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11 テーマは二つ
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この日は午後も検討会を続けた。
次は第二のテーマ『転移の種類』についてだ。
これはトウカの担当になっている。
「『転移の種類』については何も分かっていません。ただ、何故か球状に切り取る転移ではなくなったことは確かです。何が変わったのかは分かりません。ただ、確率の話が出てきたので確率的な纏まりで選ばれているという可能性あります」
「ほう。確率的な纏まりか。どう思うリュウ?」ホワンは俺に意見を求めて来た。
「そうですね。とっても希望の持てる意見だと思います。半分の俺が戻っても意味がないので」
つまり、俺と言う存在は完全体で確率的に意味があるんだと思う。生きている存在として。
「そ、そうだな。確かに」
思わずホワンも苦笑いだ。
* * *
第三のテーマ『ヒカリゴケが発光した理由』の担当はユリだったが、これも全く進展無しだそうだ。
貴重なヒカリゴケなので再実験ではカプセルの近くに置いていただけで、全く反応が無かったそうだ。
「これは仕方ないな。まともな実験が出来てないからな」ホワンも納得していた。
* * *
次にマナブが発表した。
まず、遺伝子の調査から世界R、世界001~世界004の存在の可能性を発表した。
「全部の実験が成功だったのか。しかも十回に一回はリュウの世界Rが選択されているというのか。これは大きな成果だな! すぐにでもリュウは帰れそうじゃないか! いや、まだ確実ではないな。うん。落ち着こう」とホワン。
「それはそうと、この世界に名前はないのか?」ふと、ホワンが言った。
「あっ」
他の世界ばかりに気を取られて、この世界のネーミングがまだだったようだ。
マナブが即座に『世界ゼロ』と言ったのでそのまますんなり決まった。まぁ、とりあえずの世界の名前なんて研究所内で分かればいいだろう。正式名称は後でお偉いさんに考えてもらえばいい。
そんなわけで、合計六個の多重世界の名前が決まった。
ホワンも流石にこの成果を聞いて興奮したようだ。俺もそうだった。みんなも、いけると思ったようだ。
ただ、第五のテーマ『転移の方向』については大きく前進した。
転移は受け取るだけでなく送り出してもいたからだ。
「ただし、双方向かどうかは、まだなんとも言えません」
マナブは残念そうに言った。
「少なくともこの世界以外に5つの世界があるなら、繰り返し実験するしかありません」
「確かにな」
「はい。ただ、座標の誤差を減らしていけば、いずれ分かることです」
マナブは自信を持って言った。結論はもう目の前だよな。
* * *
その後、この世界を『確率論的多重世界』と仮定した上での転移実験が続けられた。
まずは、物質を送り出すことは止めて座標を調整することに集中した。世界が切り替わる順番とその世界の座標をセットで考える必要がある。
この難しいと思われた座標の確定作業だが、その後早い段階で特定できるようになった。結果的にズレはあまり大きくなかったのだ。
現在実験をしている場所は過去に溶岩流が流れたところなので、その世界の歴史、特に噴火の時期や風化、その後の開発の状況などで標高が大きく違うことが多かったたのだ。
つまり違っていたのは主に高さ方向だけだった。
「分かってみれば、当然の結果だったんですね!」
トウカは晴れ晴れとした顔で言った。
* * *
「座標を特定できましたので。採取した昆虫から現在接続している世界を特定できました」
次の検討会でトウカが報告した。
「現在、接続できた世界は十世界であると思われます」
「やっぱりか!」とホワン。
「おおすぎっ」とメリス。
「マジなの?」とユリ。ちょっとトウカを責めた目で。
つまり、研究対象が2倍に増えたのだ。安易には歓迎できない。
「と、とりあえず世界R,世界001~世界009ということでお願いします」
いや、それトウカのせいじゃないし。
