私達は幸せになります～婚約破棄された令嬢は、追放されても逞しく生きていく～

第20話 優秀な二人 ※ギルドマスター視点

　とても優秀な冒険者が二人、ギルドから居なくなってしまった。

　訳ありの二人だった。迷惑だったわけじゃない。仕事をきっちりこなして、危険な依頼でも引き受けて必ず成功させてくれる。だから何も詮索しなかった。ただ依頼を紹介して、仕事をして、活躍してもらうだけ。

　なぜか、遠方への派遣依頼だけは全て断られた。だが、今考えると理由が分かる。彼女達は貴族の令嬢だった。貴族令嬢と冒険者の二重生活を送っていたのだ。

　なぜ判明したかというと、彼女達が姿を消したタイミングで、とある事件があったからだ。

　王子の婚約破棄騒動。セドリック王子が、パーティーの最中に婚約破棄を告げて、別の令嬢にプロポーズした。しかも、断られたらしい。この話は、国中の者達が知る笑い話となっていた。

　セドリック王子の元婚約者である令嬢と、セドリック王子に急にプロポーズされて断った令嬢は逃げ出したらしい。そして今も、捕まっていない。

　ギルドにも捜索の協力依頼が来た。実力ある冒険者達に、高い報酬を用意して探させたが見つからなかった。

　王国から依頼された時、捜索中である令嬢二人の特徴について情報を共有された。その時に聞いた特徴が、ギルドに所属していた冒険者のセアとレイに当てはまった。

　セアは顔を隠して活動していたので、当てはまる特徴は少なかった。だがレイは、聞いた特徴と一致していた。彼女達の普段からの立ち居振る舞いも普通ではなくて、貴族っぽい雰囲気があった。もしかしてと思って、二人の情報は王国に提供した。

　そんな事件があった後、セアとレイは姿を消した。令嬢たちが逃げ出したのと同じタイミングで、二人も居なくなってしまった。これは、決定的な証拠。

　その二人が抜けた穴は、予想していた以上に大きかった。

　依頼の達成率は大きく下がってしまい、危険度の高い依頼は失敗が増えた。怪我をして動けなくなる冒険者もどんどん増えて、冒険者ギルドは大混乱になった。

　二人は優秀過ぎた。仕事の成功率が高かっただけでなくて、ギルドにとって必要な存在になっていた。今まで頼り過ぎて、それが普通の状況なんだと思うようになっていた。それは、大きな間違い。


　しばらくしてから、別の国で二人が冒険者の活動をしている、という噂を聞いた。しかも、大活躍しているらしい。なぜ、うちのギルドではなく別のところで活動しているのか。

　彼女達は戻ってきてくれないのか。うちのギルドは今、人材が不足していて困っているというのに。彼女達が元々所属していたのは、こっちのギルドだったはず。二人が居れば、この人材不足も一気に解消されるはず。

　あんな事件があったから、この国には戻ってくる可能性は低いだろうな。なんで、こんな事になってしまったのか。