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黎明編
25 神界大騒乱
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女神像が完成し、隣の教会はさらに信者が集まる様になった。
せっかく教会を拡張したばかりだが、もう手狭になりかけているという。こうなったら、広場全部教会の敷地にしちゃってもいいんじゃないかと思う。しかし、そうなると新築ということになるので簡単には決められないのだろうが。
信者が多くなると教会のスタッフも増やす必要があるが、募集してみたら希望者殺到でこちらも大所帯になってきたそうな。
最近は前を通りかかっても、見たことないシスターとすれ違うことがある。全員を教会内で住まわせるわけにもいかず、何人かは近くに用意した宿舎から通っているとのことだ。以前は倉庫にしていたような部屋まで使っているらしい。
そんな忙しい教会の女神様はというと、最近音沙汰がない。
いや、便りがないのは良い便りだそうだけど、ちょっと気になる。だって、普通じゃないからな、あの神様の場合。そんなことを考えていたら、ある朝突然連絡があった。
ー リュウジ! リュウジ!
あ、これヤバい奴かも。こんな呼び出し方は初めてだ。ここは真面目に答えよう。
ー どちら様でしょうか?
ー 何言ってんの、私よ私。
ー わたしわたし詐欺の方ですか?
ー 何よそれ。大変なのよ。
ー マジですか。
ー マジなのよ。いま、神界で大騒ぎなの。
ー 神界で? 神界なら俺に影響ないじゃないですか。
ー 違うのよ、あんたのいるその世界を滅ぼせって話が出てるのよ。
なに~っ? ちょっと待て、いくら俺がいい加減な使徒だからって、滅ぼさなくてもいいじゃないか?
ー 違うわよ。ほら、その世界ってリセットかけたのに壊滅しなかったでしょ? それで、その原因が神力を食べる魔法共生菌だということになったんだけど、そんな神界のルールを無効にするような細菌は危険だってことになった訳。
ー それなら、細菌を絶滅させればいいだろ?
ー あんた、分かってないわね。それ、一度やってるでしょ? それって、普通の生命活動とは違うのよ。この世界の成り立ちを根底から覆す可能性があるものなのよ。
ー 確かに。でも、またリセットしても結果は変わらないだろ?
ー そうよ、だから神界特別措置法の適用対象になりそうなの。
なに?
ー え~っと、つまりリセット以上の強硬手段を適用するってこと?
ー そう、悠長に消えるの待ってられない。何があっても痕跡も残さず星ごと消し去れって話なの。
ー マジかよ。やばいじゃん。
ー ヤバいのよ。けど、私としては、ここまで手をかけた世界を手放すのは忍びないのよ。
ー ううん。俺も忍びないぞ。嫁候補が二人もいるのに黙ってられない。
ー その言い方だと、どちらか選ぶみたいに聞こえるけど、あんたの場合は二人共だしね。
ー そこ突っ込むんだ。あ~けど、それだと俺にはどうしようもないじゃん。神様に従うしかないし。
ー あら、あんたが神様に従うなんて言うとは思わなかったわね。
ー 俺は悪魔か。
ー じょーだんよ。けど、確かに手立てはないわね普通。
ー ちょっと待て、普通じゃ無ければ手立てがあるように聞こえるんだが。
ー あんたは、普通じゃないでしょ。人間としてじゃなくて使徒として。
ー ん? あ~確かに、使徒を増殖してるしな。
ー それよ! それでね、あんたとあんたが増やした使徒を神界に呼ぼうと思ってるんだけど、どうかな?
ー へ? 俺とニーナを神界へ?
ー そう。あとできればミルルも呼びたい。二人なら偶然の産物って言われかねないし。
ー うん? 俺たちに何をしろと?