「でも、これで転移方向の研究が進められるな!」とマナブ。
これで、世界と座標が確定するまで止められていた『転移方向』の研究が始められる。
つまり、これを受けて実験は次のフェーズへ移行したと言えるだろう。
* * *
すぐにメッセージ付きアルミケースを使った双方向転移実験が開始された。
転移が双方向であれば、接続している世界を十世界全てに送り出せば、次の接続では戻ってくるはずだ。
以前とは違い意気揚々と実験を繰り返すのだった。
しかし、何度実験しても送り出したものが戻ることは無かった。
「ネコババされたんじゃないか? 多重世界から転移した物体なんて珍しいからな!」
実験のあと、トウカが吐き出すように言った。
「でも合計で五十個もバラ撒いてるんだよ」
マナブが疑問の声を上げる。十日間で五十個。一日五回実験したということだ。
「これは、マナブの言う通りね。全部ネコババなんてあり得ないわよ」
さすがにユリもトウカに同意出来ないらしい。
「やっぱり、双方向じゃないんだろ。転移元と転移先は違うんじゃないか?」
あえて俺は言ってみた。
みんな薄々気が付いていたようだが言えなかったようだ。それだと俺が戻れる可能性が絶望的になるからな。
「それは……。確かにな」
トウカもみんなも認めざるを得ないといった顔だ。
「あっ。じゃ、やばいかな?」トウカは少し焦った顔をする。
「もし、送り出した世界が新たに別の十世界だったら、座標が調整されていない!」
「どういうこと?」とメリス。
「そうか。上空に出現とかしてる可能性があるのか」
「そういうこと」とトウカは焦る。
「まぁ、ここに近い状況だろうから、一面溶岩ばかりの土地だとは思うけど、空中だと空からアルミケースが降ってくることになるな」
「それ、未確認飛行物体?」ユリが言う。
「いや、飛行してないから隕石だな」
「アルミの隕石。怪しすぎる」メリスはちょっと呆れた顔をする。
「UFO騒ぎって実は……」とユリ。
「おいっ」
そんな訳ないよな?
「その場合、研究所の転移は多重世界間を中継してるだけになるのか」とホワン。
「どういうこと?」とメリス。
「だから、世界Rから始まる十世界から物体を取り出して、別の十世界に転送していることになる」
「そういうことね」とメリス。
「運送業者みたい」とユリ。
「しかも、気まぐれ運送」
「ひどい運送屋ね」とメリス。
「居留守使っちゃう」とユリ。
「置き配だけどね」とマナブ。
「やりたい放題だな」とトウカ。
「おいっ」と、やっと突っ込むホワン。
「で、行先はどうやって決まるんだろう?」
ふと、伝票になんて書いてあるか想像した。
「やっぱり、気分だろ」
「そんな!」と絶望的な顔をするマナブ。
「何らかの力が働いて、転移の方向が決まっているとかじゃ?」
「何らかの力?」
「そう、流されるように」
「おお。それ面白い視点だな! 俺は流されてきたわけか!」
「それよ!」とメリス。
「ああ、あるかもな! もしかすると流れの向きを変えられるかもな!」ホワンも同意らしい。
「凄いねマナブ!」とトウカ。
「マナブやるじゃん!」とユリ。
まだまだ、へこたれてる場合じゃないようだ。
* * *
次の検討会は、転移の大まかな状況が明らかになったとして、次のステップの方針を決めることになった。
「現在ある転移装置の転移方向は常に上流から下流へであると考えられる」
「また転移装置が及ぶ範囲は上流十世界、下流十世界。合計二十世界と考えられる。ただし、世界を個別に選択することは出来ない」
ホワンは、全員の現状認識が一致しているのをみて続けた。
「で、これからの研究方針だが十世界は多すぎる。これを絞り込むというのが優先事項だ。対象の世界を限定できなければ使いにくいからな」ホワンは言って、皆を一瞥した。
「次に転移方向の制御が重要だ。転移方向の逆転が出来なければリュウを戻すことが出来ない」
もちろん転移の利用価値も低くなる。
「この二つの課題がクリアされれば実用化が見えてくる。それには、とにかく試してみるしかない。気の長い話になるだろうから覚悟しておけよ」
ホワンはちょっと語気を強めて言った。
