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第9章 海賊のふりをした敵からの襲撃
050 9日目 襲撃1回目 莎拉《Shālā、セーラ》
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バリア制御室に張り込む冬香。
オルア、真々美、シュウピンさん、メラニィさんは、乗船者を待ち構えるために、配置についたのだった。
◇
9日目 PM 19:00
《2日に一度の会議: なし、
第1回襲撃予測日: 当日》
冬香はバリア制御室に入った。
真々美、冬香、オルア、シュウピンさん、メラニィさんは、マスターカードキーを持っているから、どの部屋にも出入りが自由にできます。
冬香
「担当者の二人は、夕食中ね。
それでは、制御盤の部屋が写る位置に隠しカメラを設置しましょう。
通常の監視カメラは現時点では正常に動作しているわね。
決行時刻になったら、自動的に監視カメラを切れるようにしているのかしら。」
冬香 こころの声
『今日が襲撃予定日でなかったら、攻守交代で攻めをして、私の身体無しでは生きられなくなるくらいまで、アリムさんを攻め続けたかったのだけれど、本当に残念ね。
まあ、あとのお楽しみに残しておくとして、いまは雑事を片づけましょうか?』
9日目 PM 19:50
バリア制御室の担当二人が帰ってきた。
ひとりは、とてもスリムでバストとヒップが大きく、ウエストも引き締まっていた。
もう一人は、緊急健康診断で見た覚えがなかった。
冬香 こころの声
『おかしいわね。
スリムな方は、元男性の女性で見覚えがある。
もう一人は、女性というよりは男性の体格に近い。
どこで、すり替わった?
シュウピンさんの目を盗むことはできないはずだけど・・・』
大きい女性?
「ふう、気分がいいぜ。
前祝の祝杯は効くなあ。」
スリムな元男性の女性
「なにの前祝ですか?
ウェン様やオネスティ様が出払っているからって、はめを外しすぎです。
このバリア制御室に、敵が入り込んできたときに、そのざまで戦えますか?」
大きい女性?
「まあ、固いこと言うなよ。
日付が明日に変わったころには、そんな言葉を言えなくなるぜ。」
スリムな元男性の女性
「笑い上戸、泣き上戸、怒り上戸などの酒癖は聞いたことがありますが、男言葉になる酒癖は初めて知りました。」
大きい女性?
「もっと、いろんなことを教えてやろうか?」
スリムな元男性の女性
「いい予感がしません。」
大きい女性?
「おまえに女の喜びってやつを教えてやるぜ。
もっとも、ほんとうに女性なのか怪しいけどな。」
スリムな元男性の女性
「なにをおっしゃっているのか分かりません。」
大きい女性?
「1つ、バリア制御室には、すでに敵が入ってきている。」
スリムな元男性の女性
「どこに? 怪しい気配はありません。
それに、ここにいるのは、あなたと私だけです。」
大きい女性?
「まだ、わかんねえのか?
敵は目の前にいるだろうが?」
スリムな元男性の女性
「もしかして、あなたが敵だという意味ですか?」
大きい女性?
「正解だあ!
賞品として、バリアのスイッチを切ってやるぜ。」
大きい女性?は、バリアのスイッチを切った《OFFにした》。
スリムな元男性の女性
「な、なにをするのです。
そこをどきなさい。」
スリムな元男性の女性は、バリアのスイッチをONに戻そうとした。
大きい女性?
「させねえよ。
これで、100名のモンテハート大公爵様の英雄たちが、この船に乗り込んでくる。
お前たちは全員、おれたちの遊具になるんだよ。」
スリムな元男性の女性
「させません。
そこをどいてください。」
体当たりしてどかそうとしたが、かわされて、両手の手首をつかまれてしまった。
大きい女性?
「腕力だけは女性並みだな。
はたして、身体の方はどうかなあ?」
スリムな元男性の女性
「くっ。
あきらめません。
莎拉《Shālā、セーラ》 正性知識 One Hundred !
」
大きい女性?
「おっと、触らせねえよ。
あぶない、あぶない。」
スリムな元男性の女性 莎拉《Shālā、セーラ》
「こうなったら、多少の損害は目をつぶってもらうしかないですね。
正当防衛ですからね。」
ガブリ!
莎拉《Shālā、セーラ》は、かみついた。
大きい女性?
「いてえな! なにすんだ。」
平手打ちされて、莎拉《Shālā、セーラ》は飛ばされた。
大きい女性?
「制圧が終わるまでの時間、遊んでやるよ。」
スリムな元男性の女性 莎拉《Shālā、セーラ》
「い、痛い、でも、バリアをONにしないと、温《ウェン》様たちが危ない。」
痛くて思い通りに動かせない身体を引き釣りながら、バリアをONにしようとあがいた。
大きい女性?
「させねえよ。」
スリムな元男性の女性 莎拉《Shālā、セーラ》
「温《ウェン》様
ごめんなさい。
お役に立てませんでした。」
大きい女性?
「グェ!」
冬香のかかと蹴りで、大きい女性?が蹴り飛ばされた。
冬香
「これだけ、録画すれば十分よね。
これ以上、狼藉《ろうぜき》と腕力を振るうなら蹴り飛ばすわよ。」
莎拉《Shālā、セーラ》
「えっ?
温《ウェン》様?
来てくださったのですか?
でも、髪色と長さがちがう。
あのお姿は、白石医師様・・・」
莎拉《Shālā、セーラ》は、バリアのスイッチをONに戻すと、その上に覆いかぶさった体勢で気を失った。
大きい女性?
「おまえの方が良い女だなあ。
棚から牡丹餅とは、このことかあ。
美味しく味合わせてもらうぜ。」
大きい女性?は、左腕で殴りかかってきた。
大きい女性?
「左を制する者は世界を制するって言うぜ。」
冬香は素早く体さばきを行って、一本背負いで投げ飛ばした。
大きい女性?が地面に叩きつけられると同時に、気をまとった右足のかかとで踏み蹴りした。
ダン、ダン、ダン。
正中線上の3点を踏み蹴りした。
そして、大きい女性?の左腕を伸ばして、左手を反対方向に曲げ押して、時計回りに巻いて行った。
大きい女性?
