベル商店街って何件くらいお店があるの?」
当たり障りのない話題でお茶を濁す。とは言えども寄付の募るに当たって聞いておいても損はない話だ。
「多分…二、三百くらいかな」
「う。まあ、そのくらいはあるよね」
「被害のあった家だけを周るのじゃダメなの?」
「その点に関しては分からないんだよね。良いかもしれないし、ダメかもしれない。確証がないんだ…だから全部の商店を周った方がいいと思う」
「そっか…」
俺がそう言うとアルルは一瞬だけ何やら思いつめたような表情を見せた。しかしすぐにその陰鬱なイメージを払拭せんばかりの笑顔を見せながら俺にお礼を言ってきた。
「ありがとう」
「え? 何が?」
「商店街の皆を助けてくれて」
「まだこれからだよ。それにウチのギルドとしては当たり前のことだし」
「嬉しい事をしてもらったらお礼を言うのも当たり前の事でしょ?」
「アルルがそう言うなら…どういたしまして」
「うん」
面と向かって言われると俺は妙に照れくさいような気分になった。カウォンの所に行こうが、反対にアルルと話をしようが俺が気まずくなる運命は変えられなかったらしい。
などと会話をしながら歩いている内にギベル商店街の西口にまで辿り着いた。
「さてと、どうしようか」
「左右に別れて東口まで一軒一軒順番に寄付をお願いするしかないではないかや?」
「やっぱりそうなるよね」
「最初の店で連絡網を使うように言っておくよ。少しでもスムーズになるように」
「ホント? 助かるよ」
「それとみんな事情を説明しないといけないと思うから、この子を連れていって」
そう言いながらアルルは掌に魔力を込め始めた。手の上を中心に小さなつむじ風が巻き起こり、近くの植え込みにあった葉っぱや枝が吸い寄せられる。それはどんどんと何かの形を形成していき、最後には一匹の雌鹿になってしまう。
草木で出来上がった鹿を見たカウォンは驚いたように言う。
「せ、精霊を具象化したというのか?」
「そう。商店街の皆はアンドリスの事を知っているから、ウチの関係者だって事は分かってくれると思うよ」
「アンドリスと申します。皆様、よろしくお願いします」
「喋った!?」
「精霊だもの。喋るよ」
そういうものなのか? 初めて見たから分からない。けど妖怪が喋るパターンだってあるんだから、精霊が口を聞いたって構いはしないか。意思の疎通ができるのとできないのとじゃ雲泥の差が出るし。
アンドリスを加えたことで俺と『カカラスマ座』の三人の組と商店街の勝手の分かるアルルの二組に分かれることができた。
「ではキーキアさん、コッコロさん。よろしくお願いしますね」
「ちょっと待った」
いざ寄付集めに出発、と意気込んだのに俺はキーキアに止められる。
「な、なんでしょうか?」
「何でカウォンは呼び捨てタメ口なのに、私らには畏まってるの? まさかとは思うけどギルドマスターという役職を笠に着てたり」
「そんな!? カウォン様をいい様にこき使ってると?」
と、コッコロから棘のある一言が飛んでくる。俺はその不名誉な誤解を否定した。
「違いますよ。こういう風に接してほしいと、カウォンの方から言われて…」
「んー? ヲルカよ。こういう風とはどういう風じゃったかな?」
「え…だから、こう…フランクに?」
「おや? 儂は本当にそう言ったかや?」
あ、からかわれてる。
カウォンは意地悪な笑みを浮かべ、二人に説明するように促してくる。
「その、ですね。カウォンからお互いの心理的な距離を埋めるために、ウチのギルド員には恋人に接するかのような言葉遣いで話すように約束させられまして」
俺がそういうとコッコロは唖然とし、キーキアは笑いを堪えるような仕草を見せた。
「何ですか、それ! 許せません」
「そう? 私は面白いと思うけど。実際面白いよ」
「そうじゃろう? 年上の女子に無理に親しげに接するヲルカが愛くるしくての。見ていて飽きぬのじゃ」
「そんな事を思ってたのか!?」
クソぅ。やっぱりいい感じで手玉に取られているような気がする。こっちがどんな思いして年上女性にタメ口聞いてると思ってるんだ。一回り上どころか、冗談抜きで俺の十倍生きているのがカウォンだしな。お祖母ちゃんより年上を相手勝とうとするのが烏滸がましいか。
俺がそんな事を思っているとキーキアが提案してくる。
「劇場でもいったけど、私もキーキアって呼んでよ、ヲルカ君。それとも傅いた方が好みですか、マスター」
「いえ、そんな」
「私もコッコロでいいよ。てか、君いくつ?」
「俺は17歳だけど」
「なんだ同い年じゃん。尚更呼び捨てでいいよ」
「あ、はい」
俺の女性免疫のなさ舐めんなよ!?
初対面の、しかもアイドルにフランクになるってどんだけハードル高いと思ってんだ!?
あの『中立の家』の中だけでも、かなりの神経すり減らして頑張ってんだぞ!!??
と声を大にして言いたいセリフを腹の中に留めた。そんな文句を面と向かって言えるような性格なら、こんな不満を抱くことはない。
「では皆さん。参りましょう」
会話の丁度良い切れ目にアンドリスがそう言ってきた。亜人種と違って表情が読めないが、この中では一番気が合いそうな気がする。
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