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料理が美味しすぎるにも程がある

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マルスティア•ラープ伯爵令嬢。
ラープ伯爵家は国内でも有数の宝石を扱う店を経営しており、その人気は隣国までにも広がるほどの盛況ぶりだった。
両親は娘である彼女を溺愛し、兄のエドワードもシスコンで有名だった。

彼女は漫画の中でもクリスティアとルカの婚約発表パーティーに参加した際、他の令嬢たちからの心無い言葉に傷つくクリスティアを励ますシーンで、ほんの数コマだけ登場した後、最後の章で再度登場する…という情報だけはなんとか思い出した。

なぜ脇役の彼女の情報を、この漫画に興味がない私がここまで知っているのかって?友人の最推しキャラだったから。

結構流していたけど、ある程度聞いておいて良かった。まさか役に立つ日が来るなんてね。


「お嬢様、できました。とっても素敵です」

「わあっ」


驚いて鏡に張り付く私を、メイドはふふっと嬉しそうに見ている。
気づくと数名のメイドに囲まれて化粧やら髪の毛やらに手を加えられていた。

サブキャラとはいえ、さすがは漫画に出てくるだけある。とっても綺麗。


「お嬢様、そろそろ朝食のお時間です」


メイド達に連れられるがまま、私は食堂へと歩いた。

伯爵家って、こんなにも広いのね。侯爵までは行かなくても、さすがは身分の高い伯爵家だわ。メイドがいなかったらきっと迷ってたはず。

マルスティアの両親や兄って、どんな人なのかな。溺愛してるってことだから優しい人なんだろうけど…

両親と兄の初対面に変に緊張しながらもドアを開けると、ぱあっと眩しい光が差し込み思わず目を閉じた。


「まあまあ私の可愛い娘よ」
「うわぁ、お前はなんでこんなに可愛いんだ」
「さすがは私とあなたの子だわ」


口々に褒め称える声に、苦笑いする。なるほど、これは確かに溺愛だわ。

ガバッと抱き抱えられ、スリスリと頬擦りをしてくる父親らしき人とその側でにっこりと微笑む母親らしき美人な女性、そして見るからにデレデレな表情をした兄であろう青年。顔立ちは悪くないのに、表情のせいでとても残念な顔になってしまっている。

そして、用意された朝食を見て、私はさっきまでの不安が吹き飛ぶようだった。

何この素敵な朝食は!?

見るからにふわふわのパンケーキにスコーン、フルーツ、カップケーキ。私の大好きなアフタヌーンティーが再現されていた。


「あらあら、マルスティア。そんなにお腹が空いていたの?」


たくさん食べなさい、とどんどん新しいパンケーキが運ばれてくる。

ここは天国なの?

私はお腹いっぱいになるまで全て平らげ、両親と兄は驚きながらも嬉しそうに私を見ているのだった。

ここでの生活、悪くないかも?!



***

パーティー会場には、すでに多くの貴族らしき人でいっぱいだった。

夫人がいつもお世話になっているという人や、伯爵様の仕事仲間の奥様たちも招待されたのだという。日頃の感謝の気持ちを込めたパーティーを開きたかったという夫人の願いが叶ったのだそうだ。

私は会場について早々、ワゴンに並ぶ料理に目が釘付けだった。何この素敵な空間。私のために用意された食べ放題じゃない。(違います)


「お母様、私料理を…」

「あら、マルスティア。今朝あれだけ食べたのにもうお腹が空いたの?」

少し不思議そうな顔を見せる夫人に、ぎくっとしてしまう。マルスティアってどんなキャラだったのかな。あまりにも違うと怪しまれてしまう。


「えへへ、なんだか今日はお腹が空く日みたい」


「あら、そうなの?そこで話しているから、お料理を取ったらこちらに戻ってらっしゃいね」


「はいっ、お母様」


やったあ!ご飯が食べられる!

ガッツポーズしたいのを抑えて、私は意気揚々とビュッフェ台へと向かった。

私のような幼い子もいるためか、子供用の背丈に合わせたビュッフェ台も用意されていた。さすがは伯爵夫人だわ。気配りが素晴らしい!

るんるんと鼻歌を歌いながら料理を取り、ふと振り返ると伯爵夫人は楽しそうに会話をしていた。誰も料理を口にしていないのに、私だけ食べるのもなんだか申し訳なく感じ、少し離れたテーブルで食べることにした。

すぐに食べ終わる量だから、少しの間なら許されるでしょう。

もぐもぐと口を動かしながら、私はこの世界についてもう一度思い出していた。
そもそも、この国は魔法が使えるっていう設定よね?聖女だけが大怪我などから救う治療魔法を使えるっていうのであって、皇帝は怪物から国民を守るために一部は魔法使いの兵士の集団を作ってるって内容だったはず。

だとしたら、魔法の学校なんかもあるのかな?というかそもそも魔法って学んで身につくものなの?

そんなことを思いながら食事を楽しんでいたその時


「きゃーーーーっ!!!」


突然悲鳴が聞こえたかと思うと、突然会場の外の方からドスドスと大きな音がした。


地面が揺れ始め、私は何事かと音がする方へと視線を向けた…と、思っていた。


「あら?」


気づくと、目の前には巨大な怪物が。

ど、ど、どういうこと!?
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