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9話
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俺の処遇をどうするかに話が変わりつつあるようなので、話を無理矢理にでも本筋に戻す事にした。
俺は使えるお金が欲しいだけなんだぞー。
「申し訳ありませんが、私の素性については真偽もわからないのですし、無駄な揉め事を避けたいのでご内密にして頂けませんでしょうか?」
俺は出来るだけ冷静に2人に話しかけた。
英雄の末裔だと騒ぎ立てられると、ストレスでまたヒッキーに逆戻りだ。脱ヒッキー出来なくなる。
「ええ、当然でございますとも。私ども商人は信用第一でございます。一切他言は致しません」
「私も他言しないと約束しよう」
団長様とジーロさんが、マジ良識ある人で良かったと、心の内で胸を撫で下ろす。
これからが勝負。俺はただ手っ取り早く換金したいだけで、目立つ事は避けたいのだと、理解して貰わなくてはならない。
「ありがとうございます。では本来の話へ戻させて頂いてもよろしいでしょうか?私はグティエレス様に銀貨5枚をお返しする為にも、こちらの古銀貨と古金貨を換金したいのですが、かなりの高額となれば私も持て余しますので、せめて古銀貨2枚でもジーロ様にお買い上げして頂きたいのです」
「ドーン様、古銀貨もこれだけ状態が良いものは久しく出回っておりません。いっその事オークションに出されては如何でしょうか?おそらく倍の金貨100枚になるかと思われますが…」
ジーロさん、優しいなぁ。
俺に少しでも利益になるように考えてくれたんだ。
ホント、その気持ちはありがたいんだよ?
でもね…。
「折角のご提案ではありますが、オークションに出すのは断り致します。オークションに出品すれはあらぬ詮索をされてしまうのが落ちでしょう。代理人を立てる手段もありますが、それでは代理人の方にもあらぬ詮索が向かいご迷惑をおかけするのは私の本意から外れてしまいます。やはりここはジーロ様にお買い上げして頂くのが1番良いと思います」
断っても代理人に自分がなるとか、団長様とジーロさんが言いそうな気がして先手を打ってみた。
案の定、そういうつもりだったのか、2人が顔を見合わせた。
「左様でございますか。しかし、本当に私にお売り頂いてよろしいので?他の店だと私の査定価格より高い場合もありますが…」
いやいや、他の店とか怖いって。
下手したら俺、泥棒扱いされて牢獄行きだよ?
ジーロさんの店を紹介して貰ってラッキーだと思ったぐらいだよ?
「私はこれらで利益を求める気は無いのです。あくまで換金が目的です。ですからジーロ様にお願いしております。グティエレス様の紹介であり、また私の不確かな素性を他言なさらないとお約束して頂いた方なら、これらの出どころも他言なさらないと信用出来ます」
「この私を信用して頂けるので?」
「はい。グティエレス様と同じで、ジーロ様は私の顔を見ても嫌な顔ひとつされませでした。そして下賤な流浪の民で旅人である私を見下す事なく正直に丁寧な対応で接して頂きました。それだけで十分信用するに値します」
俺は知っているのだ。使用人らしき男2人が棚を見ていた俺をあからさまに見下した目で見てヒソヒソ言っていたのを。
それをジーロさんは叱りつけた。「お客様が店を選ぶのは当たり前ですが、店がお客様を選ぶとは何事ですかっ!」って叱る声は俺にはしっかりと聞こえていた。
「承知致しました。是非とも古銀貨5枚を買い取らせ頂きます。そして、私個人からのお願いなのですが、古金貨1枚も買い取らせて頂いてもよろしいでしょうか?商いの品としてでは無く、私のコレクションとして欲しいのです。長年いつかは手に入れたいと望んでいた物の1つなのです。勿論他人に見せるつもりは毛頭ございません」
うん、ジーロさんならそう言うんじゃないかって思ってた。
だって、古金貨を見る目がキラッキラしてたからね。
欲しいんだろうなぁって、丸わかりだったよ。
「そういう事であるなら、ジーロ様に喜んお売り致します」
「おぉ、ありがとうございますっ。では、早速お支払いの金貨を用意して持って参りますので、暫くお待ち下さいませ」
余程嬉しかったのか、軽い足取りでいそいそと応接室から出て行ってしまった。あれは多分誰も居ないところで鼻唄を歌いながらスキップしているに違いない。
これでやっと使えるお金が手に入る。そう思うとホッとしてソファーの背もたれに背中をつけた。
久々の人との交渉に、精神的に少しばかり疲れた。
「少し具合が悪そうに見えるが、大丈夫か?」
「大丈夫です。久しぶりにあれだけ喋ると流石に疲れました。喉がカラカラです。これでグティエレス様に銀貨5枚お返し出来ますね」
すっかり冷めたお茶をゴクゴクと喉を鳴らして飲んでいたら、それがおかしかったのか、団長様は声を殺し肩を揺らして笑っていた。行儀がよろしくなかったと少し反省。
「ところで、先程の話を聞いてなんだが…私の事を本当に信用してくれていたんだな」
はい?
