ネトゲ世界転生の隠遁生活 〜俺はのんびり暮らしたい〜

瀬間諒

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10話

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 テーブルに置かれた白金貨49枚入りの袋1つと金貨150枚入りの袋1つに金貨100枚入りの袋9つ。
 団長様が心配そうに俺を見ているし、ジーロさんも同じように俺を見ている。なんでそんなに心配してるんだと思っていると、団長様が口を開いた。


「これだけの金額になると流石に気軽に持ち歩くの無理ではないか?」

  
 こうやって目で見るとかなり重そうだ。これをお持ち帰りにするには確かに色々と面倒だなぁと見せかけて、俺は袋を1つずつ手にしてアイテムボックスに放り込んだ。
 アイテムボックスの一覧に、「白金貨49枚入り袋」×1と「金額150枚入り袋」×1と「金額100枚入り袋」×9と表示される。
 表示の確認を済ませると、団長様とジーロさんが、あんぐりと口を開けたままフリーズしていた。


 あれ?俺、また何かやらかした?
 あかんやつ、やらかした?

「空間の歪みに消えたように見えたんだが…」

 えっ?団長様、何言ってんの?


 アイテムボックスを知らない?
 持ってる人多いんじゃないの?
 違うの!?

「ドーン様…あの、それはもしやアイテムボックス…でございますか?」
 
「はい、アイテムボックスですが…」

「なんと…ドーン様は失われたアイテムボックスをお持ちとは…」

 はい、やらかしたの確定しました。

「ジーロ殿、すまないが説明をお願いしたい」

 
 ジーロさんは団長様に、説明を始めだした。俺も何故「失われたアイテムボックス」なのか知りたくて、黙って聞く事にした。
 ごつい団長様も興味津々で、前のめりになってる。
  

「アイテムボックスとは…原理は存じ上げませんが、文字通り色々なアイテムを大容量で所持出来、いつでもどこでも自分の意思でアイテムを収納と取り出しが出来るスキルとも魔法とも言われております。昔…どの位昔かはわかりかねますが、アイテムボックス所持者が多く存在していたそうです。時の流れと共に次第にアイテムボックス所持者の数は減っていき、今ではアイテムボックス所持者はいないと聞き存じております」

「ほう…そのようなものがあったとは実に興味深い…アイテムボックスを所持していれば、色々と役立つな…」

 
 団長様は小声で呟くと考え込んでしまった。便利だし役立つのは間違いないから、きっと騎士団で使えたら…なんて考えてる気がした。
 ジーロさんも商人仲間から聞いた噂話から知ったらしく、眉唾物だと思っていたらしい。
 確かにアイテムボックスは殆どの人が持っていた。持っていたが持つには条件がある。
 その条件とは、まずLvが15+である事だ。そして、特定の人物から納品クエストを受けて、それを達成すればアイテムボックスの使用が可能となる。ゲームだとチュートリアルのクエストだから特定の人物即ちNPCにマーキングされて分かり易い。
 この世界にはゲームじゃないから、チュートリアルもマーキングもない。そして、普通の人々のLvが低い。そりゃ、「失われたアイテムボックス」て言われる訳だ。
 俺の場合は前世の記憶が無かったが、何かに導かれて使用解除が出来た。今思えばあれは神々の導きだったんだろう。いやそれでも使用解除してる人は当時かなり多かったぞ。


「商人である私からすれば、喉から手が出る程欲しいです。それをお持ちになるドーン様が実に羨ましく思います…」


 ジーロさんの深い深い溜息に、俺はこっそりとジーロさんを鑑定した。

 ジーロ・ラッジ Lv20 66歳 准男爵
 ラッジ古美術商会会長 


 Lv的は問題ないけど…あれ?門番兵さんたちを越えてる気が…まぁ、いいか。
 ジーロさんて准男爵なんだ。あれかな?1代限りの爵位ってやつ。
 俺がどうやって手に入れたのか入手方法が知りたい筈だけど、敢えてそれを聞かないのは、根掘り葉掘り聞かれた俺が不愉快な気持ちになるのが不本意なんだろな。

「ジーロ様、アデリア聖殿の敷地内に雑貨屋があるのをご存知でしょうか?」

「はい、存じ上げております。聖殿敷地内に1軒だけ営業を許された巡礼者の為の雑貨屋は有名でございます」

「その雑貨屋のご店主に、在庫切れで困っている物があるかお聞き下さい。きっとある筈です。それを探して10個ご店主にお売り下さい」

「はぁ…」


 何故こんな話をいきなりしているのか理解出来てないようだった。団長様も当然理解出来てなくて首を傾げてる。
 俺はそれ以上何も言うのやめて、俺の顔をじっと見つめてる2人にニッコリと笑った。


「あっ…」 


 団長様がどうやら気がついて理解したぽいらしくて声をだした。ジーロさんはもそれから程なくして、ハッとした表情した。漸く理解出来たぽいので、黙ってうんうんと頷く。
 そう、俺はアイテムボックスの使用解除となる納品クエストを伝えたのだ。ジーロさんにはお世話になったしね。あの雑貨屋の店主は長命種のエルフだから、まだ生きてる筈。
 


「他言無用でお願いします。必ずしも誰もが皆が皆入手出来るものではありません。もし、ご店主のお探しの物がどうしても見つからない場合は残念ですが諦めて下さい」


 勿論これも口止め必須案件だ。実際Lvが足りない人は先ずクエストのフラグも立たないから解除なんて出来ないもんな。
 

「当然でございますともっ!無理を承知でもやってみる価値は十分ございますっ!このジーロ・ラッジ、心よりドーン様に感謝いたします」


  スッとソファーから立ち上がると、深々と俺に頭を下げるジーロさん。凄く嬉しそうで顔が生き生きしていた。ジーロさんなら難なく達成出来ると思う。
 さて、そろそろ本格的に腹も減ってきたから、お暇しよかな。思ったより長居しちゃったし。


「こちらこそジーロ様に買い取って頂けまして助かりました。お忙しいところ時間を割いて頂きありがとうございました」


 俺も立ち上がって慇懃に一礼した。すると俺の暇乞い言葉に団長様も立ち上がってジーロさんに頭を下げてた。


「ジーロ殿、感謝します。またこちらにお伺いさて貰います」
 

 こうして、俺と団長様はめっちゃいい顔のジーロさんに見送らせて店を後にした。
 さぁ、これから飯だ!何処の食堂に連れて行ってくれるのかな?と思い団長様を見ると、何故かジッと俺を見ていた。
 

「グティエレス様?あの、どうされました?」
 
「ドーン君…いや、とりあえず食堂、行こうか。腹、減っただろ」

「はい」

 どうもずっと俺に何か言いたげなんだよなぁ。
 なんだろなぁ…あれか?あれなのかな?
 だったら聞けばいいのに…自分もアイテムボックスが使用解除出来るかどうか?って。




 
 



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