「ぎゃあ。」
冬香
「柔《じゅう》よく剛《ごう》を制《せい》す
って言葉は知らないかしら?
もちろん、腕力が同じ程度あることが前提だけどね。」
大きい女性?
「ぎゃあ。
痛てえ、何すんだ。」
冬香
「自分がしたことを棚に上げて、なにを言っている?
この卑怯者《ひきょうもの》。」
大きい女性?
「わたしはなにもしていないのに、あんまりだあ。」
冬香
「都合が悪いことを瞬時にわすれるとは、どういう記憶体系をしているのか理解に苦しむわ。」
大きい女性?
「ひどい、ひどいよお。」
冬香
「じっとしていなさい。」
冬香は右足を、大きい女性?の頭の下に入れて、回れないようにした。
大きい女性?
「痛い、いたい、痛い。」
冬香
「会いたい、あいたい、会いたいって、誰に会いたいの?
わたしの用事が終わってからにしてね。」
大きい女性?が身体をそらせて腹を突き出すたびに、左足で踏み戻した。
大きい女性?
「もう、勘弁してくれ!」
冬香
「ああ、翻訳すると、
覚えておけよ!
100倍にして返してやるからな。
って、意味よね。
元気ねえ。
もう3分続けましょうか?」
大きい女性?は、痛さのあまり、漏らしてしまった。
冬香
「あらあ? 休憩時間にトイレを済まさなかったの?
どこに出すつもりだったのかしら。」
冬香は2回、かかと落としを浴びせた。
冬香
「不思議ねえ、クルミ台の大きさの何かを踏んだ気がするわ。」
大きい女性?
「調子に乗りやがって・・・」
大きい女性が右腕を振るおうとした瞬間、冬香は極めていた左手を反時計回りで3時、12時、9時の方向に回して、大きい女性をうつぶせの大勢に変えた。
相手の左腕を身体の真横に伸ばして、左手とひじと肩の間を抑えた。
左手を上方向に回転させると、同時に2の腕を下方向に回転させた。
腰の上に右ひざを使って体重を掛けて動きを封じた。
大きい女性?
「いてえ。」
両手の回転を止める冬香。
大きい女性?
「どけえ。」
両手の回転を加える冬香。
大きい女性?
「いてえ。」
この繰り返しが5回くらい続いた・・・
冬香
「さてと、なにを話してくれるかな?」
大きい女性?
「ほざけ。
おぼえていろよ。
穴という穴を串刺しにしてやる。
もうすぐ、ここに仲間の軍隊が来るからなあ。
あと数分たったら、逆転するからな。」
冬香
「知っていることを話す気は無いのかな?」
大きい女性?
「その顔を二目と見れなくなるまで、叩き潰したあとで、おまえたちが可愛がっているオールとかいう女と並べて、泣くまで痛めつけてやる。」
冬香
「オールって、オルアのことかしら?」
大きい女性?
「そんな名前だったかもな。
降参する気になったか?」
冬香
「最後の言葉を聞き届けました。
白医師秘術 第7○○xx !」
大きい女性?は、静かになって抵抗もしなくなった。
冬香
「このにおいは、一時性転換薬ね。
緊急健康診断は、口実だったけれど、性病検査が必要かもね。
しかも、お酒臭い。
アルコール摂取により、効果が無くなるって知らなかったのかしら。
それとも、勝利を確信していたのかしら。」
冬香は、スリムな元男性の女性 莎拉《Shālā、セーラ》を抱き起して、声を掛けた。
莎拉《Shālā、セーラ》
「し、白石医師様。
バリアは?」
冬香
「よく頑張ったわね。
いまは、バリアは正常に働いているわ。」
莎拉《Shālā、セーラ》
「良かった。
温《ウェン》様に伝えてください。
女として死ねる幸せを、ありが・・・と・・・」
冬香
「しっかりしなさい。
とは言えないくらい、腹部と下腹部の損傷が激しいわね。
内臓全部の再構成が必要ね。」
冬香は、にやりとした。
冬香 こころの声
『元男性だけあって、がんばったわね。
本当の性転換手術を施す良い機会《チャンス》になるわ。
女として死ねる幸せは渡さないけれど、
その代わり、
女として「生きる」幸せを受け取りなさい。』
大きい女性?
「・・・」
冬香
「あなたは、拘束して尋問してあげるわ。
お話してくれたら、うれしいわ。
あら? 心配しないで、なにも話す気が無いという意思を尊重してあげるから。」
冬香はニンマリと微笑んだ。
◇
舞台というか場所が変わって、船の甲板に総勢100名の海賊のふりをした私兵どもが乗り込んできた。
「右側の柵部分」
真々美
「構え、撃て!」
船の進行方向を前とすると「右側の柵部分」から乗り込んできた約50名を撃ち殺した。
血が出ることはなかったが、1名が無断乗船しては倒れ、それを起こそうとする1名も倒れるということが50名つづいた。
異変があった場合、引き返すとか止まるとかしそうなものだが、勝利を確信していたようで、退却という選択肢がなかったようだ。
「左側の柵部分」
オルア
「構え、撃て!」
船の進行方向を前とすると「左側の柵部分」から乗り込んできた約50名を撃ち殺した。
血が出ることはなかったが、1名が無断乗船しては倒れ、それを起こそうとする1名も倒れるということが50名つづいた。
異変があった場合、引き返すとか止まるとかしそうなものだが、勝利を確信していたようで、退却という選択肢がなかったようだ。
◇
カセイダード王国の移民審査船の警備員が使用していた銃のような武器は、マイクロウエーブ発生座標指定装置だった。
乗り込んできた私兵どもの頭部が、しかも、その大脳部分だけを電磁波で温められたようなものだった。
文字通り、脳死状態となった。
脳の大部分である水分が蒸発し、良質のタンパク質と脂質がウェルダン《Well-Done》に焼かれた。
◇
9日目 PM 20:30
冬香は医療室の手術室に、スリムな元男性の女性 莎拉《Shālā、セーラ》を寝かせていた。
冬香
「セットOKね。
名目上は、腹部損傷の治療のため、20日間ほどの面会謝絶と発表すればいいわ。
子宮と卵巣の形成、外性器の形成、尿道の位置移動なども完了できるわね。
安心してね。
わたしより腕が良い医者はカセイダード王国の本星にも数人しかいないわ。
目が覚めたときは、本当の女性としての人生が始まるわ。
ただし、アリムさんには近づけないけどね。」
スリムな元男性の女性 莎拉《Shālā、セーラ》の容態は安定し、無事に快方に向かうだろう。
本当の女性の身体を得て、妊娠出産が可能な状態で!