「「「「「りょ~かい!」」」」」
研究員のやる気も本物だ。
次は第二のテーマ『転移の種類』についてだ。
これはトウカの担当になっている。
「『転移の種類』については何も分かっていません。ただ、何故か球状に切り取る転移ではなくなったことは確かです。何が変わったのかは分かりません。ただ、確率の話が出てきたので確率的な纏まりで選ばれているという可能性あります」
「ほう。確率的な纏まりか。どう思うリュウ?」ホワンは俺に意見を求めて来た。
「そうですね。とっても希望の持てる意見だと思います。半分の俺が戻っても意味がないので」
つまり、俺と言う存在は完全体で確率的に意味があるんだと思う。生きている存在として。
「そ、そうだな。確かに」
思わずホワンも苦笑いだ。
* * *
第三のテーマ『ヒカリゴケが発光した理由』の担当はユリだったが、これも全く進展無しだそうだ。
貴重なヒカリゴケなので再実験ではカプセルの近くに置いていただけで、全く反応が無かったそうだ。
「これは仕方ないな。まともな実験が出来てないからな」ホワンも納得していた。
* * *
次にマナブが発表した。
まず、遺伝子の調査から世界R、世界001~世界004の存在の可能性を発表した。
「全部の実験が成功だったのか。しかも十回に一回はリュウの世界Rが選択されているというのか。これは大きな成果だな! すぐにでもリュウは帰れそうじゃないか! いや、まだ確実ではないな。うん。落ち着こう」とホワン。
「それはそうと、この世界に名前はないのか?」ふと、ホワンが言った。
「あっ」
他の世界ばかりに気を取られて、この世界のネーミングがまだだったようだ。
マナブが即座に『世界ゼロ』と言ったのでそのまますんなり決まった。まぁ、とりあえずの世界の名前なんて研究所内で分かればいいだろう。正式名称は後でお偉いさんに考えてもらえばいい。
そんなわけで、合計六個の多重世界の名前が決まった。
ホワンも流石にこの成果を聞いて興奮したようだ。俺もそうだった。みんなも、いけると思ったようだ。
ただ、第五のテーマ『転移の方向』については大きく前進した。
転移は受け取るだけでなく送り出してもいたからだ。
「ただし、双方向かどうかは、まだなんとも言えません」
マナブは残念そうに言った。
「少なくともこの世界以外に5つの世界があるなら、繰り返し実験するしかありません」
「確かにな」
「はい。ただ、座標の誤差を減らしていけば、いずれ分かることです」
マナブは自信を持って言った。結論はもう目の前だよな。
* * *
その後、この世界を『確率論的多重世界』と仮定した上での転移実験が続けられた。
まずは、物質を送り出すことは止めて座標を調整することに集中した。世界が切り替わる順番とその世界の座標をセットで考える必要がある。
この難しいと思われた座標の確定作業だが、その後早い段階で特定できるようになった。結果的にズレはあまり大きくなかったのだ。
現在実験をしている場所は過去に溶岩流が流れたところなので、その世界の歴史、特に噴火の時期や風化、その後の開発の状況などで標高が大きく違うことが多かったたのだ。
つまり違っていたのは主に高さ方向だけだった。
「分かってみれば、当然の結果だったんですね!」
トウカは晴れ晴れとした顔で言った。
* * *
「座標を特定できましたので。採取した昆虫から現在接続している世界を特定できました」
次の検討会でトウカが報告した。
「現在、接続できた世界は十世界であると思われます」
「やっぱりか!」とホワン。
「おおすぎっ」とメリス。
「マジなの?」とユリ。ちょっとトウカを責めた目で。
つまり、研究対象が2倍に増えたのだ。安易には歓迎できない。
「と、とりあえず世界R,世界001~世界009ということでお願いします」
いや、それトウカのせいじゃないし。
「でも、これで転移方向の研究が進められるな!」とマナブ。
これで、世界と座標が確定するまで止められていた『転移方向』の研究が始められる。
つまり、これを受けて実験は次のフェーズへ移行したと言えるだろう。
* * *
