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38 ガニメデ流生け花
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ガニメデ日本基地の拡張作業が完了した。
俺たちが使う汎用棟も完成した。
ガニメデは地球よりも水が多いために凍結はしているものの地盤は脆弱なのだという。このため、基地の施設は建築物と言うよりも船に近い構造になっていた。どおりで建材が多い筈だ。
もっとも、初期の宇宙船をそのまま使っているという事情もあるようだ。その分しっかり出来ているので安心ではある。
基地の拡張完了を期に、両チームの今後の計画を立てることになった。俺たちもガニメデの調査に協力することにしたので当然一緒に計画を検討する訳だ。
そんなわけで、新しく出来た汎用棟に集まっていた。
「まずは、俺たちガニメデ調査隊の基本計画を説明しよう」とマクガイ。
「今後、俺たちは地下の掘削を予定している。割り当てられた地域の地下資源を調査する訳だ。これは、本来は十日ほど後の予定だったが、有り難いことにリュウチームの参加で拡張工事が早く終わった。明日から余裕をもって始められるという訳だ」
マクガイはこちらにチラッと視線を送って頷いた。
「じゃ、リュウチームの方を頼む」
「了解」
「俺たちのチームの目標は、この世界を認識する転移発光物質を探すことだ」
マクガイに促されて俺たちのチームの方針を説明した。両チームは協力もするが独自の行動もとる。なら、互いに何をやっているのか分かるようにしておくべきだと言うのがマクガイと俺の一致した意見だ。
「これ以外にも、できれば多重世界の調査を進めたいと考えている。ただ、俺たちは研究チームと言うより単なる遭難者だ。研究者が含まれているのはただの幸運でしかない。それでも、なんとか元の世界に戻りたいと考えている。それが最終目標だ」
俺たちの計画はこれだけだ。俺は、マクガイに頷いて見せた。
「分かった。何か質問はあるか?」マクガイは両チームを見渡して言った。
「大筋はいいとして、今後の予定としては、こちらはすぐに掘削作業に入るつもりだ。要はボーリングだな。掘削マシンの扱いは慣れているので、特に問題はないだろう」と言ってマクガイは俺を見る。
「そうか。こちらは、苔やカビなどの生命体を調査する。転移発光物質には、微生物が使えるからだ。ただし、ガニメデ在来の生命体を探そうという訳じゃない。この基地に人間が持ち込んだ生命の変異種がいればいいと考えている」
俺たちは、別に生命の起源の研究をしているわけではないしガニメデ調査隊でもない。
その手の研究はガニメデ開発計画が始まる前に十分実施済みだろう。だから、この環境で希少種を探すと言うのはとんでもなく難しい筈だ。生命そのものが、ほとんどいないからだ。
まぁ、今回は発見できなくても仕方ないだろう。
* * *
こうして、ガニメデ基地の日常が動き始めた。俺たちにとっては日常ではないが。
「間欠泉のように水が噴き出すのか?」
俺はちょっと驚いて大きな声を出してしまった。
「そうだ、折角ガニメデに来たんだから一度見ておくといい」
マクガイは観光ガイドみたいなことを言い出した。
「噴出した水は、ガニメデの気圧がほぼゼロだから一瞬で蒸発してしまう。それが、ちょっと見物でな」
マクガイは、さも面白そうに言う。
「ガニメデで、そんなことがあるとは思わなかった」
「普通そう思うよな。実は、地球と同じでガニメデにも熱いコアがあるんだよ。だから地下から温泉が出ることもあるんだ」
「ほう」
「それは私も、知りませんでした」とレジン。
「そうか! まぁ、すぐに蒸発してしまうから、露天風呂を作れないのが残念なところだがな!」
残念なんだ。あ、これ冗談のつもりだったのか? ごめん、笑えなかった。
まぁ、蒸発しなくても真空に近い地表で露天風呂はないよな。けど、防護スーツの俺たちなら入れなくもないと思うと、ちょっと色気が出る。
木星をバックにした露天風呂だからな! 沸騰してる露天風呂だ! 面白そう!