冬香
「本来の治療費は、6億バーシル。
女の人のクラスターの人生のパートナーの選択権の末端価格と同じね。
あなたの勇気に免じて、労働災害保険内として処理してあげるわ。
ゆっくりと眠りなさい。」
◇
9日目 PM 21:07
冬香の医療室に、真々美、オルア、シュウピン、メラニィが集まっていた。
真々美
「100名の身元不明の脳死状態の健康な身体と、ここにいる一体のバリア不正操作者が手に入った。」
冬香
「シュウピンさん、セーラという女性に心当たりがあるはずよ。
面会謝絶状態だけど、顔を見にきてくれるかしら。」
シュウピン
「かしこまりました。
冬香様。
よろしくお願いします。」
冬香
「真々美、オルア、メラニィさんは、ここで待っていてね。
オルア、そのバリア不正操作者については、あとでセカンドオピニオン《2番目の医師の見解》をお願いするわ。
あとで二人で十分に吟味しましょう。
その後で、真々美たちに報告したいと思うの。
よろしくね。」
オルア
「わかったわ。
冬香。
戻ってから、一緒に検分しましょうね。」
冬香
「ありがとう。」
◇
スリムな元男性の女性 莎拉《Shālā、セーラ》が寝ているベッドがある部屋にいる冬香とシュウピンさん。
シュウピン
「冬香様、莎拉《Shālā、セーラ》を助けていただき、ありがとうございました。」
冬香
「いまは長話できるかしら。」
シュウピン
「はい、いまは聞かれていません。
盗聴されていません。
わたしが知っていることは、ほぼすべてお話しできると思います。」
冬香
「ほぼすべてとは、どういう意味かしら?」
シュウピン
「ふたりのときのメラニィがどんなに可愛い表情をするかとか、どんな声で歌うかとかは教えられません。」
冬香
「それは聞かないし、もし言おうものなら、あなたを軽蔑するわ。」
シュウピン
「それを聞いて安心しました。」
冬香
「ここであなたに確認したいことは、セーラさんのことについてです。
彼というか彼女は女性になりたいと判断しても良いですか?」
シュウピン
「はい、冬香様のお力で完全な女性にしてあげて欲しいです。
対価はいくらほどになりますか?」
冬香
「6億バーシルが相場よ。
だけど、彼女の勇気に免じて、労災扱いとするわ。
そして、先ほど見てもらったバリア不正操作者から受けた傷が深いから、内臓のほとんどすべてを修復する必要があるわ。
とうぜん、子宮と卵巣の再形成も治療に含まれるわ。」
シュウピン
「冬香様はそのために、セーラが身体に重傷を負うまで介入することを耐えられたのですか?」
冬香
「流石ね、シュウピンさん。
よく状況を把握しているわ。
話が早いわね。
セーラさんが重傷を負う前に助けることは出来た。
しかし、その段階で助けたら、完全な性転換手術《=子宮、卵巣、外性器の形成》は自己負担になってしまう。
6億バーシルなんて払う手段が無いに等しい。
生まれついての女性なら、買い手も居たかもしれない。
でも、彼女の場合はちがうわよね。」
シュウピン
「冬香様、ご配慮いただき、ありがとうございます。」
シュウピンは、90度のお辞儀をして、冬香に謝意をあらわした。
そして、床の2カ所にしずくが落ちて、濡れていた。
冬香
「感情が消されたように見えたけれど、なみだが流せる状態で良かったわ。」
シュウピン
「表情は変えられませんが、涙がでたことに、とまどいと喜びを感じます。」
冬香
「彼女も喜んでいるでしょうね。
シュウピンさんに、女の人のクラスター認定を受けたことを感謝していたわ。」
シュウピン
「莎拉《Shālā、セーラ》、あなたは義理堅いわね。」
冬香
「大きい女性?に痛い目に遭わされながらも、必死にバリア制御装置をONに戻そうとしていたわ。
素晴らしい精神の持ち主ね。
彼女のことで知っておくべきことがあれば教えてくれますか?」
シュウピン
「莎拉《Shālā、セーラ》は、ボーイソプラノの歌声を保存するために、第1性徴期を迎える前に、睾丸を握りつぶされたようです。 もしかしたら、外科手術で除去されたのかもしれません。
つまり、男か女かを性的に意識する10歳より前であると推測されます。
その後に、女性ホルモンを大量に投与されたようで、生殖能力が無い以外は精神的に女性です。
ただし、脳が出産の痛みに耐えれるかは不明です。
そして、性的欲求については分かりません。
正性知識を行使することはできても、性魔力はダメでした。
もしかしたら、性欲を感じたことはないかもしれません。」
冬香
「たしかに、[4] テグトス Tegutosu を使うべき場面で、噛みついたことから考えても、性魔力は使えないのでしょうね。
では、現在、実行中の処置は正しいようですね。
対外的には、内臓に重傷を負った労災として、最低でも20日、できれば30日は休ませてあげてください。 面会謝絶としますが、シュウピンさんは入れるようにしておきます。
それと、メラニィさんが誤解して嫉妬しなくても良いように、彼女を見舞うときにはパートナーとして同伴するようにしてください。」
シュウピン
「ありがとうございます。 冬香様。」
冬香
「なにか質問はあるかしら?」
シュウピン
「いいえ、冬香様がていねいに説明してくださったおかげで、今は大丈夫です。
また、なにか気になることが出来たときは、お時間を頂けますか?」
冬香
「ええ、問題無いわ。
盗聴されていないタイミングで話しかけに来てね。
わたしに会いに来る口実として、本を1冊貸しますね。
長編だから、1冊ずつ借りに来れば、大丈夫でしょう。
そして、あなたが来られないときは、メラニィさんに貸し借りを仲介してもらっても構いません。」
シュウピン
「なにから、なにまで、お心遣いいただき、ありがとうございます。」
冬香
「じゃあ、戻りましょうか?」
シュウピン
「はい、冬香様。」
◇
9日目 PM 21:40
冬香
「待っててくれて、ありがとう。
オルア、セカンドオピニオン《2番目の医師の見解》をお願いするわ。」
オルア
「この状況で、なにも騒ぎ出したりしないなんて、さすがプロのスパイね。
覚悟を決めたのでしょうか?」
冬香
「いろいろと情報を吐いて欲しいのだけれど、無理かしら。」
オルア
「痛覚反応を見ましょうか?