ー あんたたちはね、新しい可能性なの。いい意味での変化。魔法共生菌が悪い意味での変化とすれば、この世界には両方ありますって言えるでしょ? 滅ぼしていいのでしょうか? って。
ー なるほど。ん? 使徒の増殖っていい事なのか? あと、俺よそ者なんだけど。
ー いいのよ。神のしもべの使徒が増えるんだからいいことでしょ? あと、二人の嫁は確かにその世界の人間なんだからその世界の変化よ。
ー まぁ、そうだな。
ー 神界のルールからはみ出した使徒なのは確かだし。それは、まだ解明されていないことよね。それまで消去しますか? って言えると思うの。
ー 俺を含めて全部消せって言われそう。
ー それは、そうね。でも、黙ってたら消されるんだから言ってみるしかないわよ。
ー まぁ、そうだな。分かった。二人にも話してみるよ。
ー 頼んだわよ。
エライことになった。
この世界の命運は俺に……あれ? 俺って元々そうじゃん。俺って、この世界を救うために来てたんじゃん。ちょっと暢気にし過ぎたか? そう考えると、いまさら慌てることもないかと思えてきた。
でも、神様から救うことになるとは思わなかった。
魔王からだろ~普通。この世界のお約束ど~なってんの? てか、ダブルで非常事態って訳わからん。
* * *
俺はさっそく執務室にニーナとミルルを呼んで事情を説明した。
「なによそれ~っ。それ無理ですっ、ししょ~」
ニーナも、流石にお手上げと言ったところ。
「わ、わ、わたしが、しんかいに。しんかいにふか~く……?」ミルル、それ深海だから。
「とんでもない事になったわね」とニーナ。
「まぁ、俺は元々そういう話で来たんだけどな」
「ん~、その話も驚きだけど。そもそも、別世界から来てるなんて聞いてないわよ!」とニーナ。
「すまん、下手に話すと訳わかんなくなりそうで」
「訳わかんないわよ」
「うん、ちょーわかんない」ミルルも同意する。
「訳わかんないけど、使徒になっちゃったからには、なんとかしたいわね」
ニーナは腰に手を当て、覚悟をしたような目で言う。
「うん、このまま消えたくない。あ、でもわたし使徒になってないんじゃ?」とミルル。
「あ、そだな。お前ちょっと今夜泊まってけ」
「うん、わかった」
「あ、でもマドラーおばあちゃんに何て言うかな。怒られるかな?」
「実は、おばあちゃんが反対してたってのは嘘」
「えっ?」
「ほんとは、ちょっと自信がなかっただけなんだ。おばあちゃんは、早く嫁に行けってせっついてた」ミルルは申し訳なさそうに言った。
「やっぱりね! そうだと思ったわよ」とニーナ。分かってたんかい!
「え~、だって成人したての子供だって言ってたじゃん」
「成人したての子供だから嫁に行って守って貰えって」
「な、なるほど」
そう言えばそうか。昔から、そういう考え方だった気もする。
「あ、それこの世界じゃ普通だよ~。十五過ぎたら嫁に行くの当たり前だから」とミルル。
「ふふふ。そうよね~。うちもそうだもん」とニーナ。
「じゃあ、このまま神界へ行っても問題ないな?」
「このまま?」とミルル。
「たぶん、使徒になったら、そのまま神界に行くことになると思う」
「そうね。そうなるわね」とニーナ。
「わかった。神界に嫁に行く~って言っとく」
「それ、おばあちゃんが神界に行っちゃうからやめとけ」
* * *
女神様の迎えが来る前に、なんとかミルルも使徒になり、寝室で待っていた。
「これで、二人とも正式に俺の嫁ってことでいいよな?」
「そうね。女神様公認だしね」
「うん、わかった~」
思えば、結婚式以上のことしてるもんな。
「ねぇ、リュウジ」ふと、ミルルが俺を見上げて言った。
「これって、新婚旅行?」とミルル。もしかして大物かも。
「あ~っ、俺、お前を嫁にしてほんと良かったって今思った」
「私も、そう思った」
「いや、俺の嫁だし」
「ってことは、私の嫁でもあるわよ」ニーナは真顔で意外なことを言う。
「えっ? そうなのか?」
「私は、そう思ってるわよ。ミルルは私の嫁」
「うん、私は二人の嫁。二人は私の旦那」
「よかったなニーナの旦那」
「ぶつわよっ」
* * *
神界は、名状しがたい限りなく形のない雲のようなものだった。
要するに、雲だらけでよくわからなかった。隠しているのかも知れないが、そもそも精神世界なので建造物などが存在するのかどうか怪しい。床を歩いているようで実際は床ではなかったかも知れない。