露天風呂はともかく、そんなわけで俺たちは少し遠出して間欠泉を見に行くことにした。
場所はガニメデ調査隊がボーリングする場所の先だそうで、一緒に連れて行ってくれるそうだ。
* * *
ガニメデの大地は一面が金属を多く含む黒っぽい氷の岩だらけだった。
氷と言っても透明なわけではない。木星の照り返しでうっすらと見える程度の明かりの中では、普通に岩が転がっているようにしか見えない。
調査隊と別れて五キロメートルほど飛ぶと、それらしいものが見えて来た。普通の状態でも少し熱水を噴き上げていた。
ー あれか。
暗いこともあり、俺たちはスーツの通信を使いながら纏まって低空を飛んだ。
言われた通り地表を注意して見ていると地表から勢いよく噴き出す水が見えた。
手ごろな岩陰に降りたって様子を見る。
ー 数百メートルは離れないと、風圧で飛ばされるらしいぞ。
ほぼゼロ気圧なので水は地上では沸騰してしまう。つまり爆発的な水蒸気の風になるわけだ。
ー 面白いのぉ。
ツウ姫は興味津々だ。ああ、なんかこいつが叫びながら飛ばされて行く絵が想像できる。面白いかも。
ー お主、悪い顔をしているのじゃ。
バレたか。
ー リュウは結構、悪よね~っ。
メリス、そういう誤解を招くような発言は……。
ー 何がだよ。
ー 悪よのぉ~っ。
なんでユリが言うんだよ。
ー そこは、ツウ姫に言わせないと。
ー 悪じゃのぉ~っ。
ー なんか、びみょう。
そんなアホなことを言ってたら、また間欠泉が噴き上げ始めた。
確かに面白い。
普通の間欠泉なら噴き上げてから霧状に落ちて来るところだろうが、これは噴き上げたまま消えていくのが違う。それは、まるでクジャクが羽を広げたようだった。
もっとも、背景の木星自体のほうがクジャクっぽいとも言える。間欠泉はクジャクの骨と言ったらいいかも知れない。
- ガニメデの孔雀だな。
ー ほんとだね。
とユリ。
ー 面白いわね!
とメリス。
ー なんか、しょわぁ~って音がしてそう。
とセリー。空気があったら聞こえるのにな。
ー これは、ガニメデ流の生け花ね。
とシナノ。なるほど。そういう見方もあるか。木星一つを素材に使うダイナミックな生け花だ。
角度を変えると見え方が変わって面白い。しばらくの間、飛び回ってガニメデ流生け花を楽しむのだった。
俺たちが使う汎用棟も完成した。
ガニメデは地球よりも水が多いために凍結はしているものの地盤は脆弱なのだという。このため、基地の施設は建築物と言うよりも船に近い構造になっていた。どおりで建材が多い筈だ。
もっとも、初期の宇宙船をそのまま使っているという事情もあるようだ。その分しっかり出来ているので安心ではある。
基地の拡張完了を期に、両チームの今後の計画を立てることになった。俺たちもガニメデの調査に協力することにしたので当然一緒に計画を検討する訳だ。
そんなわけで、新しく出来た汎用棟に集まっていた。
「まずは、俺たちガニメデ調査隊の基本計画を説明しよう」とマクガイ。
「今後、俺たちは地下の掘削を予定している。割り当てられた地域の地下資源を調査する訳だ。これは、本来は十日ほど後の予定だったが、有り難いことにリュウチームの参加で拡張工事が早く終わった。明日から余裕をもって始められるという訳だ」
マクガイはこちらにチラッと視線を送って頷いた。
「じゃ、リュウチームの方を頼む」
「了解」
「俺たちのチームの目標は、この世界を認識する転移発光物質を探すことだ」
マクガイに促されて俺たちのチームの方針を説明した。両チームは協力もするが独自の行動もとる。なら、互いに何をやっているのか分かるようにしておくべきだと言うのがマクガイと俺の一致した意見だ。
「これ以外にも、できれば多重世界の調査を進めたいと考えている。ただ、俺たちは研究チームと言うより単なる遭難者だ。研究者が含まれているのはただの幸運でしかない。それでも、なんとか元の世界に戻りたいと考えている。それが最終目標だ」
俺たちの計画はこれだけだ。俺は、マクガイに頷いて見せた。
「分かった。何か質問はあるか?」マクガイは両チームを見渡して言った。