とは言え、拷問は好きじゃないから、足つぼマッサージの痛いバージョンを試しましょうか?
直接は触りたくないから、手袋を付けます。
えい!」
反応が無かった。
オルア
「普通なら、痛いとわめきだしたり、顔から脂汗や冷や汗が出るものだけれど、本当に無反応ね。」
冬香
「この個体の身体からは、一時的性転換剤の服用が認められました。
男性が女性の寮などに忍び込んで、頃合いを見計らって、男性に戻って性交目的を果たそうとする有名だった薬です。
副作用が大きかったこと、ギャンブル中毒で変質した脳の持ち主には効きづらいこと、お酒などのアルコールやタバコなどの依存性物質を摂取すると効き目がうすらいでいくことから、現在では使用されていないものです。
前祝とか言って、大量の酒をあおったことにより、性転換剤の効き目が激減したようです。」
メラニィ
「それなら、なぜ、セーラさんは他の者に相談しなかったんだ?」
シュウピン
「親しいひとがいないから、相談できなかったのよ。 きっと。
しかも、わたしや警備員の多くが出払っていたから、バリア制御室内に居ることが重要と判断したのでしょうね。」
メラニィ
「ずる賢い手を使ってくるな。
バリアは現在、正常に働いているのか?」
冬香
「問題は無いわね。
オルア、セカンドオピニオンは、どう?」
オルア
「自白剤を打っても無駄でしょうね。
これ以上の被害を出されないためにも、無力化して、生体部品は有効に使わせてもらいたいところ・・・
なんだけど、タバコ、お酒、ギャンブルの興奮によるドーパミンの過剰分泌でドナーとしても不適切ね。
このまま置いておくと、いつ爆発するか分からない爆弾を放置するようなものだから、海上に葬送するしかないけれど、復活されても厄介だから、サイコロステーキにして、海洋資源の肥やしになってもらうしかないと思うわ。」
冬香
「さすが、オルアね。
なにも、異論は無いわ。
真々美、バリア不正操作者の処分を決めてくれるかしら?」
真々美
「そうだな、シュウピンさんとメラニィさんは、なにか言いたいことはあるか?」
シュウピン
「全身の骨をハンマーで砕いてから、オルア様がおっしゃった処置を実施することを提案いたします。」
メラニィ
「セーラさんが殴られた回数と同じ強さで、内臓を損傷させてから、以下同文です。」
真々美
「ハンマーでたたく作業は、シュウピンさんに実施してもらおう。
殴る作業は、メラニィに実施してもらおう。
そのあとで、冬香とオルアで協力して、後の処理を実施してくれ!
わたしは立ち合いはするが見ているだけにさせてくれ。
疲れた、本当に疲れた。」
シュウピン
「肩をもみましょうか?」
真々美
「いや、遠慮しておく。
メラニィが肩こりをつらそうにしているから、もんでやってくれ。」
メラニィ
「あー、肩が凝って、つらいなあ。
黒髪長髪の綺麗な女性が肩をもんでくれないかなあ?」
メラニィは、シュウピンの方をちらりと見た。
シュウピン
「あら、遠慮しないで言ってね。
そうねえ、昨日より100グラムほど重くなった気がするわね。
たっぷりともんであげますからね。」
メラニィ
「あん、あっ、シュウピン。
肩を、か・た・をもんでくれ。」
シュウピン
「さあ、どうぞ。」
シュウピンの真剣なマッサージで、メラニィの肩のコリがほぐれた。
真々美 こころの声
『冬香は、かなり怒っているな。
自信家の冬香が、セカンドオピニオンという言葉でオルアの意見を求めるときは、
余計なことを言うな!
という意味だからな。』
オルア こころの声
『セーラさんが面会謝絶になるまで殴られたことに、冬香の怒りはSTOP高ね。
こういう状況で無ければ、延命治療という名の地獄が待っていたところね。』
冬香 こころの声
『真々美もオルアも以心伝心で助かるわ。
あの人間のオスは、筋肉をやせ衰えさせてから、なぐり続けたいところだけれど、今は第2陣、第3陣への備えが必要だからね。』
シュウピン こころの声
『冬香様、感謝いたします。
でも、ごめんなさい。
わたしは、それでも真々美様の方が好きなの。
いまはメラニィも居るから。
なんて、冬香様には、真々美様とオルア様がいらっしゃるから、わたしが入り込む隙間は無いわね。
でも、もし、隙間があったら、メラニィを押し込まなきゃね。』
メラニィ こころの声
『シュウピンの心配事が1つ解決したようで、良かった。』
真々美
「明日は、2日に一度の会議の日だな。
疲れているとは思うが、よろしく頼む。」
冬香、オルア、シュウピン、メラニィ
「「「「 了解です。 」」」」
◇
モンテハート大公爵の屋敷にて
執事
「第1陣は、あっさりと排除されたようですね。」
軍団長
「あれは小手調べというよりは、やつらを油断させるための捨て石だからな。
なにも問題はない。
大公爵様は、どう過ごされている。」
執事
「お花の種まきに精を出しておられます。」
軍団長
「お盛んなことだな。」
執事
「・・・」
◇
アリムさんは、正性知識 2000 を読み進めようとしている。
アリム
「駄目だ。
頭が痛くなるまで読んでいるのに、訳が分からない。
前世のボクは本当に、これを習得できたのか?
とても信じられない。」
◇
第1回の襲撃を撃退した真々美たち。
それよりも、気になるのは完全な性転換手術と生成技術ですね。
非公開のカセイダード王国の技術がチータマルム星に広まったとき、世界はどうなるのでしょうか?
【読者様へ】
あなたの10秒で、この作品にパワーをください。
「お気に入りに追加」 【 ↓ 】 お願いします。
オルア、真々美、シュウピンさん、メラニィさんは、乗船者を待ち構えるために、配置についたのだった。
◇
9日目 PM 19:00
《2日に一度の会議: なし、
第1回襲撃予測日: 当日》
冬香はバリア制御室に入った。
真々美、冬香、オルア、シュウピンさん、メラニィさんは、マスターカードキーを持っているから、どの部屋にも出入りが自由にできます。
冬香
「担当者の二人は、夕食中ね。
それでは、制御盤の部屋が写る位置に隠しカメラを設置しましょう。
通常の監視カメラは現時点では正常に動作しているわね。
決行時刻になったら、自動的に監視カメラを切れるようにしているのかしら。」
冬香 こころの声
『今日が襲撃予定日でなかったら、攻守交代で攻めをして、私の身体無しでは生きられなくなるくらいまで、アリムさんを攻め続けたかったのだけれど、本当に残念ね。
まあ、あとのお楽しみに残しておくとして、いまは雑事を片づけましょうか?』
9日目 PM 19:50
バリア制御室の担当二人が帰ってきた。
ひとりは、とてもスリムでバストとヒップが大きく、ウエストも引き締まっていた。
もう一人は、緊急健康診断で見た覚えがなかった。
冬香 こころの声
『おかしいわね。
スリムな方は、元男性の女性で見覚えがある。
もう一人は、女性というよりは男性の体格に近い。
どこで、すり替わった?
シュウピンさんの目を盗むことはできないはずだけど・・・』
大きい女性?
「ふう、気分がいいぜ。
前祝の祝杯は効くなあ。」
スリムな元男性の女性
「なにの前祝ですか?
ウェン様やオネスティ様が出払っているからって、はめを外しすぎです。
このバリア制御室に、敵が入り込んできたときに、そのざまで戦えますか?」
大きい女性?
「まあ、固いこと言うなよ。
日付が明日に変わったころには、そんな言葉を言えなくなるぜ。」
スリムな元男性の女性
「笑い上戸、泣き上戸、怒り上戸などの酒癖は聞いたことがありますが、男言葉になる酒癖は初めて知りました。」
大きい女性?
「もっと、いろんなことを教えてやろうか?」
スリムな元男性の女性
「いい予感がしません。」
大きい女性?
「おまえに女の喜びってやつを教えてやるぜ。
もっとも、ほんとうに女性なのか怪しいけどな。」
スリムな元男性の女性
「なにをおっしゃっているのか分かりません。」
大きい女性?
「1つ、バリア制御室には、すでに敵が入ってきている。」
スリムな元男性の女性
「どこに? 怪しい気配はありません。
それに、ここにいるのは、あなたと私だけです。」
大きい女性?
「まだ、わかんねえのか?
敵は目の前にいるだろうが?」
スリムな元男性の女性
「もしかして、あなたが敵だという意味ですか?」
大きい女性?
「正解だあ!
賞品として、バリアのスイッチを切ってやるぜ。」
大きい女性?は、バリアのスイッチを切った《OFFにした》。
スリムな元男性の女性
「な、なにをするのです。
そこをどきなさい。」
スリムな元男性の女性は、バリアのスイッチをONに戻そうとした。
大きい女性?
「させねえよ。
これで、100名のモンテハート大公爵様の英雄たちが、この船に乗り込んでくる。
お前たちは全員、おれたちの遊具になるんだよ。」
スリムな元男性の女性
「させません。
そこをどいてください。」
体当たりしてどかそうとしたが、かわされて、両手の手首をつかまれてしまった。
大きい女性?
「腕力だけは女性並みだな。
はたして、身体の方はどうかなあ?」
スリムな元男性の女性
「くっ。
あきらめません。
莎拉《Shālā、セーラ》 正性知識 One Hundred !
」
大きい女性?
「おっと、触らせねえよ。
あぶない、あぶない。」
スリムな元男性の女性 莎拉《Shālā、セーラ》
「こうなったら、多少の損害は目をつぶってもらうしかないですね。
正当防衛ですからね。」
ガブリ!
莎拉《Shālā、セーラ》は、かみついた。
大きい女性?
「いてえな! なにすんだ。」
平手打ちされて、莎拉《Shālā、セーラ》は飛ばされた。
大きい女性?
「制圧が終わるまでの時間、遊んでやるよ。」
スリムな元男性の女性 莎拉《Shālā、セーラ》
「い、痛い、でも、バリアをONにしないと、温《ウェン》様たちが危ない。」
痛くて思い通りに動かせない身体を引き釣りながら、バリアをONにしようとあがいた。
大きい女性?
「させねえよ。」
スリムな元男性の女性 莎拉《Shālā、セーラ》
「温《ウェン》様
ごめんなさい。
お役に立てませんでした。」
大きい女性?
「グェ!」
冬香のかかと蹴りで、大きい女性?が蹴り飛ばされた。
冬香
「これだけ、録画すれば十分よね。
これ以上、狼藉《ろうぜき》と腕力を振るうなら蹴り飛ばすわよ。」
莎拉《Shālā、セーラ》
「えっ?
温《ウェン》様?
来てくださったのですか?
でも、髪色と長さがちがう。
あのお姿は、白石医師様・・・」
莎拉《Shālā、セーラ》は、バリアのスイッチをONに戻すと、その上に覆いかぶさった体勢で気を失った。
大きい女性?
「おまえの方が良い女だなあ。
棚から牡丹餅とは、このことかあ。
美味しく味合わせてもらうぜ。」
大きい女性?は、左腕で殴りかかってきた。
大きい女性?
「左を制する者は世界を制するって言うぜ。」
冬香は素早く体さばきを行って、一本背負いで投げ飛ばした。
大きい女性?が地面に叩きつけられると同時に、気をまとった右足のかかとで踏み蹴りした。
ダン、ダン、ダン。
正中線上の3点を踏み蹴りした。
そして、大きい女性?の左腕を伸ばして、左手を反対方向に曲げ押して、時計回りに巻いて行った。
大きい女性?
「ぎゃあ。」
冬香
「柔《じゅう》よく剛《ごう》を制《せい》す
って言葉は知らないかしら?
もちろん、腕力が同じ程度あることが前提だけどね。」
大きい女性?
「ぎゃあ。
痛てえ、何すんだ。」
冬香
「自分がしたことを棚に上げて、なにを言っている?
この卑怯者《ひきょうもの》。」
大きい女性?
「わたしはなにもしていないのに、あんまりだあ。」
冬香
「都合が悪いことを瞬時にわすれるとは、どういう記憶体系をしているのか理解に苦しむわ。」
大きい女性?
「ひどい、ひどいよお。」
冬香
「じっとしていなさい。」
冬香は右足を、大きい女性?の頭の下に入れて、回れないようにした。
大きい女性?
「痛い、いたい、痛い。」
冬香
「会いたい、あいたい、会いたいって、誰に会いたいの?
わたしの用事が終わってからにしてね。」
大きい女性?が身体をそらせて腹を突き出すたびに、左足で踏み戻した。
大きい女性?
「もう、勘弁してくれ!」
冬香
「ああ、翻訳すると、
覚えておけよ!
100倍にして返してやるからな。
って、意味よね。
元気ねえ。
もう3分続けましょうか?」
大きい女性?は、痛さのあまり、漏らしてしまった。
冬香
「あらあ? 休憩時間にトイレを済まさなかったの?
どこに出すつもりだったのかしら。」
冬香は2回、かかと落としを浴びせた。
冬香
「不思議ねえ、クルミ台の大きさの何かを踏んだ気がするわ。」
大きい女性?
「調子に乗りやがって・・・」
大きい女性が右腕を振るおうとした瞬間、冬香は極めていた左手を反時計回りで3時、12時、9時の方向に回して、大きい女性をうつぶせの大勢に変えた。
相手の左腕を身体の真横に伸ばして、左手とひじと肩の間を抑えた。
左手を上方向に回転させると、同時に2の腕を下方向に回転させた。
腰の上に右ひざを使って体重を掛けて動きを封じた。
大きい女性?
「いてえ。」
両手の回転を止める冬香。
大きい女性?
「どけえ。」
両手の回転を加える冬香。
大きい女性?
「いてえ。」
この繰り返しが5回くらい続いた・・・
冬香
「さてと、なにを話してくれるかな?」
大きい女性?
「ほざけ。
おぼえていろよ。
穴という穴を串刺しにしてやる。
もうすぐ、ここに仲間の軍隊が来るからなあ。
あと数分たったら、逆転するからな。」
冬香
「知っていることを話す気は無いのかな?」
大きい女性?
「その顔を二目と見れなくなるまで、叩き潰したあとで、おまえたちが可愛がっているオールとかいう女と並べて、泣くまで痛めつけてやる。」
冬香
「オールって、オルアのことかしら?」
大きい女性?
「そんな名前だったかもな。
降参する気になったか?」
冬香
「最後の言葉を聞き届けました。
白医師秘術 第7○○xx !」
大きい女性?は、静かになって抵抗もしなくなった。
冬香
「このにおいは、一時性転換薬ね。
緊急健康診断は、口実だったけれど、性病検査が必要かもね。
しかも、お酒臭い。
アルコール摂取により、効果が無くなるって知らなかったのかしら。
それとも、勝利を確信していたのかしら。」
冬香は、スリムな元男性の女性 莎拉《Shālā、セーラ》を抱き起して、声を掛けた。
莎拉《Shālā、セーラ》
「し、白石医師様。
バリアは?」
冬香
「よく頑張ったわね。
いまは、バリアは正常に働いているわ。」
莎拉《Shālā、セーラ》
「良かった。
温《ウェン》様に伝えてください。
女として死ねる幸せを、ありが・・・と・・・」
冬香
「しっかりしなさい。
とは言えないくらい、腹部と下腹部の損傷が激しいわね。
内臓全部の再構成が必要ね。」
冬香は、にやりとした。
冬香 こころの声
『元男性だけあって、がんばったわね。
本当の性転換手術を施す良い機会《チャンス》になるわ。
女として死ねる幸せは渡さないけれど、
その代わり、
女として「生きる」幸せを受け取りなさい。』
大きい女性?
「・・・」
冬香
「あなたは、拘束して尋問してあげるわ。
お話してくれたら、うれしいわ。
あら? 心配しないで、なにも話す気が無いという意思を尊重してあげるから。」
冬香はニンマリと微笑んだ。
◇
舞台というか場所が変わって、船の甲板に総勢100名の海賊のふりをした私兵どもが乗り込んできた。
「右側の柵部分」
真々美
「構え、撃て!」
船の進行方向を前とすると「右側の柵部分」から乗り込んできた約50名を撃ち殺した。
血が出ることはなかったが、1名が無断乗船しては倒れ、それを起こそうとする1名も倒れるということが50名つづいた。
異変があった場合、引き返すとか止まるとかしそうなものだが、勝利を確信していたようで、退却という選択肢がなかったようだ。
「左側の柵部分」
オルア
「構え、撃て!」
船の進行方向を前とすると「左側の柵部分」から乗り込んできた約50名を撃ち殺した。
血が出ることはなかったが、1名が無断乗船しては倒れ、それを起こそうとする1名も倒れるということが50名つづいた。
異変があった場合、引き返すとか止まるとかしそうなものだが、勝利を確信していたようで、退却という選択肢がなかったようだ。
◇
カセイダード王国の移民審査船の警備員が使用していた銃のような武器は、マイクロウエーブ発生座標指定装置だった。
乗り込んできた私兵どもの頭部が、しかも、その大脳部分だけを電磁波で温められたようなものだった。
文字通り、脳死状態となった。
脳の大部分である水分が蒸発し、良質のタンパク質と脂質がウェルダン《Well-Done》に焼かれた。
◇
9日目 PM 20:30
冬香は医療室の手術室に、スリムな元男性の女性 莎拉《Shālā、セーラ》を寝かせていた。
冬香
「セットOKね。
名目上は、腹部損傷の治療のため、20日間ほどの面会謝絶と発表すればいいわ。
子宮と卵巣の形成、外性器の形成、尿道の位置移動なども完了できるわね。
安心してね。
わたしより腕が良い医者はカセイダード王国の本星にも数人しかいないわ。
目が覚めたときは、本当の女性としての人生が始まるわ。
ただし、アリムさんには近づけないけどね。」
スリムな元男性の女性 莎拉《Shālā、セーラ》の容態は安定し、無事に快方に向かうだろう。
本当の女性の身体を得て、妊娠出産が可能な状態で!
冬香
「本来の治療費は、6億バーシル。
女の人のクラスターの人生のパートナーの選択権の末端価格と同じね。
あなたの勇気に免じて、労働災害保険内として処理してあげるわ。
ゆっくりと眠りなさい。」
◇
9日目 PM 21:07
冬香の医療室に、真々美、オルア、シュウピン、メラニィが集まっていた。
真々美
「100名の身元不明の脳死状態の健康な身体と、ここにいる一体のバリア不正操作者が手に入った。」
冬香
「シュウピンさん、セーラという女性に心当たりがあるはずよ。
面会謝絶状態だけど、顔を見にきてくれるかしら。」
シュウピン
「かしこまりました。
冬香様。
よろしくお願いします。」
冬香
「真々美、オルア、メラニィさんは、ここで待っていてね。
オルア、そのバリア不正操作者については、あとでセカンドオピニオン《2番目の医師の見解》をお願いするわ。
あとで二人で十分に吟味しましょう。
その後で、真々美たちに報告したいと思うの。
よろしくね。」
オルア
「わかったわ。
冬香。
戻ってから、一緒に検分しましょうね。」
冬香
「ありがとう。」
◇
スリムな元男性の女性 莎拉《Shālā、セーラ》が寝ているベッドがある部屋にいる冬香とシュウピンさん。
シュウピン
「冬香様、莎拉《Shālā、セーラ》を助けていただき、ありがとうございました。」
冬香
「いまは長話できるかしら。」
シュウピン
「はい、いまは聞かれていません。
盗聴されていません。
わたしが知っていることは、ほぼすべてお話しできると思います。」
冬香
「ほぼすべてとは、どういう意味かしら?」
シュウピン
「ふたりのときのメラニィがどんなに可愛い表情をするかとか、どんな声で歌うかとかは教えられません。」
冬香
「それは聞かないし、もし言おうものなら、あなたを軽蔑するわ。」
シュウピン
「それを聞いて安心しました。」
冬香
「ここであなたに確認したいことは、セーラさんのことについてです。
彼というか彼女は女性になりたいと判断しても良いですか?」
シュウピン
「はい、冬香様のお力で完全な女性にしてあげて欲しいです。
対価はいくらほどになりますか?」
冬香
「6億バーシルが相場よ。
だけど、彼女の勇気に免じて、労災扱いとするわ。
そして、先ほど見てもらったバリア不正操作者から受けた傷が深いから、内臓のほとんどすべてを修復する必要があるわ。
とうぜん、子宮と卵巣の再形成も治療に含まれるわ。」
シュウピン
「冬香様はそのために、セーラが身体に重傷を負うまで介入することを耐えられたのですか?」
冬香
「流石ね、シュウピンさん。
よく状況を把握しているわ。
話が早いわね。
セーラさんが重傷を負う前に助けることは出来た。
しかし、その段階で助けたら、完全な性転換手術《=子宮、卵巣、外性器の形成》は自己負担になってしまう。
6億バーシルなんて払う手段が無いに等しい。
生まれついての女性なら、買い手も居たかもしれない。
でも、彼女の場合はちがうわよね。」
シュウピン
「冬香様、ご配慮いただき、ありがとうございます。」
シュウピンは、90度のお辞儀をして、冬香に謝意をあらわした。
そして、床の2カ所にしずくが落ちて、濡れていた。
冬香
「感情が消されたように見えたけれど、なみだが流せる状態で良かったわ。」
シュウピン
「表情は変えられませんが、涙がでたことに、とまどいと喜びを感じます。」
冬香
「彼女も喜んでいるでしょうね。
シュウピンさんに、女の人のクラスター認定を受けたことを感謝していたわ。」
シュウピン
「莎拉《Shālā、セーラ》、あなたは義理堅いわね。」
冬香
「大きい女性?に痛い目に遭わされながらも、必死にバリア制御装置をONに戻そうとしていたわ。
素晴らしい精神の持ち主ね。
彼女のことで知っておくべきことがあれば教えてくれますか?」
シュウピン
「莎拉《Shālā、セーラ》は、ボーイソプラノの歌声を保存するために、第1性徴期を迎える前に、睾丸を握りつぶされたようです。 もしかしたら、外科手術で除去されたのかもしれません。
つまり、男か女かを性的に意識する10歳より前であると推測されます。
その後に、女性ホルモンを大量に投与されたようで、生殖能力が無い以外は精神的に女性です。
ただし、脳が出産の痛みに耐えれるかは不明です。
そして、性的欲求については分かりません。
正性知識を行使することはできても、性魔力はダメでした。
もしかしたら、性欲を感じたことはないかもしれません。」
冬香
「たしかに、[4] テグトス Tegutosu を使うべき場面で、噛みついたことから考えても、性魔力は使えないのでしょうね。
では、現在、実行中の処置は正しいようですね。
対外的には、内臓に重傷を負った労災として、最低でも20日、できれば30日は休ませてあげてください。 面会謝絶としますが、シュウピンさんは入れるようにしておきます。
それと、メラニィさんが誤解して嫉妬しなくても良いように、彼女を見舞うときにはパートナーとして同伴するようにしてください。」
シュウピン
「ありがとうございます。 冬香様。」
冬香
「なにか質問はあるかしら?」
シュウピン
「いいえ、冬香様がていねいに説明してくださったおかげで、今は大丈夫です。
また、なにか気になることが出来たときは、お時間を頂けますか?」
冬香
「ええ、問題無いわ。
盗聴されていないタイミングで話しかけに来てね。
わたしに会いに来る口実として、本を1冊貸しますね。
長編だから、1冊ずつ借りに来れば、大丈夫でしょう。
そして、あなたが来られないときは、メラニィさんに貸し借りを仲介してもらっても構いません。」
シュウピン
「なにから、なにまで、お心遣いいただき、ありがとうございます。」
冬香
「じゃあ、戻りましょうか?」
シュウピン
「はい、冬香様。」
◇
9日目 PM 21:40
冬香
「待っててくれて、ありがとう。
オルア、セカンドオピニオン《2番目の医師の見解》をお願いするわ。」
オルア
「この状況で、なにも騒ぎ出したりしないなんて、さすがプロのスパイね。
覚悟を決めたのでしょうか?」
冬香
「いろいろと情報を吐いて欲しいのだけれど、無理かしら。」
オルア
「痛覚反応を見ましょうか?
とは言え、拷問は好きじゃないから、足つぼマッサージの痛いバージョンを試しましょうか?
直接は触りたくないから、手袋を付けます。
えい!」
反応が無かった。
オルア
「普通なら、痛いとわめきだしたり、顔から脂汗や冷や汗が出るものだけれど、本当に無反応ね。」
冬香
「この個体の身体からは、一時的性転換剤の服用が認められました。
男性が女性の寮などに忍び込んで、頃合いを見計らって、男性に戻って性交目的を果たそうとする有名だった薬です。
副作用が大きかったこと、ギャンブル中毒で変質した脳の持ち主には効きづらいこと、お酒などのアルコールやタバコなどの依存性物質を摂取すると効き目がうすらいでいくことから、現在では使用されていないものです。
前祝とか言って、大量の酒をあおったことにより、性転換剤の効き目が激減したようです。」
メラニィ
「それなら、なぜ、セーラさんは他の者に相談しなかったんだ?」
シュウピン
「親しいひとがいないから、相談できなかったのよ。 きっと。
しかも、わたしや警備員の多くが出払っていたから、バリア制御室内に居ることが重要と判断したのでしょうね。」
メラニィ
「ずる賢い手を使ってくるな。
バリアは現在、正常に働いているのか?」
冬香
「問題は無いわね。
オルア、セカンドオピニオンは、どう?」
オルア
「自白剤を打っても無駄でしょうね。
これ以上の被害を出されないためにも、無力化して、生体部品は有効に使わせてもらいたいところ・・・
なんだけど、タバコ、お酒、ギャンブルの興奮によるドーパミンの過剰分泌でドナーとしても不適切ね。
このまま置いておくと、いつ爆発するか分からない爆弾を放置するようなものだから、海上に葬送するしかないけれど、復活されても厄介だから、サイコロステーキにして、海洋資源の肥やしになってもらうしかないと思うわ。」
冬香
「さすが、オルアね。
なにも、異論は無いわ。
真々美、バリア不正操作者の処分を決めてくれるかしら?」
真々美
「そうだな、シュウピンさんとメラニィさんは、なにか言いたいことはあるか?」
シュウピン
「全身の骨をハンマーで砕いてから、オルア様がおっしゃった処置を実施することを提案いたします。」
メラニィ
「セーラさんが殴られた回数と同じ強さで、内臓を損傷させてから、以下同文です。」
真々美
「ハンマーでたたく作業は、シュウピンさんに実施してもらおう。
殴る作業は、メラニィに実施してもらおう。
そのあとで、冬香とオルアで協力して、後の処理を実施してくれ!
わたしは立ち合いはするが見ているだけにさせてくれ。
疲れた、本当に疲れた。」
シュウピン
「肩をもみましょうか?」
真々美
「いや、遠慮しておく。
メラニィが肩こりをつらそうにしているから、もんでやってくれ。」
メラニィ
「あー、肩が凝って、つらいなあ。
黒髪長髪の綺麗な女性が肩をもんでくれないかなあ?」
メラニィは、シュウピンの方をちらりと見た。
シュウピン
「あら、遠慮しないで言ってね。
そうねえ、昨日より100グラムほど重くなった気がするわね。
たっぷりともんであげますからね。」
メラニィ
「あん、あっ、シュウピン。
肩を、か・た・をもんでくれ。」
シュウピン
「さあ、どうぞ。」
シュウピンの真剣なマッサージで、メラニィの肩のコリがほぐれた。
真々美 こころの声
『冬香は、かなり怒っているな。
自信家の冬香が、セカンドオピニオンという言葉でオルアの意見を求めるときは、
余計なことを言うな!
という意味だからな。』
オルア こころの声
『セーラさんが面会謝絶になるまで殴られたことに、冬香の怒りはSTOP高ね。
こういう状況で無ければ、延命治療という名の地獄が待っていたところね。』
冬香 こころの声
『真々美もオルアも以心伝心で助かるわ。
あの人間のオスは、筋肉をやせ衰えさせてから、なぐり続けたいところだけれど、今は第2陣、第3陣への備えが必要だからね。』
シュウピン こころの声
『冬香様、感謝いたします。
でも、ごめんなさい。
わたしは、それでも真々美様の方が好きなの。
いまはメラニィも居るから。
なんて、冬香様には、真々美様とオルア様がいらっしゃるから、わたしが入り込む隙間は無いわね。
でも、もし、隙間があったら、メラニィを押し込まなきゃね。』
メラニィ こころの声
『シュウピンの心配事が1つ解決したようで、良かった。』
真々美
「明日は、2日に一度の会議の日だな。
疲れているとは思うが、よろしく頼む。」
冬香、オルア、シュウピン、メラニィ
「「「「 了解です。 」」」」
◇
モンテハート大公爵の屋敷にて
執事
「第1陣は、あっさりと排除されたようですね。」
軍団長
「あれは小手調べというよりは、やつらを油断させるための捨て石だからな。
なにも問題はない。
大公爵様は、どう過ごされている。」
執事
「お花の種まきに精を出しておられます。」
軍団長
「お盛んなことだな。」
執事
「・・・」
◇
アリムさんは、正性知識 2000 を読み進めようとしている。
アリム
「駄目だ。
頭が痛くなるまで読んでいるのに、訳が分からない。
前世のボクは本当に、これを習得できたのか?
とても信じられない。」
◇
第1回の襲撃を撃退した真々美たち。
それよりも、気になるのは完全な性転換手術と生成技術ですね。
非公開のカセイダード王国の技術がチータマルム星に広まったとき、世界はどうなるのでしょうか?
【読者様へ】
あなたの10秒で、この作品にパワーをください。
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