俺達はただ、巨大な会議場のようなところに連れていかれただけだった。
殆ど何も言わなかった。っていうか、人間の考えなど全てお見通しで、そもそも聞く必要がないのかも知れない。
俺達は単にそこに居て、俺たちの存在を示せばいいだけらしい。
ただ、俺と俺の使徒の関係……これは、人間関係という意味ではなく、神力関係だ……には、非常に関心を寄せられた。
使徒を作るというのは神の能力である。それを使徒の俺が行使したとなれば問題である。そして三人とも問題の魔法共生菌に関わっている。これが使徒を増やしたことと関係あるのかないのかが議論の中心だった。
しかし、こればっかりは見ただけでは分からない。しまいには魔法共生菌無しで使徒を増やしてみるよう要求された。
「あれは、別に義務じゃないからいいのよ」
三人目の使徒について、女神アリスはそう言っていた。
* * *
神界から戻るとどっと疲れが出た。
既に深夜というより明け方に近いのだが、ベッドに入っても簡単には眠れなかった。露天風呂にでも入ってゆっくしたいものだ。早く作ろう。
「まぁ、要求されても出来ないものは出来ないからな。無理やり作るものでもないし」
三人目の使徒についての俺の正直な気持ちだ。
「私は、むしろ三人目が出来るなら楽しみだけど」
ニーナはどこか新境地へ行った気がする。
「なんで、そういう発想に? 普通は独占したいとか思うんじゃ?」
「う~ん、そうよね~。普通はそーなんだろうけど……」と自分でも不思議そうに言うニーナ。
「リュウジには女神様がいるし、独占なんて無理~っ」とミルル。
「そうよね。独占したい人はししょーの嫁にはなれないわよね」
そうなのか? てか、まだ増えるような言い方はどうなんだ?
「逆に、独占したいって人は相手の面倒を独りで見る気なんだよね? 大変そう」とニーナ。
「大変そ~」とミルル。
「俺の面倒がか? っていうか、女神様が最優先だからな」
「そうそう」
「だよね~っ」
「おまえら、よくそれで俺の嫁になったな。逆に尊敬するわ。なんでだ?」
「あ、バカね~っ、幸せだからに決まってんでしょ」
「うん、しあわせ~っ」
「ほんとかよ。まぁ、そうか。じゃ、これからも幸せ目指してハーレム作ろう」
「そこは、目指さなくていい」
「さいですか」
今回の神界行きの結果として、この世界の処遇は再検討して貰えることになった。神様のことだ、百年とか検討していてくれると助かるんだが。
せっかく教会を拡張したばかりだが、もう手狭になりかけているという。こうなったら、広場全部教会の敷地にしちゃってもいいんじゃないかと思う。しかし、そうなると新築ということになるので簡単には決められないのだろうが。
信者が多くなると教会のスタッフも増やす必要があるが、募集してみたら希望者殺到でこちらも大所帯になってきたそうな。
最近は前を通りかかっても、見たことないシスターとすれ違うことがある。全員を教会内で住まわせるわけにもいかず、何人かは近くに用意した宿舎から通っているとのことだ。以前は倉庫にしていたような部屋まで使っているらしい。
そんな忙しい教会の女神様はというと、最近音沙汰がない。
いや、便りがないのは良い便りだそうだけど、ちょっと気になる。だって、普通じゃないからな、あの神様の場合。そんなことを考えていたら、ある朝突然連絡があった。
ー リュウジ! リュウジ!
あ、これヤバい奴かも。こんな呼び出し方は初めてだ。ここは真面目に答えよう。
ー どちら様でしょうか?
ー 何言ってんの、私よ私。
ー わたしわたし詐欺の方ですか?
ー 何よそれ。大変なのよ。
ー マジですか。
ー マジなのよ。いま、神界で大騒ぎなの。
ー 神界で? 神界なら俺に影響ないじゃないですか。
ー 違うのよ、あんたのいるその世界を滅ぼせって話が出てるのよ。
なに~っ? ちょっと待て、いくら俺がいい加減な使徒だからって、滅ぼさなくてもいいじゃないか?
ー 違うわよ。ほら、その世界ってリセットかけたのに壊滅しなかったでしょ? それで、その原因が神力を食べる魔法共生菌だということになったんだけど、そんな神界のルールを無効にするような細菌は危険だってことになった訳。
ー それなら、細菌を絶滅させればいいだろ?
ー あんた、分かってないわね。それ、一度やってるでしょ? それって、普通の生命活動とは違うのよ。この世界の成り立ちを根底から覆す可能性があるものなのよ。
ー 確かに。でも、またリセットしても結果は変わらないだろ?
