11 / 48
10話
しおりを挟むテーブルに置かれた白金貨49枚入りの袋1つと金貨150枚入りの袋1つに金貨100枚入りの袋9つ。
団長様が心配そうに俺を見ているし、ジーロさんも同じように俺を見ている。なんでそんなに心配してるんだと思っていると、団長様が口を開いた。
「これだけの金額になると流石に気軽に持ち歩くの無理ではないか?」
こうやって目で見るとかなり重そうだ。これをお持ち帰りにするには確かに色々と面倒だなぁと見せかけて、俺は袋を1つずつ手にしてアイテムボックスに放り込んだ。
アイテムボックスの一覧に、「白金貨49枚入り袋」×1と「金額150枚入り袋」×1と「金額100枚入り袋」×9と表示される。
表示の確認を済ませると、団長様とジーロさんが、あんぐりと口を開けたままフリーズしていた。
あれ?俺、また何かやらかした?
あかんやつ、やらかした?
「空間の歪みに消えたように見えたんだが…」
えっ?団長様、何言ってんの?
アイテムボックスを知らない?
持ってる人多いんじゃないの?
違うの!?
「ドーン様…あの、それはもしやアイテムボックス…でございますか?」
「はい、アイテムボックスですが…」
「なんと…ドーン様は失われたアイテムボックスをお持ちとは…」
はい、やらかしたの確定しました。
「ジーロ殿、すまないが説明をお願いしたい」
ジーロさんは団長様に、説明を始めだした。俺も何故「失われたアイテムボックス」なのか知りたくて、黙って聞く事にした。
ごつい団長様も興味津々で、前のめりになってる。
「アイテムボックスとは…原理は存じ上げませんが、文字通り色々なアイテムを大容量で所持出来、いつでもどこでも自分の意思でアイテムを収納と取り出しが出来るスキルとも魔法とも言われております。昔…どの位昔かはわかりかねますが、アイテムボックス所持者が多く存在していたそうです。時の流れと共に次第にアイテムボックス所持者の数は減っていき、今ではアイテムボックス所持者はいないと聞き存じております」
「ほう…そのようなものがあったとは実に興味深い…アイテムボックスを所持していれば、色々と役立つな…」
団長様は小声で呟くと考え込んでしまった。便利だし役立つのは間違いないから、きっと騎士団で使えたら…なんて考えてる気がした。
ジーロさんも商人仲間から聞いた噂話から知ったらしく、眉唾物だと思っていたらしい。
確かにアイテムボックスは殆どの人が持っていた。持っていたが持つには条件がある。
その条件とは、まずLvが15+である事だ。そして、特定の人物から納品クエストを受けて、それを達成すればアイテムボックスの使用が可能となる。ゲームだとチュートリアルのクエストだから特定の人物即ちNPCにマーキングされて分かり易い。
この世界にはゲームじゃないから、チュートリアルもマーキングもない。そして、普通の人々のLvが低い。そりゃ、「失われたアイテムボックス」て言われる訳だ。
俺の場合は前世の記憶が無かったが、何かに導かれて使用解除が出来た。今思えばあれは神々の導きだったんだろう。いやそれでも使用解除してる人は当時かなり多かったぞ。
「商人である私からすれば、喉から手が出る程欲しいです。それをお持ちになるドーン様が実に羨ましく思います…」
ジーロさんの深い深い溜息に、俺はこっそりとジーロさんを鑑定した。
ジーロ・ラッジ Lv20 66歳 准男爵
ラッジ古美術商会会長
Lv的は問題ないけど…あれ?門番兵さんたちを越えてる気が…まぁ、いいか。
ジーロさんて准男爵なんだ。あれかな?1代限りの爵位ってやつ。
俺がどうやって手に入れたのか入手方法が知りたい筈だけど、敢えてそれを聞かないのは、根掘り葉掘り聞かれた俺が不愉快な気持ちになるのが不本意なんだろな。
「ジーロ様、アデリア聖殿の敷地内に雑貨屋があるのをご存知でしょうか?」
「はい、存じ上げております。聖殿敷地内に1軒だけ営業を許された巡礼者の為の雑貨屋は有名でございます」