俺、信用したって言ったよね?
何かしら裏があるんじゃないかと思ったけど、品行方正を絵に描いたような御仁だし。
あ、そういえばこの人近衛騎士団の団長様だったわ。そりゃ品行方正だな、うん。
てか、その俺を見る黒い目…ワンコみたいなんだけど…可愛くない?
あ、ヤバ。ちょっと可愛いとか俺思ったぞ。
40手前のごつい男前なおっさんを可愛いって…大丈夫か?俺。
「はい、グティエレス様を信用しておりますよ。グティエレス様も私の事を信用されて、こちらのお店のご案内とご紹介をして頂いたと思っておりますが…私の思い違いでしょうか?」
「あ、いや。思い間違いではない。君の事は今は本当に信用している」
今はか…正直だよなぁ…最初はちょっと俺の事を怪しんでたよね?
団長様、ほんといい人過ぎ。
正直でお人好しでお節介で品行方正でお貴族様で男前で騎士団の団長様。
屋敷にはさぞかし美人な奥方様と可愛い子供がいるんだろうなぁ。良き夫で良き父ってオーラ出てるわ。
俺には家族作れないから、ほんの少しだけ羨ましい。
不老不死が嫌って訳じゃないけどね。嫌って言ったら神々に申し訳ないわっ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
気がつけば、お気に入り登録数が1150を越えていました。
ちょっと吃驚しています(^_^;)
読んで下さった方々、お気に入り登録して下さった方々。
皆様に感謝です。(〃ω〃)
俺は使えるお金が欲しいだけなんだぞー。
「申し訳ありませんが、私の素性については真偽もわからないのですし、無駄な揉め事を避けたいのでご内密にして頂けませんでしょうか?」
俺は出来るだけ冷静に2人に話しかけた。
英雄の末裔だと騒ぎ立てられると、ストレスでまたヒッキーに逆戻りだ。脱ヒッキー出来なくなる。
「ええ、当然でございますとも。私ども商人は信用第一でございます。一切他言は致しません」
「私も他言しないと約束しよう」
団長様とジーロさんが、マジ良識ある人で良かったと、心の内で胸を撫で下ろす。
これからが勝負。俺はただ手っ取り早く換金したいだけで、目立つ事は避けたいのだと、理解して貰わなくてはならない。
「ありがとうございます。では本来の話へ戻させて頂いてもよろしいでしょうか?私はグティエレス様に銀貨5枚をお返しする為にも、こちらの古銀貨と古金貨を換金したいのですが、かなりの高額となれば私も持て余しますので、せめて古銀貨2枚でもジーロ様にお買い上げして頂きたいのです」
「ドーン様、古銀貨もこれだけ状態が良いものは久しく出回っておりません。いっその事オークションに出されては如何でしょうか?おそらく倍の金貨100枚になるかと思われますが…」
ジーロさん、優しいなぁ。
俺に少しでも利益になるように考えてくれたんだ。
ホント、その気持ちはありがたいんだよ?
でもね…。
「折角のご提案ではありますが、オークションに出すのは断り致します。オークションに出品すれはあらぬ詮索をされてしまうのが落ちでしょう。代理人を立てる手段もありますが、それでは代理人の方にもあらぬ詮索が向かいご迷惑をおかけするのは私の本意から外れてしまいます。やはりここはジーロ様にお買い上げして頂くのが1番良いと思います」
断っても代理人に自分がなるとか、団長様とジーロさんが言いそうな気がして先手を打ってみた。
案の定、そういうつもりだったのか、2人が顔を見合わせた。
「左様でございますか。しかし、本当に私にお売り頂いてよろしいので?他の店だと私の査定価格より高い場合もありますが…」
いやいや、他の店とか怖いって。
下手したら俺、泥棒扱いされて牢獄行きだよ?