ー そうよ、だから神界特別措置法の適用対象になりそうなの。
なに?
ー え~っと、つまりリセット以上の強硬手段を適用するってこと?
ー そう、悠長に消えるの待ってられない。何があっても痕跡も残さず星ごと消し去れって話なの。
ー マジかよ。やばいじゃん。
ー ヤバいのよ。けど、私としては、ここまで手をかけた世界を手放すのは忍びないのよ。
ー ううん。俺も忍びないぞ。嫁候補が二人もいるのに黙ってられない。
ー その言い方だと、どちらか選ぶみたいに聞こえるけど、あんたの場合は二人共だしね。
ー そこ突っ込むんだ。あ~けど、それだと俺にはどうしようもないじゃん。神様に従うしかないし。
ー あら、あんたが神様に従うなんて言うとは思わなかったわね。
ー 俺は悪魔か。
ー じょーだんよ。けど、確かに手立てはないわね普通。
ー ちょっと待て、普通じゃ無ければ手立てがあるように聞こえるんだが。
ー あんたは、普通じゃないでしょ。人間としてじゃなくて使徒として。
ー ん? あ~確かに、使徒を増殖してるしな。
ー それよ! それでね、あんたとあんたが増やした使徒を神界に呼ぼうと思ってるんだけど、どうかな?
ー へ? 俺とニーナを神界へ?
ー そう。あとできればミルルも呼びたい。二人なら偶然の産物って言われかねないし。
ー うん? 俺たちに何をしろと?
ー あんたたちはね、新しい可能性なの。いい意味での変化。魔法共生菌が悪い意味での変化とすれば、この世界には両方ありますって言えるでしょ? 滅ぼしていいのでしょうか? って。
ー なるほど。ん? 使徒の増殖っていい事なのか? あと、俺よそ者なんだけど。
ー いいのよ。神のしもべの使徒が増えるんだからいいことでしょ? あと、二人の嫁は確かにその世界の人間なんだからその世界の変化よ。
ー まぁ、そうだな。
ー 神界のルールからはみ出した使徒なのは確かだし。それは、まだ解明されていないことよね。それまで消去しますか? って言えると思うの。
ー 俺を含めて全部消せって言われそう。
ー それは、そうね。でも、黙ってたら消されるんだから言ってみるしかないわよ。
ー まぁ、そうだな。分かった。二人にも話してみるよ。
ー 頼んだわよ。
エライことになった。
この世界の命運は俺に……あれ? 俺って元々そうじゃん。俺って、この世界を救うために来てたんじゃん。ちょっと暢気にし過ぎたか? そう考えると、いまさら慌てることもないかと思えてきた。
でも、神様から救うことになるとは思わなかった。
魔王からだろ~普通。この世界のお約束ど~なってんの? てか、ダブルで非常事態って訳わからん。
* * *
俺はさっそく執務室にニーナとミルルを呼んで事情を説明した。
「なによそれ~っ。それ無理ですっ、ししょ~」
ニーナも、流石にお手上げと言ったところ。
「わ、わ、わたしが、しんかいに。しんかいにふか~く……?」ミルル、それ深海だから。
「とんでもない事になったわね」とニーナ。
「まぁ、俺は元々そういう話で来たんだけどな」
「ん~、その話も驚きだけど。そもそも、別世界から来てるなんて聞いてないわよ!」とニーナ。
「すまん、下手に話すと訳わかんなくなりそうで」
「訳わかんないわよ」
「うん、ちょーわかんない」ミルルも同意する。
「訳わかんないけど、使徒になっちゃったからには、なんとかしたいわね」
ニーナは腰に手を当て、覚悟をしたような目で言う。
「うん、このまま消えたくない。あ、でもわたし使徒になってないんじゃ?」とミルル。
「あ、そだな。お前ちょっと今夜泊まってけ」
「うん、わかった」
「あ、でもマドラーおばあちゃんに何て言うかな。怒られるかな?」
「実は、おばあちゃんが反対してたってのは嘘」
「えっ?」
「ほんとは、ちょっと自信がなかっただけなんだ。おばあちゃんは、早く嫁に行けってせっついてた」ミルルは申し訳なさそうに言った。
「やっぱりね! そうだと思ったわよ」とニーナ。分かってたんかい!
