【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命

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第48話 お互い知り尽くした戦い(ゲイルside)

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 おれだって勝ちたい。
 それに、目標は優勝。

 ジャックってのはまったくほんとにすごいやつだ。
 異世界からこっちに来て、チートなスキルでおれたちを翻弄しちゃうし、女の子にはモテるし。

 でも、おれだって活躍したいって思ってるんだぜ。

 アクロバットダンスは、本気でジャックたちとやり合って勝つことができた唯一の戦い。
 本当に嬉しかったし、ハローちゃんと一緒に、最高のペアとして前夜祭の本番でも1位になれた。

 今回の本戦でも、ジャックと決勝で戦いたいなぁ、なんて思いながらやってると、気づけばもう準々決勝に進んでいた。

 そんなの、ただカッコつけてるだけだろ、って?
 ほんとは死ぬ気であがいてあがいて、この準々決勝までやってきたんだろ、って?

 正解。

 確かにおれは、気づけば準々決勝行っちゃってましたーういっす!みたいな天才タイプじゃない。
 ジャックとは違ってな。

 だからそれなりに練習したさ。
 最後のモチベーションは、ジャックと決勝で戦うこと。ジャックはおれの大親友だけど、やっぱり超えたい存在だ。

 いつまでも背中を追うだけじゃいけない。
 
 尊敬しているからこそ、もっと強くなりたいって思ってる。

「ねね、ゲイルくん、あたしとだね、次」

 死ぬ気で勝ち上がってきた。
 もうだめかと諦めそうになることもあったし、ほぼ負けが確定した状態から逆転したのもあった。

 準々決勝はもっときつい戦いになりそうだ。

 てのも、相手はあのハローちゃん。
 アクロバットダンスで一緒にペアとしてずっと協力してきた女の子だ。

 こりゃあ手強いぞ。
 オーマイガー。

 一緒にいた時間が長いからこそ、お互いの戦い方だったり手の内は痛いくらいによくわかってる。
 ハローちゃんのスキルは『瞬間移動』で、視界の範囲内だったらどこでも一瞬で行ける。それに、短剣使いってこともあって、近くでグサッといかれたら終わりだ。

 いやー、短剣でグサは厳しー(草)。

「準々決勝で戦うことになるなんてな。お互い、手加減はなしでいこう」

「うん! ねね、どうして足をガタガタさせてるの? 緊張してる?」

「いや、ちょっとトイレ」

 てなわけで、しっかりと小さい方の老廃物を出してから、準々決勝に臨んだ。


 ***


「この準々決勝も見応えがありそうだ! 前夜祭のアクロバットダンスで一緒に協力して1位を取ったペアが、今度は戦う! 注目の対戦! 友情の風は吹きやまないでくれよ」

 先に攻撃を繰り出したのはおれだ。

 スキル自体は相手にも知られているし、どんな技があるかもわかってる。
 だから、どうにか予想外の攻撃をしかけたい。

 風を下に起こし、自分が空中に浮遊した。
 
 おれ、天才じゃね?

 こうしたら、もしハローちゃんが瞬間移動してきても、空中でそのまま攻撃することなんてできない。
 スキル対策完璧じゃん。

「おーい! こっちまで来れない感じ?」

 挑発。
 それもとっておきの笑顔で。

 でも、なぜかハローちゃんは焦ってない。余裕の微笑みって感じ。なんで?

「ねね、この戦い、時間制限はないって知ってる? どっちかがくたばるまで、戦い続けるんだよ」

 そんな初歩的なルールを知らないでどうする?
 おれはこれでも、ちゃーんと考えて戦ってるんだ。

 ……だよな?

 本当に、そうなのか?

 急に不安になってきた。おれ、何か間違ったことしたか?

「ハローちゃん! 結局どーゆー意味?」

「それはね、ゲイルくんが空飛んで体力消耗するまで、あたしはじっと待ってるってことだよ」

「なるほど! やっとわかった!」

 ──。

 やっちまったー。
 これからどうするか、全然考えてねー。

 まさしくオーマイガー。

 確かに、この浮遊は風のコントロールも難しいし、相当な体力を消耗する。
 集中力が切れれば、すぐに地面に落下する技だ。

 いきなりのピンチ。
 こんなにバカで、あっけないピンチがあるか? いや、ないだろ。絶対に歴史上最大のバカなピンチだ。

 こんなとき、ジャックならどうする?
 あれだけ勝ちたい、超したいって思っておきながら、結局はジャック頼みかよ。悔しいぜ、まったく。でも、あいつだったらこんなところで諦めない。へこたれたりしない。

「おれは確かにバカだけど、やるときはやる男なんだぜ!」

 そう叫んで、一瞬地面に降りた。
 といっても、ほんの一瞬だ。

 ハローちゃんが瞬間移動しないうちに決めてしまいたい技がある。
 その名も──。

「おれの必殺技!」

 かっこいい名前だろ? おれの必殺技。
 こんなネーミングセンスあるやつは、きっといない。

 竜巻のように集まった風が、隙を見せずにハローちゃんのところへ向かっていく。迷いなんてない。
 ハローちゃんも困った様子で──。

 って、いない。
 消えた。

 どこに行った?

「ねね、ゲイルくん。あたしの方が強かったね。なんで?」

「うわぁーーーーーー」

 グサッ。

 おれの優勝への夢は、こうして消えてしまった。
 ……悔しいだけじゃなくて、なんか恥ずかしい。おれ、なんか変なこと言ったっけ?
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