すぐにメッセージ付きアルミケースを使った双方向転移実験が開始された。
転移が双方向であれば、接続している世界を十世界全てに送り出せば、次の接続では戻ってくるはずだ。
以前とは違い意気揚々と実験を繰り返すのだった。
しかし、何度実験しても送り出したものが戻ることは無かった。
「ネコババされたんじゃないか? 多重世界から転移した物体なんて珍しいからな!」
実験のあと、トウカが吐き出すように言った。
「でも合計で五十個もバラ撒いてるんだよ」
マナブが疑問の声を上げる。十日間で五十個。一日五回実験したということだ。
「これは、マナブの言う通りね。全部ネコババなんてあり得ないわよ」
さすがにユリもトウカに同意出来ないらしい。
「やっぱり、双方向じゃないんだろ。転移元と転移先は違うんじゃないか?」
あえて俺は言ってみた。
みんな薄々気が付いていたようだが言えなかったようだ。それだと俺が戻れる可能性が絶望的になるからな。
「それは……。確かにな」
トウカもみんなも認めざるを得ないといった顔だ。
「あっ。じゃ、やばいかな?」トウカは少し焦った顔をする。
「もし、送り出した世界が新たに別の十世界だったら、座標が調整されていない!」
「どういうこと?」とメリス。
「そうか。上空に出現とかしてる可能性があるのか」
「そういうこと」とトウカは焦る。
「まぁ、ここに近い状況だろうから、一面溶岩ばかりの土地だとは思うけど、空中だと空からアルミケースが降ってくることになるな」
「それ、未確認飛行物体?」ユリが言う。
「いや、飛行してないから隕石だな」
「アルミの隕石。怪しすぎる」メリスはちょっと呆れた顔をする。
「UFO騒ぎって実は……」とユリ。
「おいっ」
そんな訳ないよな?
「その場合、研究所の転移は多重世界間を中継してるだけになるのか」とホワン。
「どういうこと?」とメリス。
「だから、世界Rから始まる十世界から物体を取り出して、別の十世界に転送していることになる」
「そういうことね」とメリス。
「運送業者みたい」とユリ。
「しかも、気まぐれ運送」
「ひどい運送屋ね」とメリス。
「居留守使っちゃう」とユリ。
「置き配だけどね」とマナブ。
「やりたい放題だな」とトウカ。
「おいっ」と、やっと突っ込むホワン。
「で、行先はどうやって決まるんだろう?」
ふと、伝票になんて書いてあるか想像した。
「やっぱり、気分だろ」
「そんな!」と絶望的な顔をするマナブ。
「何らかの力が働いて、転移の方向が決まっているとかじゃ?」
「何らかの力?」
「そう、流されるように」
「おお。それ面白い視点だな! 俺は流されてきたわけか!」
「それよ!」とメリス。
「ああ、あるかもな! もしかすると流れの向きを変えられるかもな!」ホワンも同意らしい。
「凄いねマナブ!」とトウカ。
「マナブやるじゃん!」とユリ。
まだまだ、へこたれてる場合じゃないようだ。
* * *
次の検討会は、転移の大まかな状況が明らかになったとして、次のステップの方針を決めることになった。
「現在ある転移装置の転移方向は常に上流から下流へであると考えられる」
「また転移装置が及ぶ範囲は上流十世界、下流十世界。合計二十世界と考えられる。ただし、世界を個別に選択することは出来ない」
ホワンは、全員の現状認識が一致しているのをみて続けた。
「で、これからの研究方針だが十世界は多すぎる。これを絞り込むというのが優先事項だ。対象の世界を限定できなければ使いにくいからな」ホワンは言って、皆を一瞥した。
「次に転移方向の制御が重要だ。転移方向の逆転が出来なければリュウを戻すことが出来ない」
もちろん転移の利用価値も低くなる。
「この二つの課題がクリアされれば実用化が見えてくる。それには、とにかく試してみるしかない。気の長い話になるだろうから覚悟しておけよ」
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「「「「「りょ~かい!」」」」」
研究員のやる気も本物だ。
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