「その雑貨屋のご店主に、在庫切れで困っている物があるかお聞き下さい。きっとある筈です。それを探して10個ご店主にお売り下さい」
「はぁ…」
何故こんな話をいきなりしているのか理解出来てないようだった。団長様も当然理解出来てなくて首を傾げてる。
俺はそれ以上何も言うのやめて、俺の顔をじっと見つめてる2人にニッコリと笑った。
「あっ…」
団長様がどうやら気がついて理解したぽいらしくて声をだした。ジーロさんはもそれから程なくして、ハッとした表情した。漸く理解出来たぽいので、黙ってうんうんと頷く。
そう、俺はアイテムボックスの使用解除となる納品クエストを伝えたのだ。ジーロさんにはお世話になったしね。あの雑貨屋の店主は長命種のエルフだから、まだ生きてる筈。
「他言無用でお願いします。必ずしも誰もが皆が皆入手出来るものではありません。もし、ご店主のお探しの物がどうしても見つからない場合は残念ですが諦めて下さい」
勿論これも口止め必須案件だ。実際Lvが足りない人は先ずクエストのフラグも立たないから解除なんて出来ないもんな。
「当然でございますともっ!無理を承知でもやってみる価値は十分ございますっ!このジーロ・ラッジ、心よりドーン様に感謝いたします」
スッとソファーから立ち上がると、深々と俺に頭を下げるジーロさん。凄く嬉しそうで顔が生き生きしていた。ジーロさんなら難なく達成出来ると思う。
さて、そろそろ本格的に腹も減ってきたから、お暇しよかな。思ったより長居しちゃったし。
「こちらこそジーロ様に買い取って頂けまして助かりました。お忙しいところ時間を割いて頂きありがとうございました」
俺も立ち上がって慇懃に一礼した。すると俺の暇乞い言葉に団長様も立ち上がってジーロさんに頭を下げてた。
「ジーロ殿、感謝します。またこちらにお伺いさて貰います」
こうして、俺と団長様はめっちゃいい顔のジーロさんに見送らせて店を後にした。
さぁ、これから飯だ!何処の食堂に連れて行ってくれるのかな?と思い団長様を見ると、何故かジッと俺を見ていた。
「グティエレス様?あの、どうされました?」
「ドーン君…いや、とりあえず食堂、行こうか。腹、減っただろ」
「はい」
どうもずっと俺に何か言いたげなんだよなぁ。
なんだろなぁ…あれか?あれなのかな?
だったら聞けばいいのに…自分もアイテムボックスが使用解除出来るかどうか?って。
27
お気に入りに追加
3,758
あなたにおすすめの小説
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

BL学園の姫になってしまいました!
内田ぴえろ
BL
人里離れた場所にある全寮制の男子校、私立百華咲学園。
その学園で、姫として生徒から持て囃されているのは、高等部の2年生である白川 雪月(しらかわ ゆづき)。
彼は、前世の記憶を持つ転生者で、前世ではオタクで腐女子だった。
何の因果か、男に生まれ変わって男子校に入学してしまい、同じ転生者&前世の魂の双子であり、今世では黒騎士と呼ばれている、黒瀬 凪(くろせ なぎ)と共に学園生活を送ることに。
歓喜に震えながらも姫としての体裁を守るために腐っていることを隠しつつ、今世で出来たリアルの推しに貢ぐことをやめない、波乱万丈なオタ活BL学園ライフが今始まる!

異世界転生して病んじゃったコの話
るて
BL
突然ですが、僕、異世界転生しちゃったみたいです。
これからどうしよう…
あれ、僕嫌われてる…?
あ、れ…?
もう、わかんないや。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
異世界転生して、病んじゃったコの話
嫌われ→総愛され
性癖バンバン入れるので、ごちゃごちゃするかも…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる