異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

文字の大きさ
88 / 189
南北大陸編

88 神魔動飛空二輪とマッハ神魔動飛行船

しおりを挟む
 秋も深まり、キリシスの冬がやって来た。
 夕方ともなるとかなり寒くなるというのに、今日も街の外に作られた飛空試験場では完成したばかりの神魔動飛空二輪のテスト飛行が続けられていた。
 テストパイロットは椎名美鈴が担当している。彼女は既に神化リングを付けた普通の使徒になっているので危険は無いし、侍女隊が使う乗り物のテストには打って付けなのだ。

 神魔動飛空二輪の最高速度はマッハ二・〇だ。
 マッハ二・〇までならソニックブームは発生しないようになっている。これが、この新エンジンの特徴だ。
 夕陽で赤く染まった空に白い雲の筋を引いて美鈴の神魔動飛空二輪が飛んで行った。

「素晴らしい加速ですね。特に、神魔力ターボを使ったときはどこまで速度が出るんでしょう?」

 試運転中の神魔動飛空二輪を見あげて、神魔道具の女神キリスが感嘆の声を上げた。神魔力ターボは、パイロットが自分の神力または魔力を使う加速装置だ。

「恐らく、あの美鈴さんのマッハ二・〇が限界だと思われます」

 神魔動飛空二輪を製作した魔道具技師のランティスが応えた。美鈴の出した最高記録が、正式な記録という訳だ。

「凄いな。あそこまで出せるとは思わなかった。まぁ、侍女隊の魔力だと、マッハ一・五が限界だろうけど」
「はい。これで安心して渡せます」とランティス。

「神力でも、魔力でも使えるところが、いいね」
「はい。そうしないと、誰もテスト出来ませんからね」とランティス。

 魔力専用機だとテストせずに侍女隊に渡すことになる。王女でもある彼女たちにテストパイロットをさせるわけにはいかない。

「しかし、予想以上の傑作エンジンが完成したな! 真空膜の使い方で最高速が決まるんだろうけど、衝撃波が出てもいいならもっと速く飛べそうだ!」

「そういう使い方もできますね。衝撃波攻撃」と女神キリス。

 えっ? 武器にもなるの? そういう魔道具も作るのかな?

「それって、操縦者は大丈夫?」
「はい、問題ありません。内側の防御フィールドで守られていますから」と女神キリス。
「ああ、それだけ真空膜が安定しているってことですね」
「そういうことです。ランティスさんが、しっかりと作ってくれました」
「そうか。さすがだな、ランティス!」
「恐れ入ります」

  *  *  *

「うまくいってるようですね」

 神魔科学の女神カリスも様子を見に来た。

「これは素晴らしいエンジンです。音も小さいし」
「ええ。しかし、さすがに私も防御フィールドを二重にして真空膜を作ろうなんて思い付きませんでしたよ」

 女神カリスはちょっと悪戯っぽい目で俺を見た。まぁ、確かに俺が思い付いたんだが。

「いや、魔力や神力を使うと、夢みたいなことが本当に出来てしまうんで楽しいんです」

 中二病全開とも言う。まぁ、科学と中二病は近いところにあるとは思う。

「なるほど。しかし、やはりリュウジさんの最大の功績は神魔力融合現象の発見ですね」と女神カリス。

「そうそう。あれが無ければ今の発展はありません」と女神キリス。

「あの現象については、私も研究を始めました」

 女神カリスは、ちょっと真面目な顔で言った。

「実際のところ、神魔力融合でエネルギーが発生するというのは、どういう種類の現象だとお考えですか? 何か、考えがあるのなら聞かせてください」

 神魔科学の『神様』に聞かれても困る。

「えっ? いや、どうといわれても、素粒子の『対消滅』を連想するくらいでしょうか」

「対消滅ですか?」
「はい、ええと『反物質』といって話は通じますか? 通常の物質と反物質が融合する現象に似てる気がします」

「ああ、なるほど。そうした現象はありますね。なるほど、ちょっと面白いですね」と女神カリス。

 やっぱり知ってるんだ。

「俺もそれ以上はちょっと門外漢なので分かりませんが」
「わかりました。参考にさせていただきます」

 神界でも、神力を研究してるのか。まぁ、本当に参考になるのか非常に怪しいが。研究の妨げにならなければいいけど。
 
  *  *  *

 定期便として製造された汎用神魔動飛行船八号機が飛行船ドックからゆっくりと上昇し、テスト飛行に飛び立っていった。
 汎用飛行船にはメタリックシルバーの機体に白い円で縁どられた赤い女神様の紋章が描かれているので一目で俺の機体とは区別ができる。
 この汎用の機体では改良が進み時速七百キロメートルでもほとんど騒音が出なくなっている。旅客機にとして優秀だ。
 まずは八機体制で定期便の運航を確立する予定だ。

 代わって、飛行船ドックに入ってきたのは神魔動飛行船初号機、俺の船だ。今回、別大陸を目指す機体として大幅な改修を加えるためである。
 改修の目玉は、神魔動飛空二輪で実証された神魔動外周エンジンを搭載することだ。この新型エンジンで超音速神魔動飛行船を作る計画だ。

  *  *  *

 神魔動外周エンジンは、俺が神様たちやランティスを巻き込んで開発した新型の超音速エンジンだ。
 原理は神魔動飛空二輪と同じで、真空膜フィールドを周囲に展開して超音速飛行を可能にしている。
 さらに、飛行船のエンジンの場合は、空中だけでなく水中でも動作可能としている。

 もちろん、神魔動飛空二輪のエンジンでも可能だったのだが、水中では大量にエネルギーを消費する。このため、エネルギーに余裕のない神魔動飛空二輪では実用的ではなかったのだ。
 だが、飛行船の強力なエナジーモジュールがあれば余裕だ。今までとは違った運用が可能だ。

 また、神魔動外周エンジンにはもう一つ特筆すべき点がある。
 それは内部の人間に加速が加わらないということだ。いや、正確に言うと、加速はされる。ただし、『機体と一緒に加速されるので気が付かない』ということだ。
 俺は、これを『加速キャンセラー』と言っている。

 普通の乗り物で言うと、乗り物が動き出すと人間は座席に押される形で加速される。このため、あまり急激な加速をすると人間が耐えられないという問題がある。
 神魔動外周エンジンは違う。乗り物の機体と一緒に人間の体も加速する。このため、座席に押しつけられることはなく急加速しても何も感じない。体に全く影響がないのである。

マッハ神魔動飛行船のスペック概要
  巡航速度 マッハ一・〇
  最高速度 マッハ二・〇
  エンジン 神魔動外周エンジン二基
  先端部にエナジービーム用ハッチ装備(リュウジ専用特別室)
  特別客室 八
  通常客室 五十
  乗員(スタッフ) 五十名
  標準設備
   下部展望室、上部展望室、レストラン、乗員室、シャワー室、洗面所他

  *  *  *

 神魔動飛行船初号機の改造は、主にエンジンの置き換えなので工期はあまり長くない。
 船体の内装も進み、完成が見えて来た。ミルルは完成間際の新型神魔動飛行船を感慨深げに見あげていた。

「また、おばあちゃんに、『こんなもの作って!』って言われちゃいそう」

 もうすっかり体調が戻ったミルルもマッハ神魔動飛行船の開発に参加していた。

「そうかなぁ。さすがにもう平気だろう。試運転の時には来るって言ってたんだろ?」
「うん。最近は私が神力で治療してるから体の調子は良いみたい」
「そりゃ、良かった」

「ねぇ、外周エンジンって、そのまま海に入っても平気なんだよね?」
「ああ、平気だけど、まだテストはしないと思うぞ」
「うそ~っ、でも神魔動飛空二輪のテストはやってたよ。アーデル湖に潜ってすぐに出てきたみたいけど」

「まじか。無茶するなぁ。真空膜フィールドだけで潜っちゃうのか。酸素は作ってるからいいとしても、エネルギー持たないだろ。あ~、それですぐ出てきたのか」
「うん。全然平気だったみたい」

「そうか。そうなると、全周が窓みたいなものだから凄い眺めだろうな。ん? さすがに透明にはならないのか? あ~、こんど乗せてもらおう」

「もう、侍女隊には配備されたの?」
「うん、先週配備されて、今週から訓練のハズ。テストパイロットを椎名美鈴がやってたから、彼女が教官になって、しごくらしい」

「へぇ。彼女、教官としては厳しそう」
「鬼コーチかも」
「怖~いっ」ミルルは笑って言った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

処理中です...