ジーロさんの店を紹介して貰ってラッキーだと思ったぐらいだよ?
「私はこれらで利益を求める気は無いのです。あくまで換金が目的です。ですからジーロ様にお願いしております。グティエレス様の紹介であり、また私の不確かな素性を他言なさらないとお約束して頂いた方なら、これらの出どころも他言なさらないと信用出来ます」
「この私を信用して頂けるので?」
「はい。グティエレス様と同じで、ジーロ様は私の顔を見ても嫌な顔ひとつされませでした。そして下賤な流浪の民で旅人である私を見下す事なく正直に丁寧な対応で接して頂きました。それだけで十分信用するに値します」
俺は知っているのだ。使用人らしき男2人が棚を見ていた俺をあからさまに見下した目で見てヒソヒソ言っていたのを。
それをジーロさんは叱りつけた。「お客様が店を選ぶのは当たり前ですが、店がお客様を選ぶとは何事ですかっ!」って叱る声は俺にはしっかりと聞こえていた。
「承知致しました。是非とも古銀貨5枚を買い取らせ頂きます。そして、私個人からのお願いなのですが、古金貨1枚も買い取らせて頂いてもよろしいでしょうか?商いの品としてでは無く、私のコレクションとして欲しいのです。長年いつかは手に入れたいと望んでいた物の1つなのです。勿論他人に見せるつもりは毛頭ございません」
うん、ジーロさんならそう言うんじゃないかって思ってた。
だって、古金貨を見る目がキラッキラしてたからね。
欲しいんだろうなぁって、丸わかりだったよ。
「そういう事であるなら、ジーロ様に喜んお売り致します」
「おぉ、ありがとうございますっ。では、早速お支払いの金貨を用意して持って参りますので、暫くお待ち下さいませ」
余程嬉しかったのか、軽い足取りでいそいそと応接室から出て行ってしまった。あれは多分誰も居ないところで鼻唄を歌いながらスキップしているに違いない。
これでやっと使えるお金が手に入る。そう思うとホッとしてソファーの背もたれに背中をつけた。
久々の人との交渉に、精神的に少しばかり疲れた。
「少し具合が悪そうに見えるが、大丈夫か?」
「大丈夫です。久しぶりにあれだけ喋ると流石に疲れました。喉がカラカラです。これでグティエレス様に銀貨5枚お返し出来ますね」
すっかり冷めたお茶をゴクゴクと喉を鳴らして飲んでいたら、それがおかしかったのか、団長様は声を殺し肩を揺らして笑っていた。行儀がよろしくなかったと少し反省。
「ところで、先程の話を聞いてなんだが…私の事を本当に信用してくれていたんだな」
はい?
俺、信用したって言ったよね?
何かしら裏があるんじゃないかと思ったけど、品行方正を絵に描いたような御仁だし。
あ、そういえばこの人近衛騎士団の団長様だったわ。そりゃ品行方正だな、うん。
てか、その俺を見る黒い目…ワンコみたいなんだけど…可愛くない?
あ、ヤバ。ちょっと可愛いとか俺思ったぞ。
40手前のごつい男前なおっさんを可愛いって…大丈夫か?俺。
「はい、グティエレス様を信用しておりますよ。グティエレス様も私の事を信用されて、こちらのお店のご案内とご紹介をして頂いたと思っておりますが…私の思い違いでしょうか?」
「あ、いや。思い間違いではない。君の事は今は本当に信用している」
今はか…正直だよなぁ…最初はちょっと俺の事を怪しんでたよね?
団長様、ほんといい人過ぎ。
正直でお人好しでお節介で品行方正でお貴族様で男前で騎士団の団長様。
屋敷にはさぞかし美人な奥方様と可愛い子供がいるんだろうなぁ。良き夫で良き父ってオーラ出てるわ。
俺には家族作れないから、ほんの少しだけ羨ましい。
不老不死が嫌って訳じゃないけどね。嫌って言ったら神々に申し訳ないわっ。
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気がつけば、お気に入り登録数が1150を越えていました。
ちょっと吃驚しています(^_^;)
読んで下さった方々、お気に入り登録して下さった方々。
皆様に感謝です。(〃ω〃)
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