「大筋はいいとして、今後の予定としては、こちらはすぐに掘削作業に入るつもりだ。要はボーリングだな。掘削マシンの扱いは慣れているので、特に問題はないだろう」と言ってマクガイは俺を見る。
「そうか。こちらは、苔やカビなどの生命体を調査する。転移発光物質には、微生物が使えるからだ。ただし、ガニメデ在来の生命体を探そうという訳じゃない。この基地に人間が持ち込んだ生命の変異種がいればいいと考えている」
俺たちは、別に生命の起源の研究をしているわけではないしガニメデ調査隊でもない。
その手の研究はガニメデ開発計画が始まる前に十分実施済みだろう。だから、この環境で希少種を探すと言うのはとんでもなく難しい筈だ。生命そのものが、ほとんどいないからだ。
まぁ、今回は発見できなくても仕方ないだろう。
* * *
こうして、ガニメデ基地の日常が動き始めた。俺たちにとっては日常ではないが。
「間欠泉のように水が噴き出すのか?」
俺はちょっと驚いて大きな声を出してしまった。
「そうだ、折角ガニメデに来たんだから一度見ておくといい」
マクガイは観光ガイドみたいなことを言い出した。
「噴出した水は、ガニメデの気圧がほぼゼロだから一瞬で蒸発してしまう。それが、ちょっと見物でな」
マクガイは、さも面白そうに言う。
「ガニメデで、そんなことがあるとは思わなかった」
「普通そう思うよな。実は、地球と同じでガニメデにも熱いコアがあるんだよ。だから地下から温泉が出ることもあるんだ」
「ほう」
「それは私も、知りませんでした」とレジン。
「そうか! まぁ、すぐに蒸発してしまうから、露天風呂を作れないのが残念なところだがな!」
残念なんだ。あ、これ冗談のつもりだったのか? ごめん、笑えなかった。
まぁ、蒸発しなくても真空に近い地表で露天風呂はないよな。けど、防護スーツの俺たちなら入れなくもないと思うと、ちょっと色気が出る。
木星をバックにした露天風呂だからな! 沸騰してる露天風呂だ! 面白そう!
露天風呂はともかく、そんなわけで俺たちは少し遠出して間欠泉を見に行くことにした。
場所はガニメデ調査隊がボーリングする場所の先だそうで、一緒に連れて行ってくれるそうだ。
* * *
ガニメデの大地は一面が金属を多く含む黒っぽい氷の岩だらけだった。
氷と言っても透明なわけではない。木星の照り返しでうっすらと見える程度の明かりの中では、普通に岩が転がっているようにしか見えない。
調査隊と別れて五キロメートルほど飛ぶと、それらしいものが見えて来た。普通の状態でも少し熱水を噴き上げていた。
ー あれか。
暗いこともあり、俺たちはスーツの通信を使いながら纏まって低空を飛んだ。
言われた通り地表を注意して見ていると地表から勢いよく噴き出す水が見えた。
手ごろな岩陰に降りたって様子を見る。
ー 数百メートルは離れないと、風圧で飛ばされるらしいぞ。
ほぼゼロ気圧なので水は地上では沸騰してしまう。つまり爆発的な水蒸気の風になるわけだ。
ー 面白いのぉ。
ツウ姫は興味津々だ。ああ、なんかこいつが叫びながら飛ばされて行く絵が想像できる。面白いかも。
ー お主、悪い顔をしているのじゃ。
バレたか。
ー リュウは結構、悪よね~っ。
メリス、そういう誤解を招くような発言は……。
ー 何がだよ。
ー 悪よのぉ~っ。
なんでユリが言うんだよ。
ー そこは、ツウ姫に言わせないと。
ー 悪じゃのぉ~っ。
ー なんか、びみょう。
そんなアホなことを言ってたら、また間欠泉が噴き上げ始めた。
確かに面白い。
普通の間欠泉なら噴き上げてから霧状に落ちて来るところだろうが、これは噴き上げたまま消えていくのが違う。それは、まるでクジャクが羽を広げたようだった。
もっとも、背景の木星自体のほうがクジャクっぽいとも言える。間欠泉はクジャクの骨と言ったらいいかも知れない。
- ガニメデの孔雀だな。
ー ほんとだね。
とユリ。
ー 面白いわね!
とメリス。
ー なんか、しょわぁ~って音がしてそう。
とセリー。空気があったら聞こえるのにな。
ー これは、ガニメデ流の生け花ね。
とシナノ。なるほど。そういう見方もあるか。木星一つを素材に使うダイナミックな生け花だ。
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