「え~、だって成人したての子供だって言ってたじゃん」
「成人したての子供だから嫁に行って守って貰えって」
「な、なるほど」
そう言えばそうか。昔から、そういう考え方だった気もする。
「あ、それこの世界じゃ普通だよ~。十五過ぎたら嫁に行くの当たり前だから」とミルル。
「ふふふ。そうよね~。うちもそうだもん」とニーナ。
「じゃあ、このまま神界へ行っても問題ないな?」
「このまま?」とミルル。
「たぶん、使徒になったら、そのまま神界に行くことになると思う」
「そうね。そうなるわね」とニーナ。
「わかった。神界に嫁に行く~って言っとく」
「それ、おばあちゃんが神界に行っちゃうからやめとけ」
* * *
女神様の迎えが来る前に、なんとかミルルも使徒になり、寝室で待っていた。
「これで、二人とも正式に俺の嫁ってことでいいよな?」
「そうね。女神様公認だしね」
「うん、わかった~」
思えば、結婚式以上のことしてるもんな。
「ねぇ、リュウジ」ふと、ミルルが俺を見上げて言った。
「これって、新婚旅行?」とミルル。もしかして大物かも。
「あ~っ、俺、お前を嫁にしてほんと良かったって今思った」
「私も、そう思った」
「いや、俺の嫁だし」
「ってことは、私の嫁でもあるわよ」ニーナは真顔で意外なことを言う。
「えっ? そうなのか?」
「私は、そう思ってるわよ。ミルルは私の嫁」
「うん、私は二人の嫁。二人は私の旦那」
「よかったなニーナの旦那」
「ぶつわよっ」
* * *
神界は、名状しがたい限りなく形のない雲のようなものだった。
要するに、雲だらけでよくわからなかった。隠しているのかも知れないが、そもそも精神世界なので建造物などが存在するのかどうか怪しい。床を歩いているようで実際は床ではなかったかも知れない。
俺達はただ、巨大な会議場のようなところに連れていかれただけだった。
殆ど何も言わなかった。っていうか、人間の考えなど全てお見通しで、そもそも聞く必要がないのかも知れない。
俺達は単にそこに居て、俺たちの存在を示せばいいだけらしい。
ただ、俺と俺の使徒の関係……これは、人間関係という意味ではなく、神力関係だ……には、非常に関心を寄せられた。
使徒を作るというのは神の能力である。それを使徒の俺が行使したとなれば問題である。そして三人とも問題の魔法共生菌に関わっている。これが使徒を増やしたことと関係あるのかないのかが議論の中心だった。
しかし、こればっかりは見ただけでは分からない。しまいには魔法共生菌無しで使徒を増やしてみるよう要求された。
「あれは、別に義務じゃないからいいのよ」
三人目の使徒について、女神アリスはそう言っていた。
* * *
神界から戻るとどっと疲れが出た。
既に深夜というより明け方に近いのだが、ベッドに入っても簡単には眠れなかった。露天風呂にでも入ってゆっくしたいものだ。早く作ろう。
「まぁ、要求されても出来ないものは出来ないからな。無理やり作るものでもないし」
三人目の使徒についての俺の正直な気持ちだ。
「私は、むしろ三人目が出来るなら楽しみだけど」
ニーナはどこか新境地へ行った気がする。
「なんで、そういう発想に? 普通は独占したいとか思うんじゃ?」
「う~ん、そうよね~。普通はそーなんだろうけど……」と自分でも不思議そうに言うニーナ。
「リュウジには女神様がいるし、独占なんて無理~っ」とミルル。
「そうよね。独占したい人はししょーの嫁にはなれないわよね」
そうなのか? てか、まだ増えるような言い方はどうなんだ?
「逆に、独占したいって人は相手の面倒を独りで見る気なんだよね? 大変そう」とニーナ。
「大変そ~」とミルル。
「俺の面倒がか? っていうか、女神様が最優先だからな」
「そうそう」
「だよね~っ」
「おまえら、よくそれで俺の嫁になったな。逆に尊敬するわ。なんでだ?」
「あ、バカね~っ、幸せだからに決まってんでしょ」
「うん、しあわせ~っ」
「ほんとかよ。まぁ、そうか。じゃ、これからも幸せ目指してハーレム作ろう」
「そこは、目指さなくていい」
「さいですか」
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