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プロローグ

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 15年続いたMMORPG『アヴァロン・オンライン』が遂にサービス終了の日を迎えた。

 神原こうばら友樹ゆうきはサービス開始の16歳からプレイし続け、廃プレイヤーとして名を馳せていた。
 大型レイドモンスター討伐の主催兼指揮をし、数々の大型レイドモンスターを倒していた。
 一時は戦争血盟の大連合を率いてワールド内の全ての城を掌握していた事もあった。

 15年、長いようで短かった。

 病院を転々としながら15年の間病室のベッドの上でプレイし続けていた。
 まさかサービス終了日に自分の命も終了するとは夢にも思わなかった。
 これも運命だとしたら随分と皮肉なもんだと、骨と皮ばかりの痩せ細った自分の手を見つめて笑う。


 楽しかったよな…。


 このまま死んでしまう事に悔いが無いとは言えない。
 もし、生まれ変わるなら自分の分身であるキャラクター・スルジェのように自由に動いて生きたい。
 

 生きてみたい…生きてみたいんだ…。


 意識が遠のく、医者や看護師が騒いでいるのが遠くに聞こえる。




 ハッとしてベッドから跳び起きる。

 ここはどこだと、部屋の中をぐるりと見回す。
 見覚えはある。
 間違いなくこの部屋は、自分のセーフハウスである寝室だ。
 寝汗でべっとりと濡れた夜着が気持ち悪く、ベッドから出ると隣接している浴室へと向かい、洗面台の水栓を開いて威勢良く流れ出る水を両手で掬い顔を洗う。


「なんだ…あの夢は…」


 洗面台に両手をついて俯き溜息が溢れる。
 

「あれ、俺の声…こんなんだっけ?」


 自分の手が視界に入り、ギョッとする。
 カサカサで骨と皮ばかりの痩せ細った手では無く、ごつくは無いが瑞々しい健康的な手だった。
 恐る恐る正面の鏡に目を向けると、そこにはブロンドにアイスブルーの瞳のクールビューティーな若い男が映っていた。
 この顔は知っている。
 『アヴァロン・オンライン』で使っていたキャラクターであるスルジェの顔であった。


「スルジェ…」


 混乱する頭を落ち着かせようと、夜着を脱ぎ捨て冷たいシャワーを浴びる。
 肌を刺すような水の冷たさに次第と混乱は収まっていく。


「あれは前世だ…そして、俺はゲーム世界に転生したのか…」


 ラノベやアニメの様な事が自分の身に起きているとか思うと、それが酷く滑稽に思えて仕方なかった。




 

 
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